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第一〇一九話、強襲、第一遊撃部隊!


 特別突撃機『桃花(とうか)』は、ルベル・クルーザーに搭載されていた球形戦闘機イグニスの鹵獲機を改修した無人機である。

 通称『特突』。自動コアを用いた体当たり専用機として軍令部第二部発案で研究が進められ、誘導弾の弾代わりとして、修理すれば使える機体が大量にあったイグニス戦闘機を再利用したものだった。


 前軍令部第二部長の黒島 亀人少将の置き土産を、神明 龍造少将は利用することに決め、内地にあって試験部隊として使われていた大鷹型空母3隻のほか、『翔竜』と第九艦隊の試験空母『雷竜』の飛行甲板に、桃花を並べるだけ並べて出撃した。


 なお、『雷竜』は、フランス海軍が建造していたジョッフル級空母の1番艦『ジョッフル』の改装艦である。

 大戦前、ドイツ海軍がグラーフ・ツェッペリン級空母の建造を始めたことに対抗するため、フランス海軍が建造した1万8000トン級空母である。


 もっともドイツの侵攻により完成前にフランスは降伏。のちに異世界帝国に侵略されたことで『ジョッフル』は異世界人の手によって完成したが、日本海軍との戦いで撃沈、回収されることになった。


 艦載機が40機と少ないが、艦体規模や性能としては雲龍型に近いものがある。そんな性能に遜色のない『ジョッフル』が主力に利用されなかった理由は、やはり艦載機の搭載可能数の少なさであった。


 閑話休題。

 空母5隻の飛行甲板に並べられていた桃花は、二千艦隊の間に敵味方不明のまま入り込むことに成功した。


 カラーリングを除けば、ルベルファイターであるイグニスとほとんど変わらない桃花は低空で艦隊戦の場に侵入すると搭載したロケット弾四発を手近な異世界帝国艦に撃ち込んだ後、自機も突撃した。


 腹に抱えた500キロ爆弾の威力と共に自動コア操縦の誘導弾として桃花は、次々に敵艦へ体当たりし、さらなる混乱を巻き起こした。

 遅まきながら、二千艦隊に襲撃をかけた第一遊撃部隊の編成は以下の通り。



●第一遊撃部隊:司令官、神明 龍造少将


戦艦:「蝦夷」「大和」

空母:「翔竜」「鳳翔」「大鷹」「雲鷹」「冲鷹」「雷竜」

大型巡洋艦:「妙義」

装甲艦:「大雷」「火雷」「黒雷」

重巡洋艦:「那岐」 

軽巡洋艦:「夕張」「早月」「野洲」「鈴鹿」「水無瀬」「雨竜」

特殊巡洋艦:「那珂」「鬼怒」「球磨」「多摩」

駆逐艦:「島風」「氷雨」「霧雨」

   :「ム駆555」「ム駆661」「ム駆715」「ム駆733」

潜水艦:「伊121」「伊122」「伊123」「伊124」

   :「伊600」「伊701」「伊702」「伊703」

   :「伊704」「伊705」「伊401」「伊402」

   :「伊1501」「伊1502」「伊1503」

   :「伊1504」「伊1505」「伊1506」

   :「伊1611」「伊1612」「伊1613」

   :「呂401」「呂402」「呂403」

水上機母艦:「早岐」「音戸」

付属:「突撃海氷艦」、「氷山空母」



 本来は第二、第三遊撃部隊の残存艦と合流を予定していた第一遊撃部隊だったが、そちらの損害が大きく、戦力として頼りにないことから内地待機組の第九艦隊からの増員を受けた。


 臨時の大鷹型3隻を含め、『翔竜』『雷竜』は桃花突撃機を発進させると転移で戦線を離脱。

 同時に24隻の潜水艦が潜航後、積んできた誘導機雷を次々に射出した。


 機雷潜型である伊121型四隻、伊1501型――ドイツ海軍のXB型敷設潜水艦六隻、伊1611型――イギリス海軍、グランパス級敷設潜水艦三隻が、40から66発の機雷をばら撒いた。

 伊600をはじめとする第一遊撃部隊固有の潜水艦も、甲板に積んできた外付け式誘導機雷を展開する。


 だが機雷は、潜水艦ばかりではなかった。

 軽巡洋艦『早月』『野洲』はアブディール級高速敷設艦の改装であり、最大156個の機雷を搭載可能な艦艇である。


 さらに巡洋艦『雨竜』――こちらはフランス海軍の敷設巡洋艦『プルトン』の改修艦である。1939年、機雷の事故で沈んだ同艦を異世界帝国が引き揚げ、修理して使っていたものを、日本海軍が鹵獲したものだ。


 基準排水量5300トン、全長152メートル、全幅15.5メートルのまさしく軽巡洋艦というべき大きさで、主砲は駆逐艦並みの速射砲装備だったが、機雷の数は290個と中々のものがある。こちらは日本海軍が、秋月型と同じ長10センチ高角砲に換装させることで、同艦に近い防空戦能力を獲得した。


『早月』『野洲』『雨竜』の軽巡洋艦三隻は、遮蔽装置を働かせつつ、機雷を投下し、潜水艦部隊を支援する。


 一方、空母群が退避したところで、水上機母艦『早岐』『音戸』がカタパルトから水上機『暁星改』、『飛雲』を打ち出した。

 早岐はフランスの『コマンダン・テスト』、音戸はイタリアの『ジュゼッペ・ミラーリア』の改装艦である。これらは混乱する二千艦隊に対して、少数機ながら転移爆撃装置を利用して敵艦を攻撃する。


 そしてその間にも、戦艦『蝦夷』『大和』、大型巡洋艦『妙義』、重巡洋艦『那岐』が砲門を開き、敵の混乱を衝きつつ戦果拡大を図る。

 特殊巡洋艦『那珂』『鬼怒』『球磨』『多摩』は、重誘導弾艦艇として対艦誘導弾を発射。近くの敵駆逐艦を優先的に叩いて、艦隊の障害を早期に排除する。シールドがない敵駆逐艦は、狙われたら最後。対空砲で撃墜できなければ一撃で大破、沈没の憂き目を見るのであった。

 そんな中、旗艦『蝦夷』に一つの報告が入る。


「氷山空母より入電! 我、不明艦と衝突せり!」


 その報告に、蝦夷艦長の阿久津大佐は、神明へ視線をやった。


「司令!」

「つまり、そういうことだ、艦長」


 遮蔽で姿を消していた異世界帝国艦が、突撃海氷艦とその手前に配置された氷山空母に例の解氷装置を盾に突っ切ろうとして、パイクリート製の氷山にぶち当たったということである。


「異世界氷と勘違いしたんだろうな。だがこの衝突で、我々の後ろに遮蔽に隠れた敵がいることが確実になった」

「はい。どうやら、機雷をばら撒いたのが無駄にならずに済みそうです」


 先任参謀の藤島 正中佐は相好を崩した。二千艦隊の背後を襲撃してきた部隊を不意打ちしようと潜んでいた敵が、炙り出されたのだ。

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