第2話 ⑤[かっこいいポーズ]※魔法少女立ち絵あり
世界中にその映像は配信されていた。
あるものは仕事中に、あるものは休暇中に、あるものは修行中に、あるものは自宅で。
その体高18メートルの非科学的ロボットが元横浜の一般街を闊歩して事故を起こしているのを見た。
あるものは魔法と見たり、あるものは遅めの世紀末予言の的中と見たり、あるものはエイプリル・フールのネタだと思ったり、様々な反応をしていたが情報収集に秀でている者はこの事態をある程度正確に把握していた。
この映像は実際に起きておる悪夢なのだと。
ズシン、べきめききゃ!
科学的には自重で崩れ落ちるはずの重量配分、非科学的な可動範囲、全てゲームであるからできた動きを現実世界で行うとロボットは沈む。
だが、なにかの術式が発動して一定位置で沈むのが止まり歩行を可能としている。
そしてめり込んだアスファルトが後方にいる人間を恐怖させる。
「「ふぉ、フォースウェーブ?」」
ソレは誰もが考えたこと、誰もが脳裏にこびりついた不安。
過去世紀末において人類は代表的な三つの絶望を味わった。
一つ目の波で人口を削られ、二つ目の波で人間としての尊厳を削られ、三つ目の波で常識を奪われた。
全ての始まりはいつも99のつく西暦の年、つまり西暦の2499年に何かがあったはずなのだが今回は何もなかった、はずだった。
人類は自分達が神の玩具、その事に前々々世紀の人類は抵抗したが今世紀の人類はその災厄に対する諦めが蔓延し死を受け入れる者が多い。
その心の病は年齢問わず、誰にでもあり今踏み潰されんとしている人間も恐怖こそすれ、混乱することなく死を受け入れた…………。
ぎゅん!! ゾォッ!!!
それはまるで閃光だった、空圧と共にピンク色のオーラを纏う閃光の様な何かが青空を一本の線で二分した。
嗚呼それは聖女であり、勇者であり、ひとりの少女なのだろう。
白銀の踊る髪の毛、赤い糸でまとめられまるで小動物の尻尾の様に動く。
少女は空中で停止していた。
黄緑色のセーラー服を踊らせ短めのスカート、太ももから伸びた赤い革紐がむっちりとしたふくらはぎを包みそのまま赤い色のハイヒールに各足2本ずつふくらはぎの裏までクロスしながらが伸び縛られ足の肉を引き締める。
とても美しい。
踏まれたい。とイケナイ性癖を持たない者でも思ってしまう。
しかし世界中の人間はそこは見ていなかった、彼ら彼女らが見たのは顔だ、表情だ、アホ毛をなびかせ眉間にしわを寄せ真っ直ぐ敵であるロボットを威圧する少女の凛々しさに注目していた。
嗚呼そうだ、世界中の人はその一人の魔法少女に夢中だったのだ。
「いいね、感じるよ世界中の人の視線と熱意が」
彼はいつもその時にはこのポーズだ。
足を一歩分開き両腕を組み敵を睨む。
昭和のロボットアニメのポーズと同じだが、このポーズは彼自身のオリジナルだ。
体術アビリティ
ポージングスキル『かっこいいポーズ』
ぎゅおぉおおんっ!!
マジキ○スマイルのアバターが目を光らせる。
中身のないスマートふぉん太郎は狂った人形の様に『アハハハ』と半端な声量で笑いゲームステータスの魔力を使って全力で魔法少女にパンチを繰り出した。
実を言うと既に二足歩行だけで限界が来ていた、その謎のエネルギーもアバターから来ている為このパンチを避けられたらそれでおしまい、そしてその事は正志もなんとなく気がついてはいた。
そして事前の打ち合わせでここで攻撃を華麗に避けて、魔法少女の必殺技的攻撃で華麗にロボットを倒す予定だった。
だが正志は直感していた、ゲーマーの間で裏切りの勇者と罵倒される彼は他者の裏切りに敏感なのだ。
(これはあの白コートの暴走だな、この身体、ケンちゃんの魔法少女の姿を見たときに暴走した、自分の子供をそういう目で見られて大人しくできるほど俺は)
「俺は大人じゃねぇんだ」
小声で呟く。
そうすると魔法少女の脚に足場と呼ぶべき何かが形成されてゆく。
魔法アビリティ
ゲームスキル『破壊不能オブジェクト召喚』
•任意の場所に一定時間破壊不能オブジェクトを設置する。今回は透明な立方体の連続設置。
•ゲームシステムにないスキルをUバグの応用で作った正志のオリジナルゲームスキル。
このスキルはゲーム上のシステムでのみ有効なスキル、ロボットのパンチの足止め、ならぬ手止めに有効。
空中で何かの壁にぶつかった様にロボットのパンチが止まる、だけでなく自壊していく。
何かしらの謎のエネルギーが尽きかけ自分の姿を維持できなくなったのだろう、数十秒すれば勝手に消える。
だが格好つけの裏切り勇者はそんな結末は許さない。
足場のオブジェクトに乗りステッキを振り回す。
「まじかる☆ らぶりー♡ しゃわー!!!」
何やら決めポーズらしい動きをして魔法少女の必殺技的ピンク色のエフェクトが超高速でロボットに襲い掛かる!!
魔法アビリティ
ゲームスキル『似非エフェクト』
•ただの詐欺エフェクト、ゲーム中はフェイントに使う。
•ゲームシステムにないスキルをUバグの応用で作った正志のオリジナルゲームスキル。
タイミングよくロボットが光の粒子に分解していき場の質量保存の法則など無視して超重量の鉄の塊が熱を出さずに昇華して行く。
「あははははっはあはははは!!」
狂った人形のスマートふぉん太郎が自壊するロボの肩からジャンプしてくる。
「きたわね!! 怪人スマートふぉん太郎!!」
魔法少女の声で必死にぶりっ子する40代子持ちのおっさんは色々限界を感じながら魔法少女のデビューを飾るために色んなプライドを捨てた!!
両手の人差し指と親指でハート♡ の形を作りウィンクし片足上げて腰をくねらせ可愛いポーズを取る、素の四十代のおっさんがやったら地獄絵図である。
しかしこのおっさん割とノリノリである。
「らぶりー♡ びぃいいいむ!!」
さっきのエフェクトと同じ桃色の光線をスマートふぉん太郎改めなろう怪人に当てる、もちろん何の意味もないフェイントだからそれで消える事はない、だが壁を消して真っ直ぐ怪人は魔法少女に向かってきている、そして正志はゲーム優勝チームの一員でジョブが勇者の廃ゲーマーである。
魔法アビリティ
ゲームスキル『絶対切断』※ジョブ勇者限定スキル
・武器を問わずダメージを与えたゲームシステムの何もかもを切断できる。
剣術や拳闘術は術である以上地面がある事が前提条件だ。
踏み込みのできない状況では使えない。
絶対切断は剣術。地面があってその存在を許される。
だが地面は存在する、そう破壊不能オブジェクトであるフィールドだ。
自分で作ったその足場にて、踏み込む。
しかしその姿はみんなが好きな魔法少女の様にらぶりーな構えではない。まさにサムライ。いや両手持ちだが騎士だ。
それは時間にして0.5秒もなかった、素人には一瞬の出来事に見えただろう、布団たたきの様なソレを左腰に構えて鞘のない抜刀術の構えをする、眼光が廃ゲーマー特有の鋭い殺意を含んだモノとなった、吸い込まれる様に怪人がその構えの攻撃範囲である“間合い”という領域に入った瞬間………。
ザン!!!
ハエ叩きを、面でなく横なぎに、刃面のない武器であっても剣術としての形さえあればそこに存在し斬撃も僅かに存在する。
ならばそれはもはや必殺技、絶対切断と呼ばれるモノになっていた。
一刀両断、哀れにもその白コートの怪人は斬撃により胴を断たれそのまま魔法少女の後ろで残骸として色んなモノをぶち撒けた。
その残酷な事象を見ていた世界中の人は肉塊となったスマートふぉん太郎に阿鼻叫喚、などはしていなかった。
そんな残骸など見ていなかった、それ以上に廃ゲーマーの見せた否、魅せた一閃の斬撃術。その美しさにのみ集中していた、息を飲めなかった、頭に入らなかった。
[スマートふぉん太郎を倒した! ]
[正志は経験値を会得した! レベルMAXの為魔剣に流れます、魔剣レベルが20アップした。]
破壊不能オブジェクトNo.1
固有名詞[谷戸賢治]
ステータス LV45(階位なし・魔剣)
(しまった少しやり過ぎたかな?)
斬撃の型に入った時のスカートの中身、パンツを確認していた。録画された。
というかこれまでの派手な動きでかなりモロ見せ状態だった。
パキィインッ!
肉の塊がロボットと同じように光の粒子になり消えてゆく、その青白い粒子が魔法少女の美しさを映させる。
その姿が世界の人に見られて魅せて、色んな変態に目を付けられることのなるのだ!!
がんばれ魔法少女カナミン!三位一体でコレから頑張るんだ!目を付けられるのは主に賢治だけど頑張れ賢治!
もう逃げられんぞ!!
カッコイイポーズ=ガイ◯立ち
布団叩き→ハエ叩き new!!




