表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1029/1113

第一〇二九話、潜水回収隊、中部太平洋へ


「本来なら、大きな海戦の後は整備と休養ってもんじゃないんですかい?」


 第一遊撃部隊先任参謀の藤島 正先任参謀は、そう皮肉った。司令官の神明 龍造少将は苦笑する。


「決戦においては、日常業務を含めたあらゆるものが無視されるものだ。たとえば休暇申請とかもな」

「取り消されたのですか?」

「いや。記憶にないな」


 神明は淡々と答えるのである。藤島は斜に構えたまま言う。


「ちなみに、決戦はまだ続いているんですか?」

「戦艦群は軒並み修理が必要なようだが、機動部隊に余裕がある。山口さんと大西さんが、早々に再編させて、マーシャル諸島に下がった敵艦隊の追撃にかかるらしい」

「……古賀長官は、まだ意識不明なんですよね? 誰が仕切るんですか?」

「軍令部だろう?」


 神明は準備を終えると移動した。


「我々は、回収隊を支援する。水中戦だ」

「沈めたフネを今度は拾いにいくわけですか。何とも皮肉なものですな」

「気持ちはわかるが、今回は桁が大きいからな。なおのこと敵に奪われるわけにもいかんのだ」

「我が海軍で1500隻、異世界帝国が2000隻以上参加したんでしょ?」

「潜水艦を入れたらもっと増えるな」

「仮にその半分が沈んだとして、もう四桁なんですが……。一日二日で回収できるんですか?」

「どこで戦っているかはわかっているし、我が軍の魔力式なら、邪魔さえ入らなければ素人が思うより断然早い」


 だが――と神明は遠くへ視線を向けた。


「回収隊が安全かつ、しっかり回収作業をするために、ちょっと工夫がいる」

「工夫、ですか……」


 敵回収拠点を破壊する。異世界帝国にも回収艦があるが、それらを広い戦場に分散させるにしても、収容できる量に限度がある。

 まして今回はおよそ四桁に及ぶ沈没艦艇だ。戦闘海域と後方を往復するのは手間であるから、敵通常の手順では追いつかないだろう。

 そうなると――


「超大型の回収母艦も出てくるだろう。これを潰した方が早いかもしれない」

「超大型回収母艦……?」

「南米で撃沈されたアメリカ艦隊の回収の際に来ていたらしい。全長四、五キロもあるという話だが……、確認したのが米軍だからどこまで信じていいかわからない。だが実在しているなら出てくるだろう」

「それで、回収任務なのに装甲艦を連れて行くんですね」


 藤島が納得の顔になった。

 今回、回収隊支援に出撃する第一遊撃部隊の編成は以下の通り。



●第一遊撃部隊:司令官、神明 龍造少将

 戦艦 :「大和」

 空母 :「鳳翔」「雷竜」

 装甲艦:「黒雷」「火雷」

 軽巡洋艦:「早月」「野洲」

 駆逐艦:「氷雨」「霧雨」

 潜水艦:「伊600」「伊701」「伊702」「伊703」

    :「伊704」「伊705」「伊706」「伊401」「伊402」

    :「伊607」「伊608」「伊609」「伊610」

    :「呂401」「呂402」「呂403」

    :「第〇二潜水艦」「スルクフ」「X1」

 水上機母艦:「早岐」「音戸」

 付属:海氷突撃艦




●回収隊主隊:司令官、佐竹 原二郎少将

○第一回収隊

 潜水回収母艦:「大鯨」

 潜回型(丁型)潜水艦:「伊361」「伊362」

第八〇潜水隊:「呂592」「呂593」「呂594」「呂595」


○第二回収隊

 潜回型(丁型)潜水艦:「伊363」「伊364」「伊372」

 第八一潜水隊:「呂596」「呂597」「呂598」「呂599」


○第三回収隊

 潜回型(丁型)潜水艦:「伊365」「伊366」「伊373」

 第八二潜水隊:「呂621:「呂622」「呂623」「呂624」


○第四回収隊

 潜回型(丁型)潜水艦:「伊367」「伊368」「伊371」

 第八三潜水隊:「呂625」「呂626」「呂627」「呂628」


○第五回収隊

 潜水回収母艦:『白鯨』

 潜回型(丁型)潜水艦:「伊369」「伊370」

 第八四潜水隊:「呂629」「呂630」「呂631」「呂632」



 沈没艦回収隊は、現状の全力出動。第一遊撃部隊も全艦艇が潜水行動が可能なもので占められている。

 もっとも支援部隊である第一遊撃部隊は、ほぼ魚雷を使い切っており、その潜水艦のおおよそ半分は転移移動系の補助か、第六の回収隊としての役割を担うことになっている。


 今回追加で加わった七隻の潜水艦のうち、マ号潜である『伊607』『伊608』『伊609』『伊610』はマ式回収装置を使ったサルベージ任務。『伊706』『スルクフ』『X1』の三隻は攻撃役として敵潜水艦を叩く。


 なお、潜水可能な水上艦部隊は、敵の大型艦が出現した時の対処と、敵艦隊の動向を調査する索敵活動も行うことになっている。

 索敵自体は二個哨戒空母戦隊が派遣されているが、その索敵範囲の不足を補うのである。


 旗艦である『大和』は、その主砲弾が消耗しており、攻撃に関しては限度があるが、現在、播磨型の砲弾を流用して補給を受けている『蝦夷』がそれらを積み込み次第、部隊に合流するよう準備が進められていた。播磨型の51センチ砲弾は、例の特殊砲弾を積んだ結果、通常弾のストックが大量に残っていたのである。


 かくて、第一遊撃部隊は、回収隊本隊と合流すると中部太平洋へ転移するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ