間劇 「幼馴染み、七緒和葉の本性」
幼稚園だった私に同じ歳の綺麗な可愛い女の子が粘土のお花を作ってくれた。
あの子に会うまでは私がこの世界のお姫様で、イケメンの王子様が私に手を差し伸べてくれる。
どこかでそんな事を考えていたけど、それはきっとあの子のこと、私はただの一般人。
あの子の前ではどんな色も光も霞んでしまう。
私に絶望をくれた優しい女の子。
あの日から私はあの女の子に夢中で、夢中で、夢中で、四六時中あの子の笑顔を思い出している。
「ナナたんこれあげーるっ♡ ぐひひひ」
あの子のくれた粘土のお花は特殊硝子で完全コーティングして今だに大切にしている。
小中高と同じ学校であの子の大学のためにランクを落として同じ大学に進んだ、というかあの子の頭ならもっと良い進路選べたのになんでわざわざ法務関係なのだろうか?
まぁ私はあの子の隣に入れれば良い、もう異性なんて目に入らない、私はノーマルだったのに、あの日あの子にレズにされてしまったんだ。
全部あの子が可愛いせいだ。
あの子を知ってしまえば、もうこの世に希望など持てるわけななどない。
あの子の全ては絶望に繋がっている。
◆
西暦2500年3月某日。
18:00
私はとあるアパートの一部屋、小さな八畳一間のワンルームの中でベットに蹲りながら私に振られた仕事のことで悩んでいた。
事を知ってもらうためにはあの子の知らないあの子の事を知ってもらう必要がある。
可愛いあの子にはファンクラブが存在するのである。クラブというより部隊、兵力といっても過言ではないが。
創設者の弓月櫻先生のあだ名が黒ニーソ先生だったから『黒ニーソ隊』と呼ばれているし呼んでいる。
23歳になった今でも活動中で色んな組織の収入を元にして団結してあの子を守っている。
あの子は何も知らない、自分が色んな組織から目をつけられていることなど、知られてはいけないのであの子との接触はなるべく最小限にしなくてはならない。
例えば別人の服屋の店員に変装して男装趣味のあの子の服を女性服のボーイッシュコーデにしたり、アパートの契約時に内装工事してあの子の部屋だけ広くしたり、そのせいで私の部屋はすごく小さくなったが。
あとは隣接する部屋を隊員全員で契約したり。
ただ最後のは私の部屋以外既に誰かに盗られていた、まぁあの魔女の仕業だと思うから安心はしているが。
あの子は何も知らない。
あの子がいない間、あの子の私物チェックと回収をするのが私の役目だ、セキュリティは私たち以外には反応する様に改造している、侵入経路は念のためドアではなくベランダだ、なぁにちょっと仕切りを飛び越えればすぐに中に入れる。
布団や枕、またジュースの空き容器、下着、などなどをキチンと同じ会社のものと交換して使用済みのものを回収する。
なんでそんな事をするのか? だってそれは組織の維持に必要だからだ、私は回収したそれらに一切手をつけずに黒ニーソ隊に献上し金で奪い合う。
それが組織の資金源の大元と言っても良い。
私はそれらに一切手もつけないし何もしない、してしまうと確実にバレるからだ、彼女らの鼻は凄く効く。
私は冷静なので、というより彼女らのような変態ではないのでそんな醜い争いはしない、だって私にはあの花の造形物がある、あれさえあれば満たされる。
それに下着や布団の残り香なんて幼馴染みの私はもう嗅ぎ飽きている。
そう、その私の純粋さが私がウォッチャーに選ばれた理由でもある。
そんな時、とある組織から依頼が来る。
あの子のパパの遺産、ゲームのアカウントを渡す依頼だ。
裏の世界ではかなり有名な呪いのゲームだ、とても確率は低いがプレイヤーが何人かトラックに轢かれて死んでしまう。
事故との因果関係証明できないためただの偶然とされているが、そうでない事は分かっている。
大元のゲーム会社も探りを入れてみたが彼らはゲームプログラムを作っただけで誰かがバグデータとしてこの呪いを作っていた。
いた、と言うのはもうなぜか死人が居なくなったと言う事だ、ラストナンバーである米田正志の死によって呪いが終了した、あの子のパパが何か知っているのかもしれない。
でもまぁそんな事はどうでも良い、そんな事よりあの子を泣かせてしまうかもという事だ、はっきり言って傷口に塩をなすりつけるような事はしたくない、幼馴染にしてあの子の可愛さを最初に発見した女にして、一回一緒にご飯食べに行って確実に現在進行形で付き合ってる私としては本当にこの役目は心苦しい。
だからあの魔女もこの仕事を引き受けず私に任せたのだろう。卑怯だ。
あの子はきっと泣くだろう、きっとパパのことを思い出して泣いてしまうだろう…………嗚呼。
「きっとあの子の涙は甘いんだろうなぁ♡」
私は変態じゃない、この感情はあの子の前では普通なのだ。
あんなに可愛い女の子の前じゃどんな女の子もあの子のストーカーになってしまう。
ノーマルだったとしても関係ない、強制的に同性愛者になってしまう。
「お? 物音がする」
私は鋭くした聴力であの子が帰ってきたのを感知する、あの子は部屋に帰ってくるくるといの一番でシャワーを浴びりゅのだ。 (噛んだ)
私が今いる位置の壁を挟んで向こう側は風呂場だ。
勿論そうなる様に業者に命令した、工事費を払っているのだから当然の権利だ。
「嗚呼♡ あの子の匂いがする♡」
この時間は苦痛でもある、何度襲いに行こうとしたか数えきれない。
西暦2500年4月1日
仕事が終わった、予想通りあの子は泣いていた。
あの子をよく知っている私は事前に(私が用意した)ハンカチを手渡して拭わせ今この手に持っている。
「スゥ、ふぅう、ふひひひ」
私の汚い息が染み込まない様に吸い込んで直ぐに密閉、その繰り返し。
このハンカチは奴らに絶対に渡さない、だってこれは高純度の聖女の涙。
私の力を増幅するアイテムだ。
そういうちゃあんとした理由があるから私は変態じゃない。
ああ、それにしても久しぶりに会ったあの子はまた生意気になっていたな、付き合ってないとかタバコ吸いたいとか、でもそのおかげで今持ってるあの子の口をつけたコレ♡ うふふふ。
ちゅぷ、ぷっはぁああ♡
「最高のモクだわぁ♡」
火はつけないでフィルターの部分だけ棒付きのキャンディーの様に味わう。
これはアレだ、あの子の健康状態をチェックする為なんだ、私は変態じゃない。
きっとこの事を嗅ぎつける奴も出てくるだろう、もしかしたら粛清されるかもしれない、でもそれでも良いと私は思う。
リスクよりリターンが明らかに勝っている。
あの子に彼氏がいると匂わせて男を使ったのもあの子のあの表情を楽しみたかったから。
あの子の表情の中で一番 ❤︎ コいのは裏切られた時の表情、あの綺麗な顔があんなに綺麗に引き攣るのは芸術的よ、あの表情を味わう為なら私は誤解されても良い。
でも最近はダミーの男が勘違いして私と付き合ってると思ってるみたいだから然るべきところに依頼して黙らせた。
全く一回あの子の前で話したり手を繋いだだけで勘違いするなんて本当に男って馬鹿ね。もっと客観的に物事を判断できないのかしら? 私にデートのお誘いのメールとか片腹痛いわ! ストーカーで訴えないだけ感謝してもらいたいわ!
さぁて、明日またからかいに行こう、あの子が大型の連休を取ったのは調べをつくした。
私はこの純粋な愛をいつかあの子に告げる、嗚呼♡ 嗚呼♡ その時の歪むあの子の顔を堪能するのが楽しみで仕方がなぁい♡ ぐへへへ。
私はあの子の写真で埋め尽くされた部屋で今日も癒される。




