第2話 ③[魔法少女カナミン登場]♡
西暦2500年4月2日0:30
アメリカ ジョージ邸
「止めるんだアルバ!!」
ログアウトされ速攻起き上がったジョージは自分の持っている現実のスマホを持って話しかけていた、かなり焦っている。
(感情の暴走! いやそもそも人間が呼ぶ感情というものは脳の計算からしたら暴走なんだ、だがその暴走に人間は人間味を感じる、だからAIらしからぬこの暴走行為もある意味では感情であり発明としては成功とも言える! だが私は望まない、こんな形で感情あるAIを成功させるだなんて! こんなのは父親としての敗北と言っていい! 娘を世界の敵にしてしまうことなど!!)
ジョージ • J • ジョンセン(67歳)は神に祈らない。
何故なら神など何処にも存在しないと知っているからだ、夢を叶えるのは当人の努力、科学を発展させてきたのは先人達が神信奉者共と辻褄を合わせて来たから、人の進む道に神など必要なかった、むしろ邪魔だった、それが現実であり事実だ。
だから娘達が死んだ時もジョージは祈らなかった、だってそれは自分が娘達を見殺しにして行くのが耐えられなかっただけなのだから。
だから余生をアルバと共に静かに生きる事を選んだ、しかし今この瞬間それは台無しにされた、スマホから流れる英数字の羅列を見るだけで何が起きようとしているのか理解出来たのだ。
「横浜を破壊する気なのか?」
◇
西暦2500年4月1日 11:30
エリアN001
ここは横浜と呼ばれた都市、つい先月に開発された人間に見られる事で無限にその性能を上げるという液体型のデータ媒体『ROSA1000型』またの名を“英知の泉”の実験都市としてその名前を変えた都市だ。
今この世界中のサーバーを操れる可能性のある英知の泉を支配するのは296もの人工衛星を細胞の様に群体として共有する1人の感情を持ったAI「アルバ」だ。
因みに296とはジョージが見殺した娘達の数でそのデータ元であり残骸達だ、本来は廃棄予定だったがアルバがバグデータとして現れ繋いで廃棄を逃れたのだが本題と逸れるので今は置いておく。
それらを本体として地上を観察していた謎のシステムが今賢治の事を観察してさらにおかしくなってしまった。
何にせよ今のアルバは暴走状態だ、賢治が魔法少女となり得ないと旧名横浜市を壊滅させるまで止まろうとしない。
それ程までに彼女は狂ってしまった。
そんな壮大な裏事情など知らない諸悪の根源たる賢治は呆けている。
「イベントか何かかお爺さん、ってあれ? いない?!」
『賢治』
声が、聞こえた。
とても澄んだ、少女の声が脳に響く。
「アンネさん?」
なんの事はない、置きっぱになったステッキが脳に直接話しかけて来たのだ。
『………違います、私は謎の妖精、じゃなかったこのステッキに宿る女神でしゅ』
噛んだ。
「設定練り直してこい、いやもういいやアンネさんオヤジとの悪巧み? みたいなのは終わったのかい?」
『私はアンネではありません、超美しい女神です絶世の美少女アンネちゃんではありません』
「すっげぇ、自己評価がそんなに高い女の人初めてだよ」
ポワンポワン、と謎の効果音と共にピンク色のエフェクト効果、じゃなくて暖かい光がステッキに宿る。
そしてそこら辺に無造作に投げ捨ててあったステッキはいきなり中に浮かび賢治の元に超高速で横回転しながらやってくる!! 受け止められるのか?!
(アレ多分受け取ったら魔法少女とやらになる流れだな、よし全力疾走で逃げよう! こう見えても鍛えてるんだ! 腹筋もある!)
くびれた柔らかぽんぽんを腹筋と言うなら最早何も言うことはない。
クラウチングスタートで逃げようとしたがそうはならなかった、動けない、意思の通りに動けない。
パシ、
誰かの意思の動きだ、右手でステッキをカッコ良く受け止めて両眼を瞑りクールにステッキをアパートの天井に掲げ叫ぶ。
そして操られるままに賢治はさけんだ。
「アルバシステムin本気狩るガール! 合身!!」
(ん?今俺なんて言った?)
『因子を3つ感知、ケンジ♡、アンネ、マサシ、ステータスをロード、勇者マサシの補助動作(強制)許可、アンネの陰謀インストール、偽装アバターをケンジの因子と融合、完成♡魔法少女を形成しました、偽名を入力してください』
(え?! 何この声? え? アルバ?)
『初めまして、私は感情型AI愛称「ALBA」悪い怪人と怪獣を倒す為に貴女のサポートをする婢女です』
「!????」
『さぁ、貴女の名前を入力してください! その可愛い声で!』
(いや、さっきから俺の体が動かせないんだけど?)
「わかったわ! 私! カナミン! 魔法少女カナミンよ!!」
(は?! 口が勝手に! っていうかカナミンって……)
因みに賢治の母親の名前は奏美である!!
「オカンの名前じゃねぇか!? さてはオヤジだな? そうだろ! 出てこい!!」
動かない筈の体を怒りと根性で顔を顰めるが頭から下は動かない。
『了解、魔法少女カナミン。登録しました、さぁ行くのですカナミン! 悪い怪獣をやっつけるのです!』
「カナミン言うな! 俺は!」
言わせねぇよ? と言わんばかりに賢治の体中から虹色の光が吹き出し顔以外が包まれる。
そう魔法少女の変身だ。
『グヘヘへ、可愛いじゃねぇか本当はなりたかったんだろう? 魔法少女に!』
ゲスAIのゲスな声が賢治の脳内に響く。
足先から光が弾けアパートの一室に相応しくない赤いハイヒールが現る、そして靴紐である赤い紐が格子状に重なり足先からくるぶし、そして太ももへと膝裏までいくとそこでリボン縛りで止まる。
脹脛の光が弾けると短めのスカートが現れその上の絶対領域が形成していく。
スカートの色は黄緑、パンツ隠しの白いフリフリがスカートの下から覗かせて逆に卑猥な様相へと変化していく。
流れる様にお腹はへそだしである、しかし露出は残念ながらへそだけで胸部はぱつんぱつんの黄緑色のセーラー服が現れる。
セーラー服でぱつんぱつんのおっぱいである。
いやらしいその駄肉ロケット的おっぱいはそれだけで見る者を、否、魅た者達を魅了するだろう。完全に女の子である。
あ、元から女の子だったわ。
元々は海兵隊が合図のために使っていたセーラー襟は白く黄緑色のラインが通っている、全体的に黄緑色を基調とした配分だ、そして鎖骨がギリギリ見えるラインの赤いフロント布を覗かせているが実はこの布、おっぱいを拘束している布ブラジャーである。本来は鎖骨が見えない設計であったが魔法少女カナミンのおっぱいが大きすぎて張って伸びた結果鎖骨が見えているのである、コレ絶対男じゃない。
首元に白いフリフリのついた帯の黒いチョーカー、そして光は髪の毛を変質しショートの黒髪をアンネと同じ白銀の髪色へ、ボリューミーなその重さを糸がまた格子状に組まれ纏める、その集合体がリボンになって下着と同じ鮮やかな赤に発色する。
一旦離れた光の粒子が賢治の顔に集約、柔らかい温和な女の子の顔からクールビューティーなシャープな顔へ変質する。
そして目を開けるとその瞳は茶色から薄い紫の瞳へと変わっていた、ここまで変わればバレないだろうと言う変わり様だ。
以上の変化を古典魔法少女の変身シーンになぞらえて色っぽく装着した。
「ヒェ……ふへ、何これ? 意味わかんない」
しかし中身はヘタレである。




