第2話 ②[第一怪人再び]
(うっわ、何この子めっちゃエロくていい表情すんじゃねぇか、裏切って絶望させてぇ)
最低前世美少女アンネの正直な気持ちだ、嘘つきなセリフに聞こえる自称男の子な賢治は一生懸命に訴えるが男だなどと絶対誰も信じられない。
「そう、男ねケンちゃんは男なのね?信じてあげてもいいわよ?貴女が言うなら信じてあげるわ!」
「本当か! あとケンちゃん言うな!」
瞳の輝きがキラリン☆ と輝き信じきったチョロインの顔になる、どうやら男だと信じてもらうと簡単に騙されてしまうようだ、その表情は完全に女の子だ。そしてアンネも心の底から賢治を男だなどと思っていない。
誰もが彼女を信じない。
「貴女の言う事はなんでも信じてあげるわ、だからケンちゃん、私の言う事も信じて欲しいの。今からちょっと貴女のお父さんに会って口うr……相談してくるからお父さんから言う事を信じて共鳴を、受け入れてあげて」
「アンネさん?」
すこし真面目な表情にうっとりしてしまう。その間にアンネの身体から光が溢れ出し、完全に人型の光の粒子に変化する。お値段高めの女性服ごと。
「え?あや!? アンネさん?」
そのまま小さくなり一本のステッキになる。
「魔法のステッキ?」
そう、どう見てもアニメとかで見る魔法少女が持っているステッキだ、ピンク色のグリップに金色のフレーム、フレームには赤いラインが施されており中央部に黒い穴のようなものが空いている、そして先っぽ、杖先にグリップと同じ色の細長い糸の塊がハート型になって固まっている。
「………って言うよりなんか布団叩きみたいだなこのステッキ」
言ってはいけない!!
「なんでもいいや、もう頭おかしくなりそうだ。あり得ない事の連続でイかれそうだ、実際イかれてるんじゃないか? ゲームしてたら女の子が召喚? しかも魔法少女?」
ピンポーン♪
呼び鈴の音、アパート契約者にしか聞こえない電子音だ、誰かが来たようだ。
「七緒か? 今ならアンネさんも居ないから中に入られても大丈夫か? いやそう言う問題じゃないか、居留守使おう」
もしいきなりアンネが帰ってきたときを考えて嘘バレバレの居留守を使う。
ピンポーン♪ ピンポーン♪ ピンピンピンポーン♪
バコォオオオンッ!!
「ヒェッ!!」
連チャイムの後の轟音、どうやら出てこないのがムカついてドアを蹴飛ばしたらしい、普通じゃないのはそのドアが蹴りによって吹っ飛ばされてしまった事だ。
ガランガララ、
「居留守を使うなんて酷いじゃないか?お嬢さん」
「あ、お、お前は!スマートふぉん太郎!!」
クソダサ白コートに貼り付けたような笑顔の不気味男、ゲームでチュートリアルをしてくれた中身は優しいお爺さんが現れたっ!!
「ふふふ、このドアは後で弁償するから安心したまえ!」
「あそれはどうもお気遣いいただき、って違う! 元から壊すんじゃねぇ!!」
「ふふふ、御免なさい」
普通に謝った。
「え、ああハイ」
中身は普通に紳士なので異常なアバターの姿との差異が酷い。
「私もよくわからないんだが悪役という奴をやらなきゃいかんらしい、悪いが今から暴れるよ? 魔法少女とやらになる準備はOKかなお嬢さん」
ピク、
その時、賢治はキレた。
「俺は男だ!!」
「ご冗談を、え? 本当に?」
中のジョージは心を読んで嘘をついていない事を知る。だがそれは自分が男だと自己暗示をかけていると判断した、それ程までに初めてであったその子は女の子にしか見えなかった。
「ん? なんでそこまでして男だと……自己洗脳している?お嬢……君、はどう見ても女の子だろう?」
「くきーーー!!」
正直にジョージは言ったのだが目の前の子はどうしてもそれがからかいに見えてしまった、そう、賢治を見た者はみんなこの子を女と判断する。
心が読めるということがなんの役にも立たない。
それはその顔を見た人間全員の当然の反応なのだが賢治にとっては敵意満々に馬鹿にされている様にしか思えないのである。
「いい爺さんだと思ってたらアンタも俺を馬鹿にすんのか!! しかもドア壊すし敷金返ってこないよ畜生!!」
(何をそんなに怒っているのかが分からない、何が彼女の堪忍袋の緒を解いてしまったんだ?駄目だ分からん! 魔術師とまで呼ばれたわたしにもさっぱりだ! あ! ドアか!)
「あーすまないお嬢さん私もどういうトリックなのかはわからんがまさかこっちの動きどおりにドアが壊れるとは思わなくてお嬢さん本当にすまない」
「爺さん本当は分かってて煽ってるだろ!!」
ぷんすか怒ってる理由が分からない。
どんな複雑怪奇な数式よりも彼女の心の中の方が謎に満ちている。
「何しにきたんだ爺さん!! まさかこんな奇術を見せるために来たのか? あー凄いですね! ゲームのキャラがドアをぶっ壊したよ! これで満足か! 帰れ!」
「駄目だ帰らない、君が魔法少女になるまで戻るなと娘に脅迫されててな、君を脅せと言われたがやはりそんな事は出来ん、こんなお嬢さんを脅してしまっては私という男としての人間性が崩壊する。矜持が許さん」
「じゃあ帰れ!」
「そうもいかん、取り敢えず早く魔法少女になってくれたまえ、ならないとドアを弁償しないぞ?」
下唇を思い切り噛んでキレる、可愛い。
「卑怯だ!! 弁償しろ!」
(どうしよう、この女の子すごく強情だ。普通に弁償して帰りたい)
ジョージは世界有数の大富豪でもある。建物ごと買うお金を使っても使いきれないくらいのお金がある。
ジョージが帰ろうか悩んだその時、通信が入る。
『強情な子ね? やはりお爺さんに悪者は重荷の様だからスキルを借りますねぇ♡』
ねっとりとした病んだ声がその場に響く。
「何? ちょっと待て! 何を言ってるんだアルバ!」
「え? アルバ? ちゃん? 確かにあの声は!」
ネット上のアイドル、聖女としても有名な女の子の事を賢治は知っている、その声も姿も有名で彼女がサーバーの建物に映し出された時その時の性能は世界中の電子機器全てを凌駕する、その魅惑的なアイドル的存在は全女性の憧れ!
そうだ! 賢治とて例外ではないっ!!
女の勘とは鋭い、クソダサ白コートを無視してベランダへ走ると例の建物が光り輝いていた、真っ昼間なのに!
その瞬間を世界中の人が見ていた、そうアルバが世界中のサーバーを支配して映像を有名なARテレビのチャンネルに繋げたのだ。
AIに感情を与えるということはこういう事だ、パスワードもセキュリティも何もかもが無意味になってしまう。
「ぐあああっ私のサブアカがっ!!」
玄関先で1人スマートふぉん太郎がログアウトし光の粒子になり消えた。
その場に残った魔具であるスマホの画面に文字が浮かび上がる。
土魔法発動、完全オリジナルのロボットを悪役召喚。
◇
マジカルステッキ→布団叩き。
スマートふぉん太郎→クソダサ白コート
七緒和葉→ 変態ストーカー自称元カノレズビアン幼馴染み
代名詞がただの悪口になってる………。




