間劇 「くっきんぐもんすたー」
一緒にお風呂に入りましょう、そう言われた瞬間賢治は寝室に立て篭もった。
今ベッドの上で耳を塞いで体育座りでうずくまっている。
「あけろー!! 私は当然の権利を主張してるまでだ! お姉ちゃんと一緒にお風呂に入るのは妹の特権だ!」
「そんな妹がいるか! 同性でもないわ! 男だけど!」
「デュフフフ、良いのかな我慢できるのかなぁ? お姉ちゃんはお風呂に入るのが何よりもの楽しみ! 私は貴女の体を洗う順番を知っているのだぞ? 今から大声で隣の幼馴染みに聞こえるように言っちゃろうかしら? デュフフフ」
美少女がして良い笑い方ではない、変質者、その自称に偽りなし。
(ん?お前データじゃ無いのか? 俺にだけ見える映像ならすり抜けられるはずだけど、まさかガチで肉体があるのか? なにそれ輪廻転生じゃないか)
「きえぇえええいっ!! 本当は無理やりは好きじゃないからしたくなかったけど今からステッキになってこんな板っきれぶっ壊してやるわ!!!」
ぼひゅん、ペカー、
煙と共に光の粒子になりステッキと化した、だがステッキは動けない。
「しまった!!」
コントかな? と思えるほどアホな展開だ、床に一本ステッキがぶん投げられた形になっただけだ。
しかし賢治はアホな様子が少し受けたらしく笑いで体が小刻みに震えている。
「賢治ちゃーん!! 今がチャンスですよー!! 全て曝け出した私を虐めてぇえ!!」
なんだか古典的なベテラン芸人みたいになっている。
ガチャ、
「近所迷惑だ。変な大声出すなよ、あとステッキになるな」
「あ゛あ゛あ゛絞ってぇえええっ♡! 私を雑に扱ってぇええっ♡♡!!」
動けない筈のステッキがウネウネしている。
ガチャ、
落ち着いた表情で賢治が寝室から出てきた。
「そんな事しない、それより一緒にご飯食べよう」
「ごはん?」
◆
お姉ちゃん的にウキウキしながらケンちゃんはエプロンを着て台所へ、作り置きの米をレンジで温め、牛の脛のスープ、ハンバーグをコンロで温め直していく。
「ごめんねアンネ、全部自分で食べるつもりだったからちょっと前に作り置きのものなんだ味はそんなに良くない」
いつのまにか元に戻ったアンネが素直に椅子に座っている、本当はもっとドMの極みを語りたかったが賢治の異様な雰囲気にやられて大人しくなる。
「ぬぬぬ、お構いなく」
賢治はなぜかうれしそうにして料理をする。
「んー☆ やっぱご飯は一人より二人、自分で作ったご飯は誰かに食べてもらってこそだぜ!」
うれしそうと言うかハイテンションだ、そしてアンネは疑り深い。
(まさか毒殺!!)
とんでもない結論である。
(最高じゃない! 毒さいこう!)
まさかの結論である、彼女の性癖は死を超越している。
ことん、
テーブルに次々と置かれる料理群、ハンバーグだけでなく鶏肉の香草焼き、サラダの酢とオリーブオイルつけ、などどんどん出てくる。
「ケ、ケンちゃん?」
「あー遠慮しないで食べててくれ、俺はその間洗い物とかやってるから」
「ま、まさか私を太らせて肉として食べる気?」
「俺はグリム童話の魔女かっ!! そんなんじゃなくてアンネの好物とか把握しておきたいんだよ! それと本当に今そこにいるのかとか、その肉体なのか、とかな」
「あー、データだったらご飯食べられませんものね? 確かにこれ以上無い魔法魔術の証明になるわけだ、え〜とじゃあ確か……イタダキマスでしたっけ?」
なんだかわざとらしく外国人が見様見真似でするイタダキマスだ。
「あーそう言うの良いから、食っちゃって食っちゃって☆」
(? あれれどうしたのかしら? なんか変ねこの子)
アンネは賢治の人生を見ている、しかし今の賢治の状態は見たことがない。
(確かこの子人に料理を振る舞った事はない、なるほどこの子のことを全て知った気になっていたけど私は他者目線で見た事はない! これからもっと知れると言うこと)
「アンネはどんなのが好きだ? パン派? 米派? それともナン派? 肉料理嫌いか野菜の方がいいか? あとやっぱ女の子だから暖かい料理の方がいいかな? もうちょっと柔らかい方がいいか? ちょっと鶏肉しょっぱいかな? 紫蘇の匂い気にならない? 生まれ変わりって言ってたけど元の世界ではどんな感じの食べ物が主流だった?」
質問責め、鼻息を荒くして料理の感想をこと細かく聞く。
「あの、えと、全部美味しいです、お姉ちゃん♡」
正直な感想だ、もとより賢治の食べてきた物の味も覚えている、元の世界の食べ物がなんであろうと経験値としてこの世界の食べ物の味は知っている、嫌いなものなどあろうはずもない。
「もう♡ 俺は男だぞ☆ アンネはもっとごはんを食べた方がいいぞ、少し太ったくらいが女は色っぽいんだ。」
「いや、あの私少食なので、っていうかあなたの生まれ変わりなんだから知ってるでしょ!貴女も少食なんだから!」
「遠慮はいけないぞ☆ もっと食べて大きくならないと☆ 成長期なんだから☆ 俺も母さんに無理やり食わされたけどお陰で165cmになったんだ☆」
立場逆転、一転攻勢、さっきまでのイヤらしい表情を返されている。
「デュフフフ、小さい子に料理を振る舞うのは最高だぜ☆」
(この子の性癖がよく分からない!!)
変態聖女を超える奇妙がそこのあった。




