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第一〇〇七話、海軍航空隊の猛攻


 日本軍の放った第一次攻撃隊は壊滅した。

 3800機中2000機を構成したアベンジャー雷撃機――海山艦上攻撃機はほぼ全滅したのだ。


 だがそれら無人航空隊の犠牲の裏で、彩雲艦上偵察機が転移中継ブイを投下。それらは異世界帝国二千艦隊の針路上にばらまかれた結果、彼らの至近に転移物を送ることが可能となった。


 そして満を持して送り込まれたのが、連合艦隊空母機動部隊から発艦した第二次攻撃隊であった。

 歴戦の空母艦載機隊は、海上の中継ブイから順次転移すると手近な敵艦に向けて小編隊ごとに突撃を敢行した。


 先陣を切った烈風、紫電改二は転移場所近くの敵艦に翼下のロケット弾を発射。

 防御シールドを張っていた艦は、突然の奇襲にも攻撃を無効化し難を逃れる。たがシールドを張っていなかった艦や駆逐艦は、立て続けに撃ち込まれたロケットが艦上構造物に着弾。艦橋やマストを破壊され、戦闘能力を大きく削がれる。


 身軽になった戦闘機は、上昇に転じて艦隊の直掩をするヴォンヴィクス戦闘機に下から突き上げを食らわす。20ミリ光弾機銃を浴びせられ、錐揉みしがら撃墜される異世界帝国戦闘機。

 戦闘機隊の後には、流星改もしくは流星改二がやはり三機編隊で突っ込む。


「小松! 目標は敵空母だ!」


 内田ハル少佐は呼びかける。列機を引き連れ、三機の流星改二は敵双胴空母――パゴヴノン級へ突っ込む。


「誘導目標、確定! 撃て(てぇ)!」


 四式対艦誘導弾が投下される。転移爆撃装置により同時に二発を投下。僚機も合わせて6発が双胴空母へ迫り、フッとかき消える。シールドをすり抜けた誘導弾は、そのまま目標の空母に激突、大きな爆発を引き起こした。


「ようし、よくやった! 第一小隊、離脱する!」


 遅まきながら対空砲火が至るところに飛び始める。青い光弾や曳光弾、高角砲の炸裂などてんでバラバラに飛び交う。敵艦も相手かまわず近くに迫る日本機を狙っているせいだろう。


 投弾した機から順次、転移で離脱する。何せばらまかれた転移中継ブイから、次から次へと日本機が送り込まれているからだ。味方の射線を確保し、飛び回るスペースを作るためにも艦攻はさっさと退避するのである。


「姐さんは、もう仕事を終えたかねぇ……」


 紫電改二を駆る宮内 桜大尉は、周りにあらかた敵機がいないのを見やり、眼下の戦況を眺める。

 至るところから飛び出してきた日本機に、異世界帝国艦隊は混乱しているようだった。統制が乱れている。それは列を崩している艦艇の多さが物語っている。


「遮蔽を破ったから奇襲はないと思ったか! 異世界ヤローども……!」


 奇襲攻撃隊制空隊として、数々の戦いをくぐり抜けてきた宮内である。第二機動艦隊の専属部隊。奇襲は十八番だったが、今回は得意の遮蔽戦術が使えないため、装置は入れていない。


「遮蔽がなくとも奇襲はできるんだ、覚えておけ!」


 高度を落とし、炎上する空母の近くによって艦攻隊の邪魔になりそうなカリュオン級駆逐艦に光弾機銃による掃射を見舞う。通常の機関砲弾より段違いの威力の光弾は、艦橋の窓を打ち破り、そのクルーを射殺した。


 その間にも流星艦攻は、主に空母を狙って誘導弾をぶつける。第四次攻撃隊を出そうと飛行甲板に艦載機を並べていたパゴヴノン級双胴空母やリトス級大型空母が優先的に標的となり、海上で炎上する。


 第二次攻撃隊その数、戦闘機、攻撃機、偵察機含めて3483機。第一から第五までの機動部隊60隻の大型ないし中型空母の艦載機の奇襲、猛攻であった。

 二千艦隊の空母群はこの時点で、双胴空母、大型空母が当初の数の半分が姿を消し、爆発、炎上するものも多かった。


 大戦果である。

 だが主な目標とされた大型の空母への攻撃が集中した結果、アルクトス級の中型高速空母がまだかなりの数が健在であった。これらだけで戦爆含め、1万機の艦載機がある……。


 このままでは、残存機でも連合艦隊に打撃を与えられるところだが、日本側もそうは問屋が卸さない。

 空母攻撃隊が仕掛けた直後、今度は基地航空隊が、転移中継ブイを通して攻撃を開始したのだ。



  ・  ・  ・



 日本海軍の第一、第二、第五、第十一航空艦隊は、海氷空母、海氷飛行場を拠点に攻撃隊を送り出した。

 業風戦闘機、紫電改に護衛された一式陸上攻撃機、銀河陸上爆撃機、火山重爆撃機が低高度に出現し、稼働する空母へ対艦誘導弾を投下した。一部の火山重爆は下面に積んだ光線砲を使い、甲板は燃えているが浮いている空母へのトドメを刺した。


 異世界帝国側は、転移出現する日本機に対応すべく各空母に常時緊急発進できる戦闘機数機を飛ばす処置をとっていた。

 基地航空艦隊の襲撃に対して、すぐさまヴォンヴィクス、エントマⅢを出したが、業風戦闘機や紫電改が攻撃隊を守る。


 攻撃は強襲となり、艦艇側の対空砲火や戦闘機の銃撃で撃ち落とされる機が相次いだ。

 ブイに比較的近い空母は誘導弾の餌食となった。だが距離がある中型高速空母への攻撃は、対空砲火を浴びる時間を与えてしまった。艦隊内に踏み込んでいるため、護衛の艦艇からの機銃が特に当たりやすかったのだ。


 防御性能を強化した一式陸攻も、近距離からの対空弾幕を抗しきれず墜落、海面に激突した。

 しかし基地航空隊の猛攻は、二千艦隊の空母群の戦力を多くの打撃を与えることに成功した。


 懸念だった中型高速空母の残存は、半分の100隻前後。しかもさらに半分50隻前後が被弾、損傷し、空母としての戦闘能力を喪失していた。つまり、その運用数は一万以上からかなり減じて2000機に届かない規模にまで減ってしまったのである。


 だが、日本軍の攻撃はまだ終わらない。

 航空攻撃が引いて、洋上にようやく落ち着きが戻りそうになったその時、転移中継ブイから連合艦隊の水上打撃部隊が殴り込みをかけてきたのである。


「目標は、敵艦! 手当たり次第に攻撃せよ」


 第二艦隊旗艦、巡洋戦艦『龍王』で、司令長官の伊藤 整一中将は凛とした声を発した。

 45口径46センチ連装砲四基八門を装備する13号型巡洋戦艦が、白波立てて二千艦隊に切り込んだ。

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