第5話 ⑨[家出娘]
「な、なんて速さ!」
「馬鹿な!!この私が!!この世界の軟弱者に負ける!?」
優奈のステータスはこの世界ではかなり強い。
ステータスのない華美に負ける道理などない。だがお姉様の魅惑の強化はそんな道理をぶっ飛ばす。
華美はビンビンに魔法少女からの魅惑を受けて直線的な筋肉が強化され脳が狂化される。
土地勘があるのもそうだがステータスによらない差がある。
どんどん離されていく。
(魔法による私の偽りの記憶、そしてナノマシンとかいう機械の虫、く……やはり慣れないものは使えない、いいやそもそも魔術で逃亡している相手に科学如きに敵うわけが無い、魔術に対抗できるのは魔術だけ、だが)
「追うのはやめだ。片目隠し」
じゃぁああっ!!!!
「何でだ!アンタならあの子を追えるだろ!?」
「追いつける、音速で走り抜ければ。だが分かっているのかあの女はお姉様を持っているんだぞ!」
「んぐっ!!」
そうだ、万が一誘拐犯がお姉様を落としてしまえば怪我をさせてしまう。
「追わずに振り切ったと思わせておいて奴の拠点を突き止めて一網打尽よ!」
「そ、そんなこと出来るの?!」
「ふん、当たり前だ! お姉様のメスフェロモンはブッ濃いからな! 地下に潜っても半径1キロメートルは追えるわ!」
「何ですって?!私ですら700メートルが限界なのに!」
追う方も追われる方もバケモノである。
「本来なら奴隷である私がその魔術的繋がりで世界の果てまで追えるのだけど、それはお姉様にも私が来ている事がバレるという事、今のお姉様は私達が処女を奪う強姦魔に見えている、ならば感覚強化で一定距離を…………お姉様の全裸女、じゃなかった前世女は何処に行った?」
かつて白き聖女と呼ばれたアンネは『お姉様の前世』から呼び名が『お姉様の全裸女』に変更された!
「あー、あの子なら着いて来れずに遥かに向こう側に」
指さしたお姉様のいる方向の逆側に「まってー」と豆粒になったアンネが手を振っていた。
「ぬが! 変にヘタレなところは確かにお姉様に瓜二つ!! 中身は雲泥の差だけど」
少し可愛いと思ってしまった自分に嫌悪感が出てしまう。
そしてそんな事など知らないアンネは遥か遠くからニヤニヤしながら企みが頭を駆け巡る。
(ふっふっふっ私はどんなに距離があっても、いえ、例え別の世界でも私はあの子を追い回せる!)
「私たちから逃げられると思ったら大間違いよケンちゃん!ぐっへっへっへっへ」
全員人でなしである。
◆
「ひゅ、ふひゅ、ひゅ、ひゅぅうう、も、もう追ってきてないみたいね?」
華美が気配を察して街の道路を走っていた。
その間警告の通信が何度か入ってきていたがトラックに轢かれるような間抜けな事にはならない。
勿論ファンに目撃されているので意味はなかったが念の為に路地裏に連れ込んだ。
23歳ロリっ子幼女を路地裏に連れ込んだ。
「お、降ろして。揺れまくってて吐きそう、ぐえ、うえ!」
「あああ!御免なさい!何だかすごく体の調子が良くって全然貴女のこと考えてなかったわ! ああでもこれって大岡裁きの『子争い』逆バージョンよね?無理矢理連れてきた私が可愛い子を誘拐できるだなんて!ああ!私は悪い子だわ!知ってたけど!」
「?おおおか?ん?」
大岡裁きとは「大岡政談」という創作物の中において、大岡越前が行ったとされる裁判の総称。
「子(供)争い」とは一人の子供に二人に母親がいてどちらが本物か子供を引っ張って勝った方が母親だ。と言って引っ張り合いをさせた話である。
ネタバレをすると子供が「痛い」と言って手放した方が母親だ。という美談である。
その全てを華美は路地裏で説明した。
「成る程、つまり今こうしてゲロを吐きそうになってる俺を連れ回した誘拐犯の華美さんはニセモンって事ですね!ぐええええ」
(吐きそうになってる声も可愛い❤︎ こんなんで男のフリしてるとか可愛すぎでしょ! 寮に連れ込んでやっちまいたい!)
その時、華美は持っていたポーチにとあるものがあったのを思い出した。
(ここで使うか? 筋弛緩剤! いやいや! ダメダメ! あれはお姉様の体重に合わせた量を調合してるのよ? こんな小さい子に飲ませたらどんな副作用があるか分かったもんじゃ無いわ!! 可愛くても既成事実を作ろうとしちゃダメ!!)
いつもポーチに忍ばせている薬液、ジュースに忍ばせてればすぐに使えるよう加工してあるのだが。
基本的に実際に悪い事を考えられて実行できる頭脳がある。
だが基本的に悪行をした事がないヘタレである。
悪い事は考えられても実行には移せないタイプなのだ。
普通の女の子だったら遠慮なくここで百合に目覚めて既成事実を作っている。この子の自制心は強い!!!!
「ところで貴女の名前、聞いてなかったわね?」
「ん?俺の名前? 谷戸賢治、谷に戸籍の戸、賢く治めるで谷戸賢治だ」
「なにそれ、男みたいな名前。嘘にしては…………ん?」
彼女は表情から人の心が読める。
だから賢治が本当の事を言ってるかどうかは顔を見ればわかるのだ。
「え?嘘、何でそんな男みたいな名前付けられるの?ネーミングセンス皆無よ!」
「俺は男だ!」
(いやそれは流石に嘘、顔を確認するまでもないわ。だって、ねぇ?)
一定数のファンのいるアイドル、咲原華美。
彼女は一定数しか居ないと謙遜するがその質が異常だ、全員が日本の重役や様々な方面の重鎮なのだ、だからすごく金回りがいい。
その自覚はある、だからアイドルとしても女の子としてもやってはいけない事は承知しているのだ。
一人抜けただけで大損害。
その自覚がある。
あるがそれでも賢治のおっぱいの魅力には敵わなかった。
(と、飛び込みたいっ!! たわわに実ったばかりであろうあの張りのあるおっぱいを揉んでしまいたい! くっ!私は女だぞ!? 女が少女のおっぱいを揉んでしまうなど!! だが美しい! お姉様のおっぱい以上のエロおっぱいはないと思っていたがこの子のおっぱいは格別! これからバインバインになるであろう将来を妄想させる形と適度な柔らかさ、張り! 全てが満点! こんな女の子が男? ありえるか馬鹿! 私より女の子じゃねぇか可愛いなちくしょう!!)
「お、男だっていうならその胸は何だっていうの?! 嫌味かしら?」
「あぐ!へ、変な目で見ないで!」
両手で胸を隠して紅潮しながら座り込む。その姿完全にメスである。
ちなみに華美もそれなりには膨らんでは居るがお子ちゃまサイズである、何せまだ15歳だ。
23歳の大人なロリッ子幼女には敵わない。
賢治の女の子としての成長は止まんねぇから!!!




