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第3話 ⑭[魔法少女ユウナん]※魔法少女立ち絵有り

 


 その骸骨の馬車は一般人にも目撃されていた。


 しかし本当なら賢治のアパートの様に世界の魔法で元に戻る筈だったのだ。


 だからアンネも、淫棒も安心してデスマーチ次郎を誘惑し暴れさせようとした。


 そうすれば天罰の様な現象が起きるだろうとの希望的観測があった。


 しかし、計算外が起きた。

 世界の魔法、隠匿する制御の力が働かない。

 淫棒はこれと似たような例外を見ているのだが失念していた。



 それはアルバの暴走の件だ、あの様な暴挙は世界の制御力が働いて記憶と痕跡を無かったことにしてくれる筈だった。

 だが賢治に関わる賢治に利する出来事は魔法でもどうにもならなかった。



 まるで世界が賢治を目立たせようとしているかの様に。



(アンチスキルが発生しない、この世界では天罰の基準が恐ろしく低いからちょっと暴れただけでアンチスキルが発生してくれると踏んでいたのにその様子が全くない)


 淫棒は大空に浮かぶ無量大数の骸骨群を見ながらやらかしてしまった事を嘆いた。


 デスマーチ次郎の事ではない、確認の為に天罰をも飲み込んでしまう更なる化け物を呼び起こしてしまった事を嘆いている。


 その正体とは。



 ◆



「地上に這い回る虫ども!! 私が神だ! 魔神だ! いや世界そのものだ!」


 大声で叫ぶが地上の人間には聞こえていない。というか骸骨群が目立ってその中にいる人間を見つける事が出来るわけは無い。


 数にして二百二十二体の人骨、そしてひとつのホネ馬車。


 死の行軍、デスマーチ。




 魔術アビリティ


 事象魔術「死の行軍」


 非現実を物質化した姿。魔術の種別としてはロボットの時と同じ。




 世界に対する悪意、その暴虐の欲求をそのまま地上の人間にぶつける。

 そう思った瞬間、デスマーチ次郎のアバターの足先から頭に何かが抜けてゆく。


 寒気、怖気、狂気、圧迫感、全てを総称し恐怖。


 言いようの知れない死の予感。


 その正体とは、こちらに一気に向かってくる一騎の黒衣の魔法少女。だと最初は思った。


 しかしその本質はさらに後ろ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 最初次郎はそれをあの白銀の少女と勘違いした。

 だが違う、あの少女は底抜けに明るいだけであんな澱んだオーラを纏ってはいなかった。


 雰囲気をオーラと感じたことなど中の人間は今までに一度も感じた事はない。

 海の中の魚が生まれて初めて釣り上げられて海上に押し上げられた時水圧抜けた事を感じる様に、命の危機を感じた時普段使わない感覚が蘇る事がある。


 そう次郎は地上の人間を見下ろしているのでは無い。その絶望の少女に空という大穴に投げ捨てられた一匹の虫だったのだ。


(逃げ、ダメ、怖い、なんだこの悪意? 死)



 ごしゅ! ゴッ!


「あがっ、ぐっ、ご」


 一撃。失速するタイミングに合わせてマジカルステッキを振り上げ次郎の顎にヒットした。


 ガ! ぐむ!


 馬車の中でぶっ倒してその長い足で倒れた男を踏む。


「起きろ羽虫、お前にはここで死んでもらう。ああ、違うか? 安心しろアバターとかいうやつなんだろ?お前にとってはただのゲームオーバーだ死にはしない」


 言いながら胸ぐらを掴み、少女に似つかわしく無い腕力で一気にぶん投げる。

 当然落ちる、落ちるが骨の大群が男を包み守ろうとする。


 だが。



 魔術アビリティ


 自然魔術 局所落雷



 導く様に陰棒をタクトの様に次郎に向ける、その棒の先端から光が伸びて男の顎に繋がる、さっきの攻撃の時につけた魔力の繋がり。


 そして黒猫の腕から電撃が発生し、魔力の線を伝い一瞬で男の方に流れていった。


 ヴヴヴヴァン!!!!!


「あが! ぎ!」


 宙空に居るので電気の逃げ場などない、空気は絶縁体と同様である。


 必要以上の魔力を抑えた自然に近い魔術である。


 [デスマーチ次郎を倒した]


「一瞬で蒸発させて痛みを感じさせないつもりだったが、加減を間違えたな骨の分の電力を込めていなかった……まぁ別にいいか」


 白目を剥いて落ちていく、ぼろぼろと灰の様に体が崩れ、骨の化け物も同じ様に粉微塵になり青い光が灯り消えていく。


 勿論魔法少女の足元の馬車も消えて落ちる。



「浮遊魔術」



 魔術アビリティ


 浮遊魔術 「滑空」「減速落下」「宙空移動」



 ふわふわとゆっくり落下していく。


(別にそのまま落下しても私のステータスなら死んだりはしないのだがな、しかし落下先にはあの御方がいる)


「私は魔法少女ユウナん! お姉様の為の魔法少女です!!!」


 挿絵(By みてみん)





 ◆


 ピカッと光ったと思ったら敵を倒したお知らせウィンドウが目の前に現れて優奈がやっつけた事を知る。


「うわすげぇ、ゲームスキルとか関係なしに普通に倒したのか? っていうかもう完全に俺要らんな! やった! もう二度とあんな格好にはならんぞ!」


 階段をゆっくり降りながら独り言をする、噛んだ舌が痛い。


『お姉様!!』


 声が真横から聞こえる。


「優奈ちゃん!」


 どうやら通信だ、個別番号は教えた記憶はなかったがおそらく妹ということになったから自動的に知られてしまったのだろう。


『今私がゆっくり落下するので魔法少女になって受け止めてください!』


「え? いやだ」(ゆっくり落下?)


 普通に無傷で着地できるのだが、漆黒の魔法少女ユウナんはお姉様に抱かれたくて仕方がない。


『受け止めて!!』


「え? なんで?」


『多分今世界中の人間にこの姿見られてるのです! 視線を感じます! 私はいいですけどお姉様が顔バレしてしまいます!』


「よし! 部屋に戻るわ!」


 そう言うと体が動かなくなった。金縛りだ。


(この感覚は! まさか)


 ボン!!


 煙が突然眼前に。見たくも無い淫棒が現れた。


「この根性なし! 強制的に魔法少女よ!!」


 マジックステッキ設定を忘れて女言葉で怒る。


「んぎゃあああっ!! やめr……」


 びか!!!!



 虹色の光に包まれ体を操られ例の魔法少女のセクシーな変身シーンを再現する。


 ドヤ顔で変身したが内心めっちゃ恥ずかしい。


(恥ずかしい! 恥ずかしい!! 恥ずかしいい!!!)


 しかし操られた魔法少女はセクシーでプリティーなポーズと表情で黄緑色のセーラー服を揺らしていた。しかし頬は真っ赤である、エロい。


「身長も高くなっていいじゃないですか! 女の子なんだから悦べ! ぐへへへ」


 生まれ変わりの聖女様は容赦ない。


「畜生! ふざけんなこんな格好で部屋に戻れるか!!」


「計画通り!!!!!」


 涙目で淫棒に叫び散らす魔法少女はクールビューティな見た目を台無しにできるくらいに可愛い。


「もうやだ! ここから動かない! こんなのやだ!!」


「早く! (ゆっくり)落下する優奈ちゃんを魔法少女の強化された身体で受け止めてあげて! 優奈ちゃんが死んでしまうわよ?!(嘘)」


「!!? なに! 本当かそれは!」


「ええ、あなたが受け止めないとアスファルトにミンチされるわ(大嘘)」


「待ってろゆうにゃ!!」


 噛んだ。


(くっは!こんなんで騙されるとかこの子マジチョッロ!)




 カンカンカンカン!


 大急ぎで階段を降りる、エレベーターの方が早かったかも知れないが冷静になれなかった魔法少女は動かずにはいれなかった。


 嗚呼、その必死な姿はとても美しく儚く愛おしい。


 半べそ描きながら少しつり目な魔法少女はそのクールビューティーな顔が台無しな表情で地上に降りる。


「どこだ!! どこに落ちる!?」


 天空を見上げて青い光が落ちてきた。次郎の残骸である。


「親方!! 空から女の子が!!」


「そのセリフどっかで聞いたことある! やめろ、ふざけんなアンネ!」


 しかしそのふざけたパクリセリフのすぐ後に本当に女の子が!


「うをねぇええ様ぁああ!!!」



「降りてこい! 俺の上に!!」


 大嘘に騙されて真面目に応対する俺っ子の魔法少女(チョロイン)は全てを誘惑する。


 その可愛い姿を見られているとも知らずに、誰かに撮影されているとも知らずに素のかわいさを曝け出してしまう。


 女の子しかいないこの空間によからぬ事を考えているのは3人、落ちてくる黒猫、淫棒になった卑猥なアンネ、そして全国ネットでその神聖で侵し難い女の子の匂いしかしない、らぶりーシーンを撮影する裏切りの同級生、七緒。


(ふふふ、私が身バレするわけにはいかないから撮影中に喋れない。魔眼で望遠したこの映像は音声付きで全世界に発信するわ!そしてエックスデーにバラして勃❤︎(R-18)した私の❤︎(R-18)❤︎(R-18)❤︎(R-18)を……ぐへへへ)


 屋上から耳と目だけで撮影する、普通の人間でも撮影はできる。だが撮影範囲は人間の知覚能力を超えることはできない、はず。感知できない撮影も録音もできない、筈だった。


 だからそれらを魔術で強化して全てを撮影したのだ。



 魔術アビリティ


 肉体強化魔術「感覚強化」


 望遠鏡と集音器付きの超高感度カメラと化した七緒は同級生を追い詰めるために撮影する。


(ウェヒヒヒ)



 ◆



「大好きです!お姉様!」


「俺は男だが今はそのお姉様呼びも許してやる!来い!」


 ゆっくりと降り位置を補正しながら大好きなお姉様に向かって落ちていく。


 お姉様に堕ちていく。


 もうこれがしたいが為に次郎をぶっ殺したと言っても過言でなし。

 素晴らしくイカれた同性愛者、いやお姉様中毒者である。


 パァアアアアア!


 ダフん!!


 一切体重の衝撃をかけない様に超超減速し念願のお姉様に抱きついた。

 本当はここで黒猫が足を引っ掛け押し倒して処女を頂こうとしたのだがその必要もなくお姉様は普通にこけた。


(うっひゃーやわらケェ! お姉様おっぱいデケェ! めっちゃいい匂いする! やっぱ男だとか嘘じゃねぇかこのメス!!むっはぁあ♡)


(うぐ、優奈いい匂い!)


 決して言葉にはしない。


 魔法少女になった彼女は生来持つ魅惑魔術が制御されて抑えられていた、だから暴言を誘発することもなく綺麗にお姉様を百合誘惑する。


 そうだこの空間に男などと言う悪質物体など、どこにもないのである!!


「大好きですお姉様! ……キスして、もしくはべろちゅう♡ 」


 実質一択である。


「だ、ダメ……」


 紅潮しながら顔を逸らし涙目だ。

 ちょっと迷ったが断られてしまった。

 優奈はまだお姉様の好感度が足りない様だ。




 そう、この物語は賢治を攻略する物語なのだ。



(くっはぁ!! この女絶対堕としてやる!!)


 奴隷は既にお姉様の誘惑に堕ちている、どこまでも底のないお姉様中毒という沼に。


 綺麗な百合の根っこには毒があるのと一緒である、レズでない女の子もレズにしてしまう毒を賢治は持っているのだ。


 そう、お姉さまは生まれついてのレズビアンであり、男だなど嘘をつく魅力まみれの女の子なのである!



 矛盾など、一切ない。



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ざまぁ転生 〜ざまぁサレ役のイケメンに転生した作者の俺、追放されず復讐も諦めたのでヒロイン達のゆりゆり展開を物言わぬ壁になったつもりで見守りたい、のに最強ヒロイン達の勘違いが止まりません!〜

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