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第一〇四五話、第一の攻撃


 第一遊撃部隊は、マリアナ諸島近海にいた。それがどこにいるか、というのは些末な話だ。

 何故ならば、敵がいるところに転移するからだ。


「第三艦隊より第一次攻撃隊が出撃。戦爆総数425」

「敵乙群、一機艦に攻撃隊を向かわせた模様。総数およそ800機!」


 続けざまの報告に、第一遊撃部隊司令官の神明 龍造少将は腕時計を見た。


「双方の攻撃隊がぶつかる前に動かさないとな。田辺少佐、20分後、空母群をマリアナ諸島各上陸地点に突入させろ」

「了解しました!」


 田辺通信参謀がさっそく行動に移る中、藤島 正先任参謀は振り向いた。


「では、こちらも動きますか」

「敵の中央隊――丙群に近接砲撃戦を仕掛ける」


 神明は、第一遊撃部隊主力を動かす。

 その戦力は以下の通り。



●第一遊撃部隊:司令官、神明 龍造少将


戦艦   :「蝦夷」「大和」「武蔵」「金剛」「比叡」「榛名」「霧島」

巡洋戦艦 :「武尊」

空母   :「翔竜」「雷竜」「鳳翔」「海龍」「白鳳」「蒼鳳」

水上機母艦:「早岐」「音戸」

装甲艦  :「大雷」「火雷」「黒雷」「鳴雷」

重巡洋艦 :「古鷹」「加古」「標津」「皆子」

軽巡洋艦 :「九頭竜」「夕張」「阿賀野」「矢矧」「早月」「野洲」「雨竜」

     :「鈴鹿」「水無瀬」「奥入瀬」「鹿島」「長良」「五十鈴」「名取」

駆逐艦  :「島風」「氷雨」「霧雨」「細雪」「氷雪」「早雪」

     :「湿雪」「春雪」「雨雪」「桔梗」「百合」「菖蒲」「海棠」

潜水艦  :「伊121」「伊122」「伊123」「伊124」

     :「伊600」「伊701」「伊702」「伊703」

     :「伊704」「伊705」「伊401」「伊402」

     :「呂401」「呂402」「呂403」



 戦艦・巡洋戦艦合わせて8、空母6、水上機母艦2、装甲艦4、重巡洋艦4、軽巡洋艦14、駆逐艦13、潜水艦15の編成だ。

 いずれも潜水行動が可能な艦艇で構成されており、奇襲攻撃部隊の色が濃い部隊である。


 第一遊撃部隊は、空母とその護衛と分離すると、テニアン島の南東海上にいる異世界帝国艦隊丙群――トラックに向かうフリをして北上してきた空母機動艦隊への突撃を開始した。


 丙群は、戦艦16、空母42、重巡洋艦22、軽巡洋艦33、駆逐艦74と、三つの戦闘艦隊の中で一番空母が多い。日本艦隊が出てきても応戦はするが、他の艦隊の援護やマリアナ各島への爆撃、地上支援などもっとも活用されると思われる。

 何より空母の多さは脅威だから、まずそこから潰すのである。


 飛雲水上偵察機が展開した転移中継ブイを使い、第一遊撃部隊主力は、丙群後方へと瞬間移動をした。


 敵丙群は戦艦4、空母10隻前後、重巡洋艦5、6、軽巡洋艦8、9、駆逐艦18乃至19の四群に分かれていた。一度の奇襲で艦隊が全滅しないようにという配慮なのだろう。

 だが構わない。まず一群を手早く殲滅する!


「一番距離の近い敵群へ突撃開始!」


 神明の命令は発せられた。距離は1万1000。敵も出現した日本艦隊に泡をくって迎撃しようとしているだろう。

 戦艦『蝦夷』、『大和』『武蔵』がその巨砲を敵の護衛についているオリクト級戦艦へと指向する。


 まず狙える三隻は、次の瞬間、必殺の転移砲を撃ち込んだ。減速する間もなく直撃した砲弾が装甲をぶち破り、主砲の弾薬庫を吹き飛ばすとオリクト級は風船の如く破裂した。

 5万5000トンの巨艦もひとたまりもない。


『蝦夷』の51センチ砲はもちろん、『大和』『武蔵』の46センチ砲もまた新型の水中対応、転移砲身の新型砲に換装されている。旋回、俯仰スピードもマ式装置により向上している。


 四隻中三隻が瞬く間にやられた異世界帝国艦隊丙三群。そこへ追い打ちをかけるように『金剛』『比叡』『榛名』『霧島』が35.6センチ連装砲を空母へと撃ち込む。

 巡洋戦艦『武尊』、四隻の装甲艦も、三連光弾砲で敵重巡洋艦をあっという間に葬り、軽巡洋艦や駆逐艦へと牙を剥いた。


 逃げようとする空母群だが、金剛型戦艦に加え、『蝦夷』『大和』『武蔵』の砲が向けられたことで次々に艦体を貫かれ、爆沈していく。

 残る戦艦他が沈みゆく空母の裏から現れたが、一発撃つ間もなく大和型戦艦二隻から砲撃を集中され破壊された。


 丙三群はろくな反撃もできずに蹴散らされた。だが丙群にはまだ三つの部隊が残っている。



  ・  ・  ・



 ムンドゥス帝国第四艦隊、第二分遣隊――日本海軍が丙群と呼称した空母機動艦隊。

 その指揮官ヘーメラー中将は、転移してきた日本艦隊への逆襲を命じる。


「戦艦、巡洋艦群は、敵を左右より挟撃せよ!」


 日本軍が転移を用いる軍隊なのは知っている。その転移奇襲で一群をあっという間に叩いた手並みは褒めてもいい。

 だが勢いで押し切れなかったところに、日本人の敗因である。残る三群が集まれば、それで襲撃してきた敵艦隊を数で押せる。


 さらに空中にある直掩の戦闘機も光弾砲で対艦攻撃もできなくもない。これらが敵に少なからずダメージを与えられれば、第二分遣隊単独で敵を返り討ちにできるだろう。

 ところが――


『敵艦隊、海中へ潜航』

「なに?」


 ヘーメラーは耳を疑った。転移で逃げる、つまりヒットエンドランではなく、海に潜ったというのか?


「意味がわからない」

「わが方を恐れたなら、転移で逃げればよいものを……」


 参謀長も怪訝な顔になる。


『攻撃機、発艦準備完了』


 各空母が敵から距離を取りつつ、反撃のミガ攻撃機に対艦装備で強行出撃をするところであった。黙ってもやられないムンドゥス魂ではあるが――


「攻撃機の出撃待て」


 ヘーメラーは声を張り上げた。参謀長は司令官の顔を見る。


「出さないのですか?」

「敵が水中では通常の対艦爆弾やロケットでは届かん。様子を見る」


 必要なら対潜装備に換装させる必要もあるかもしれない。だが今は――


「駆逐艦隊、対潜戦闘! 敵を探知次第、攻撃せよ! ……海に潜ったことを後悔させてやる!」

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