第1話 ⑨[ネタバラシ☆]。♡
「誤解がないように言っておきますけど貴方達をどうにかしたいわけじゃないんですよ?」
そんな善良な心持ちの奴が人を宙に浮かせて束縛しますかね?
「お前はこの状況を楽しんでるのか? それともただ命令されてこんな事をしているのか?」
少しだけ睨んで言ってみた、目がついてるのかも分からない妖精()なのだけれども。
「へぇ、成る程そういう質問ですか、物事の真実より相手の真意を知りたいと言うわけですね? こんな魔術をかけられたというのに嫌に冷静ですねあなたは」
俺の心を読み取ったような言いぶりだ、別に計算高く言ってるんじゃない、話を早く進めるように言っただけだ。
それに感心したのかなんだかは分からないがそのまま宙に浮く俺を下ろしてくれた。
「俺だって戸惑って無いわけじゃないあんなまるで魔法みたいな事されて内心は驚愕している」
「それを冷静で言えるのはやっぱり、いえあなただからですよ」
それにしてもコイツはなんだ? 当たり前のようにこの世界で魔術とか発言するし、新興宗教か何かか? 流行らねーぞ今時。
「そうね、今ここであなたにネタバラシをするわ、この姿を見て」
いきなり敬語をやめると妖精()は眼前から少し離れた位置に移動した。
「え?」
その瞬間。妖精()はその光を強め大きくなっていく。
その光は目を刺すような閃光から徐々に暖かい灯りに変化して人の形になっていく。
「女の子?」
まず目についたのはその白銀の髪の毛だった。とても長く腰を過ぎお尻の真ん中まで伸びている、少しクセがあり重力に逆らってカールしているところもあるがそれが味になるくらい輝いている、そして目だ。
薄紫色の紫陽花のような色の綺麗な瞳、肌の綺麗さも相まって吸い込まれそうなくらい怪しく光っている。
一見大人しそうな箱入り娘のようなシワのない肌と目尻を持ったほんわか美人だが、こっちを見た一瞬でニヤリとエグい笑い方をしてその印象をぶち壊しにしている。
体型は少し大人びている、山も谷もあり平均的な女性よりちょっとだけ山が低い感じではあるがそれを補って余りある程肌が綺麗で美しい。
素っ裸だけど。
「ふっ! 服を着てください!! アンネさん!」
俺は一度だけ聞いた名前を思い出して手で自分の目を塞いだ!
「おお、しまった! 久しぶりの現界で服を作るのを忘れたわ! めんごめんご!」
一切前を隠す気のないアンネさんのその姿は女神の声を聞いた時に俺が想像した姿と大体同じだった、っていうか服着ろ。女の子がガニ股で近づくな。
「服をちょうだい」
「は?」
「いやー現界するのに必死で服とか作れないんだなぁ、貴女と私大体体型一緒だから頂戴! 持ってるでしょ? 気の利いたブラジャーとか色々」
「そんなの持ってません、俺男なので」
当然の返答をすると白髪の少女はえらい驚愕した顔で俺を見る。と思うと無言でダッシュし何故か迷わず俺の寝床の服の場所へ一直線に行って俺の下着 (男物)漁り始めた。
なんでこの人俺の服の場所知ってんの?
折りたたんでおいた下着類が散乱しているのを見てそれらをまた折りたたみ直さなきゃいけないと思うと軽い頭痛になりそうだ。
「ない! ない! ない!! なんでこんな男が履くようなパンツしかないの?」
そこには下着ドロのように男物のパンツを漁る銀髪ロングの女の子が居た。っていうか女神さんだった。
「何度も言います、俺は男です。それと今の行動自称女神としてどうなんです?っていうかデータなのにモノに触れてる? どう言う事?」
「わ、私は謎の妖精アン! め、め、め、女神なんかじゃない」
「はいはいバレてますから、声一緒だし」
普通に異常行動と異常事態が並行して起きててツッコミが間に合わない、突っ込んだらここらへんはキリがないからやめて現実を受け入れよう。この子は異世界からやってきた女の子なんだと………。
「1番の疑問は男物のパンツを何の抵抗もなく履く貴女のその行動ですよ」
美少女と化した謎妖精()さんはトランクス型のブリーフを躊躇なく履く。物凄くキョトンとした顔をしてこっちをみている。エロい。
「ケンちゃん男装して外を練り歩いてるの? ドン退くわ〜」
イラっ、
「現実を受け入れろこの痴 ❤︎ 下着ドロしてる女神様の方がドン引きだからね? あと男装じゃなくて俺は男、そしてさりげなく俺を“ケンちゃん”呼びしないでください、それを許してるのはオヤジだけですので」
全部突っ込んでしまった、だってこの人ボケそのものなんだもん。
「いやいや、だって貴女私の生まれ変わりでしょ? 男なわけないじゃん。」
「は?生まれ変わり? ……あの宗教勧誘なら間に合ってます。」
一瞬沈黙する。
「ちっがーう!! あーもう私こういう説明苦手なのよ! 取り敢えずいきなり事実を突きつけても納得なんてしてくれないからちょっとずつちょっとずつ慣らしていくつもりだったのにまさか私の生まれ変わりが男だなんて絶対ありえない事聞かされてパニクったわ! 記憶を整理する時間を所望する!!」
そう言いながら可愛い掌をこっちに向けてからのピースサイン☆ でこっちをまたイラつかせる、そして上半身はまだ裸だ。服を着ろ。
「取り敢えず服着てくださいこの際俺の服でいいんで」
「えー? 男装の服なんて着たくない素っ裸で良いわよ私達しかいないじゃない」
男装じゃないぞ、俺は男だ。
「俺が服を着てほしいんです。はやく服を着てください」
そういうと途端にテンション低く俺のお気に入りの服を着たのだ、んーなんでこの人俺の服の場所知ってんの?
手を伸ばしたのは初任給でちょっと無理して買った外行き (居ない彼女とのデート用)の服だ、ジャージとリクルートスーツしかなかった俺にとっては思い出深い服で、その場の店員に選んでもらったのを覚えてる。
「っていうかケンちゃんこの服女の子用じゃない? まぁ貴女にも似合ってるけど」
「………え?」
「んーと、これもこれも、あコレも高そうな服は全部ボーイッシュコーデで統一されて四季分あるわね、多分店員さんに女の子って思われてるわよ? 貴女」
言いながら乱雑に俺の服を散らかす、いやいやそんなことより何? ボーイッシュって? ズボンだよ? 冗談でスカート勧められた事あるけどあれマジメだったの? っていうかいつも俺の服を選んでくれたあの女店員さん俺をボーイッシュな女と勘違いしていたって事?
「いや違う! それは男性用です!」
「えーだってこの白いヒラヒラなんて完全にスカートじゃん」
「それは膝下から二股に分かれてるズボンなんですぅ!!」
「えー? そーかなー? でもあの女店員さんケンちゃんの服を選んでる時やけにウキウキしてたと思うけど?」
ん?
「なんで女店員さんに選んでもらった事知ってるんだ?」
そうだ、俺はあの時ダイブモードをオフラインにしていたはずだ。
だから俺があの店員さんが女である事なんて知りようがないのに。
「ああだから言ってるじゃないですか、魔法ですよ。マホー」
「それは空想上の技術だろう? 俺は古代に流行ったなろう系主人公じゃないんだ、そんなものをすんなり受け入れるわけないだろ」
「さっき貴女を身体ごと浮かしたじゃないですか? あれ魔法ですよ」
「そ、そういう映像を俺に強制的に見せたのかもしれん」
「それは苦しい否定じゃあないですかね? イチャモンに近い」
言いながら目の前のデータでしかないはずの美少女は俺の男性服を着る、っていうかこの子が着ると本当にボーイッシュな女性服に見えるから不思議だ、男性服なのに。
んー、よくよく考えてみると西暦2500年の今現在の科学って魔法とそう大して変わらないのかもしれない、この白銀髪の美少女もジョージの作った何かしらの科学技術の産物なのかもしれない。
俺の生まれ変わりをなんでか自称する痛い子だけど。
「どーしても信じないっていうのね貴女は、なら良いです」
お、諦めたか?
「世界中の人間の前で魔法少女になってもらいましょう、そうすれば貴女ひとりの錯覚とは言い訳できないでしょ?」
ん? んん? んんん??! 今なんて言った?
「ちょっと待って、なんだ魔法少女って?」
「魔法少女は魔法少女ですよ、知りませんか? キラキラした棍棒振り回して悪い怪人をやっつけるあれです」
「いやそれは知ってりゅ、知ってる」
噛んだ
「噛んだ?」
「うっさい!! そんな事より少女ってなんだ!? 俺は男だぞ?」
「さぁ行け魔法少女ケンちゃん、悪のなろう怪人を倒すんだ!!」
「人の話を聞け! まさかと思うがお前俺に何かして恥をかかそうとしてるんじゃないか?! っていうか中に人が入ってるんじゃないか?? 誰だ犯人は!」
「私は私よ」
首を振って否定するがすごく怪しい、こんな感情的なAIは技術的にあり得ない。
人間が操作しているのだろう。
七緒か?
考えてみればアイツが一番怪しい、アイツだったら俺の通いの店くらい知っていてもおかしくはない、アイツだったらこれくらいの事をする! つまりコイツ動きも声も七緒が操ってるに違いない! おのれ七緒。
「違うわよ! あの女の操り人形なんかじゃないわよ!!」
「え?」
「あ!」
互いの顔を見合わせる、アンネは先程までの強引さが嘘のように黙り込み俯いて目を逸らす。
俺は七緒を疑った事を一切口にしていない。今コイツ、俺の心を読んだか?
「ええ…………読めるわよ? 全部じゃないけど。だって魂つながってるんだもん言ったじゃない私の来世が貴女だって」
あっさり認めた。さてはコイツ嘘が下手だな?
これは本当に科学的なオーバーテクノロジーなのか? 物体を動かして俺を宙に浮かして俺の心を読むAIが目の前にいるのか?それとも本当に魔法なのか?
「私は機械じゃない貴女の生まれ変わりよ! 何度言えばわかるのよ!」
「いや、そうだったとしてもおかしいだろ? なんで一方的に俺が心を読まれてるんだよ? 俺にはお前の心なんて聞こえないぞ?」
「んー? それは魔術的力量差よ、って言うか読まれたとしても私思った事しか行動しないから心を読まれても意味ないわよ? 私ねすっごく正直な女なの」
えええ?? そう言う事自分で言っちゃう?
「じゃあアンネ! さっきお前俺の事女の子みたいだって言ったのも思った事そのまんまっていうのか?どっからどうみたって俺は誰に目から見ても男じゃないか!! この嘘つき!」
あれ? 俺は何を言ってるんだ? 別にそれはどうでも良いじゃないか。
「違うわケンちゃん、どうでも良くないから本能的にその言葉が出たのよ、そう女の子みたいじゃなくて貴女は絶対女の子じゃないの! 私の来世が男な訳ない! 認めない! コレはきっと悪〜い魔女が貴女の性別を変えてしまったに違いないわ♡」
目がヤバイこの女。
「言ってりゃ、言ってろアホ!!」
また噛んだ。
「まーたかんだ♡ かわいい」
「可愛くない! こういうのは阿呆というんだ……自分で言ってて恥ずかしくなって来た」
「あー♡ 照れてるかわいい♡ 抱きついちゃえ♡ でゅふふ♡」
ぼひゅ
ボーイッシュコーデの服を着た超美人が俺に抱きつく、香水などの匂いではない女の子の純粋な良い匂いがする、コレもデータ?確かにフルダイブしてれば嗅覚も味覚も触感も思いのままだけど、この衝撃的な展開は思いの範疇じゃないと思う!
「あらら♡ もしかして私に欲情しちゃった?」
「男だからな、あんまり引っ付いてると痛い目見るぞ」
「うむ、ケンちゃんはやっぱレズビアンか。分かりやすい」
この人は意地でも俺を女の子にしたいらしい。
「俺は……男です」
「貴女は女よ、これからそれを少しずつ証明していくわ」
凄く自信満々に言った。嘘を。
「ケンちゃん、ちょっと手を合わせて」
右手の平を差し出してきたので俺も左手の平をなんとなくで出してしまった。
ぴと、ギュ
触れた瞬間に俺の手の指の間をを美少女が握る、コレ確か“恋人繋ぎ”ってやつじゃなかったっけ?
「貴女は私を逃がさないでね、ケンちゃん」
「え?」
何かボソッと言った気がしたが恋人繋ぎで動揺した俺は聞いていなかった。
『汝、我と契約する。魔法少女の契り、ここに完遂する。』
すっごい早口で何かしらの呪文を言ったがこっちは聞き逃さなかった。
「? お前今なんか不穏な事言わなかったか?」
「魔法少女の契約を成立させたわ、本当はもっと面倒な事しなきゃいけないけど私と貴女は同魂異体、比較的超簡単に契約できたわ、貴女は今変身できる魔法少女になったのよ!」
何言ってんだコイツ。
「何言ってんの? しまいにゃ殴るよ?」
「その内わかるわよデュフフフ」
「その笑い方やめろ、可愛い女の子が使って良い笑い方じゃない」
何かあるって事か? 冗談じゃない魔法少女になんか成ってたまるもんか!
「………ちょっと買い物してくる」
「私も行くわ、それとお隣さんに挨拶しなくっちゃあねぇ? きっと優しくお出迎えしてくれるわ」
隣って七緒のことか!! ダメだからかわれるに決まってる!
「それに本当は買い物じゃなくって自分のアパートから家出する気なんでしょう?言ったじゃない私たちは同魂異体、何を企んでもバレちゃうのよ!! 大人しくこの部屋で待ちなさい!」
「ええええ……」
自称俺の前世と言い張る痛い女の子と一緒にすごす事になった 。
ほぼ強制的に。
〈次回予告っっ!〉
さぁさぁ、作者のやらかしにより最初からやり直しになった癒らし聖女の異世界戦線!なんと第一話にして謎妖精こと私アンネの正体が主人公の前世だと知られてしまった!安心して削除にビビってる作者の代わりに私が脱ぎますから!
意地でも自分を男と自称する嘘つきヒロイン谷戸賢治!白髪の美少女であるこの私アンネの監視に耐えかねて大好きなパパに会いに行く!
しかしそんな風にパパとイチャイチャしてた時リアル世界では将棋好きのお爺ちゃん事スマートふぉん太郎の魔の手が忍び寄っていた!!!
ああケンちゃん!!こんな事で処女を散らしてしまうのか?!
でもそんな時ケンちゃんのおっぱいからピンク色の光が?!!
次回、第二話!!
『俺、魔法少女に成る!!』
次回も見てくれないとお前を魔法少女にしちゃうぞ☆
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作者の後書き↓
アンネの予告は本編のみです。
読んでいただきありがとうございます。
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