第3話 ②[イケナイ事]❤︎
しかし変わらないはずのただ一つの吸引力はなくなり一気に手が解放された。
にゅるぽん、ととても美少女の口内から聞こえてはいけない音がアンネのタコ口からする。
ニマニマしながら取り出された賢治の手を見る。
「男の手を飲み込もうとするとかどういう口の構造してんだ」
「アハハハでも貴女の手、普通の女の子より小さかったわよ!」
「!?」
一生むしゃぶり尽くすと決めたアンネが何故途中でやめたのか。
ソレは計算でもなんでもない、飲み込まれそうになった状況を賢治も満更でもなさそうな表情になったからだ。可愛いアンネになめなめされて気持ち良くなったのだ、つまりはメスの顔である。
しかしアンネはドMで変質者である、そこに変態と狂人を足してもいい。
責められるのは好きだが責めるのは苦手なのだ、奥手でもあり聖女であり責められる以外は趣味ではない。つまりは変質者である。
趣味ではないから萎えてしまう。
いや、初めからやるな。
まるで寓話の「北風と太陽」の様だ、怒りのまま叱っても問題を悪化させるだけ賢治の聖母の様な微笑顔でアンネの中の邪悪な性欲を浄化したのであった。
「俺は男だ」
「ん? うん、いや否! ケンちゃんは女の子! 今の台詞を誰に言ったかは知らないけどケンちゃんは女の子! 前世の私が女で聖女なのだから間違いなく女の子よ!」
「三回も女の子っていうな! ちっくしょう馬鹿にしやがって! 見ろ! お前のせいで俺の手はベトベトだ!」
(こんな事する奴が聖女とか性❤︎の間違いだろ!!)
タコの唾液がよく練り込まれ若干皮膚がふやけている様に見えてしまう。エロい。
「お前! 絶対ゲーム抜けたあの後寝てる俺に、な、何か色々しただろう!! 何をした! 正直に話せ!」
(うーんと本当はケンちゃんが寝た後直ぐにむしゃぶりついて一旦我慢して、気を紛らそうとして、でもやっぱり我慢できなくて、1時間ほどむしゃぶりつき直したんだけど………ふむ、事実を言ってもドン引きするだけで怒ってくれない、どうすれば怒り狂ってぶん殴ってくれるのかしら?この子優しいから未だに私のお腹を蹴ってくれないのよね、困ったもんだわ)
「腕だけじゃなくってオ❤︎ ❤︎コも❤︎ ❤︎ ❤︎るも啜ってやったわよ、ご馳走様♡」
賢治はドン引きを超えて呆れている。
「直ぐわかる嘘をつくな馬鹿ヤロウ、それは全部女の子にしかついてないだろ? 俺は男だ!」
冷徹に見下しながら軽蔑している、しかしどうやらアンネにとってはその冷たい視線がご褒美だったらしく頬をほんのり赤く染めている。
「俺がアンタの生まれ変わりだとしたって別に男に生まれ変わらない訳じゃないだろ、いい加減認めて成仏してくれよ悪霊女」
(なんていう暴論!! 女の子のくせに! 言葉責め!! 最高よ!)
怒らせるつもりで言った心にもない悪霊というレッテル、しかしこの変質者、全く動じない、更に頬を赤くするでもなく何か驚いた様な表情だ。
「ケンちゃん、私が前世だって話信じてくれるの?」
保留にしていた生まれ変わりの話、その全てを信じていないと出ない言葉だ。
「あ、いやそういうわけではないんだけど、その、んー気まぐれだよ」
気まぐれ。その気まぐれで本音が出たのはさっきまで見ていた夢のせいだ。
どこかこの世界でない所にアンネが居た、あまりにリアルで記憶から消えない夢。
実感がこもった初めて感じる他人との魂の共感、ソレは既に理屈を超えた人生の追体験だ。
「気まぐれでもいい! 悪霊扱いでもいい! 嗚呼やっと私と同じになれたのね」
「うへぇ、同じになれたって一気に距離が近くてキモい引くわ!」
率先して突き放そうとする態度はアンネに喜ばれる、そんなことは分かってはいるがどうしても反応として顔に出てしまう。
「私たちやっぱり相性いいと思うのよね! 同じ魂だし性別も一緒だし」
「俺は男でお前は女だ!」
「ソレは本当かしら? 証拠を見せて頂戴な」
つまりズボンとパンツををベロンと下げろと言うことだ。
「ベロン、って見せられるわけないだろ、アホか!」
「私の全裸は見たのにっ? 酷い!!」
「お前!!」
ガタン、
「ん?」
壁から音が聞こえた、そこは隣人の変態同級生がいる部屋である。
(ネズミ? いやでもココ10階だぞ? 鉄筋コンクリの壁越しに音が聞こえるわけないし気のせいか?)
因みに無茶な改築の時に七緒は盗聴するために壁が薄く作られている、そしてさっきの物音はもちろん変態同級生のものだ。
どうやらアンネの言った『全裸』のくだりで動揺しコケた様だ。
因みに耳を澄ませて大好きなケンちゃんの部屋の音を聞くのは仕事であり、毎日のルーティーン (日常的盗聴行為)である。
「ちょっとよそ見してごまかしちゃうのはずーるーいっ!私の❤︎ ❤︎❤︎ ❤︎もおっぱいもお尻も見たのになんで私のケンちゃんの❤︎ ❤︎❤︎ ❤︎もおっぱいもお尻も見せてくれないの!」
「見たんじゃなくて見せたんだろ! ソレにそんなディープな所まで見てないよ!」
(ケンちゃんの肌の綺麗さに見惚れてたとか言うのはやめておこう、嫌な予感がする)
「ねぇ、ケンちゃん♡ケンちゃんが見せてくれないならぁ、私が見せちゃおうか? 私は貴女の変質者、貴女の望むと望まざるとに関わらず脱ぐわ、それが嫌なら魅せて頂戴な♡」
「な! ぐ、脱がなきゃ脱ぐってなんだよそれ! 損得の天秤があべこべだ!」
(あ、しまった)
「ん〜? つまりケンちゃんにとって脱がない事はリスクにならないし、私が脱ぐ事には得という感情があるって事?だから共に魅せあいましょっ♡♡♡」
アンネは変質者だ、そして相手を本気で魅了する際はもう服など着ていない。
妖しくアンネの眼光が、その薄紫の瞳の色が次第にピンク色の光を放っていく。
♡ぽわん♡ぽわん♡ぽわん♡
そして賢治の目にはそれが空間の全てを埋め尽くす様に錯覚していった、コレは昨日アンネがし始めた魅惑魔術の続きだ。
「な、なにゅ、何をしたゃ?」
蕩けて口元も覚束ない、ただでさえ噛みやすいケンちゃんの口が、舌が思うように動いてくれない、だと言うのに。
だら、
「あ♡すっごく簡単に魅惑魔術にひっかかちゃうのね?あんなに周りの女の子を引っ掛けちゃうくせに悪い子ね♡でもこんなすぐに魅了状態になる子あの子以来よ?このどすけべさん❤︎」
「あの子? ってもしかして」
夢の中で『魔王』と呼んでいたあの子、否、ケンちゃんからするとあの子と言うよりは。
「あら? もしかして魂越しに私の過去の記憶とか盗み見たの? 女の子の秘密を暴こうなんてとっても無粋ねぇ?」
(なぁ〜んてね、私が強制的に見せたんだけど)
などとは知らず少し悪い事をしてしまった気になったチョロちょろケンちゃんは罪悪感を感じ魅了状態が深く心に突き刺さっていってしまった。勿論全てアンネの計画通りである。
「御免、なさい、んん!」
メス顔になってしまう、男だと自負するケンちゃんのメス顔はその堕落に抵抗しようと必死に雑念をかき消そうとするが変な声が、メスの声が勝手に出ちゃうのだ。
「あらら? まだ触ってもいないのに感動的に感度が良いわね♡ やっぱり同一人物だからかしらん♡相性抜群ね♡」
はぢめての魅惑魔術に翻弄され、男では味わえない快楽がこみ上げてくる、下腹のヘソの下から、何かが。女の子特有の何かが込み上げる♡
(何か、変だ俺、こんなの初めて)
「我慢しなくって良いのよ? みっともなく喘ぎなさいケンちゃん、それが貴女の正しい性なのだから♡良いからさっさと女の子と認めなさいな❤︎」
どったん! ばったん!! ばきばき!
もはや隣の物音などどうでもいい、今この快楽に身をまかせたい、そう思える賢治のメス顔はドMのアンネに真逆の性質を矯正させるにたる魅力であった。
(あっれ〜? 隣の同級生おちょくるためにしてた事なのにいつの間にか私本気になっちゃってるぞぉ? まぁいいかっぁあ! この子すっごくかぅっわいいし♡)
「俺は男だ!」
視線を逸らそうと嘯いた捨て台詞を吐くが首が動かない、魅了状態に陥った者はその対象から目を離せない、それは我が子を守る母の様に愛が強制されていく。
「大丈夫、今日は味見だけだから」
「味見?」
「その柔らかそうな口❤︎ フレンチキス、大丈夫よ❤︎そんな怖がった顔しなくっても、私たちは異体異心同魂おんなじ女の子❤︎だからファーストキスに含まないわよ〜❤︎ グヘヘへへ♡♡」
言いながらもう既に上半身を脱ぎ男物のシャツ姿である、はや脱ぐすぎて見逃してしまう。
ピンポン! ぴぴぴぴピンポン! ピンポン!!
先日壊されて魔法で直ったドアの向こうで同級生が連続でチャイムを鳴らす。
だがピンク色のオーラに支配された二人にそんな雑音は聞こえない。
「あ………味見?だったら、いいのかな?こんなに可愛くて、愛おしくて、魅ただけできゅんきゅんする女の子が頑張って誘ってるんだ、受け入れちゃってもいいんじゃないかな?母さん御免なさい」
女の子の様に自然に高くなる声、否、今この瞬間完全に賢治は女の子に戻ろうとしている、ああ、きっとここで処女を失うのだろう、アンネではなくケンちゃんの処女がここで!!
ばきゃきょおおん!!!
ベキべきばき!
「うおらぁあああっ!!! こんデバガメぇええ!!」
幼馴染みは鉄製のドアを吹っ飛ばした。
幼馴染の愚行である、その轟音は流石にチョロインの耳にも聞こえた。
「あの声は?な、七緒!?」
「私が!!貴女のななちゃんが!助けに来たわよ!!!賢治♡」
先程までの悪鬼羅刹な破顔が賢治を見た途端一気に爽やかな笑顔で出迎えた。
「本当のデバガメ同級生が現れたっ!」
アンネがRPGのゲームみたいなナレーションを入れる。
そう、完全にななちゃんに対する煽りである。




