第2話 ④ [マジカルステッキ(淫棒)の陰謀]♡
賢治は魔法少女になった、ヘタレな彼女はそのまま女の子座りでペタンと座る。
「冷静になれ? ま、まず確認だ。そう最も大事なことを確認するんだ!」
声が高く、完全に女の子の声を発する。その時点でもう予想はついていたが自称男として賢治は確認せざるおえなかったのだ。
さわ、ぐりぐり、
股間をちょこっとだけ触りあるはずと思い込んでいるソレの確認をする、しかし。
「ない、俺の男自身が、ない!? 無くなってる! 別なのついてる!」
そう!そこに魔法少女は爆誕したのだ!!
「もっていかれたああぁぁあああっ!!」
仮住まいで全く変態隣人に気を使わず泣き叫びながら股間を押さえて転げ回る美少女がそこにいた。
(涙が出そうだ、でも我慢!!)
一旦冷静になろうと思い今の状況を考えるが全く意味がわからなかった、ひょっとしたらここはゲームの世界なのか?
そう考えるがログアウトのコンソールなどでない。
(映画でもない限りゲームからログアウト出来ない事などあり得ない、どんなに不具合があったとしても覚めない夢などない、だからこの状況は夢でもゲームでもない現実だ)
そして今の自分のえっろい姿を確認する。
「認められるかっ!!」
「怒った顔も可愛いデスネ、カナミン!」
どこからか聞こえて来る声、どうやらステッキからしている様だ。
「なんなんですかアンネさん」
中の人が一瞬でバレる。
「お、オラァアンネじゃねえぜ!魔法のステッキだ!」
「その綺麗な声で言っても説得力がないですよアンネさん」
右手で持ってたステッキの黒い穴から目玉がギョるんと現れ口がないのに喋っている。
「そんな事よりカナミン! アレを見て!!」
「その名前改名させてくれませんか? ん?」
ステッキのハートの部分が矢印の形になりその先の光景を見た。
ソレはゲームで見たあのロボットだった、まだ4、500メートル程遠くにはいるが巨大ロボットが街中にポツンとシュールに直立していた。
「シュール……ダメですよ?一般人に見える回線でああ言うのを置いちゃ、迷惑防止条令に思いっきり違反してます」
「いいえアレは俺っちが作ったもんじゃあねぇぜ!」
(さっきと一人称が違う、『オラァ』じゃないんか?もっと設定練り直してこい)
ベキ、バキン!
「へ?」
何かが壊れる音がする、歩いたのだ、ゲームデータと思われていたそのロボットが自然の摂理に従った超重量の現象を引き起こし歩いただけでその足跡がアスファルトを踏み抜き中の砂利や何やらを撒き散らし街路樹をなぎ倒しその振動で一般通行人を歩行不能にしたのだった。
「ひゃひ? え? 何え?」
ムチムチバインバインの身体を震わせて怖がっている、身体だけでなくモーションまで完全にメスである。
(現実に干渉してる?そんなのさっきの爺さんの時みたいなトリックじゃ説明つかない、だってもしアレがこっちにきたら)
「アレは『なろうキョーダイ』悪の軍団の一味だ!!」
「冗談言ってる場合か!!」
「冗談じゃあねぇぜ!」
(汚い台詞回しを綺麗な声で言うからすごく違和感があるなこの布団叩き)
矢印の先、ロボットの肩に何かが載っているのを確認した、ソレはさっきまでそこにいたクソダサ白コートを着たスマホ太郎である。
「何やってんだあの爺さん、遊んでるのか?」
しかし表情がさっきまでのクールな感じではなく、サイコに薬をガンギマリさせた様な人外の表情を浮かべている。
「残念だがありゃあ悪いナニカが乗り移ってるんだぜ! さぁ! カナミン! 出動だ!! 横浜の住民を守るんだ!!」
(やらされてる感が半端ない、いろんな意味で)
「その前にこの格好元に戻してください、何をするにしてもこんなんじゃ外に出られない! っていうか性別戻せ! ソレができないならせめて名前を何とかして! 母親の名前をいじって名乗るとかなんの拷問ですか??!」
「そりゃあ出来ねぇぜ! その魔法少女の格好には力が、スキルが付与されてるんだ! 俺っちも許可できねぇししたくねぇ! それにその格好の方が正体がバレずに済むだろう! 目立っても問題ナッシング!!」
「目立たず逃げるんだよ!!」
ステッキの薄紫色の瞳がまんまると固まり沈黙、ないまぶたを細める様に目が暗闇に遮られていく。
「ほう、つまり私とマサシが考えたスンバラしいその衣装を全世界の人々に魅せずに逃げると? アルバちゃんがあんなに意気揚々と作ったそのエロスーツを、しかも私の因子を使って回帰させたそのえっろいボデーも魅せずに逃げると?」
「かいき? いやそんな事よりこんなだっさい衣装なんか誰にも見せられるか! セーラー服とかいつの時代の魔法少女だよ! もう茨城にある母さんの実家に帰る! 避難だ!」
するとステッキは目を瞑り唸ってため息の様な声を上げた。
「仕方ないですね、本当なら本人の意思で魔法少女を楽しんでもらいたくこの手は使いたくなかったのですが」
「ん? へ?」
意味深なセリフとともにカナミンの手足に違和感が襲う、感覚が無くなっていった。
「何をした!」
「いやな、ここでカナミンが魔法少女として活躍するのは決定事項なんだよ!でも本人は乗り気でない、承認欲求を満たす快感を知っていただく為にはやはり実感してもらわないといけない様でなぁ、ぐへへへ」
一切体が自在に動かない、自在に。
「ひゃ! なんだ体が勝手に!」
人間は四肢が麻痺した場合当然だが直立状態を維持出来るはずがない、姿勢制御には脳の力が必要不可欠だしソレは今こちらに迫ってくるロボットだってそうだ、だが今カナミンの体は賢治の意思に反してロボットに向かって歩いている。
「活躍するのは決定事項だ、俺っちはそう言ったぜぇ?」
アンネの声したステッキからゲスい目つきで魔法少女を目で愛でて目で舐め回す。
「やめ、ろ!!」
踏ん張る、ナニカ不思議な力で賢治は勝手に進む足を止めた。
「おお、ケンちゃんやりますのぉ、土壇場で根性見せて体の指揮権を取り戻そうとするなんてぇ♡ まぁ無駄な抵抗なんですけどね?」
「ぬおおおっ!! 負けるかぁあ!!! ………大丈夫だよケンちゃん、ケンちゃんの恥は全部僕が受け止めるよ、え?」
急に表情が変わる、その口調は賢治のものではない。
「オヤジ?」
そう聞いても返事などはない、真面目な父親の声色など十年以上聞いていなくてドキドキしてしまったのだ。魔法少女の姿で。
ベキ、バキン!
ベランダまで立つとオーラの様なものが足に纏い、床面の黒ゴムを歪ませコンクリートにヒビが入る、更にスターティングポーズと思われる体勢になると更にヒビが入る。
ソレはゲームにはない反応、この世界がゲームでなく現実である証、そうステータスのある人間が動く本当の現象が起きていた。
(オヤジ! 待って!! 何をする気だ!!)
最早声すら出せず思考のみの会話になってしまう。
「安心してケンちゃん、僕が魔法少女のお手本ってやつを見せてあげるから、突然与えられた膨大な力を持て余さない様、できることを把握しておかないとね!」
(いやそうじゃなくって、オヤジがこれ以上このベランダに何もしないで欲しいんだけど! まだ敷金礼金がっ!!)
ゴォオオ!!
時既に遅し、放たれた矢の如く数百メーター先のロボットの元へとぶっ飛んで行った。
真っ直ぐ、真っ直ぐ向かっていった。つまり眼前にあった柵はひしゃげて弾け吹っ飛んでいった。
敷金は返ってこない、だがソレが魔法少女になる代償だ!がんばれ賢治!社会に負けるな賢治! 保証なんてマヤカシだ!
そんな事より世界を守れカナミン!!
(ぜってぇ許さねぇええ!!!!!)
美声の少女→女神→妖精→蚊トンボ→真っ裸→マジカルステッキ→布団叩き→淫棒♡
アンネの代名詞は七変化だけでは終わらない!!




