間劇 「神☆カビ♡華美」
アイドル用ネットワーク。
フルダイブ専用のデータ擬似空間である。
フルダイブは慣れていないと鈍痛や体調不良を引き起こす、なので主流となっているのは起きながらのアッパーダイブによるAR (拡張現実)である。
だからこの空間にリスクを承知で毎晩インしてくるのは相当な猛者である。
つまり変態である。
フルダイブの空間は個人の空間認識能力によりその広さが限定される、大体がビルのワンフロア程度が限界である、だがしかしそれはファンの数による並列処理により相乗して広がる。一人ではワンフロアでも二人いれば10階建てのビル相当、3人ならそれが2棟。 (あくまで何もないという空間に限る)
つまりアイドルという存在はその擬似空間を広げ好き放題に世界を作れる存在なのである。
そして西暦2500年現在人類はその数を30億前後に維持している、かつて1000億はいた時代に比べると少ない。
だからこの時代のアイドルはひとりひとりのファンを大事にしている。
決してマイナスイメージなどあってはならない。
「下僕ども! 裏切り者を血祭りにあげぃ!!」
しかしそんな事どこ吹く風、魔女裁判時代の様にひとりの男を木製の大きな十字架に括り付け足元から炎を焚き付け処している。
因みにこの空間で死んでも現実に影響などない。だって夢だし。
だからなのか処されてる男も笑顔だ。
そしてそれを見ている百人程の男は悔しがった顔だ、羨ましがっていると言っていい。普通逆じゃあなかろうか?
「もっと火を足せ! このゴミをもっと辱めろ!」
「は、はぃ!」
焚き木をどんどん焚べる。火力は上がるが熱くはない、ダメージ換算はあるが焦げてしなうこともない。そういう設定に彼女がしている。
さっきから行っているこの拷問を扇動している女性アイドル、今年で15歳。
病んでる?事を売りにしている女性アイドル、ファンの数は多くないがいわゆるコアなファン層 (ドMのへんたい)が彼女を支える。
彼女の名前は咲原華美。
現実世界ではあまり表舞台に立たず、とあるアイドルの付き人ポジションでその女性を好きだという事を匂わせ、その罠に嵌った彼らを精神的に支配して狂信させるスキルを持っている。
そう、だから彼女が罰として行っている火刑は寧ろご褒美である。
「ありがとうございます♡」
「反省が足りない!喜ぶな!」
「ブヒィ!」
悦んでいる。
鞭があったら叩いているがその気のない華美にとってそんなものはない。
しかし括り付けられた男が打たれた想定で腰を気持ち悪くくねらせた。
リアルの彼女は病んだ目の下の薄いクマ、顔の形は整ってはいるが不健康さが目立つ、服装は黒のゴスロリ、髪色は黒、目は茶色の普通の日本人。だ。
身長は平均的な中3女子。体型は少し膨らみはあるが控えめ、しかしファンにはそれがたまらない。
勿論だが彼らファンはこの空間に本当の姿を晒してなどいない、中には50歳代のサラリーマンもいる、コアなファン層であるという事は一人が貢ぐ金額が凄まじい。
しかし華美はその全てを自分のアイドル活動に計上しない。
全ては自分のお姉様の為。付き人となってまでついてきたアイドルの余剰資金に計上している。
そしてそれを彼女はファンに隠さない、むしろそれを公表してご褒美プレイと勘違いした信者が増えてしまったくらいだ。変態である。
「藍那お姉様を裏切り! ポッと出のしらが女と黒肌女の動画にコメントを残した! あんな分かりやすい百合商法に引っかかりやがって!!」
ちなみに彼女はガチ百合である。
「ありがとうございますっ!!」
この罰を受けるためにこの家畜が自己申告したのは言うまでもない。
「だから喜ぶな!」
彼女は心を動かすことが得意だ、心を読むスキルがある。
単純に頭がいい、IQだって150くらいあるらしい。
だが彼女は望んでこの様な地獄を作ったわけではなかった、ファン達が乗り気で勝手にこの惨状を作り上げたと言っても過言ではない。
だがこれは彼女のお姉様をたてる事に繋がる、そう思ったらやりたくない豚どもの願いを聞くのもやぶさかではない。
そう、基本的に彼女はいい子である。人の嫌がる事はしたくない。
(羨ましい)(クソ! もっと裏切りアピールするべきだった!)
だが変態が望んだ事はこの有様である。ぶっちゃけ本質的な売上は自分のお姉様を超えている事は分かっているが無視している。
「今年こそお姉様をNo.1のアイドルにする! 浮気なんぞ許さん!だから今のうちから他のアイドルにうつつを抜かすな!」
「はいぃ! 今年こそあの桜花というガキの妨害を!」
「そういう事はするんじゃあない! 何度言えばわかるんだ!正々堂々勝たないと意味がないんだよ!」
やっぱりいい子である。そこが豚どもが憧れ慕いブヒる理由だ。
「「ブヒィイイっ」」
「カミ様もっと燃やしてください!!」
「あ?」
カミ。華美の名を神と呼ぶファンのなかでは禁句である。何故ならば。
「私を“かみ”と呼んでいいのはお姉様だけだ!! お前の様な変態に言われたくないのよ!!」
めちゃくちゃ悪態をつき左手を天に掲げる。
「や、やるぞ!アレだ!!」「ああ! 俺、初めて見るぜ」
「❤︎ァーーーッ❤︎ゥウウウ!!」
そして彼女は天に中指を差す。
夢を売るアイドルが絶対にやってはいけない事と表情だ、歪みまくっている。
「「「ファーーーーッ❤︎!!」」」
ファンたちも喜んで禁句を言い放ち天に中指を指す。
(俺も火刑に処されてなければ奏美様と一緒に中指を立てたかった……だが! 我が生涯に一片の悔いなし!!
アバターのダメージ限界値が来た瞬間、その変態は微笑みながら灰になったのであった。
「ったく、何が魔法少女だ。緑と黒って地味めの戦隊モノかっての!! …………はっ!!」
その時何かに気がつく。
(もしこの魔法少女が流行れば! もしこぞって皆アイドルどもが魔法少女ブームに乗っかったら、ピンクは?! ピンク色は!? それこそお姉様に相応しい!! あの女にはやらん! No.1の桜の花の名前を持つアイツに取られてなるものか! そうと決まればあの痴女! 白髪メスにアポイントを取らねば! 全てはお姉様の為に!!)
そうして賢治を中心にさまざまな人間が集まってくる。
まるで光に集まる虫の様に…………。
彼女の出番は四話ではありません。(無慈悲)




