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第一〇五九話、タンカー船団と第四群


 マリアナの基地航空隊とムンドゥス帝国トラック諸島攻略部隊が熾烈な戦いを繰り広げている中、帝国第四艦隊第四群は、補給のためトラック諸島を離れてマーシャル諸島方面へ移動する。


 中部太平洋決戦の場より、やや南寄りのルートを取り、日本海軍航空隊の攻撃が及ばない位置まで下がる。

 決戦場を避けたのは、その海域深くに日本海軍、異世界帝国双方の回収部隊がサルベージを遂行しつつ、その護衛潜水艦同士が激しくぶつかっているためだ。そんな海域をノコノコ通って攻撃されてもたまらないのだ。


『合流予定海域に到着!』

「ようし、ゲート艦に指令! ゲートを展開、補給船団を呼び寄せろ」


 第四群司令官のキャプ少将が命じれば、通信セクションがただちに命令を実行に移した。首席参謀が口を開く。


「しかし、こんな洋上で補給しなくても、ゲートを使うならマーシャル諸島の前線根拠地なりに戻してもらえれば、安全なんですがねぇ」


 疑問を口にすれば、キャプも腕を組む。


「そうさな。それなら泊地の警備隊に任せられるんだがな」

「大体、少し南に寄り過ぎな気もします。いくら南方から敵機が来ていないとはいえ――」

「マーシャル諸島の泊地拠点化が忙しいからですよ」


 航海参謀が口を挟んだ。


「太平洋拠点として、マーシャル諸島は要塞化が進めらていますから。船の出入りが多いのに、近場に戦闘艦隊が転移ゲートで移動してきたら、航路上の安全やゲート範囲に気をつけないといけない……そういうことです」

「そんなものか……」


 納得しかねる首席参謀に、キャプは肩を叩いた。


「前線の兵からすれば、それでも転移ゲートを使うなら後方で、という気分にはなるな」

「まったくです」


 艦隊は速度8ノットでタンカーと併走して燃料補給を受けている。洋上での給油作業は波と戦い、補給をする側もされる側も空気を合わせる必要がある難しいものである。

 そして、最悪はやってくるのである。


『対空レーダーに反応、北方、距離20キロに未確認航空機の反応!』

「敵か!? しかも20キロだと!?」


 キャプは思い切り顔をしかめた。


『て、敵大編隊です! その数100、いや200を超えました!』

「畜生め……! 給油作業中止、船団を切り離せ! 第四群各艦、対空戦闘用意! ……直掩機の数は?」

「30機ほどかと」

「凌ぎきれんぞ……」


 キャプは唸った。しかも思いのほか近くまで寄られて気づけなかったとは。敵は低空を這うよう接近したのか。

 首席参謀は言う。


「転移ゲートで艦隊ごと離脱するのが一番被害が少ないと考えますが……」

「素晴らしい案だ。だが――」


 指揮官は司令塔から見える敵機の大編隊に首を横に振った。


「手遅れだ」



  ・  ・  ・



 伊400、伊401、伊402、伊403の転移中継装置を利用し、道中をカットしてきたのは、連合艦隊司令長官、小沢 治三郎中将率いる第三艦隊の攻撃隊だった。


 マリアナ沖海戦で使った航空隊を丸々内地の無人航空隊と入れ替えて出撃した第三艦隊は、偵察情報から補給に離れた異世界帝国艦隊――第四艦隊第四群に対して、無人航空隊を放った。


 潜水空母の伊400型を利用し、距離を詰めた無人航空隊は、海面近くから上昇をかけてそのまま敵艦隊へと突き進んだ。

 内地航空隊の紫電改や暴風戦闘機が突撃。本来ならもっと遠方から探知され、それぞれの艦隊で分離していたのだろうが、道中ショートカットした分、異世界帝国側にその余裕はなかった。


 そして日本海軍無人航空隊は、タンカーと低速航行していた異世界帝国巡洋艦、空母、そして戦艦に攻撃をかける。

 まだ切り離しに手間取っている船があれば、それに対してロケット弾が打ち込まれる。装甲のないタンカーや輸送船はたちまち爆発。空母に航空燃料の補充をしていた船などは最悪で、その爆発はタンカー丸ごと吹き飛ばし、空母までその爆発の巻き添えを喰らった。


 第四群のヴォンヴィクス戦闘機が、日本機に挑むがたちまち数で圧倒され、後続する流星や海山といった攻撃機を止めることはできない。

 護衛艦の対空射撃が日本機の侵入を阻むが、すでに押さえられないところにまで大量に踏み込まれていた。


 数機の撃墜と引き換えに、多数の誘導弾が撃ち込まれ、駆逐艦や護衛艦が大破、炎上。第四群の空母4隻も、増強の戦闘機隊を発艦が終わる前に誘導弾でやられた。転移した爆弾が格納庫で爆発、機体の誘爆で手がつけられない大惨事を引き起こす。


 タイミングが悪かった。

 これがトラック近海で戦っていた頃であったなら、充分な数の戦闘機を迎撃に出して日本航空隊と交戦。何割かが防空網を突破し、空母の1、2隻はやられたかもしれないが、日本海軍航空隊にもダメージを与えられただろう。


 だが日本機の奇襲は、第四群の空母全てを大破もしくは沈没に追いやった。

 ただでさえ本来よりを減らしていた帝国第四艦隊は、さらに空母戦力を失うのである。



  ・  ・  ・



 第四群、壊滅する。

 帝国第四艦隊司令長官ガルフノー・マズニ大将は歯噛みした。


「こういうジリジリやられていくのは嫌いだ」


 艦隊の手持ち空母は14隻。うち3隻が応急修理中で航空機の運用が不可能。残っている空母は11隻に減っている。


「キャプ少将は?」

「旗艦は無事ですが、残存したのは戦艦1、巡洋艦1、駆逐艦6のみ。ほぼ戦力外ですな」


 参謀長の返しに、マズニは露骨に嫌な顔になった。


「第四群をやったのは、どこの航空隊か?」

「おそらく日本海軍の空母機動部隊かと」

「我々の側面から忍び寄っていたわけだな」


 本当は違うのだが、状況からそう判断するマズニ。南方から攻撃してこなかったのは、味方空母部隊をそちらから通すためだったに違いない。回り込んだところ、キャプ少将の第四群と補給船団を発見してこれを襲ったというところだろう。


「前にトラック、後ろに日本艦隊……」


 敵機動部隊を見つけていないため規模は不明だが、第四群をあっさり片付けたところからして1隻や2隻ではない。

 この戦力で両方を相手にできるのか?――マズニは顔をしかめるのだった。


「全艦、反転! 各群集結、日本機動部隊を撃滅する!」

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