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第4話 ⑰[許して下さい、何でもしますから!!]。

「ケンちゃん、七緒ちゃんに言うことあるんじゃない?」


「うぐ、分かってるよ」


「ふぇ?!私?」


 俺はななちゃんに言いたいことがあった、文句じゃない。


 謝罪だ。


 お父さんを殺したことじゃない、俺はあの事を許して欲しいと思わない。

 もし謝ったら、ななちゃんはいい子だから絶対許してくれる、だから謝らない。

 父親の命と一時の俺の軽い謝罪を秤にかけるしかなくなる、そんな事させたくないから俺の心の中で一生刻んでおく傷にしておく。


 だから俺が謝りたいのは別の事だ。


「さっき、ななちゃんの事頬を、そのヒールで踏みつけて御免なさい」


 減速していたとは言え超高度からの踵落としを幼稚園からの幼馴染に女装ハイヒールで突き刺したのだ、考えうる限り最低の行いだ。

 本人が喜んでるとかは関係ない。


「な、なぁ〜んだそんなこt…………許して欲しかったら何でもする?」


 一瞬で表情が!!


「ん?あ!いや何でもするとは言っていない!」


 野獣の視線を感じ小学生並みの言い訳をした…………だが俺はここで引くわけにはいかない、あの時はパンツを返してもらうために無視してしまったんだから……ん?

 そう言えばパンツは?


「あ、あの七緒さん。なんでもするわけではないんですけど、ちょっと聞きたいことが俺のパンツは?」


「え?あーアンタが寝てる時に死ぬほど大事そうに持ってた布切れね、うん…………も、持ってるわよはい」


 持ってる?


 少し疑問の残る言い回しだがまぁいいや。

 ってか何で胸の内ポケットに入れてるんだ!その顔は何だ!頬を赤らめるな!


「ねぇ賢治?私の謝罪のために今そこでそのパンツ履いてよ?温めといたんだから、まぁもうサイズが合わないでしょうけどね?」


「何言ってんだお前!別に今履かなくて……も?」


「アハ❤︎気づいた?今貴女が着てるその下着とパジャマを着せたのは誰でしょう❤︎デュフフ」


 少しブカブカのパジャマ、外見からじゃ見えないが締まりの良いパンツと胸に何かしらの布がっ!着心地良くて気がつかなかったけど、コレはぶら、ブラジャー!! そしてもちろんだが俺はこんな少女サイズの下着など持ってない!!買ってない!


「貴女の小さい頃のサイズよん❤︎ ちゃあんと成長過程の全サイズ網羅してるんだから、寝てる間にサイズ測ってぇ、何度か着せてネタにしたこともあったわ、元に戻る前のサイズもありますわよん?」


「つまり今まで俺の幼少時から俺の下着を買ってて、どんなに俺が小さくなろうともななちゃんが俺の女様の下着を持ってるから安心って事か? そりゃ安心だ! ふざけんな!!」


 寒気がするはずのセリフだった、でもこの時の俺は嫌悪することができずむしろ嬉しい感情が込み上げてしまい頬が熱くなる。だってきっと慈愛の心を持って俺の体に身につけさせてくれたんだろうから、感謝こそすれ恨みや嫌悪なんてあってはならない。


 だってよくよく思い出してみると普通にななちゃんに朝のお着替えとか手伝ってもらったことあったし、侍女ごっことか言って。



 ちょっと嬉しい俺も変態だ。


「ブラジャーなんて、なんでそんなのずっと持ってるんだよ?」


「いつでも貴女が男装とか言う変態行為ををやめて、健全にちゃんとした服を着る日を待ってたからよ! 幼馴染として変態行為に勤しんでた今までの男装フェチを……!!」


「俺は男だっ!!」


「またそんな事! アンタが男だなんてあり得ないわ!! 怒るわよ!?」


 パンツまで履かせてモノは見ただろうに、まだほざき散らかす気か!

 ブラジャーまでつけさせやがって! お、俺が変態なのはコイツのせいだ! コイツのせいで俺は、この子のおかげで私は、…………まだ人でいれる。


 だからあえてここで下着は脱がない、着心地がいいからじゃなくて、えーとそうだノーパンになるのが嫌だからだ。だから女の子パンツを履いて心地いいのを堪能するのも仕方のないことなんだ!


「オヤジのアホもなんか俺は元は女だとか戯言言ってたけどそれってお前らが共謀して馬鹿にしてるのか?」


「ん? いやいやいやいやいやいや、貴女今の姿全身を鏡で見なさいよ。10人中100万人が女の子って言うわよ?」


「おい、過剰分の99万9990人どっから連れてきたんだよ?」


「まずアンタはその辺の意識を変えていかないとダメね、本気で自分の事男だと思い込んでるでしょ?」


 思い込んでるもなにも本当に男だけど?絶対男だけど?


「男ですよ?ななちゃんとは一緒にお風呂入った仲じゃないですか?」


 まじまじと俺の身体をガン見してたのは気づいてるんだからな!? 俺もだけど。


「また一緒に入りたいわね」


「冗談でも言うなそう言う事」


「…………うーむそう言う所本当に直した方がいいわよ?アンタ、こうなったら優奈ちゃんの言ってた『お姉様アイドル化計画』に加担してしまおうかしら?」


「なんだなんだ?お前ら仲良くなったのか?それはとてもいい事だ、女の子同士はやっぱり仲良くしないと!」


 胸を張って笑ったら、ななちゃんが少し不機嫌になった。


「決めたわ、私を踏みつけた罰としてアンタ絶対にアイドルになりなさい」


「何言ってんだお前?」


「アンタは女の子としての自覚がなさ過ぎる、多分それはアンタ自身が自分を洗脳した結果でしょ? 何を思ってそんな事したのかわからないけど……アンタってそうやって誰かの為に自分を犠牲にする所あるから」


 犠牲に?

 いや違う、俺は自分が人殺しだと言う事実に耐えられなくなってななちゃんのオヤジを殺した事を自分で忘れた。


 だからあれはななちゃんの為じゃない、100%自分の為だ。


 俺は自己中で自分が一番好きだ、だからこの想いも伝えない。

 だってあの時の事を思い出して欲しくないから。


「自分なんて大嫌いだよ俺は、そんな殊勝な考え方できないししたくない。だから女の子じゃない!この姿は仮の姿だ!絶対元の姿に戻ってやる!」


「!? 元に戻るって、そんな事したらさらに小さくなって本当に幼女になるわよ?」


 マジ顔の幼馴染。


「なる訳ねぇだろ! あとアイドルにもならん! もう魔法少女云々で充分世界中に恥を晒したんだ! これ以上恥なんて晒すもんか! 女装かま男で有名になってどうするんだ!」


「女装かま男? 何それキモい、なんで今関係ない話したの?」


 本当にわからないって顔しやがって!


「もーいいっ!!」


「癇癪起こした姿も可愛いわよ❤︎」


 真顔で言った。言いやがった、くきぃいい!


「ムフフ、絶対にわざとやってるでしょ?えい!」


 ぼふん♡


「のがぁあ!抱きついてくりゅなぁあ!」


 小学生の時みたいにぎゅっと抱きしめてきた、あの時と違うのはななちゃんは完全に俺より大きいと言う所だけだ。

 すごくいい匂いがする、やっぱり俺が女だなんて嘘だ、俺が女だったらこんなに気持ちよくななちゃんの匂いを心地よく感じるわけがない。


「嗚呼❤︎凄くいい匂い、男だなんて絶対嘘じゃない、アンタが男だったらこんなにいい匂いはしないわ❤︎❤︎」


「ふざけんな離せ!!」


 しかし腕力で敵わないのとちょっといい心地で本気で抵抗できないので離れられない。


「私たち『黒ニーソ隊』が貴女に貴女を女だと認めさせてあげる❤︎ 今までは私たちだけのアイドルだったけど、この幸せはやっぱり世界中に分配させるべきよ」


「ふざけ、まだあの先生の同窓会存在すんのか!いい加減にしないとストーカーで訴えるぞ!!」


「ふざけてない! 私ね、貴女の母さんに、奏美さんに貴女の中の魔王を封印する様に言われてるのよ、だからこの赤い魔眼も共有してるの。この魔眼は遠い未来をも予知できる、だから貴女に起こる可能性の高い未来を変えることができる。だから絶対に貴女を魔王になんてしない」


 だからイートの襲来も駆けつけることができたのか?壁をぶっ壊したのは多分遠い未来だと可能性が低いとかだろ。数分後だと確実だとかか?


 そういえば壁直ってたな。魔法便利。


「もしかして、今まで俺のためにその眼で守ってくれたのか? 代償は? 元の綺麗な黒い瞳は?」


 あれ? 何を聞いてるんだ俺は、何に誰に憎しみを……。


「母さんが、ななちゃんの人生と瞳をそんな風にしたのか?」


 母さんは魔女の様な面がある、いつもはイキリ散らかした平均的な茨城人(ヤンキー)だけど俺に危害が加わるとなると一気に毒親(サイコ)に変貌してしまう。迷惑な魔女だ。


 いくら母さんでも俺のななちゃんに手を出すのは許せない。


「っ……奏美さんを憎まないで、それにコレは私がしたかったことなんだから。貴女を魔王にしない様に、その目標は奏美さんとの共通した利点だったの。だから今までは貴女に魔法を知られない様にしてたけど、でも間違ってた!」


 さらにぎゅうっと強く抱きしめてきた、少し痛いけど、いい匂い。聖女みたいだなぁ。


「間違ってた?ななちゃんは何も間違ってない。間違ってたのは俺ら母子(おやこ)だよ」


「そうじゃない、貴女の煌めく聖女オーラを抑えられる訳ない!」


 ん?


「貴女の輝きは私たちだけじゃ独占できない!」


 な、何を口走ってるの?!


「貴女の聖女の力で貴女の魔王を打ち倒す!それが最善手だったことに気がついたの!」


 ななちゃんの左眼も右眼もどっちも輝いている、すっごく綺麗だけど言ってることは完全にとち狂ってる。


「正気に戻れ!」


「私は正気よ!」


 ギュウウ!


 痛い!けどいい匂い!



「そうよ!!七緒ちゃんは正気なのよケンちゃん!」


 ここで無視されてきた白銀美少女が腕組みカッコイイポーズで仕切り出す。

 いつの間にか魔法少女の姿はやめたらしい。


「ケンちゃんには私の“聖女王”の王位を引き継ぐに相応しい女の子よ!昨日のことで確信できたわ!誰かを守るために神聖性を捨てる覚悟、土壇場で目醒めた魔王性を制御する度量、そして貴女の美しさ、そのどれもが相応しい!」


「俺は男だって言ってるだろ!」


「聖“女王”ですって?賢治はお姫様じゃない?」


「そこじゃない!」


 鯖折り状態でも俺はツッコミをやめない、俺が突っ込まずに誰が突っ込むんだこんなの!


「いいえ! そこは重要よ! 確かに七緒ちゃんが言う通り今のケンちゃんは甘ちゃんお姫様って感じなのよね! だからケンちゃんには試練を与えます、直接の信者を作りなさい。万人に顔を直接晒し貴女が聖女だと認めさせるのですっ! 動画でエチエチ一本釣りじゃだめよ?! さぁさ突き進め!! 私のケンちゃん! 聖女王に貴女はなるっ!」


「ならねぇよ!俺は男だ女王でもお姫様でも女でもない!!」


「そうよ?賢治はアイドル、みんなの偶像的存在よそして私()賢治なの」


 気がついたのでした、私はななちゃんの声があの時の声になっていたのに気がついたのです。


 ななちゃんの父さんを殺したあの時の声、恐怖に震えつつも私に対する好意を抑えられないか細くも高い声、私と言う魔王を怖がり聖女とか言うふざけた存在を欲しがる女の声。


「キスしましょう? もういいでしょ? 私を食べて」


「ななちゃ…………」


 その顔がもう避けられないくらい間近にある事に気がついたのです。

 嗚呼なんて美味しそうなんでしょう❤︎


 こんないい子は食べちゃいましょう。


「が!だめ!!」


 ぐいっ!


 細い白魚の様な手が私とななちゃんの濡れ場を妨害します。

 アンネです。余計な事を!!


「恋人禁止! 七緒ちゃん! 貴女はスタッフ! マネージャー! アイドルに絶対に手を出しちゃだめな存在なのよ!!賢治! 貴女も貴女でもう少しそのちょろさをなんとかしなさい! てっぺん取るまで恋愛禁止!」


「煩い! 五月蝿い! 全部間違ってる! 俺は男だ!」


「邪魔しないで! 私は賢治の所有物なのよ? 付き合ってるとかじゃなくて私が道具なの! だからコレは恋愛じゃない、道具がご主人様に正しい使われ方をされてるだけ!」


 いやななちゃんは道具じゃない、顔真っ赤で何言ってるの?


「今、舌まで入れようとしてたくせに何が道具よこの色情魔族め」


「な! アンネななちゃんに謝れ! ななちゃんは人間だ色情魔でも魔族じゃない!」


「怒りどころが分からないけどそれも間違ってるわ、この子魔族よ? 貴女と違って後天魔族だけどね?」


「後天魔族?」


 後天的に魔族になってしまったって事か? ななちゃんが? まさか俺のお母さんのせいで? 魔王だから?


「クレーは悪くないわ、()()()()()()。貴女の魅了強化状態の連続で魔族に覚醒したのよ、クレーにできた事はそれを安定化させる事くらいでしょうね? 魔族って色々あるから…………ってか本当にケンちゃんって罪深い子ねぇ? 七緒ちゃんに聞いたけど貴女のクラスの女の子はみぃんな魔族になっちゃったのよ? それがどう言うことか分かるかしら?」


 え? みんな魔族に?!


「あ? 人でなしの俺のせいで?」


「そうよん?でも気にしない方がいいわ?みぃんな喜んで魔族になったんだからケンちゃん、貴女のためにね?」


「俺のせいで?ななちゃんたちが魔族に?」


「貴女のせいじゃないわよ賢治。貴女と同じものになれてみんな嬉しがってるわ❤︎ 貴女ほどじゃあないけど頭にツノがあるのよ? 今出すわね」


 そう言うとおでこの端から親指大の黒い艶やかな尖ったツノが出現した。


「ん?俺ほどじゃない?」


「出てるのよケンちゃんの頭にも太くて❤︎ ぶっとい❤︎ 黒光りした❤︎ 長い❤︎ 二本も❤︎ のツノがね、今は本能的に存在感を軽減して見えなくしてるみたいだけど、私の魔眼なら見えるわよ❤︎」


 そう言われて頭を触るがもちろんそんなものはない、なんだ嘘か。


「触れないわよ、魔族のツノが触れたら弱点丸出しじゃないの? 出そうと思わないと出ないわ。魔力と一緒で触れるもんじゃないの、魔族とは()()する魔力の渦をそのツノで()()すると言う矛盾存在、人間を全てにおいて超越した完全上位互換種族なのよ」


 力強く力説する聖女の事などどうでもよかった、それ以上に、俺は、自覚せずに誰かを魔族にしたと言うことが許せなかった。


 耐えられない、土下座したい気持ちなのに何故かそれもできない自分が許せない!魔王だから?だからこんなことができるのか。

 視界がぼやける、涙が。


「……御免なさい、ななちゃん御免なさい。みんなごめん、俺みたいな悪い子のせいで、魔族なんていうものに許してください何でもします、私は悪魔だ!」










「「「ん?今何でもするって言った?」」」


挿絵(By みてみん)


「え?」


 何故かさっきまで眠りこけていたはずの優奈まで起き上がってきてそこに居た。


「それはそれはお姉様、凄く迷う素敵すぎる提案ですね?何でも無限に叶えてくれるのですか? あぁ!選択肢多すぎて逆に何からさせましょう!」


「お前は関係ない!俺はななちゃんに言ってるのよ!」


「あらあらあら、嬉しいわね賢治ぃ!何でも!無限に!貴女が!何でもしてくれるのね!!」


 何でもというのはもうやめよう、3人とも目がやばい。


「い、一個だけ! 一個だけななちゃんの言うことを聞く!」


 言ってしまった自分の罰としてここは叶えないとだめだ、無理なこと言われたらアンネのアホに叶えてもらおう。アイツも同罪だ。異体同魂だしな。


「ひ、酷いわケンちゃん!私にそんな罰があるか分からないのにでも最高!さぁさ七緒ちゃん!ひどい願い事をプリーズ❤︎」


 計画通り。





「さっきも言ったでしょ?私の願いはたったひとつ、貴女を世界のアイドルに、貴女という幸せを世界の人と共有したい。それが私の願いよ」



 それはとても清らかな願いに見えた。

 アイドル云々は余計だけど、俺を魔王にしないための願いなのだから。


 だから俺はそれを拒否しない、する権利なんてないんだから。


 だから俺は。



「わかったよ。ななちゃんの言う通りにする。ななちゃんは本当にいい子だ」


 俺はアイドルになる。


 だってななちゃんの今の笑顔がすごく眩しいから、綺麗な二本のツノより綺麗な聖女、七緒和葉のたった一つの願いなのだから。






〈アンネのハイテンション次回予告〉


さぁさ始まる始まらないよく分からない、ケンちゃんが元から女の子だったという周知の事実を確認した第四話が終わり第五話魔法少女覚醒編最終話よ!


いつもの様に接していたらケンちゃんが大激怒! だけどみんな何でケンちゃんが怒ってるのか分からないの! ああっもう! 本当処女って面倒くさい!!


怒髪天に達したケンちゃんは家出を決心する?! 待って! ここ貴女が借りてるアパートよん?? まぁ私達は貴女が居る限り絶対出てイカねぇけどなグヘヘへ♡


脱兎の如くぬるっと逃げていくケンちゃんを追いかけて愉しんでいたらあの子また道端にいた女の子を誘惑して魅了しちゃう! それで俺は男だは無理があるわよ!!


あ!!やっぱり誘拐された!

私達の乙女が奪われた! 地の果てまで追い回してやる!!


次回!第5話!!


『家出少女』


次回も見てくれないとお前も魔法少女にしちゃうぞ☆


挿絵(By みてみん)


ちなみに捨てたあった髪の毛はみんなで仲良く分け合ったわ!





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ざまぁ転生 〜ざまぁサレ役のイケメンに転生した作者の俺、追放されず復讐も諦めたのでヒロイン達のゆりゆり展開を物言わぬ壁になったつもりで見守りたい、のに最強ヒロイン達の勘違いが止まりません!〜

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