第5話 ⑦[女の子の事情]
「なぐっ」
全員がマットレスにのし上がってきた、アンネも今回ばかりは攻める側になっている。
「ケンちゃん、流石に私も庇い切れないわ!今のは反則よ!今の貴女は……全裸より恥ずかしいっ!!」
誰の前でも全裸になれそうな聖女が真っ赤になった顔を手で隠しながら何か言っている。
「お姉様!私はもう我慢の限界です!そのお腹に触らせて下さい!!」
怒りながら笑顔で奴隷妹が手をワキワキしながら迫ってきた。
その手にはピンク色のオーラが噴き出ている。
「お、お前ら男の女装に夢中になりすぎだぞ?」
女装と謙遜しながらもメス顔で3人を誘う、上目遣いで恥ずかしながら小刻みに震えて犯してもらう準備万端だ。
(((わかっててやってるなこのメス!!)))
妹の光が濃く、部屋中を真っピンクにする。
その時点でアンネはそのオーラのヤバさに気がつく、ついてしまう。
「ちょ……!優奈ちゃん!それ調律のオーラじゃないわね!ダメ!」
「おねぇさま、息を整えてぇ私のオーラを受け取ってください❤︎」
「オーラを受け取る?」
首を傾げて猫の様にキョトンとした目を向ける。
「はい、私今からお姉様をレ❤︎プして妊娠させます」
「え?いやそんなの無理」
「無理じゃないわケンちゃん!! 彼女のオーラは妊娠魔術! 性別無視で相手に子を孕ませる外法魔術!! な、なんでこんな子が!」
一瞬、賢治の脳が停止した。
その間、流石にまずいと思った白銀少女は癒しのオーラをもって優奈の乱心を治めようとする、が!!
「邪魔をするなら先ずお前から妊娠させるぞ!!」
「!!!???」
妄言暴言錯乱、湯気のように頭から熱が噴き出している優奈に何を言っても無駄だ。
(私なら確かにこの子の暴走を止められるわ! でもここで妨害すると私を妊娠させるですって?! どうしましょう、妊娠魔術は成功確率が低いそして魔族であるケンちゃんの体はただでさえ子供を孕みにくい、だからただ快楽に身悶えるだけで済むから放置しようと思ったけど…………この私に危害を加える?)
それは悪手である。
脅しを楽しみ脅される事に希望を見いだす変態聖女王には馬の耳に人参である。
「よっしゃこおぉおおいっ!!」
一回自分の前で手を叩き両手を上にホールドアップ、やられる気満々である!
(ちなみに私は聖女で人間でドMだから妊娠確率は高いわ!!)
この世界の基準ではこの女は絶対聖女じゃないだろう。
「行くな馬鹿聖女!!」
瞬間、ケンちゃんの手からオーラが纏われていった。
黄緑色のオーラ、癒らし術のオーラである。
魔術アビリティ
癒らし術 『アンチ妊娠魔術』
優奈の腕を取り水の流れの様に妹の腕に、纏われていく。
「ぬあ!! お姉様、ステータスの上の相手に侵入ですって??!くっ!出会うのが遅すぎたか!」
ステータスのない時に出会っていたら、きっと18禁指定を受けているだろう。
「優奈! 9割9分9厘アンネのアホが悪いけど人の前世を孕ませようだなんて許さん!! そいつのぽんぽんは俺がカロリーで肥えさせるんだ」
顔はイケメンだが言ってることは魔女そのものである。
「ケンちゃん、素敵❤︎」(ブルマーだけど!)
纏わされたオーラが優奈の肉体に染み込んでいくと妊娠の魔術が封印される。
(これは? お姉様の封印魔術? 私の妊娠魔術の術式に糸の様なモノが張り付いて出しにくい。まさかこれは人形術師の力? 魔王の才覚者には最も不釣り合いな才能……いや、神聖勇者の子でもあるお姉様ならあるいは、でもこれは固有魔術の[術糸]では?)
一気に目が覚める、あり得ないはずのその魔術の冴えに血が凍りそうになる。
固有魔術は魔術である以上誰にでも使えるものである、ではなぜ[固有]なのか?
それは辿り着ける、というだけだからである。
人の寿命は何にも左右されなければ140年、固有魔術に辿り着ける年数は他の魔術を捨てても寿命を超える。
だから固有なのだが、賢治の才能はその理屈をぶっ飛ばす。
生きて来て23年、何も犠牲にせずに才能だけで固有魔術を会得していたのだ。
(ケンちゃんの母親のクレーでも不可能、そもそも魔族は理性を司る封印魔術は不得手、決して出来ないわけではないがそんなものを覚える時間があれば別の破壊魔術を覚えて対象を殺せる様になった方が効率的。でもこのチョロイン魔王候補は私の孕み袋、お腹の為に圧倒的魔術の卓越者である妹の魔術を封印した。その場のノリで…………今のこの子とクレーを出会わせてはいけない)
母と娘。
その再会をさせてはいけない。その理由とは?
それを口にするまでなく優奈はアンネと意思の疎通ができていた。
(分かっているさ、封印魔術は聖道だとか正義だとか宗教めいたことを言っている人間が時間を無駄にしてでも会得していく魔術だ、この世界のキリスト教とかいう厨二宗教家どもは魔術と認めず封印魔術を使う、あの始まりの魔王がこの事を知ればお姉様を利用する。弱者をとことん嫌うあのクレイ・アストラン・レイナードが利用しないわけがない、宗教という考え方そのものを殺す事に使う…………この世界は昨日今日やってきた世界だから愛着はない、だからどうなろうともどうでもいい事だがこの世界に愛着のあるお姉様にそんなことはさせられない、魔王を否定して聖女王になろうとしているお姉様に!!)
冷めた脳が目を覚ます、主人を守る為にこれからしなければならない事を思い出す。
(そうよ優奈ちゃん、でもケンちゃんから守らなきゃいけないのはクレーだけじゃあない、父親である蜘蛛、神聖勇者だとか言って調子に乗ってるあの男からもよ? ケンちゃんが封印魔術を使えるのは確実にあの男の影響、イケメンに弱いケンちゃんを利用してきっと悪い事を企んでるに違いないの! あの男は全てに嘘をつく。親しい人にも、恋人も、ライバルにも、国にも、自分にすら嘘をつく。あの男を信用しちゃダメなの、そんな男をケンちゃんは惚れ込んでるのよ? 絶っっっ対ロクなことにならないわっ! アイツのせいで不幸になった女を何人も見てきてるんだから!!)
生まれ変わりに不幸になってほしくない聖女王は決意した。
二人ともどちらも違う側面から同じ結論に至る。
まるでそうなる事が出会う前から決定された運命の様に、忠誠も愛も一つの答えに辿り着く!!!
((外に出られん様にもぉおっと裸より恥ずかしい格好にしてやらないとね❤︎))
なんだかんだ言っても結局賢治の魅惑の前には無力である。




