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第3話 ⑤[パパ大好き]

 そして、賢治ははぢめて魔法少女になり、タコ女に腕をむしゃぶられてるとも知らずに夜の就寝をしてしまった時に戻る。


【[第十二世界]の製作に成功しました、固有異世界の機能限界に到達しました、現時点零世界から魔力次第で配置制作可能です。】


 まだ寝始めてぼんやりとした意識の中、愛しのパパが真面目な顔でウィンドウに話しかけているのを目撃する。


「彼らの生活もあるだろう? なるべく文明は破壊したくない、今の時点で何も出来ていないんだ。きっとそんなに……」


『オヤジ?』


 息子の声を聞いてはっとしながらウィンドウを消した。


「聞いてた?」


『ん? 何が?』


 なんとなく彼女、もとい彼は気がついた。


 このゲームは魔術と何か関係ある、七緒に念押しされているのもあって魔法少女になったのもきっとこのゲームが何かのスイッチになっている。


 それくらいの予想は流石にしている。


 だからパパが何かに気がつきゲーマー特有の勘で攻略の糸口を掴んだとしてもそれは実の子にも話せないのだろうとも理解できた。

 幼少の頃パパと一緒にゲームしていて勝てたことなど一度もない、そもそもゲーム自体あまり好きでないのもあってやる気がなくパパとの時間が大好きな甘えっ子だっただけなのだが今はその話は置いておこう。


 要はパパはそんな人間に接待ゴルフの様な敗北すら出来ないほど負け嫌いなのである、だから攻略も自分の異世界転生先であっても勝ちを譲る様なことはしない。そんな勝ち負けに対する真摯な姿勢を見て育った故賢治は例え親しい仲であっても有力な情報は与えないし互いにゲーマーとして競い合う存在であろうとするのだ。


 そんな負け嫌いの賢治は嘘であってもそれを貫き通す。だから父親に隠し事があってもそんなに気にしない様にしている。


「いや、なんでもない。それよりどうだい?この光景は!!」


『おお』


 広がる、つい数時間前まで木工の家々だったのが全て煉瓦作りのスローライフな街並みと化し明らかに文明のレベルが上がっている。


『ゲームにしちゃあ、すごい作り込みだよなぁ。街人の服装も使い古しみたいなボロ布から繊維質の彩り豊かな服になってて見れば見るほどゲームらしからない画質だよなぁ、何千億かけた映画みたいなクオリティだなぁ。現実世界より解像度あるんじゃないか?』


 この時代の画質は人間が感知できる範囲を超えている、血管や骨皮を再現してデータを折り重ねている。表面データ多重化が普通だがそれらを見慣れた現代人の賢治でもこの魔剣聖誕のゲーム画質は例がないくらいの質の高さであった。まるで本物の肉体を持ったモブ村(街)人がいる様だ。


(そんなわけはないけどきっとジョージが何か凄い技術を駆使してるんだろうなぁ)


「まるでシ◯シティみたいだね! これから僕たちがこの街を再興するんだ!』


(再興?イチから作るから新興じゃないか? まぁ細かいことはどうでも良いか、所詮はゲームだし)


『ん? アレ? 何か大切な事を忘れている様な? ゲーム……あ、そうだ!!俺はこんなゲームの事なんか聞きたいんじゃなかったんだ!! オヤジアンタあの時!』


「あの時? あ、魔法少女の事かい? カナミン☆ 参上!」


 魔剣を装備したまま魔法少女のぶりっ子ポーズをして可愛い息子を煽る。


『むきぃいいい!! ふざけんな! オカンの名前使うとか未練たらたらじゃねぇか! 再婚しろ!』


 感情的になると本音が出る。


「そんな無茶なぁ、僕一応異世界転生先(いせかいてんせいさき)だよ? 会いたくてもカナミン☆に会えないよ」


 煽る、煽り散らかす。


『でもどうせアンタ誰とも再婚してないだろ! 悪い男のふりして母さん一筋だからな、そう言うの息子である俺には分かるんだぞ?』


「ん〜? まぁ確かにそうだね、でも、ケンちゃんには男女間の話はちょ〜っと早いかな〜?」


『俺は成人男性だ!!』


「僕にとっては中学生からイメージが変わらないんだよなぁ、ってか実際そんなに変わってなかったよね?ちょっと背が高くなったくらいじゃ無かった?」


 先程から2人で話しているがぱっと見40後半のおっさんが独り言をしている様にしか見えないだろう。


 しかしゲーム世界に転生したと思ってる正志にとってはママに嫉妬した大切な息子との10年ぶりの会話だ、街人(NPC)に何を思われたところでどうでも良い事だ。


「俺は成人して親父と同じおっさんになった!そういう中学生の時のノリはもうやめろ!!俺は可愛くなんかない!!」


「はっはっはっ、相変わらずケンちゃんは可愛いなぁ♡ 女の子に良くからかわれてたよね? えーっと確か七緒ちゃんとかいう子だったっけ? あの子とよく遊んでたよね?」


『あいつの話はやめろ! って言うか一番仲が良かったのアンタだろ? アイツ本当はあんたのこと好きだったし』


「アレ? そうだったっけ? でも息子と同じ年齢の子に好かれても僕ロリコンじゃ無いしなぁ?」


『そう言うことじゃなくてさ、小学生の頃アイツ結構荒れてたのさ。原因は両親の不仲だったけどオヤジはそれを助けたじゃ無いか、アイツの父親ぶん殴って目を覚まさせてさ』


 賢治は幼い頃の記憶を反芻した、オヤジと呼ぶその男は間違ってる事をそのままにしない、七緒の事を何か理不尽な理由で殴ってその場に居たオヤジが殴り返したのだ。


「そんな事あったっけ? よく覚えて無いや、多分ケンちゃんの教育に良くない男だったから感情的になって殴ったんだと思うよ?」


『あー、ハイハイオヤジがそう言う天の邪鬼だって事は知ってるよ! 本当は正義感バリバリの優しいオッサンなんだよな』


「まぁそれで良いやケンちゃんによく思われるのは嬉しいしさ。否定しないよ? でもそんな風に直ぐ人を信用しちゃうのは実の父親としてどうかと思うよ? 特にいきなり現れた白髪の美少女とかさ?」


 アンネの事だ、その瞬間賢治は言いたい事を思い出した。そういう風にオヤジ殿が仕向けた様にも思われるが。


『アンネの事か? やっぱなんか隠してるな?』


「んー隠してるよ? 当然じゃ無いか、僕とケンちゃんは親子であるのと同時にライバルのゲームプレイヤーさ、正確に言うとタッグなんだろうけどさ? いつそのシステムが変わるか分からない。僕は誰であろうと負けない、絶対勝利の勇者だぜ? それが可愛い息子でも一緒さ」


 先程までの父親面から一気に表情が変わる、穏和な雰囲気などなく薄く笑いながら挑発する様な目つきだ、オッサンだが美しい。

 そんなパパにケンちゃんはメロメロだ。


『な、な、何が可愛いだ! 思い出して来たぜ! そう言う事を平気で女子達の前で言うから俺は七緒のアホどもに虐められたんだ!」


「そうじゃ無いよ、ケンちゃんが女の子に可愛がられるのはケンちゃんが可愛いからさ。親の贔屓目なしにケンちゃんは可愛いからなぁ? 正直言って魔法少女の顔より可愛いよ?」


(馬鹿野郎!!)


 押し黙る、こうなった時のパパは何を言っても言い返せない。


「……それとさ、あの白髪の美少女は僕よりも信用出来ないと思わない?」


『ん?なんだよオヤジ、アンタああ言う如何にも「異世界人です」って女の子好きじゃなかった? むしろアホみたいに“なろう小説”の話をして「デュフフ」とか言いそうなのにさ?』


「創作と現実は違うよケンちゃん、女が男に近づく時は何かをさせようとする時だ。あの女を信用しちゃだめだ、それは君が今まで女の子達にされて来たセクハラを思えば分かる事だろ?」


 違和感、大好きなパパと何かが違う気がした。AIだとはもう思っていない、だが今の言葉は知ってるパパの言葉じゃない気がしたのだ。


(温かい言葉ではあるけど、俺の知らないオヤジの顔かな? 離婚してからのオヤジは知らないからなぁ)


「僕の勘だけどあの女は嘘つきだ、平気で男を騙して油断させる狡猾な女狐のような奴だ。きっとあの女に騙された男は数え切れないくらい居るんじゃないか?」


(ん?)


 違和感、その正体が今わかった。



『なぁ、オヤジもしかしてアンネの事何か知ってるのか? なんかそんな感じがするけど?』


「いや?今日が初対面だよ?」


 間髪入れずに否定する、嘘を言ってる感じがしない。だが何か引っかかる態度ではあった。


(やっぱり10年の間に何かあったのかな?女関係で詐欺にあったとか?)


 あんまり深い事を聞いちゃいけない気がした。


『ふ〜ん、まぁいいやあんまり聞いちゃいけない事なんだろ?オヤジもやっとオカンの良さが身に染みたのかな? って思ってさ』


「なんの話だ? 奏美がいい女なのは最初から知ってるよ? ケンちゃんも奏美に似て女の子にモテるしね? ほんと嫉妬するくらい奏美似だよ」


『俺は男だ!』


「はいはい」


 女の子を宥める彼氏の様に正志は軽く返答した。

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ざまぁ転生 〜ざまぁサレ役のイケメンに転生した作者の俺、追放されず復讐も諦めたのでヒロイン達のゆりゆり展開を物言わぬ壁になったつもりで見守りたい、のに最強ヒロイン達の勘違いが止まりません!〜

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