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第4話 ⑫[谷戸奏美]

 

 谷戸奏美、年齢の事を言ったら怒られそうなので語らない。

 見た目は俺より若く見える。

 纏う雰囲気で二十代そこらに見えてしまうが、単純に肉体的な話をするとグラマラスな10代後半の形を維持している。


 いや、維持しているというのは語弊がある、むしろ毎年若返ってる様な気さえする。

 若返りの秘訣を聞いたところ『愛息子のお前が可愛いからだ』と訳の分からない返しをされた。


 …………確かオヤジより年上、のはずだ。


 ご近所の奥様には美魔女などと呼ばれているらしいが本人はあまり家にいないのでそんなことは知らない。


 萌え〜なアニメとかに出て来そうだが実在する。



 綺麗な母さんだがその性格は破天荒で好戦的。


 俺が気に入らない事をするといつも高速チョップ (弱)が飛んでくる。


 毒親、じゃなくて過保護なところがあって就職した際離れて暮らすと言ったらかなり反対された。



 染めた様に赤くて綺麗なロングの髪の毛、本人曰く染めてないそうだ。

 眼は茶色の日本人特有の色母さんの事だが…………多分本当は変わった色なのだろう、今まで俺にそういうのを隠して来たと推測する。


 実はちょっと俺は母さんが嫌いだ。


 束縛がきつい。

 就職してこっちに来た時だって毎日通信して顔を見せろだの合鍵作って何の断りもなく部屋に入って来てたり。


 正直もうそろそろ大人扱いしてほしい。


 あと笑顔がいつも怖い。

 綺麗すぎて何か含みがありそう。


 スッゲー無理して笑ってる気がする、もしくは爆笑したいのを抑えてるとか。


 中学生の時までお尻ぺんぺんを女子の前でされるという精神的拷問もキツい。


 そう言う俺の苦痛を愉しんでるんじゃないかと疑う時もある。


 うん嫌いだ。


 でも大学の経費を全部払ってくれたのは感謝してる。

 無利子の借金としてちょっとずつ返している、母さんは『返さなくて良い』と言っているが多分返させないで精神的にマウントを取るためだ。


 絶対に払いきってやる。


 うん嫌いだ。


 普段から怖いが本当にキレるともっと怖い。

 だから俺は母さんが魔王だったと言っても全然不思議に思わない、そして今前世が魔王だったと知った訳だけど全然驚いていない。

 驚いてない自分に全く驚かない。



 うんやっぱりね。

 としか思えない。



「ななちゃんは母さんに脅されてるのか?」


「…………協力関係よ、アンタアホだから心配で奏美さんと利害が一致したのよ………あの人はアンタが言うほどそんなに酷い人じゃないわよ?」


 “そんなに”って所が母さんの怖さを現している。


 『あいつの私に対する印象を変えろ』とか平気で言いそうだからなあの人。


 印象操作だぞ? 自分の息子に対して。


「母さんとは、い、いつか話をつけなきゃ、いけないと思ってたんだ! 七緒を傷つけるなら俺が許さにゃい!!」


「ケンちゃん、無理は良くない。君は奏美に生まれた時から恐怖を植え込まれて来た、この世界の誰より奏美の魔王を理解してる」


「はっはっはっはっ! 確かに昔は怖かったけど今俺は大人だじぇ? 恐怖なんて全然感じてにゃいぜ!」


「賢治……」


「お姉様……」


 ななちゃんと優奈が哀れみの目で見ている、ああ分かってる。

 今でも怖くて恐ろしい、あの人の足音を聞くだけで震え上がりそうだ。


 それでも敵対しなきゃいけない、幼馴染を利用したのが分かったんなら絶対に。


「母さんは昔から俺の敵だ、そうじゃなきゃ母さんとは渡り合えない。それくらいじゃなきゃあの人と親子でいれない、だから七緒が何も責任を感じることはないんだぜ?」


「え? ああうん、私的には本当にアンタのストー、お守りはすごく楽しかったけどね? マジでこんなに楽しくて金もらって良いのかなー? って思うくらいで、ん?」


「無理しなくて良いんだぜ! これからは自分の人生を歩むんだ、彼氏さんとイチャイチャするんだぜ!」


「彼氏? ああそういえばそう言う設定だったわ」


 設定?え?


「ごめん! それ嘘! 私男とか無理! アンタみたいな良い匂いしかしない女の子じゃないと無理!」


「俺は男だぞ!!」


 いやそこじゃないだろ俺。


「アンタは別腹、それにぃ〜? 今の格好を見たらどう見ても女の子じゃない? んふふふ❤︎」


 ゲスい顔で俺の女装を見ている。反射的に手で奴の目を塞ごうと前に出してぐるぐる回す。


「こ、この格好は! 違うんだ! 服を隠されて! お願い誰にも言わないで!!」


「御免なさい、もう女子同級生の連絡網に流したからそれ無理」


「七緒てめぇ!!」


 やっぱり悪い子!


「ふふふ……くふふふ、はははははは!」


「オヤジ?」


 青い魔法少女は大きく笑う、いつもに感じになった俺らの中を見て笑う。


「くく、ゴメンね七緒くんと君との馴れ合いを見たらアンネのアホと奏美の仲を思い出しちゃってさ、血は争えないね? 女の子に追われたり女の子に弱かったり、やっぱりケンちゃんは奏美似だよ」


 俺は男だ。

 腹を抱えて笑いそうなくらい体をくの字に曲げている、ああでもやっぱりコイツは本当にオヤジなんだ。

 何を言ってもオヤジは母さんが好きだったんだ、離婚したのだって仲の良さが原因だと今でも思ってる、ただの仲違いだ。


 今からだって2人の仲を元に戻したい。


「オヤジはまだ母さんの事を好きなんだよな?」




「嗚呼、()()()()()()()()()()()()()()には愛しているかな?」


「は?」



 首を絶つ?何かの比喩?


「何をあっけに取られた様な顔をしてるのさ、僕は勇者で奏美は魔王だよ? 勇者が魔王を討つなんて当たり前でありきたりでお約束じゃあないか?」


 比喩じゃない?! 本当に?

 いや待てよ、俺はオヤジが母さんを愛してるのは知っている。

 それだけは絶対に変わらない真実だ!


「そ、それは前世の話で、今は反省して母さんと仲良くして……だから俺が生まれたんだよな?」


「?? 何言ってるんだよケンちゃん、勇者が魔王を討つのに反省なんてないよ。悪いのはあの時の奏美だ。世界の人類を滅亡させようとしたんだ僕が監視しなくちゃいけなかった、ただそれだけの話だよ」



 は?


「なんだよ、それ。オヤジは母さんを愛してないのか?」


「愛してるよ?今でもぞっこんさ、でもその愛の形までは誰にも強制出来ないよね?僕と奏美の関係がケンちゃんの理想像通りじゃなかったってだけの話さ」


 青い魔法少女は全く悪びれない。当然の事を当然のように言っている、そうとしか思ってない。


 子供のように笑いながら、俺の心を抉る。


 だって魔王候補になったという俺にも当てはまる事があるからだ。


「オヤジは俺を殺すのか?」


「歪んだ魔王になれば、ね? でも多分君を討つとなると僕じゃない。この世界の神聖勇者さ」


「俺は魔王になんかならない、神聖勇者なんか知るか、そんなものに縛られてなるものか!!」


「ケンちゃん」


 何を言われたってもう決めた。俺は魔王にならない、魔王候補の最有力でもなんでも知った事じゃない。


「嘘はよくないよ?」


「嘘?何が嘘なものか、俺は……」


「君は絶対に魔王にする」


 その時、青い魔法少女の瞳が魔眼の輝きを放った。


 金色(こんじき)、黄金よりも澄んでいて太陽よりも優しい光り。

 魔剣を投げ捨てて俺の元に近づき下顎に指をかけてクイっと引っ張る。


 身長は向こうの方が少しだけ高い。

 俺は魅了された。

 お父様のその輝く瞳が綺麗で、手に入れたい。


「魔王と勇者は惹かれ合う、君は今無性に僕が欲しい。どんなに心で抗ってもどうしようもない性質なのさ、そして君は奏美以上に魔王の才能がある。だから魔王として決して歪まない。この世界の勇者にも討たれない。君が生まれてから僕は君をそういう風に教育して来た。君を優しい王様にするってね?父親だったら当たり前の感情だろ?」


 顔が近い、でも少女の顔だ、少女の肌で少女の声だ。

 だからまだ正気を保っていられたのだと思う。


「お、俺は男だ!」


「うん、知ってるきっとそうだよ。君はそうあるべきだ」


 正気を保っててもドキドキする。

 だって男女だから、今のオヤジが女で俺が男だから。


「お姉様、パパのイケメンオーラにやられてる!! 助けなくてわ!!! どうりゃああ!!」


 思い出したかのようにハッとなりながらオヤジに徒手空拳をかまそうとしてくる妹を軽く避けて、俺を抱き抱える。


 またお姫様抱っこだ。


「な!! やめて! やめて下さい! お父様! あ……」


「ははは! パパでも良いよ? 昔はそう呼んでよくこうやって抱っこしてたじゃあないか?」


 いつの話だよ!! 5歳とかそん時の話だろ!!


「賢治!!」


 差し伸べられる幼馴染の手。

 俺はその手を取ろうとするが抱っこされたままの状態では届かずに避けられる。


「ダメ、七緒くん君は絶対に勇者じゃない。君じゃないんだ、だから諦めて賢治のサポートに徹して。分かってただろ賢治は高嶺の花だ」


 幼馴染に酷い事をいう少女に敵意を向けられない。

 く、くそ! いくら親子だからってやって良いことと悪いことがあるだろ!


「賢治は私の、私の!」


「答えが遅い、じゃあね」


 ぼぉんっ!!


 屋上の床がめり込むレベルでジャンプした。

 俺を抱っこした状態で、魔法少女になってない俺の生身の体を持ったまま直線的にジャンプした。





 めっちゃ高い。




「な、マジ何!? 死ぬ!」


「死なない」


 どんどんとその高度が上がり大袈裟でなく自分のいるアパートがわからなくなった、ああこんなに雲が近い。


「寒い! 体温が奪われる!! ひ! あれ?」


 いきなり暖かく、風圧も感じなくなった。なったけど。


「ゴメンね、君はまだ生身だったんだね? 今障壁を作ったよ」


 何も感じなくなったせいで冷静に今の状況を見る、吸い込まれそうな光景、高層ビルや電波塔なんて目じゃない恐怖がそこにあった。


「落ちたら間違いなく死んじゃうね☆」


「ヒェッ!!」


「僕は魔法少女だから死なないけどケンちゃんは落下の衝撃に耐えられないかもね、障壁がちゃんと守ってくれる保証なんてないしね☆」


 なんでこんな事を!?なんで笑ってるの?サイコパス?違う!俺の好きなお父様はこんなことしない!!やっぱりこいつはパパじゃない!


「騙したな!! 俺をこうやって殺すのがお前の企みか勇者!! お父様のふりして私を騙くらかして!! むきぃいい!」


 ……自分でも何を言っているのかわからない、突然たまひゅんな体験を強要されて頭に血が昇ったんだと思う。


「あはははこの景色を楽しみなよ、青空と地面の境のこの景色をさぁ!!」


 暴れていてその全景を楽しむ気になどなるわけがない。


「死ね!今死ね!!」


「あはは。その怒り方まんまで昔の奏美だなぁ前世で出会った本当の少女の時の奏美の怒り方だ」


 あ、その感じパパっぽい。


「知るか! 降ろせ! 私は自分の部屋に戻る!」


「そう? じゃあ離すよ?」


「え?」


「大丈夫、安心して僕にもできたんだ。君ならアンネのアホの力を借りなくても魔法少女の変身できる、だって君はもう3回も魔法少女になっているんだろ?」


「あれ? え? 3回? なんでホネホネ怪人の時のこと知ってる? は? マジで降ろすの?」


 ば!


 一気に…………本当に俺を落とした。


 ぎゅおっ!!!


「ぎゃ!」


 叫んで助けを呼んでも無駄だと思った俺はそれ以上声をあげない。


 落下する、それはどうしようもない運命ソレは確定事項。


 ならば魔術を使い飛行しなければならない。



 速攻で私はその場の空気に固定される魔術を放つ。




 魔術アビリティ


 固定化魔術


 ・その場に固定される、範囲、固定時間などはイメージと魔力次第。




「へぇ、即興で固定化魔術を、しかも魔法陣を描くための固形体の薄い空気を」


 笑いながら親父が見下していた、だが怒りは湧いてこない。

 それどころではないからだ。


「そうだよケンちゃん、空気は空気だ、固形化しても硬度に限界がある。だから魔術でなく魔法で飛行するしかない」


 四肢に粘りつかせた空気が減速はさせてるものの少しずつパラシュートで落下する様に下へ下へと落ちていく。


「ふふ、手足の自由を奪われたその姿、まるで蜘蛛の巣にかかった蝶々だね?すごく可愛いよ♡」


 気を散じるな俺、集中。ちょっと嬉しいとか今は考えるな。


「ねぇケンちゃん何か違和感を感じないかい?」


 違和感!? 違和感なんて今更の事だろうが! イケナイ!! 集中を切らしちゃあダメだ! もしこのまま落下したら俺が死ぬだけでなく落下した先、障壁とやらで俺が生きてたとしても、もしかしたらななちゃんと優奈に怪我をさせるかもしれないんだ!


「ねぇ……よぉく自分の体の外側に気をつけてみてみるんだ、いつもあるはずの物が無いって事に気づける筈だよ?」


 助けて欲しい、そんなに簡単に親父は宙に浮いてられるなら俺1人くらい持ち上げられるだろうに、さっきから訳の分からない事を言って集中を切らそうとしやがってふざけるな!


 あと自然に甘い声出すな!エロいんだよ!


「ん? 本当に気が付かない? そうだなぁ余程今の正装、じゃなかった女装がしっくりくるようだねぇ?だから今なくてはならないものが無いことにも気が付いていない」


 何に気が付いてないってんだよ!!気が散るっ!



「お股がお留守ですわよ賢治ちゃん」



 いきなり慣れない女の子口調と多重丁寧語で煽られたって怒る気力なんてない………………。





 ない、ない、ない、ない、ない、ない、ない!!




 パンツがない!!!



「気がついた? 僕じゃないよ、さっき優奈ちゃんが僕にテレフォンパンチ (凄く遅い拳)をして来たときに君のスカートから抜き取ったんだよ、まぁ僕も協力したんだけどさ、パンツ脱がされても気が付かないなんて。一体どんだけ僕に夢中だったんだい? 賢治ちゃん?」


 そう俺は今ノーパン女装の大股開きで下の2人にガン見されている。今気がついた、やっぱ最低だ。やっぱり最低っ!!!二人とも最低っ!!!


 しゅば、


 反射的に股を閉じて魔術を解除、急降下してしまう。

 このまま醜い姿を晒すくらいならすぐさま死んだ方がマシだ。


 だけど、それでも俺は男らしく下の2人に叫()散らした。



「パンツ返してぇええええっ!!」


そして少女は布を取り返しに落ちてやってくる。

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ざまぁ転生 〜ざまぁサレ役のイケメンに転生した作者の俺、追放されず復讐も諦めたのでヒロイン達のゆりゆり展開を物言わぬ壁になったつもりで見守りたい、のに最強ヒロイン達の勘違いが止まりません!〜

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