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第3話 ④[女同士の女の子の奪い合い、勝者はパパ]

 ゴン!!


 同級生の口が届く。……その直前後頭部から鈍い音がして衝撃が走る。


「あぎゅ!」


 後頭部から殴られた、完全に意識外からの攻撃。


「そっから先は18禁だよっと」


 一歩遅れてきたアンネが台所からフライパンを持って殴ったらしい、頬にかすめる形になったが逸れてディープキスを免れた。


「ケンちゃんのファーストキッスの相手はアンタじゃ無いわ! その娘にはちゃんと憧れのアイドルが居るんだから」


「ぅぐぉおお! 意外と痛いわぁあ!」


 人間は頭を殴られても漫画の様に簡単に意識を失ったりはしない、だが腕力が意外と強いアンネの一撃で怯ませることくらいはできた様だった。意外と強い。


「はぁ、ハァ、はぁ、ハァ、」


 あまりもの超展開に息を吸えず、緊張から解き放たれた今、足りない酸素を摂る。まるで全速力した後の様だ。


「これで分かったでしょう? ケンちゃん、貴女は………、ん?」


 汗がたちこめて、まるで部屋中がケンちゃんの匂いに包まれた様になる、ピンク色の空間が出来上がってゆく。


 涙目で頬を赤く染めて息を吸うたびに口端から美味しそうな唾液が溢れてアンネを誘う。


「アンタ絶対わざとやってるでしょ?!」


「ふぇ?」


(アレ? 妹のフリは? え? ってか何でこんなに眠いんだろう? ダメだ、目の前が霞んで眠気に逆らえない)


「ふにゃあぁあああっ………ぐぅうううう」


 寝てしまう、女子に襲われた直後に眠気に襲われそのまま眠る。眠り姫である。


「コイツ!! そうか、魔器眠りか、確かに今まで寝てる時もずっと魔術使ってた様なもんだしなぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()わよ、私が抜けたからうまく自分の力を調整できないのかな? うーん、都合よく身体を調律できる女の子が現れてくれないかしら? 七緒ちゃんはダメ、絶対アンタ手を出すから」


 頭を抱えた七緒は睨み返す。


「あ、アンタ何者なのよ! この私にダメージを食らわせるなんて! ()()()()()()()()()()してるのこのホワイトゴリラ!」


「あら? こんな可憐な美少女を前にしてゴリラだなんて失礼ね? あんなに筋肉隆々じゃあないわよ」


 邪悪な笑顔だ。もう猫をかぶる相手がいないので二人とも本性を出してぶっちゃける雰囲気だ。


「アンタもあの子に魅了されていた筈、どうやって解除したのよ!」


「私はアンネ・アイン=クロイツ、聖女の中の聖女、どんな相手も魅了してきたわ。魔王も、勇者も、賢者も、聖女も、だったら私も魅了される可能性があるって事だもの当然の事魅了と魅惑の対策をしているわ、この世界の()()()はそんな事も知らないの? それとも貴女が馬鹿なのかしら?」


 平然と相手が魔術師という存在であると定義している、先程の戯れの中でそうだと確信できる所作があったという事だが常人には理解できない。


「私の魔術は特殊なのよ、っていうか貴女異世界からの侵略者なのかしら? だったらそれ相応の対応が必要だけど」


「異世界からってのはあってるけど違うのは侵略者って所ね、私はこの子の前世が肉体を得た姿よ貴方達風にいうなら魔物ってやつかしら?」


「前世? そんなものがあったと仮定してもあり得ないわ、アンタみたいな性悪女とこの子が同じものであってなるものですか、身の程を知りなさいよ」


 矢継ぎ早に言い合い険悪になっていく、どうやらこの二人はウマが合わない様である。


「んー、パパ」


 眠り姫の寝言


「「!?」」


 しかし眠り姫の挙動に反応する速度は同じである。寝言に大好きなパパの事を言い出して二人ともほっこり顔である。


「ここは取り敢えず休戦としないかしら七緒ちゃん」


 白銀の美少女は今までにないくらい真面目になる。


「分かったわ、取り敢えず休戦ね? アンタの事もなるべく報告はしないでおくわ」


「報告? ああもしかして・・・・」




 ◆




 同刻、フルダイブ中。



『んん、パパ』


「起きたかい?ケンちゃん」


 一人のおっさんが無機物の剣に声をかけた。


『は!! 俺は何を! 言って! んがが今のなしだ! クソオヤジ!!』


「無理に言い直さなくていいよパパが恥ずかしいなら父さんとか言って欲しいな」


『俺はもう23歳だぞ!? アンタが母さんと離婚した時は中1だった、その頃確かにたまに間違ってパパとか言ってたけど! 今のアンタは[オヤジ]だ!』


 ゲーム内でもヒスり始めた、まるで彼氏に図星突かれて慌てふためく女子である。魔剣だけど。


「まぁ、今はそれでもいいさ。それより見てよこの[街]をさ!」


『おお、これは!』


 ◇


 時間を遡る。


 昨日、ゲーム内でなろう怪人を倒した時の話だ。


 光が地面を包み込み、その場に草原しかなかったのが変質していく。


 それは一言で言ってしまうなら寂れた村といった感じだ。


 しかし起伏のあった土壌が平坦に整地されて数秒で木造の家家が生成されるその様は賢治にとっては凄い演出であった。



(ゲームエフェクトで誤魔化すんじゃなくて物質の生成から表現している、流石ジョージがゲーム開発に入ってるだけはあるなぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!)



 魔剣の中から驚く賢治は心の中ではその現象を冷静に観察していた。


【[強化画面建設]終了しました名前を入力してください】


 また音声が聞こえる。


「あーうん成る程強化画面か、取り敢えず[街]で」


『オヤジ適当過ぎ!」


「ん。でも気に入らなければこういうのって後で名前変えられるでしょ、俺こういうのってテンポを大事にしたいんだよねー」


【[街]固有名詞固定化完了、街人を生成します、街人は魔剣Kenjiのゲームレベルを基準としてその知性レベルを向上し転生者のゲームレベルを基準にステータスを向上します。】


(なんの事だ? 街人?)


 そう思う間もなく正志の目の前に十人程の人間が現れた。


 ボンボン、


 こちらは煙のゲームエフェクトが出現し、ボックスから取り出したアイテムのようなあつかいに見える。


【[街人]重要施設の運用にお使いください、武器や防具の強化の職人、服を作る職人や農業従事者を命令できます。】


「命令?」


 正志は少し怪訝な表情になる、不愉快な事を聞いたような顔だ。


【固有異世界を展開します、防壁製作、ガーディアン設置、侵入者を排除する機能に特化します】


『固有、異世界?』


 ぼきゅん、ずどどどどどど、


 聴き慣れない単語に疑問を持つまでに遥か遠方から多重にかなり大きな灰色の巨大な壁が生成されていく、正確な高さは分からないがおそらく高さ50メートル横10メートルほどの一枚壁が何枚にも折り重なりながら「街」を中心に真四角に囲って行き一つの防災城壁の様なものが出来上がった。


 びぃいいいん!


 鈍い何かの音、その音が空からする事を確認すると雲ひとつない青空が変わっていく、入道雲がいくつも点在している大空へと変質、いや()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


【[第零世界]の製作に成功しました、更に[第一世界]の製作に移行します】


『さっきから何言ってるんだこのアナウンス?』


「ん?嗚呼そうか、まぁなんか作ってるんじゃない?」


 先程までの轟音や天変地異が起こらない、とても静かだがウィンドウが消えないのだ。


「ケンちゃんは意外と勉強熱心だからなぁ、ゲームのこう言う仕様は理解できないかな? まぁほっといて良いと思うよ? それより今目の前にあるこの街の性能を調べようよ」


『そうだな、ゲーム好きが興じて母さんと離婚した元父親の言う通りにしよう』


「ご、御免なさい」


 正志さんは申し訳なさそうな表情で魔剣を撫でた、まるで幼児をあやす様に……。


『〜〜〜〜〜っっ!!』


 声にならない叫びをあげたかった、嬉しい気持ちと懐かしい気持ちが織り混ざり、暴走した。


『じゃ、じゃあ街散策しようぜ!! えー、あとまちびと?に話しかけて何か冒険のヒントを探そう!』


(そうさ! これはゲームなんだ! せっかく仕事を長期休暇してまでこんなのやってるんだ!)


 彼は泣いている、体が魔剣だから涙は流せないのだけども。

 しかし久々に会った父親とのその後の散策はとても楽しいと思えるものであった、彼はまだこの世に魔法がある事を知らない。



 それを本当の意味で知った時“彼”は“彼女”になるのだ。


 

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ざまぁ転生 〜ざまぁサレ役のイケメンに転生した作者の俺、追放されず復讐も諦めたのでヒロイン達のゆりゆり展開を物言わぬ壁になったつもりで見守りたい、のに最強ヒロイン達の勘違いが止まりません!〜

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