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第一〇二四話、猛攻の連合艦隊


『目標、日本艦隊旗艦!』

『エネルギー充填完了!』

『転移砲、発射準備完了ー!』

「フフフ……。発射!」


 ムンドゥス皇帝の命令。皇帝座乗艦『ヘーゲモニアー』の艦首転移砲が、必殺の88センチ砲弾を転移させた。

 それは、二千艦隊と交戦する日本、連合艦隊の大型戦艦に転移し、大爆発を起こした。


『観測機より報告! 敵旗艦、爆沈!』


 司令部幕僚たちが笑みを浮かべる。カサルティリオ総参謀長は、玉座のムンドゥスに顔を近づけた。


「やりました、陛下」

「さすが、新兵器と言ったところか」


 ムンドゥスはほくそ笑む。旗艦を失った日本艦隊に対して、二千艦隊も押し込めるだろう。

 後衛の空母群が邪魔であるが、間もなく夜となれば、あれを始末する手もあるだろう。



  ・  ・  ・



 連合艦隊旗艦『敷島』。その司令部に飛び込む悲報。


「長官、『八咫鏡』が、と、突然爆沈しました!」

「なにっ!?」


 連合艦隊司令長官、古賀 峯一大将は目を剥いた。


「爆沈とは、敵の攻撃か?」

「わかりません、第三艦隊からの報告では、何の兆候もなくいきなり大爆発したとのことで……」


 報告した通信長もわからないという顔をする。

 攻撃か? それとも何か砲弾関係で事故が起きて謎の爆沈を引き起こしたのか?

 草鹿 龍之介連合艦隊参謀長は、泰然とした調子で言った。


「無人艦隊の制御艦がやられましたな」

「残存する無人艦の制御は?」

「予備に切り替わったはずです。各艦隊のコントロール艦が引き継ぎます」


 一括制御では、それが壊れた場合無力化するため、予備は複数用意してある。もっとも設備の整った『八咫鏡』のようにはいかないが……。


「不謹慎ですが、この際、ただの事故であってほしいところです」


 草鹿は言った。


「得体の知れない敵の新兵器だったなら、対処のしようがありませんから」

「そうだな」


 古賀は同意した。

 だが残念ながら、『八咫鏡』の爆沈は、異世界帝国の新兵器『転移砲』によるものであった。

 古賀たちにとって運がよかったのは、異世界人が、連合艦隊旗艦を『八咫鏡』だと勘違いしたことであった。


 連合艦隊旗艦『敷島』は、プロトボロス級航空戦艦を改装したもの。一方の『八咫鏡』は、キーリア級旗艦級戦艦の改装艦。

 異世界人からすれば、複数ある航空戦艦よりも、大型かつ1隻しかないキーリア級を総旗艦と判断するのも不自然ではなかった。


 そうとは知らない連合艦隊司令部だが、彼らの関心はすぐに目の前の戦いへと向けられる。

 播磨型、改播磨型戦艦12隻は、すでに特殊砲弾を使い切っていた。しかし残るプロートン級戦艦で戦闘能力を有していたのは15隻ほどにまで減っていた。

 他にもオリクトⅢ級戦艦が40隻ほどいたが、連合艦隊の各戦艦と激しい砲撃戦を展開していた。


 連合艦隊旗艦『敷島』も護衛を務める大和型戦艦『信濃』『甲斐』と共に46センチ砲にて、異世界帝国戦艦と交戦している。

 数ではまだ不利は否めない。46センチ砲艦を加えれば、プロートン級戦艦の数を上回る連合艦隊だが、敵には43センチ砲装備の航空戦艦があって油断できない。


 まさに死力を尽くした戦い。総戦力からしたら両軍とも半壊しており、いつ態勢を立て直すために撤退してもおかしくない状況。だが互いに後には引けないとばかりに、目の前の敵と激突する。

 一進一退。長い一日は、間もなく日が暮れようとしている。


「これでも引かないか」


 古賀は思わず呻く。前衛を担当していた無人艦隊は壊滅した。二千艦隊も午前から戦っている前衛の残りがいれば、当に弾薬切れになってもおかしくない。前半は温存し、後から戦いに加わった艦同士で戦っている状況なのかもしれない。


「夜戦まで待とうと思ったが……参謀長」

「やりますか?」


 草鹿は頷いた。


「敵航空戦力は枯渇しており、攻撃はないでしょう」

「ここで決着をつけよう。無人艦隊、後衛乙群の防空戦隊ならびに機動部隊所属駆逐隊へ。敵艦隊へ突撃を開始せよ!」


 ここにきて古賀は、空母群の護衛についている防空艦と駆逐艦を水雷戦隊として投入した。

 無人艦隊後衛乙群の護衛は、一群につき防空巡16、ル型防空巡16、駆逐艦32がついていたが、この中で、ル型防空巡16隻と駆逐艦32隻の合計48隻が、空母の護衛を離れた。


 また第一から第五機動部隊も、防空巡洋艦を除く戦艦2隻と駆逐艦16が、前衛に合流し、敵艦隊へ突撃を開始した。

 空母の守りのため、ほぼ砲弾、魚雷が使われず温存されていたこれらは、すでに戦闘で消耗している敵護衛網を突き破り、敵戦艦への雷撃を敢行するのだ。


 まさに使えるものは全部使う。本来、前に出る予定のない空母護衛隊をも水雷戦隊として活用する!


 ここにきて、およそ300隻の日本艦が二千艦隊に突撃する。

 対する二千艦隊もまた、健在な巡洋艦を出してこれらを迎え撃った。だが艦隊後方を脅かされ、皇帝警護艦隊の増援に送った分、迎撃戦力が不足し、日本軍に押し込まれる。


 疾走する無人駆逐艦が砲を撃ちまくりながら、しかし異世界帝国巡洋艦の猛撃を吸収。その間に酸素魚雷が敵艦の足元に迫り、その艦腹に大穴を開ける。

 水柱に煽られ、大量の浸水で行き足が止まる敵巡洋艦の傍らをル型防空巡洋艦が12.7センチ両用砲の弾幕を連射しながら進路を切り開く。


 さらに突入援護の戦艦、航空戦艦の火力がプラクス級やメテオーラ級といった敵巡洋艦を殴り倒し、水雷戦隊の突入を支援する。

 そして防空駆逐艦ならびに無人駆逐艦が、連合艦隊主力が砲撃を繰り返している敵戦艦に、次々と雷撃を行った。オリクトⅢ級戦艦もまた高角砲や光弾砲で駆逐艦を迎撃し、これらを何隻か返り討ちにするが、やがて到達した酸素魚雷が命中。水柱と共に艦のバランスが崩れ、航行不能。または傾斜によって砲弾が砲塔に上がらず砲撃不能に陥る。


 奇しくも予備兵力だった後衛の護衛部隊は、大波をぶちあてたように、二千艦隊を揺るがした。

 そして古賀は確信する。


「ここだ! 全艦、突撃せよ! 敵を一気に押し切れ!」


 砲戦を行っていた戦艦部隊をはじめ、連合艦隊は二千艦隊へ最後の総攻撃に移った。

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