第2話 ①[説明回]
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません、また特定の宗教や思想、学問を貶める意図はありません。
世界は常に最新になっていく、冷却コストと耐震コストを無くすためにサーバーを宇宙に打ち上げた。
そしてそれらの入れ替わりで脳細胞を植え替える様に絶対零度に近い無重力帯で常に最高パフォーマンスを発揮し続けたデータ媒体は使用期限が過ぎれば自動で隕石の様に落ちていき燃えてチリになる。
そして技術も常に最新になっていく。
西暦2500年4月1日 11:00
日本、エリアN001(旧名横浜市)
「あのクッソでっかい建物はなんですか?」
白銀髪ロングの美少女がベランダから柵に体を預けて一際大きい建物を指差している、ちょっと危ない。
「あれはサーバーだよ、液体型の最新サーバーの保管庫、夜になるとイルミネーションやら綺麗な女の人が映し出される」
建物は様々な排気口なのかよくわからない大きなパイプにがはり巡っている、ぱっと見工場の様だが実は蒸気の様な霧が直上に高速で常に流れていて夜になるとその霧を利用して広告の様なものを物理的に映し出している。
たまにアッパーダイブを切ってる人間がいるので緊急サイレンに使えるのではとも政府と模索されている。
「綺麗な女性!? ケンちゃんが映し出されるん?!」
この手のからかいを受け慣れている賢治は少し表情を曇らせるが無視して説明を続ける。
「えーと、確か謎の美少女アルバちゃんだったかな? ジョージって偉い人が作った人間に最も近い女の子だってさ、でも中の人が特定されなくってね、もしかしたら感情を持った人工AIかもって話なんだ、まぁ都市伝説だけど」
「ふ、ふーん」
裏でアルバと結託しているアンネは少し表情を歪める。
「って言うかアンネは俺の前世で心読んでるんだろう? そう言うことも知ってるんじゃないの?」
疑いの目を向けて設定のアラを突こうと賢治はイヤらしい笑顔を見せた。
「記憶を共有しててもね全部ローディングしたわけじゃないのよ、興味のある記憶から順に思い出すって感覚かしら? 例えばケンちゃんのエッチな記憶とかねぇ?」
「止めて思い出さないで!」
悪い顔を見せた銀髪少女。
「まぁ、貴女にも知られたくないこともあるでしょう? そう言う記憶ってやっぱ本人から聞いた方が私は好きなのよ、信頼関係を築かないとね」
(そして私を信頼しきった後に裏切られた時のケンちゃんの表情も見てみたい)
「人を魔法少女にするって言ってる人間を信用なんかしませんよ?」
ちょっといい事を言えば簡単に信じるかと思いきやどうやら最初の信頼がマイナスのようだ。
(うーんやっぱ私人を騙す才能がないわー)
「って言うかあの建物ってあんなに大きいの? 一応科学の事は知ってるけどあーんな長ーい塔みたいにする必要あるの?」
全長170m、電波塔ほどではないがすごく長い。
今の時代建物は旧時代とは違う。
高層ビルは少なくなり、人口が少ないというのも原因だが地下施設を作るのが流行っているからだ、建築技術の向上で安くて静かだとか。つまり十階を選んだ賢治は流行に背を向けている、この子は高いところが好きなのだ。
「んー詳しくは知らないけど。俺らの中にあるナノマシンと共振現象みたいのが起きて性能を無限大に向上させるサーバーのシステムらしいよ」
「?」
よく分かってない様で首をかしげる。
「つまり注目されればされる程パワーアップするんだってさ、だからあの建物は全面に映像を映し出せる特殊な作りで出来るだけ目立つように作られてるって事、んでこの都市横浜と呼ばれたココはつい一ヶ月前に実験都市として名前を【N0001】って名前になったんだ、まぁみんなまだ横浜って言ってるけどね」
「へー、なんで東京って都心に作らなかったのですかね?」
(認識を起点にエネルギーに? なんか前世にあった『錬金術』の『賢者の石』っぽいわね、気のせいかもだけど)
アンネは記憶にある心当たりを口にしない。
「んーそこら辺はあれを立てた浪川財閥のお嬢様に聞かないとわからないよ」
そのお嬢様とは実は仕事で一悶着あったがそんな事をアンネに言えば絶対面倒なことになるから賢治は言わなかった。
(まぁーケンちゃんの恥ずかしい記憶は全部覚えてるんだけど隠してる様だから知らんぷりしとこ)
「っていうかさ! アンネさんいつまで駄弁ってればいいんですか? 俺もうオヤジと話とか色々したいんですけど?」
「アラ? まだ大好きなパパの手に包まれたいのね? まぁ娘としてその感情は正しいわ♡」
「俺は男だ! もう騙されないぞ! さっきからなんでかフルダイブ出来ないのもアンネさんの仕業だろ! どうしてそんなことするんだ!」
「今ちょっとあっちはあっちで立て込んでるようだから私達が行っても邪魔になるだけよ、というかケンちゃんはアレが本当にパパ本人だと思ってるの? 死んだんでしょ? 骨も骨壺に入れてるわよね? アレこそ感情のある“えーあい”ってやつなんじゃない?」
流し目で賢治を見て疑いをかける、疑問を植え付けるそのつもりで言った精神攻撃だ。
だが、そんな事など意にも返さず真っ直ぐな瞳を向けて言い返す。
「アレは間違いなくオヤジだよ、顔だけじゃない喋り方、反応速度、性格何もかもが俺のオヤジだ。オヤジはさ、ゲームのジョブが勇者だとかいう以前にこの世界でも勇者だったんだよ、間違った親を見たら叱る、正す、見て見ぬ振りをしない、確かにちょっとクズな所もあったけど基本的に凄い善人なんだよ、まぁ本人にそれを言っても認めないと思うけどね、素直じゃないんだオヤジは」
なんだかちょっとダメな元カレの良いところを自慢してる彼女みたいになっている。
(なんだかちょっとダメな元カレを褒めてるメンヘラ彼女みたい、私が目を覚まさせなくっちゃ!)
ぜ、前世を自称する銀髪美少女はブレない。
「でも、ふーん成る程ね変わってないんだアイツ」
「ん? アンネさん?」
「なーんでもないわよ?おっさん好きなケンちゃん、今は会わせられないけどアイツが準備出来次第あっちからコンタクトしてくるはずよ!」
「準備ってなんなんだよ! さっきから不安を掻き立てるようなことばかり言いやがって!」
脇を絞めて両手をぐっと握り怒りを表すがどう見ても可愛い女の子が膨れっ面になってチャーミングにぶりっ子しているようにしか見えない。そう賢治は可愛いのだ、男のフリをしている女の子にしか見えない、自分でもそれは認めているが他人と対する時は絶対に肯定しない。
「すっごく可愛いわケンちゃん」
そして何気にパパにしか認めていない呼び名を平然と使う侍らせ上手な自称前世の美少女。
「可愛いとか言、言うな!! 俺は男だ!」
色目に当てられたケンちゃんは満更でもない表情で顔を赤くしている、何も知らなければ女の子同士でゆりんゆりん♡な展開になっているようにしか見えない。
「あと俺を“ケンちゃん”って言うな! それはオヤジだけの呼び名だ!!」
ベランダ越しにいる白銀頭の美少女に大声で叫ぶ、きっとその大吠えは隣にいる変態ストーカー自称元カノレズビアン幼馴染みにも聞こえただろう。
ケンちゃんは皆に女の子扱いされてるから女の子が好きになったらレズである。これだけは譲らない。
隣にいる変態ストーカー自称元カノレズビアン幼馴染みは、ケンちゃんのパパ自慢を寝取られプレイに脳内変換して興奮してます。




