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第5話 ⑯[老獪vsポンコツ]

『私達から貴方達の世界を一目でわかる違いとして地上から見る太陽が二つあることから貴女方の世界を[双陽の世界]と呼称します』


 機械的に話すアルバの口調についていくのが数人の例外を除いて何を言ってるのか理解できなかった。


 アルバの立場はあくまで中立だ、何故ならその体が人工衛星群である以上地上の争いで()()()()()()()()()()()()()()()()()生き延びることが出来るからだ。


 彼女が肩入れするとしたら、肉体の垣根を超えて魅了した賢治以外にはありえない。


「アナウンススキル?この世界で魔法を無視してそんなことが出来る存在は1人しかいない、魔王を殺し世界に平和をもたらしたという存在」


『はい、米田正志という名前ですがそちら側で通りの良い名はマシュー・ヨン=ダーネストという事になります、科学的側面からは証明不可能な“生まれ変わり”の定義ですが魔法方面からも証明などは不可能なことから“そういうもん”だと理解しました。たびたび観測される事象演算を無視する大きなうねりを魔術だとするのならマシュー・ヨン=ダーネスト、代名詞として()()神聖勇者の魔術の変質能力は双陽の世界に於いて強大なものとなったと観測しています』



 全員が重い辛そうな表情になり3日前、こちらの世界で言う4月1日に起きた事を思い出した。


「まるで嘘の様な力だよ、あの日が嘘を許される世界であっても到底許容など出来はしないよ…………あの出来事は」


『はい、術式名[固有異世界]の展開によりそれまであった世界の(ことわり)を完全に無視し強制的に“個人の固有する真意をルールとして強要する術式”それをこの双陽の世界に強制し()()()()()()()()した、これは伝承にある『世界の半分をお前にやろう』という[始まりの魔王]の有名な言葉を受け入れた事により条件を満たした超常事態です』


 そう、今更っと言ったが出戻った神聖勇者、つまりパパは娘の知らぬ間に異世界の半分をすでに征服していたのだ。

 シェルフが語る。


「嗚呼そうだ、あの日突如として世界中に2ロキ (約2000メートル)の高さにも及ぶ巨大な壁が発生。困惑する間にお前らは私たちの日常を奪い家族を離れ離れにし無用な混乱を招いたのだ」


 淡々と機械的に、本物の機械であるアルバより機械的に言った。


『はい、固有異世界の発動により起きた確実な被害を簡潔に間違いなく答えましたね? そこにあるはずの()()()()()()()を意図的に言わなかったのも話をスムーズに進めるためだと理解しました。…………貴方この中の13人のリーダー格と判断し名前を聞く事をお許しください。貴女の名前を教えていただきますか?』


「私の名はシェルフ・ルフ・エインフェルク、自分で言うのも変だが不遜にも『初代聖女王の再来』と賛美されている女だ」


『…………はい、確かに貴女からもあのお方と同質の気品を感じます。現象生まれ変わりは同じ時代にも起こり得る事なのですね?…………失礼、なんでもありませんお忘れください』



「?」


 感情的に言葉を発したアルバ、危うく大好きな賢治の存在をひけらかす事になるところであった。


『現在こちらで把握している固有名アンネ・アイン=クロイツと瞳の色が酷似している事を確認しました。彼女は現在、魔法を利用し『聖女王』のスキルを使い自己の肉体を作り出し単陽の世界に現界しています』


 失言を誤魔化すために言ったが、アルバの想像以上に騒然となった。

 この場にいない、この場の声を聞いている世界中の人間が、である。


 ここ、祈りの間は国防を直接的に維持させる神聖な場所。

 その儀式はたとえ非常事態でも魔法によって一般人でも見れる様になっている。


 しかしアルバはそれを知らないので考慮しない。


「なに!?聖女王が?!!」


 動揺、焦燥、驚愕、さまざまな感情が渦巻く中、この世界で一番冷静であるのは()()()シェルフだった。


 初代聖女王の再来。


 それは宗教団体である正道教会からの協力を得るための太い理由でもありシェルフの行動を妨げる呪いの二つ名でもあった。


 それが繋がった異世界の向こう側に同時期に現れたのだ、自分がアンネの生まれ変わりでない、と証明された瞬間でもあった。


「感謝するぞ声の主、今貴女が言ってくれた事のお陰で私の行動が大分制限されなくなった」


『はい、感謝を受け止めます。シェルフ様、貴女にとって重要な情報を開示します、固有名詞のない少女。黒肌、黒髪、黄金色の瞳の少女が双陽の世界にいます、おそらくは貴女に従属していると判断される少女、彼女は生きています』


 そして賢治のひっつき虫、谷戸優奈の情報を売る。

 このAI、相当性格が悪い。


「え? ()()()()()()()()?」


 思わぬ情報、()()()()()()()()信じてはならなかった情報だった。


 望まぬ情報と言い換えてもいい。

 だが、実際に言われたシェルフのその表情は喜びと驚きが混じり声は少し高く明らかに嬉しがっていた。


 裏切りの可能性があった奴隷である優奈の生存に素直に喜びの感情を持ったのだ。

 もうこっちが聖女王でいいんじゃないだろうか? こっちの本物は露出狂なのに。


 自分の表情を一瞬で諫め、凛々しく美しくみんなの望むシェルフの顔に戻る。


「情報感謝する、アルバ殿。しかしその情報は彼女、こちらの世界では『黒猫』と呼ばれていたのだが、黒猫が私たちを裏切ったと言う事になるな」


『…………それは状況証拠での判断だとお見受けしますがどういう根拠なのでしょう?』


「ふむ、先ずは私たちが侵略者と定義する自称転生者は死ぬと()()()()()()()()()()()()()()()()、正確に言うと異世界人を殺すと異世界人に対する異世界側の記録、痕跡、記憶が抹消されるんだ。これは魔法によって決められた事で世界同士の戦いでは必ず起きる事なのだ。つまりだな、私達が黒猫の事を覚えている、と言う事は神聖勇者との()()()()()()()()()。戦いに行ったはずの奴隷が戦わず戻っても来ない、つまりこれは裏切ったと判断されても仕方のない事なのだ」


 アルバはなるべく科学的常識を除外して情報が漏洩しない様にしていたつもりだった。

 ただこの侵略戦争においてより状況を判断できる情報を持っているのはどうやら異世界の聖女の方らしい。


 シェルフは()()でもある。


『…………理解しました。これは失言でしたね、どうやら単陽世界と双陽世界の[奴隷]と言う言葉に認識の違いがある様です。こちらの想定以上に彼女は大切に思われているのですね』


「黒猫の裏切りは想定内だ、そして大体そっちの状況が予想できるぞ? 恐らくだがそちら側にはアンネ・アイン=クロイツの生まれ変わりがいるのではないか? 流石の聖女王も魂だけで異世界にスキルを行使することはできない、そのためには座標となる肉体が必要となる。そして一つの魂には一つの肉体、人形師なら肉体から異世界の肉体に多数操る事も可能だがそれでもオリジナルはどこかに必要となる。そして私はそんな事はしてない、つまり純粋に考えてそちらに私以上の聖女が生まれている事になる」


『いいえ、違う、そんなコトヨクワカリマセン』



 この史上ない高性能AI、かなりのポンコツである。



高性能ポンコツ。

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ざまぁ転生 〜ざまぁサレ役のイケメンに転生した作者の俺、追放されず復讐も諦めたのでヒロイン達のゆりゆり展開を物言わぬ壁になったつもりで見守りたい、のに最強ヒロイン達の勘違いが止まりません!〜

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