間劇 「妹設定」
「で? 魔王ってなんなんだ?」
賢治の質問責めが始まった。
「そ、そんな目で迫られたら勃❤︎しちゃうわ」
「へ、変態!」
「いいえ私は変態じゃなくて貴女だけの変質者よ!」
例に漏れずドン引きする賢治に受け身責め (矛盾)なアンネ。
(この女魔王とかいうのの話になるとイヤに誤魔化そうとするな? ここら辺が何か弱いところと見た)
「嗚呼! ケンちゃんそんな風に私の弱点を責めようだなんて最高♡」
(何も隠してないわよ)
本音と建前が逆になる自称聖女の変質者。
(こいつ苦手だ!!)
「アンタ苦手だ!!」
嫌悪しかしていないのにアンネの好感度が上がってゆく、というかやはりというかご褒美になってしまってるようだ。
「それじゃあわたしを追い出します?」
(家出しようかな俺)
「家出なんて考えちゃダメですよ、それにまだまだ言っておかなきゃならないことも有るんだから!」
「ん? それはなんだ?」
「それは………どっちがお姉ちゃんで妹かって事よ! あああ!! そんな顔しないで! 素敵だけど、結構真面目な話なんだから!」
「つまりあれか? いつかきっと隣のムカつく幼馴染みの七緒が来るから、アンネさんの偽りの設定を決めるってことか?」
「そうよ! その通り!」
もはやアンネが七緒の事を知ってる事実などどうでも良くなった賢治である。
「………俺のお姉ちゃん?」
「あの、ケンちゃん私って実は結構若いのよ? 正確にいうと若くして死んだのだけれども」
(嗚呼そうか生まれ変わり設定だったから享年とか存在するのか、でも何でそういう変に細かい設定は作れてるのにいざと言う時それを生かせないんだ?この人)
「ん〜でもアンネさん俺の前世なんですよね? 見た目は17歳くらいですけどそれプラス俺の歳23で40歳ってことになりませんか? まぁ、アンネさんの生まれた世界(という設定)とこっちの世界が同じ暦かは甚だ疑問ではありますけど」
設定のアラを責めるつもりで言った質問、嘘つき女ならここでボロが出る。
しかし。
「前世って言っても小説にある様な「転生して知識チート!!」みたいなもんじゃないのよね? ケンちゃんの人生を俯瞰視してるだけで意識も無ければ感情もない、だからそんな人生を歳を重ねる、なんて私は認めないわ」
胸に手を当てながら言う姿に偽りの気配を感じない。
(嘘をついていない?)
そう考えるのが妥当だ。
「そっか、眠ってたんじゃ確かに歳を重ねたとは言い難いか、じゃあ『アンネさん』じゃなくて呼び捨てでいい?」
「気軽に“アン”って呼んでもいいわ」
一気に距離を縮めようと画策する。
「言いづらい、阿吽みたいになるからむしろアンネの方が良いんじゃないかな? ってか完全に日本人の名前じゃないんだよなぁ、いやそれ以前にアンネの姿が日本人じゃない、普通に足が長い……くっ!綺麗すぎる!」
黙っていればアンネは神秘のアルビノ美女だ、顔の造形も北欧の女神像の様であり正直に言って日本人じゃない、というよりこの世界の人間じゃない。
「ハーフって事にしてアルビノって事にもしましょう、この世界の魔法じゃこの髪色は不自然らしいから」
(この世界の魔法?)
「もしかして魔法ってのは呼んで字の如く『魔の法』つまり本当に法律みたいなものが存在してその行使をする執行官みたいなのが魔王だったりするんじゃないか?」
ビク、
大袈裟に驚いた様な動きをするアンネ、何やら知られてはいけないことを知られた、そんな表情だった。
「い、いやーそんな気になりますかねぇ? 気にしなくていいんじゃないですか?」
「いやいや、これからあんな奴らがやってきて俺が魔法少女とやらに変身するしかないんだったら知っておいて損はないと思うんだけど」
(もし法律の様なものなら学べると言うことだよな? 知識があれば強制変身も防げるかもしれない)
「うっさい!! そんなの知らなくていいのよっ!! お姉ちゃんは!!」
「!!? お姉ちゃん?」
(俺は男だからお兄ちゃんだろ!!)
ツッコミを心の中で入れる、だが賢治は否定できなかった。
『お姉ちゃん』その甘美な響きはアンネのかわいさもあり自称男の子である賢治のハートを見事に射抜いた。
というかメロメロである。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん? ん、いや俺男だしお姉ちゃんってのはおかしいんだけど、まぁアンネが嫌なら聞かないでおこうか、うん嫌われたくないし、うん」
その表情の変化、視線の機微を見たアンネは思わぬ成果を得たと知る。
(ん? アレ? こやつ、もしかして『お姉ちゃん』と呼ばれて喜んでる? ウッヒョ♡ ちょろいぜこの子)
今回は隠したかった魔王の事は隠せた様だ。
「お姉ちゃん♡ どうしたんでしゅか? 何をしょんなに感じてるにょ? ねぇ? 何がよかったの? お姉ちゃん♡」
隠せたが欲望は曝け出してしまう様だ。
「やめろ! 俺は男だ!!」
表情は怒っているが頬を赤く染めてしまっている、何度も言うがアンネは美少女だ、そんな美少女に褒められて照れない男はそうはいない、しかし賢治は『お姉ちゃん』と呼ばれて照れている。
その様子を何も知らない人間が見たら女の子同士で乳繰り合ってる様にしか見えない。
「俺は男だ!!」
二度も言った。
「でもぉ♡ 賢治はお姉ちゃんなんでしょ? ホラ今すごく頬が緩んだ♡ 本当は嬉しいんでしょ?」
(最初は魔法のことを誤魔化すだけのつもりだったけどやっべぇこの子めっちゃ可愛い、久々に私本気になっちゃうかも♡)
魔術アビリティ
魅惑スキル 『聖女の誘惑』
部屋の空気の色がピンク色に染まる、否、正確に伝えるのならば賢治の視界だけがそう見える様になった、首筋のボタンを素早く開け、誘う。
「アンネ!」
「はい♡ どうしました? お姉ちゃん♡」
前言しておくが彼女はまだ本気で誘ってはいない、そう見えてしまうほど蕩けた表情になってはいるが彼女が本気で誘う時は服などもう着てはいない。
だって彼女は変質者なのだから。
「お姉ちゃんって言わないで、出来ればあいつの、七緒の前では絶対に」
「あら? 今お姉ちゃんは私とお話をしているというのに、他の女の名前が出てくるな〜んて♡ 嫉妬しちゃいます」
「やめろって言ってるだろ!!」
その瞬間、賢治の中にある何かに触れかすかな魔力を帯びた眼光をアンネは感じた。
「………分かりました、いう通りにしますよ」
急に素直になったその表情の変化にお姉ちゃん(仮) は違和感を覚える。
(なんだもう言ってくれないのか?)
「急にどうしたんだよ?なんか気持ち悪いぞ?」
「別に? そんな仲が良いわけじゃないじゃないですか? お兄ちゃん、私たち今日出会ったばかりなのよ?」
「ん、まぁそうだけど」
「さてじゃあ設定を練りましょうか? 七緒さんとは幼馴染みなんですよね?」
その後、妹主導で妹の設定を練る。急にドライになったのも気になったがそれよりも自分の社会的地位が突然やってきた妹 (年上?) にめちゃくちゃにされるよりは良いと思って詳しくは聞かなかった。
そうだ、アンネに誘惑された時の自分の表情だなんて気が付ける訳がないのだ。
一人っ娘に「お姉ちゃん」は最強の呪文。




