第2話 ⑥[美女に詰め寄られる自称男の美聖女]ドM表現注意♡
その美しい姿を賢治も魔法少女の中で見ていた、そしてこの時代の廃ゲーマー特有の戦士的冴えある技を見て思ったのだ。父親のその姿その状況に思ったのだ。
(あ、コレ俺いらなくね? なんで俺こんな事に巻き込まれとるん?)
逃げることばかり考えていた。
「わたし魔法少女カナミン!! 世界にフォースウェーブは起こさせない! 怪人達はまだまだやってくるわ! 横浜の未来はわたしが守るっ!!」
空中に作った破壊不能オブジェクトの上で出来るだけ魔法少女っぽいぶりっ子モーションをする40代バツイチのおっさん。
(余計な事するなオヤジ! あとカナミンってなんなんだよ! 自分の元妻の名前使うとか未練たらたらじゃねぇか!)
少し魔法少女の顔が歪む、おっさんはちょっと動揺したようだ。
「とぉおっ!!」
ピンク色のオーラを放ち腰からブレードのような四つの妖精の羽を生やして空彼方の映像発信範囲外へと飛んでいった。
「なんだったんだあれ? パンツ見せにきたのか?
「魔法少女カナミン? パンツ凄かった」
「顔は可愛いけどなんか動きは嫌だったな。でもパンツは良かった」
「っていうかこの地面は?! パンツ!」
その場の通行人はその場で起きた事態を把握し始めた、その非科学的な事態を正確に認識し始めたのだ。
たった数歩だったがその被害は甚大、直すまでに数千万円、いや億単位の工事費がかかるだろう。
時間もかかる、その間ニュースが流れ魔法少女の存在を喧伝する。
◆
正志の擬似エフェクトは隠蔽にも使える、空と同じ色に周囲を変化させ超高速でアパートへと向かっていった。
(ちょっと待って!! またさっきみたいにぶっ壊す気か! やめろ!)
「大丈夫だよケンちゃん、ちゃんと減速してるから。それに音速って程じゃない壁紙が破れるくらいで済むでしょ」
(もっと減速して!! 優しく、歩くスピードで!!)
「しょうがないなぁレーダーとかで探知されてるかも知れないけど、まぁバレたらバレたで面白いか」
(え?)
減速して吹っ飛んだベランダにゆっくりと入る、擬似エフェクトはそのままだ。
「スキル解除」
その合図と共に魔法少女の姿が部屋に現れる。
ハイヒール、つまり土足のままでカーペットに穴を開ける。
(靴脱げ!!)
はいはいとだるそうにさっきまでのぶりっ子内股をやめガニ股おっさんそのままでハイヒールを脱ぐ、動作が汚い。
(ちょっと背が高いな、俺が165cm位だから170cm位か?)
女体より背の低い自分に少し苛立ちを覚えるが今はそんな事より怒っている事がある。
(なんであんな目立つ事した!)
「んー? ケンちゃんの言ってる目立つ事ってあのロボットの暴走のこと? もしかして、何もせずに人間が踏み潰されるのを見逃せって事?」
(俺らのする事じゃないって事だ!! 自衛軍とかが爆撃したり)
ぱち、
その瞬間、今までなんのアクションを起こさなかったステッキから目が現れる!!
『ケ゛ン゛ぢ ゃ゛ん゛!!! それは違うわ! 私達は魔法少女! 3人で魔法少女! 世界を救う正義の魔゛法゛少゛女゛な゛の゛っ!! 怪人は問答無用でぶち殺すの゛!! さぁ!正義の為に! 世界の平和の為に! 溢れ出る聖女エネルギーで人間の羨望の眼差しを浴びるの!! そして下民………じゃなくて世界の人間を使って魔王の復活を阻止するのよ!』
(はい!? こっちの話が聞こえてる!? っていうか女言葉になってるよ設定はどうした!?)
ギョロリと丸くてキモい薄紫の瞳が白目部分に血管を走らせて魔法少女をイヤらしい目つきで見ている。
(ウギィ! その眼同級生の女子にされたものと同じだ! き、キモい!)
『うひひひその声たまりませんなぁぐひゅふふふ♡ あの子が夢中になるのもわかる!』
ぐるんぐるんと瞳が回る回るキモイ。
「ちょっとやめてくれるかな、マジカルステッキさん。せっかくケンちゃんが魔法少女の気分を味わってるのにさ、そんな簡単に魅、正体を現しちゃあ気分台無しじゃないか? っていうか魔王復活阻止って何? 僕はケンちゃんを魔法少女にするって言うから手伝ったんだけど?」
ちょっと冷たい眼を父親としてステッキに向ける。
(イヤ、オヤジ俺を魔法少女にするって時点で反対して欲しかったんだけど! って言うかなんでアンタあんなに強いんだ?)
「ああ、だってゲームの大会じゃあ僕がソロでチーム全滅させてたしね、まさか死んで転生してこっちの世界でゲームの力を使えるとは思わなかったよ、もしかしてこれが転生特典ってやつなのかな?」
笑う姿はまるで少年のように純粋な笑いを浮かべる。
(ゲーム脳……オヤジってそう言う奴なんだな)
もしかするとそう言うところに離婚の原因があるのかも知れない。
「しょうがなくない? 今の僕にとってはこの世界が非現実みたいなもんさ、だからこそあの巨大ロボットを倒せたわけだし?」
『ちょっとアンタ! 私、じゃなくて俺っちに許可なく健ちゃんと話すんじゃねぇぜ! ケンちゃんの魔法少女デビューをプロデュースするのは俺っちの役目なんだ! アンタは黙ってるんだぜ!』
すごく変な言葉使いである、元が女の子だと言ってるようなものだ。
「ハハハ、それはコッチの台詞だ、勝手に僕の息子を変な方向にデビューさせるなんて父親としては許せないなぁ、って言うかいい加減こっちの質問に答えてくれるかな? 魔王って何のことだよ?」
『………まだ詳しいことは言えないんだけどこの世界に数週間中に魔王が現れるのだぜ、その兆候があるんだぜ、だからあの子がケンちゃんを魔法少女にしたんだぜ、正確に言うと私が対魔王のために魔法少女の力をケンちゃんに与えたのだぜ! 魔王と戦わせる為に! ぜ!』
勝手に人の息子を魔法少女にされてしかも勝手に魔王とか言う謎の存在と戦わせると言う、当然正志は怒っている、何を一番怒っているのかと言うと。
「ふざけるなよ、ふざけるなよ!! このいやらしいステッキさんめ!! 俺のケンちゃんを“ケンちゃん”と呼んで良いのは父親の俺だけだ!!」
(怒るとこソコか!!)
しかし呼び方にはイラッとくることもあったのでちょっと嬉しい様だ、ファザコンめ。
『ふっふっふ、お前が俺を嫌うのは構わねぇけどな! 結局の所お前も俺と同じ穴のムジナだという事に変わりはねぇっ! そう私たちは三人で共犯! 私もコレからケンちゃんの事はケンちゃんと呼ぶ! 以上! 解散!!』
「あ! 待て! 俺はまだケンちゃんと話が………!! あ、戻った、自分の体(?)に戻っ…………!!」
何故か魔法少女の身体の主導権を握っているマジカルステッキ事アンネさんが正志の通信を切った様で賢治に肉体の権利が戻った様だ。
『ふふふ、どうやら今の女体を自分の体だと認識した様だな!良ければそのままずっとそのままでいいんだぜ? 本当はちょっと良いかもとか思ってんだ、いでででで!!!』
賢治は魔法少女の腕力でマジカルステッキ事布団たたきのピンク色の先のハート部分を雑巾絞りしている。
『やめてぇっ!! 出る!! 出ちゃう! らぶりー汁が出ちゃうよぉお♡』
苦痛を与えてる筈なのに何故か嬉しそうな声を上げるアンネさん、どうやらエムっ気がある様だこの女。
「今すぐ戻せ! どうやらこの姿のままだとオヤジのゲームステータス通りの力が使える様だからなぁ? 非力な俺に戻さないともっと絞るぞ? ん?」
『んほぉおおっ♡♡!! その眼最高ぉおおっもっともっと絞って下さい♡♡♡、うんひぃいいい♡♡♡♡!!』
声は綺麗なままなのに言葉がすこぶる汚い、最初は賢治もSっ気出して悦んでいたがすぐに自分を律してドン引きし始めた。
「…………ヨロばせるだけだから何の意味ないなコレ、もう良いや明日から布団たたきに使おう、あーいやその前に布団を干すためのベランダの柵が………アレ?」
横目で見たベランダに信じられない光景があった、それは柵が復活していたのだ、それだけじゃないさっき穴を開けたカーペットも直っている、硝子も割れていなく何もなかったかの様になっている。
全て元通りだ。
「何だコレ?」
『あー直っちゃったか、聞いてはいたけど早すぎだし過保護すぎだろこの世界』
「え? 何言ってるんだ!?」
『んーっと、嗚呼まずその説明はアンネがしてくれるらしいぜ? 俺っちはちょっとお暇頂くぜじゃあな!!』
そう言うとステッキは白く光りだしその形をアンネの形に戻していく。
シュウウン……、
同時に同じ姿の魔法少女も解除され、元の可愛い賢治に戻っていった。
すかさず股間を確認するとナニがあったようで安堵した表情になった。
(よ、良かった持っていかれてなかった、ちゃんと戻ってた、どうやらステッキの姿が元に戻ると同時に俺も元の男の姿に戻れるようだな、コレからあのふざけた姿になったら雑巾絞りをすれば良いのか)
割とひどいことを考えるヒロイ、主人公である。
プルプル
震えている、ステッキのあった所に目をやるとそこにいたのは白銀の髪の美少女である、少し顔が赤く涙目になっている。
「アンネさん?」
小鹿の様に震えている。
(さっきまで俺がしてた事って女の人の髪の毛を引っ張ってた様なモノだよな、流石に傷ついたよね?)
「そ、その御免なさい。もうしないから、だからさっきみたいに俺の姿を変な風にするのはやめて、ね?」
「も、もっと…しなさいよ!」
「ん? 今なんて?」
「もっと口汚く罵りなさいよ♡!! 羽虫に問いかける様に空虚に♡! 汚物を見るような目で私を見なさいよ♡!! 私は羨望の眼差しなんて飽き飽きしてるのよっ♡! さっきみたいに一切の遠慮なく道具みたいに引っ張ってよ♡♡! ほら♡! この髪の毛♡!」
そう言いながら艶やかな自分の髪を自分で掴んで賢治に差し出す。
「な、何?」
「千切れるくらい絞って❤︎ わたしを蔑ろにしながら物のように、バックの革紐を持ち上げるように持って私を悦ばせて❤︎ 私貴女みたいに可愛い娘に都合のいい女扱いされるのが好きなの❤︎ 大好きなの❤︎」
精一杯の猫撫で声でドン引きする告白を受けた。
賢治の顔が思い切り引き攣る、隠れた害虫を見つけたときの顔だ、もちろんアンネにとってはご褒美である。
「や! やめろ! 俺は男だ!」
女の子は嘘つきである。




