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第一一〇一話、ウルシー環礁、炎上


 フィリピン方面から異世界帝国艦隊は撤退した。

 空母機動部隊は、その艦載機を放り出して転移離脱した。第一遊撃部隊は敵機動部隊の艦載機の手持ちを推測しつつ捜索、追跡にかかった。


 そしてウルシー環礁を見張っていた哨戒空母『大間』が、フィリピン方面から退避した敵機動部隊を確認した。その空母と護衛艦が、アメリカの鹵獲艦だったから、一目で離脱した艦隊だとわかったのだ。


「ということで、こいつらが悪さをする前に、叩き潰すのがよろしいかと」


 神明 龍造少将がいえば、第一遊撃部隊を預かる武本 権三郎中将は頷いた。


「異存はない」


 空母がその艦載機を補充して再出撃してくれば面倒なことになる。まだレイテに上陸し、交戦している異世界帝国陸軍の支援を行ったり、あるいは東南アジア方面へのヒットエンドランを仕掛けたりなど、まだまだできることがあるのだ。


「弾薬を消費しているが、もうひと合戦くらいはいけるか?」

「潜水艦は補給なしでは無理でしょう」


 敵艦隊攻撃を仕掛けたので、魚雷の残量が心もとない。


「どの道、環礁内じゃ大して潜れんだろう。……そうなると、他のフネも環礁の外が主戦場になるな」

「ウルシーには第二艦隊が攻撃をかけますから、その支援に回れば充分かと。……敵が増援を送ってきた場合、迎え撃ちます」

「ハワイの敵は、小沢の第三艦隊が叩くが……問題はどれだけ潰せるか」

「対レーダー塗装の機は、第三艦隊でも半分より少し多い程度の充足だと聞いています。少なく見積もっても敵の半分は駆けつけられると考えます」

「そいつらの顎にきつい一発をぶちかましてやればよかろう」

「そういうことです。では、『妙義』に戻ります」

「うむ」


 武本は第一遊撃部隊を再編成し、ウルシー環礁へ向かった。そしてそれは、待ち伏せをくらった伊藤 整一中将の第二艦隊の窮地に駆けつけることになったのである。



●第一遊撃部隊:司令官、武本 権三郎中将

        同第一部隊指揮官、神明 龍造少将


・第一部隊:

戦艦   :「大和」「武蔵」「蝦夷」「サラミス」

     :「駿河」「近江」「磐城」「常陸」

大型巡洋艦:「妙義」

軽巡洋艦 :「夕張」「阿賀野」「矢矧」「早月」「野洲」「雨竜」

     :「鹿島」「長良」「五十鈴」「名取」

駆逐艦  :「黒潮」「親潮」「早潮」「夏潮」「初風」「天津風」「時津風」

潜水艦  :「伊121」「伊122」「伊123」「伊124」


・第二部隊:

戦艦   :「金剛」「比叡」「榛名」「霧島」

巡洋戦艦 :「武尊」

装甲艦  :「大雷」「火雷」

重巡洋艦 :「古鷹」「加古」「標津」「皆子」

軽巡洋艦 :「九頭竜」「奥入瀬」

駆逐艦  :「島風」「氷雨」「霧雨」「早雨」「桔梗」「百合」「菖蒲」「海棠」


・第三部隊

空母   :「翔竜」「雷竜」「コンステレーション」

     :「鳳翔」「海龍」「白鳳」「蒼鳳」

水上機母艦:「早岐」「音戸」

装甲艦  :「黒雷」「鳴雷」

軽巡洋艦 :「鈴鹿」「水無瀬」

駆逐艦  :「細雪」「氷雪」「早雪」「湿雪」「春雪」「雨雪」



 第一部隊を水中砲撃部隊、第二部隊を水上戦闘部隊。そして第三部隊を空母航空部隊として再編。

 第一遊撃部隊は、ウルシー環礁へ到着すると、さっそく行動を開始した。


 第二部隊を率いる武本中将は、伊藤の第二艦隊の正面から突進する敵水雷戦隊の後方に出現し、追走を開始した。


「第二艦隊と挟み撃ちじゃあ! 突撃!」


 武本は吼えた。巡洋戦艦『武尊』、戦艦『金剛』『比叡』『榛名』『霧島』は波を裂き、後方のメテオーラ級軽巡洋艦に強烈な鉄槌を下せば、『古鷹』ら重巡洋艦4隻は33ノットの速力で距離を詰め、正確無比な20.3センチ光弾砲を撃ちまくった。


 包囲するつもりが、逆に挟撃された異世界帝国水雷戦隊は、たちまち数をすり減らす。三連光弾砲と転移砲の直進性から逃げるのは困難。かつ当たればオーバーキルな戦艦火力に、軽巡洋艦はあっけなく沈んでいく。


 武本第二部隊を迎え撃つべく反転した駆逐艦は、古鷹型の20.3センチ光弾砲や『島風』『氷雨』などの駆逐艦の転移砲によって、こちらも瞬く間に蹴散らされた。


「敵水雷戦隊、壊滅!」

「ようし、道は開いてやったぞ。次は、敵の大型巡洋艦だ!」


 武本は、第二艦隊の針路とかち合わないよう、第二部隊を変針させる。

 すでに敵大型巡洋艦戦隊は、第二艦隊の大型巡洋艦『雲仙』『剱』『九重』『那須』と砲撃戦を繰り広げている。


「どうやら、劣勢のようだわい」

「敵大巡の火力は相当のようです」


 佐賀首席参謀が発言した。異世界帝国の大型巡洋艦――テュポース級は、戦艦並の艦体に50口径32センチ四連装砲三基十二門の高火力を誇る。

 日本海軍の雲仙型ほか大型巡洋艦は、50口径30.5センチ連装砲を装備艦が大半なので、口径でも砲門数でも負けていた。それで4対5では不利であった。


「はよう助けてやらんとな」


 巡洋艦キラーとして30ノットの高速力を与えられた金剛型の出番だ。

 武本隊が猛然と敵大型巡洋艦戦隊に殴り込みをかける頃、第三部隊は、艦載機をウルシー環礁上空に送り込んでいた。


 空母『翔竜』『雷竜』『コンステレーション』『海龍』『白鳳』『蒼鳳』『鳳翔』の攻撃隊が、第二艦隊航空隊と空中戦を繰り広げる空域に突入。紫電改二、暴風、陣風戦闘機がイグニス戦闘機に襲いかかる中、流星改二攻撃機が環礁内の簡易桟橋にいた米鹵獲空母――オルモック湾から逃げた敵艦に対艦誘導弾を撃ち込んだ。


 さらに少数の五式艦攻もまた、桟橋近くまで肉薄すると光弾砲六門の雨で桟橋や軽空母を破壊して回った。

 ウルシー環礁内は、この世の地獄が具現化するのであった。

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