間劇 「くっきんぐもんすたー2」「女の子3人パジャマパーティー☆」♡
おやすみ☆
などと許してもらえるわけもなく……
西暦2500年4月2日 夜 19:00
シャアアア……。
お風呂に入らず賢治はシャワーで身体を清めた。
その間中当然お姉様をやっちまおうと暴走した優奈をアンネが必死に誘惑して癒して大惨事にならずに済んでいる。
その時間5分、本当なら入念に身体を洗う女の子な賢治には苦痛なのだが仕方がなく最低限のシャンプーとリンスとボディソープで軽く洗って出た。
「お゛ね゛ぇ゛さ゛ま゛!!!」
「また暴走した! 私の速攻の魅力が通用しない!どっちも恐ろしい子!」
(昨晩の事もあるから抑えた魅力で足止めしてあげてるけど……グハァ! 風呂上がりのケンちゃんのフェロモンすげぇ!)
そこには湯上がり超絶美人のメスがいた。イケメンではない美人である。
「もう、優奈! そう言う冗談は後にしろ!!」
ぴちぴちほかほかの凶悪な魅惑を放つその化け物はまだ自分の魅力を認めない。
「……なんだか今日のケンちゃんすごくムカつく」
「お姉様! 私お風呂! 1時間入る! 私の背中! 流して!」
百合の獣と化した妹は言語能力が低下している、目が怖い。
「んー! それよりご飯食べないか?」
「「え?」」
実はもう夕飯は済ましている。その際クッキングモンスターと化したお姉様の恐ろしさを知った妹は説明できない恐怖を感じていた。
というか普通にまだお腹がぱんぱんである。
「あ、あの、お姉様! 料理が旨いのは分かったので! その!」
不味いのだったら吐けばいいが美味しくてしかも作った本人が幸せそうな笑顔で監視する。
そのチートな魅力で強制的にカロリーを取らせられるのだ。
「ふふふ♪俺ってさ食べて大きくなった女の子のお腹が大好きなんだよな❤︎」
サイコパスッ!!
「その言葉ケンちゃんが女の子じゃなかったら犯罪よ!」
「俺は男だ!」
「はい! お姉様は男です!」
「しょうがないわね! 私がご飯を作るわ!」
アンネが乗り気で名乗りをあげる。
「え? ご飯作れるの?」
「馬鹿にしないで! っていうかあんまりお腹減ってないからお茶漬けくらいだけね! お手軽よ!」
異世界の生まれだが賢治の記憶を持っているアンネはお茶漬けの記憶は持っている。
だがその態度は賢治を怒らせた!
「お茶漬けがお手軽? 言っておくがここにはお茶漬けの素などないぞ? 緑茶はあるがご飯にそれをぶっかけるだけがお茶漬けじゃあない、お茶漬けの第一原則はおこげだ! お茶漬けの素はそれを焦げたフレークで誤魔化してるが、本当ならお米を直火で炊き上げて程よいお焦げを作らねばならない! そのホカホカご飯にお茶をぶっかける! 梅! 時々ワサビ! そして海苔とおこげの風味! その全てが渾然一体となって初めてお茶漬けという料理が完成するっ!! それを3人分! 今のお前にそれを直ぐに準備できるのか? 見たところコメを研ぎ洗いして今日の湿度に最適な水加減で米を炊くことすら怪しい、断言するが昨日今日生まれた様な奴に旨い米は作れない! それは炊飯ジャーという神器使っても不可能! そんなお前が米をおこげを作る地道な米炊きが出来るのか? 絶対無理だな! かけてもいい!!」
「なっが!! どんだけクッキングトークしたいのよ! 良いから座ってなさいなケンちゃん! 良いのよ冷や飯に適当に熱いお茶かけて腹を満たす位しか考えてないの! そんなに手がこんでなくって良いの!!」
「適当って言葉は考えなしって意味じゃないぞ」
「うっさい!」
ぷんぷんしながらキッチンに逃げていく。
「ふふふ♪ アンネ、俺の生まれ変わりを自称するのならこの俺を納得させるお茶漬けを提出するのだな、くっくっくっくっ!」
「素敵ですお姉様!」
(料理が関わると食べさせる方でも食べる方でもめんどくさいなこの女)
◆
5分くらいしてアンネが作り上げた料理を持ってきた。だが。
「こ、これはっ」
「どうぞ召し上がれ!」
ぐつぐつぐつ、
何も熱を加えていないのに沸騰する黒い液体、ご飯と思しき白いかけら、匂いはお茶漬けなのに見た目が黒いスライムが目の前に出た。
「こ、こう来たか! っていうか何使ったらこうなるんだ!?」
よく見たら顔のようなものが見える、叫び声も聞こえてきそうだ。
「……お茶と冷や飯よ、あとは私のオーラ。ゲフンゲフン!」
「おい余計なものいれたのか? オーラってなんだ?」
「愛情よ!」
『ア゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛!』
確実に呪術系のソレだ、動きウネって食らおうとする者の食欲を減衰させている、というか食いたくない。
「……お前もう二度と料理するな」
「みんなそういうのよね、なんでかしら? 結構美味しいのに」
アンネは何の抵抗もなく箸でスライムを突き刺して勢いよくお茶漬け(?)を食する。
ずるじゅるる、もぐもぐ、
「わ、私も料理は下手ですけどここまでひどくない! っていうか料理? 呪術か何かじゃ?」
「失礼ねーただのお茶漬けじゃない、もぐもぐ」
ぶちぶちち! ぶっつ!
(匂いはお茶の湯漬けなのに咀嚼音が草食獣の肉を食う肉食獣の音!何だこれ)
「で?どうするの? 食べるの?」
誘うように微笑んで二人を見ているが本人たちは完全に食欲を失ってしまった。
「「いや、いいです」」
3人分のお茶漬け()を一人で平げ食事は終了した。
◆
そして寝る。
明日のために今日は寝る。
フルダイブもしないと決めている。
「さてでは全裸になります」
アンネは芸人の様に遠慮なく脱ぎ始める、先ずは下から。
ポカ!
お姉様の容赦ある弱チョップが炸裂した。
「寒いんだからパジャマ着て寝なさい」
お姉様に構ってもらってるアンネに嫉妬する優奈は少し頭を傾ける。
「? 何でお姉様は服を着てるんですか?」
アンネに対する嫉妬を忘れ本当に不思議そうな顔をしている。
「あー全裸じゃないと寝れない人っているよな。でも寒いから今日はやめとけ」
「ケンちゃんは床に敷いたせんべえ布団! 優奈ちゃんはセミダブルサイズのベッド! じゃあ私は? 居候の私は床かしら?廊下だともっと最高❤︎」
ドMの表情である、そうはいかない。
脱がなくてもこの女は思考そのものが18禁だ。
「……俺が床に寝るよ、男だし」
そういうことじゃない、三人で一緒に寝たいという話なのだ。
「ふぅ、じゃあ優奈ちゃん」
「ええアンネお姉様❤︎」
(!?)
いつの間にか二人の仲が進んでいる、お風呂に入っていた5分間に何やら意気投合したらしい。
「「私達も床で寝ます❤︎」」
悪質な北風と太陽作戦だ。
「や、やめろ!! お前ら二人が相手じゃ敵うわけないだろ! アンネ! いやアンネ様! お願いです! 許してくださいもう蔑ろにしませんから!」
「あらあら、じゃあ優奈ちゃんに味方するしかないわねぇ? 侮蔑差別大好物よ❤︎」
「変態!!」
ば!!
瞳に淫紋が刻印された二人が飛びかかってきた。
薄い布団上に倒れ込み3人で揉みくちゃになる。
ピンク色の空気が、女の子の匂いしかしないパジャマパーティー (えっち)が始まった。
「やめろ! 優奈! 服を脱がせようとするな! 冗談はやめろ!」
「はい♡ じゃあこうです!」
だきっ!
細い腰に抱きつく黒猫モードの妹、我慢して我慢して匂いを嗅ぐだけで済ませる。
「そうよ優奈ちゃん! 前戯は大事よ!」
「そういうのじゃないだろ! ぎゃははは!」
腹の脇をくすぐられ笑う。
因みにこの時隣の裏切りの幼馴染はその場にいない事を、血の涙を流しそうなほど悔しがっている。
ブフォ!
枕投げが開始された。
だが枕はひとつ、ケンちゃんに思い切り投げつけた変態聖女は人差し指をくいくいして投げ返してくるのを待っている。
(くっ! こいつ! まさかエスエムプレイを強要する気か? しかし受けた枕は返す! それが七緒のアホに教えてもらった投擲バトルの流儀!)
賢治は女の子同士のパジャマパーティーは初めてではない、枕投げなど修学旅行先ではいつもの事だ、お泊まりに来た時もそうだ。
「くらえ! 邪王暗黒、グフォ! 優奈!」
腰にまとわりつく妹の腕力がどんどん強くなる。
「も、もう我慢出来ましぇん❤︎ こんな良い匂い! はぁ、はぁ、はぁ! いえ! 許しませんこんなのチートです! ズルです! もうむしゃぶりつきます! てぇえいっ!!」
ガブ!
刺激されて暴れ出した猫のようにお姉様のお腹をパジャマの布ごと甘噛みする。
「はぅう!! やめろ!」
「キャンディー! フェロモンキャンディー!! ふしゃああ!!」
魔眼の輝きが減光加工してないLED並みに鋭い、目に刺さる。
「落ち着いて! 優奈ちゃん! どうどう!」
白銀美少女が警戒した猫を落ち着かせようと近づく。
「ふしーーーーーーっ!!」
頭を撫でようとするがご飯にありつけなかった野良猫のように更に警戒してくる、胃袋以外に“お姉様分”という臓器ができてしまったようなもの。お色気で臓器の栄養分を満たしてあげるしかない。
「こうなったら私が脱ぐしかないわね!」
自称成人男性の無自覚フェロモンと同等のものが自分の全裸であると一瞬で判断した、自分を犠牲にする聖女的行いである。
(さぁさ! 私の全裸を見て呆れた顔を見せて! そして私を罵倒して❤︎)
前言撤回、ただ脱ぎたいだけの変態、いや変質者である。
「やめろ! 別にはむはむされてるだけで実害なんてないんだ! 女の子が男の前で脱ぐな!」
「そうよ! はむん!! ちゅうちゅう!! 私は正気よ!? ふんふん! お姉様は男なのよ! ぬっはぁああ! メスくせぇえ! かぷ!」
腰を高く上げながらお姉様のお腹を味わう黒猫。
子猫のジャレつきと思っているお姉様はこの程度の展開は慣れっこである。
同級生の女の子を同様の暴走状態にしてしまったことがありその時も独自の間違った解釈によりからかわれてると思い込み、そして頭を撫でた。
「お姉様?」
「んー? あー気にすんな七緒も女子のアホどももこうするとなんとなく落ち着いてくれるんだ」
魔術アビリティ
癒らし術 ナデリお姉様の極意。
・聖女特有の癒しのオーラでレズの性欲を癒しに強制変換する。
・過去に幼馴染のレズ性欲が暴走した時に、誰かがお姉様に教えた魔術、術者は魔術という認識がない。
・寝込みを襲う奴限定のカウンター魔術。
・後日、カウンターを受けた者は全回復だけでなく体も心も魔術的にも成長してしまうのがこの術の難点。
(ごく自然、何の淀みもなく魔器から魔力へそして癒しのオーラへ変換している。この一連の流れを撫でる動作とともに脳内にオーラを放出。一瞬でも害意があると失敗し逆効果になる高度な聖女のカウンター! 第三者視点で初めて見たけど、やっぱりすごい。才能ね……この自然魔術の冴えは私には無い、だから私は全裸で誤魔化す。さすがあの子の娘、恐ろしい子!)
驚嘆した脱ぎかけの芸人と化した自称聖女は真面目にその様子を見ていた。
「おにゃえしゃま? ……くぴー」
絶対に犯すと決めた猫が数秒と持たずに癒され眠子となる。
「ほら、な? 結局女の子はみんないい子なんだよ、冗談言って馬鹿にしてくるけどこんなに無防備な寝顔を魅せてくれる。男の俺がこういういい子の事を守ってあげなきゃいけないんだ。そうしなきゃオヤジみたいな本当の大人にはなれない、そう思う」
「そう思うならそうなんでしょうよ、貴女の中ではね」
煎餅布団の上でゴロニャン状態の異世界転送1日目の黒猫を見て脱ぎかけ聖女は呆れた。
「やっぱり可愛いなぁ♡ 妹可愛い」
とびきりの笑顔で撫でまくる、だが後日起き上がった狂乱の黒猫が自分を襲う事をまだ知らない。
1番の被害者がは妹である、生殺し、強制狂化、お姉様。
これらを一気に味わわせる地獄、まさに魔王の所業と言えるだろう。
「お姉様、のアホ……毛」
凶暴な百合猫はお姉様の癒らしで強制OFFされた。




