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第3話 ⑨[女の子同士の会話]

「不本意ぱぁああああんちっ!!!」


 ただ真っ直ぐに、何の計算もなくアンネの邪魔パンチが優奈の頬を貫く。


「あがぱ!!」(割と痛い!!)


 賢治というごちそうに夢中となり、思いがけない方向からの害意の薄いドMパンチを普通に喰らった。


 百戦錬磨の戦士として最悪の失態、失格、妹の奴隷も失格、いいとこ無しの黒猫の長い舌は惜しくも頬にかすめただけで倒かされてしまった。


「あ、アンネ!やっぱりお前は良い子だった!」


 涙を浮かべ唇を奪われそうだった処女の笑顔にアンネは。


(しまった! ケンちゃんの純潔を守ろうとして必死で感謝されてしまった!! これじゃケンちゃんにお腹蹴られなくなっちゃうじゃない!!)


 ドMはやっぱりドMだった。


「その黒猫妹ちゃんの言ってることは本当よ! 私たちが貴女の股間を確かめようとしてたらいきなり現れて、七緒ちゃんごとぶん殴られて気絶してたら……いつのまにかケンちゃんに馬乗りになってたの!! 必死になって貴女の処女を守ろうとしたけどね? 本音を言わせてもらうと。羨ましい! 何なのその子、また貴女(あなた)可愛い女の子引っ掛けて来たの?? そんなことしたら私の殴られる回数が減るじゃない! 私だけをぶってよ!!」


 必死に邪険にされようとする聖女様。

 嘘と本当と下劣な欲望を織り交ぜて流れる様に嘘をつく。


「アンネ! お前! 俺のこのザマは本当にお前がやったのか? ふざけんな! やっぱりお前らは悪い子だ!!」


「……ん、んん、なんか知らないうちに色々あったみたいね」


 さっきまでうつ伏せで撃沈していた幼馴染(おろかもの)が一呼吸置いて立ち上がる。


「ち、違うのよ賢治? アンタをすっぽんぽんにしようとしたのは私! アンネ()()はそんな愚かな私に「半脱ぎにして辱めよう」と天啓を授けてくれたの……確かに今の貴女の姿全裸より扇情的で恥ずかしいわ♡! アンネさんに感謝しなさい! この女豹!」


「七緒! お前今日という今日は許さんからな! 二人ともゲンコツだ!」


「そんな酷い!!私はただ幼馴染としてイチャイチャしようとしただけなのに!!」


 己の願望を織り交ぜる。


「そんな酷い!!そんな生温いツッコミじゃなくてもっと酷いことしなさいよ!! お腹蹴ってよ!! 鼻にフックか何か引っ掛けてよ❤︎」


 己の欲望を織り交ぜる。


(お前自分を聖女とか言ってなかったか?)


 綺麗なボケとツッコミと汚れ芸人の様な大ボケ、黒猫は未だ熱くなった股間と脚でホールドしてお姉様の身体を離さない。離したくない、ふくらはぎの筋肉が膨らんでいて殴っても無駄そうだ。


「私にはどんな罰を与えてくれますか?お姉様♡」


 ぎゅむ♡ぎゅむ♡


 エッチな足技にちょっと満更でもないお姉様。


「何言ってるんだ! 君は助けてくれたんだろ! さっきの事は忘れるから……冗談はやめて上から降りてくれ」


 頬に残った肉厚の舌の感触が賢治をイケナイ妄想に駆り立てていた。


「フレンチキスならして良いですか?」


 ピンク色の唇を窄めて誘う。絶対フレンチに終わらない。


 ゴクリ


 鼻息の荒いまま黒猫は訴える。


「だ……ダメです」


 女子からのセクハラは慣れっこなので間髪入れずに拒否する、頬は真っ赤だが。


「残念です、よっこいしょ」


 やばい笑顔のまま普通に退いた、少しむわっと湿度が上がったがきっと気のせいだろう、濡れ蒸れなわけがない。


 同級生の女子だったらこれから何回かセクハラされるが、黒猫はお姉様の怖さを知っている、その怖さが癖になってしまいそうだからここは退いたのだ。


(未だ壊れたくないものね、まぁ時間の問題だけど、私が)


「さて、ではお姉様私をステータス開示してください、ナノマシンという蟲が私とお姉様のこの世界での関係性を教えてくれるはずです」


 ステータス開示、四世紀前の人間なら『なろう乙w』と大爆笑しそうな言葉だがこの時代では常識である。


 人ひとり一人に戸籍が存在し名前や職業、年収、学歴、功績、個人のプライバシーに反する事や本人が見られたくない事以外は自己紹介の様にウィンドウに表示される。


 それら全てを総称してステータスと呼び、仲の良い者同士でステータスを開示しあうのはこの時代の常識である。(2回め)


「……ステータス開示要求」


「イエスマイシスター」


 名前[谷戸(やと)優奈(ゆうな)] 年齢14歳(誕生日2486/4/2)



 あなたとの関係 妹 住居 あなたと同居中



「えぇえ??! これも魔法??! 色々間違ってるんだけど? っていうか母さんになんていえば良いの?」


 単純に戸籍改竄である、半裸ですごく嫌そうな顔をしている。


「ゴクリ! お姉様安心してくださいお母様には偽の記憶が植え込まれてるはずです! 本当ならお姉様そうなるのですが、どうですか?」


「こわ!! そんなのないよ!」


「安心してケンちゃ……お兄ちゃん!」


 アンネのアホが腰に両手を当て胸を張って偉そうに宣言する、ムカつく。


「私がそういう類の洗脳や干渉系のアンチスキルは解呪する様に昨晩のうちに腕をしゃぶりながら魔法陣を体内に入れておいたわ!」


「怖っ!!! 洗脳とか干渉とかアンチスキルとか色々聞きたいけどお前昨日のうちに俺に何してくれてんの? 魔法陣?? は! まさか俺が昨日あっちで魔法少女になったのもやっぱりお前の仕業か?」


「?? あっちって、あの髭面のきったないとっつぁんボーヤの世界での事ですか?」


 大好きなパパに対して、この上なく酷いあだ名をつける自称聖女。


「ひ……お前が昨日俺の手をしゃぶってた時この子が襲ってきたんだよ! でも話し合いで解決してあっちの世界に帰ってくれたと思ったのにこっちの世界に来て? アレ?」


 混乱している、誰に何を言えば良いのか分からずに混乱している。


「賢治!!!」


「はい!!」


 幼馴染が、七緒が一喝して賢治を正す。


「落ち着いて、深呼吸、パパの事は今忘れて今言うべきことだけ考えて、見た事を素直に言いなさい」


「う、うん」


(こういう時コイツは頼りになるなぁ……)


 素っ裸にされそうになった事を早速忘れて好印象になってしまった、チョロい。


 ◆



 説明した、説明しながら服を着た。

 時系列順に優奈と名付けられた黒猫少女の正体を七緒の前で何も隠さず言った。


「つまり異世界の敵として現れた優奈ちゃん? がこっちの世界に来たって事? エロゲーかよ」


 幼馴染の当然の反応、どう考えても嘘に聞こえるが事実であるとなんとなく察してはいた。


(賢治がこの手の嘘を吐く人間でない事は知っている嘘だったとしても、言ってる間にボロが出る素直な子。つまり嘘ではない?)


「七緒、俺エロゲーとか俺らそういうのよくわからないから」


 なおパパの好きなエロ漫画のことは知ってる模様。


(アレ? 魔法で優奈ちゃんが俺の妹になったって事は……七緒に優奈ちゃんの偽の記憶が埋め込まれたりとかしない? だとしたらちょっと嫌だけど、確かめてみるか)


「ところでさ。お前この子知ってる? いや覚えてる、か?」


 間髪入れずに首をかしげた。


「全然知らないわよこんな可愛い子。アンタは昔から一人っ子でしょ? 私的には二人も知らない女が迷い込んできて二人ともアンタの妹名乗ってることに驚きよ、これがエロ漫画だったら読者の心のつかみはオッケーね!」


 どうやら七緒はいつも通りらしい、だがこの瞬間にある疑問がよぎる。


「なんだよアン、お前大袈裟に言いやがって〜、騙されたぞ!」


「魔術的素養がある人間または魔導に関わる者は記憶改竄がかかりにくかったりするのよね」


(魔導? また色々と言葉が出てきたな。覚えきれない)


 アンネは説明が下手である。知らない人間に順序立てて説明ができない。


「お姉様、魔導とは平たくいうと魔術にかかりにくい体質を生まれつき持ってる者のことですわ、わからないことがありましたら私が教えますので何なりと言いつけてください♡」


「う、うん。そして俺は男だよ?」


 いつも通りに何も変わらないと安堵する、だが。


「魔術的素養? 魔導? アンタら何言ってんの? ゲームの話?」


(んが!普通に七緒の前で魔術とか魔法の話をしてしまった!失念してた!!)


「あ!! いや、うんそう! ゲームの話!」


 とぼけた顔で近づく幼馴染、追い詰められる。


 だが新妹、黒猫がその窮地を救う。


「何を言っている前髪ロン毛、貴様その隠している右眼“魔眼”だろう? お姉様の前で嘘を吐くのは止めろ」


 だが黒猫の妹は場の空気を読まない。

 そして幼馴染の嘘を暴く。


「え?」


 幼馴染みの表情が歪む、一気に目が鋭くなり優奈と名乗る女の子を睨んだのだった。



「私にはお前の隠匿術式が読める、単純にステータス差という奴だな。嘘を吐いても無駄だ、ひっつき虫が……、まぁお姉様ほどの清らかで純真で超絶美麗聖女にお前程度の虫がつくのは予想済みだがな、だがもうお前はいらん、私がいればなんの問題もない。帰って良いぞ虫」


 この上なく酷い言いようだったが、それよりも賢治は幼馴染の正体に気を取られている。


「七緒? そうなのか? じゃあ待てよ? もしかして全部知ってて俺にこのゲームを? もしかして昨日のことも知ってて?」


 裏切られた時の顔、七緒の大好物…………だがこの顔じゃない。

 七緒が興奮するのはもっと性的な裏切りだ、ただ傷つける嘘なんて望んでいないのだ。



「違うの! 違うのよ! ただ私は、アンタがこのゲームアカウントを売却すればパパの事を忘れられるし……今みたいにパパと遊べればまた前みたいに元気になるかな? って思って、御免なさい」


 目を逸らして、心から謝る幼なじみにケンちゃんは語りかけた。


「ん?でも魔法少女にさせたのはお前の趣味だろ? 誤魔化されないぞ!」


 そう、簡単に情に流されはしない、泣かれても傷つけても知りたいことをパパのために聞き出す。その決心で七緒を攻め立てる。が。


「……ん? 魔法少女? なんの話?」


「へ?」


 肩透かし、全然見当違いのことを言ってしまったのであった。


「魔法少女って昨日のあの痴女丸出しの格好したアレの事よね?わたしはあんまり興味がなかったからニュース流し読みだったけど被害が凄くて正体を突き止めろ!みたいなこと国営ニュースでも懸賞金かけてたわ、え? アレ、アンタなの? やった、臨時ボーナスゲット!!」


 一転攻勢、やっぱりケンちゃんに悪魔の顔は似合わない。


「ち、違う! 俺は魔法少女なんかじゃない! 俺は男だ!!!」

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ざまぁ転生 〜ざまぁサレ役のイケメンに転生した作者の俺、追放されず復讐も諦めたのでヒロイン達のゆりゆり展開を物言わぬ壁になったつもりで見守りたい、のに最強ヒロイン達の勘違いが止まりません!〜

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