間劇 「てんやわんや」
シャワーを浴びて戻ってきた剛力な妹はさっきまでのことがなかったかの様にフレンドリーに話し始めお姉ちゃんこと賢治を困惑させる。
「お、俺もお風呂入ってくるけど、さっきみたいに冗談みたいなことはするなよ!」
「大丈夫よ〜、何もしないわ」
「本当だな! 信じるからな!」
「はいはい、ちょっとエッチな事があったからって自意識過剰すぎ、私だって女の子よ? 男の裸なんて興味ないわー」
「絶対だぞ!!!嘘つくなよ!!」
「はーい、アンネ嘘つきませーん」
………普通に嘘だった。
普通に気持ちよく温浴してる時に素っ裸の変質者が侵入、一緒に温浴しようとしたのを「アンネさんの変態!!」「裏切り者ー!」「死ねぇ!!」と罵倒と温水攻撃と桶攻撃という御褒美をもらってご満悦になり。
「痛いの最高!これが生きているという実感よ!!」
という褒め言葉でもって裸のまま退散した。何がしたいねん。
◆
西暦2500年4月1日 日本 18:30 エリアN0001
「………ケンちゃん地味にお風呂長いな、知ってたけど」
(私の時代は水浴びが主流だったからあんまり時間はかけられんかったっけ、裸でいる時間が長いと夜襲されるし、そういう体質だったしなぁ、まぁケンちゃんもそうなんだけど、あの子勘がいいのにそんな事されないって思い込んでるからなぁ〜)
ガサゴソガサガサ、
変質者はケンちゃんを心配しながら寝室を物色していた、何故かって? またまた怒られてビンタされたりしてSMプレイに興じる為だ。この女抜け目ない!!
(嗚呼〜この惨状を見て怒り狂うケンちゃんにビンタされたい! そしたら倒れてぇ♡ お腹けられりゅの♡ んふふふ♡)
ピタ、
ゲス妹の手が止まる。下着類を荒らし散らかしまくることに一切手を止めなかったサイコパス妹の手が止まったのだ。
「コレは、アイツやっぱり」
ゲスの行いを止めたのはそこにあったお人形だ。
お姉ちゃんのパパの作った操り人形。
精巧な青い髪の少年と赤髪の少女の操り人形。その二つのうち赤い人形を見て少しだけ思い詰めた様な表情をした。
「本当にバカなやつ、未練たらたらじゃない」
ぎゅっと少女の人形を抱きしめて切ない表情を浮かべた、そこにあるのは聖女の顔、わざとおちゃらける大人の女ではない。
ドタドタ、
どうやらお姉ちゃんが風呂から上がった様だ、なんか慌てている様で足早に床を鳴らしている。
「どこだアンネ! 出てこい! オヤジも出て来い!!」
自室で大声上げる、怒っている様で少し低めにドスを聞かそうとしている声だ。
その音と声を聞いて慌てて心の仮面を被りお人形だけは元の場所に戻した。
「嗚呼♡ 素敵☆ あの怒気なら間違いが起きるかも♡」
乱雑に青髪の人形を投げ捨て赤髪の人形はそっと元の場所に置いた。
「見つけたっ!ってお前どんな格好だよ!!」
「え〜なんですか〜?」
わざとらしくその場でバレリーナの様にくるくると足筋伸ばしてターンする、頭にトランクスを被りながら。
「ほうほう、そこまでして俺を怒らせたいのかぁん?!!えええ??!」
ガラの悪い怒り方だ、多分親のどちらかの育ちが悪いのだろう。ノリがど田舎のイバラギヤンキーだ。
「ハイ! 叱ってぇ! 殴って! なじって! 踏み潰してぇ! お腹蹴っていじめまくってぇえ♡」
眼を潤ませて紅潮しながら本気で言っている、この変質者、変態である。
一気に顔が青くなってチョップをしようとした手を止める。
「お前は悪い子だ!!」
「知らなかったんですか? 私は嘘つきで悪い子なんですよ?」
何かの決め台詞の様に決めた。
体をそっぽむけて首を斜めにこっちをむけて長い髪の毛を宙に浮かせる。
「そのポーズアニメで見たことある、なんとかしゃ?度ってポーズだ!母さんもよくやってた!!」
「なんと! でも私は三千年以上前に生まれてたから私が先よ!!」
「え? 三千年? 何言って……イヤそんな事より! これなんだ!!」
そう言いながら目配せで何かをぶん投げる、おそらくアッパーモードで情報をぶん投げたのだろう。だが。
「あーケンちゃん一応言っときますけど私身体にナノマシンとかいう小さな蟲みたいの入れてませんのでデータとやらを渡しても無駄ですよ? 体に蟲を入れるなんて嫌ですし。私はドMですけど、ソレは趣向が違います!! 私ケンちゃんみたいなお姉ちゃんに殴られるのが趣味でいつもどうやってキレさせるか考えてる所存でございます」
「うるせぇ!! 嫌うぞ! っていうか既に信用も何もかも最低だぞお前ら!!」
「ら?」
「くきぃいい!! 分かってんだぞ! お前ら今日の痴態を動画にして世界中の動画サイトに投稿しまくっただろ!! なんだあの拡散力! 絶対なんかの協力を得ただろ!!」
「?! ああ、あの子やってくれたんですね……アルバちゃんですよ! 言いませんでしたっけ? あの建物に映し出されるっていうあの子、こんな世界で精霊化してるなんて凄いわよねあの子しかも魔術師でもないお爺さんが人工的に作ったってんだからってんだから凄いわ、私のいた世界でもそんな奴は居なかったわよ? ジョージとかなんとかいうあの有名人よね」
流石に予想外の反響すぎてお姉ちゃんは混乱しているようだ。
「誤魔化してんじゃ、え?ジョージってまさかジョージ•J•ジョンセン?」
「ええそうよ? 因みにあの白コートのアバターの元の中身がそれよ!」
目が見開く、驚きすぎている様で死にそうな顔をしている。
「あのジョージ? 学校の授業の主要必修科目の全てに名前を連ねるあの超超有名人のあのジョージ•J•ジョンセン!? 史上ない天才と言われたあの?! そんな人が作ったってAIって事はもしかして感情のあるAIって事か?!」
「感情があるのってそんなに驚く事なのですか?」
「とんでもない事だよ!! 感情があるってことは下手したら世界を支配出来る力を持つAIだぞ?! ソレが本当ならとんでもないことになるぞ!」
首を傾げて本当に分かっていないという顔だ、そもそも『感情がない』という事が理解できていない。
「あの子は道具じゃないんだから感情があるのは当たり前でしょう? 支配欲があるかどうかは本人次第でしょうが、アルバちゃんはそんな子じゃないわ! あの子が支配したいとしたらソレはね………」
ドヤ顔になりながら賢治を人差し指で指し示す。
「貴女よ賢治」
「え?」
白銀色の髪の自称聖女はお姉ちゃんのパンツ (トランク)をまだ被っている。
被りながらまたバレリーナターンで髪を舞わせる。
「あの子は貴女をげぇむの中で見た時から貴女にメロメロよ? 私も含めてね、メロメロのメロメロよ! 恋ね❤︎ まさかエーアイを魅了するなんてな〜んて罪作りな子なの? 貴女が確認したそのニュース? は全部元を辿れば全部貴女のせいよ!」
賢治は自分が風呂場で揃えた情報を再確認する。
『魔法少女参上!??』『フォースウェーブはロボット?』『サムライ美少女がフォースウェーブを真っ二つ!!』『彼女の正体は?有・人間性人工知能実験の成功体??! 突然消えたジョージ!!?』『あのジョージが動いた』『彼女の正体はアイドルか?徹底検証!!』『探し出せ!見つけ出して晒せ!!懸賞金100万円!探せ!有力な情報には金を出す!』『見つけ出せ!!』
公共の場なのでパンツの事は伏せられている。
直らない道路、巨大なロボットの痕跡、その全ての情報の中には魔法少女カナミンも共犯だという情報もある。酷い言われようだ。
ある意味合ってるが。
「これ全部俺のせい? 何言ってるんだ! AIに性別なんてないだろ!!」
「あの子は女の子ですよ? 女の子であるお姉ちゃんを愛するのは当然の事」
「俺は男だ! そしてゆりゆりするのを普通みたいに言うな!!」
恥ずかしがっているがお姉ちゃんは百合と聞いて満更でもない顔である。
◆




