幼物語 「けんじです!! おとこです!!」♡
おまえのような男がいるか。
西暦2483年春
谷戸賢治 6歳。
小学生一年生。
一大決心をした彼はクラスのみんなの前に立つ。
仁王立ち。
腰に手を当てて睨んでいる。
「賢治ちゃん話ってなーに?」
「給食の時間なのよーはやくしてー」
この時既にクラスの発言権は女子が支配していた。
まだ肉体的差はない、本来ならこれから男子が女子より大きくなりその役割を認識する。
だがこのクラスは逆だ。
女児が、強い。
賢治の聖女の異常性質により同性である女児にのみ強化の魔術が行使されている。
それは保育園の頃から、どんなに隠しても隠し切れるものではなく、制御されない魅惑は凶悪であり魅力は暴力的であり魅了は支配だ。
賢治はその力に無自覚である。
自覚したところで認めない、聖女は話が通用しない。
「今までお前らに言っておかなきゃいけないと思ってなぁ!! 特に女ぁあ!!」
小汚く、暴力的に、荒々しく、
そのつもりで言い放った言葉だが。
「か、可愛すぎるっ!!」「叫ぶと美しいわ」
「やっぱり普通の女の子と違うわね!!」
可愛い賢治のすることは全てがそう映る。
「俺は男だぁ!!」
キレた。
賢治は限界だったのだ、まだ男女の区別は彼の中にない。
どちらかと言えば女としての自覚の方が強く偽りの男性の目覚めはない。
だがこのセリフ、自分を男であると奮い立たせる言葉は大好きなパパに教えてもらった魔法の言葉だ。
これを口にするだけでパパに認めてもらえた気がする、その場にいないパパがそこにいる気がする、それだけで賢治は勇気が湧いてくるのだ!!!
だが。
「ケンちゃん!!またそんな嘘を!!」
「女の子が何言ってるの!? いいからそのズボンやめなさい!全然似合ってないわよ!」
「今日こそは私のスカート履いてもらうんだからねっ!!」
「女の子は女の子の格好しなさいって私のママが言ってたわよ!!」
「ケンちゃんは嘘つき!!」
女児全員マジギレである、因みに男児はというと賢治の魅力が反転し心底どうでもいい、そんな感じだ。
だが女児に至っては女王蟻に付き従う働き蟻の心境である、その女王が『女じゃない!』などと大嘘をつけば怒りが沸くのも仕方のないことであろう。
しかしこの三つ巴の中挟まれている担当が一番不憫であろう。
小学一年一組 担当 白銀瑠衣 47歳女性。
日本人女性、少し小太りの温和な感じの低身長のおばさん。
素敵な出会いを得て2児の母親となる。
趣味は工芸の域にあるメガネのフレーム集めであり普段も今もその高級なメガネを着用している。
教員として二十年以上この様な事態は初めてである。
何より小学一年の割に女児たちの成長が半端ないのだ。
悪い事もいい事もある。
女児全員が中学生並みの学力を持っている、女児だけ全員テストは100点だ。
そのかわり各自の悩みも中学生並みだ、好きな人がどうとかそう言うアレであり、その原因は全て1人の男児に集中している。
勿論賢治のことだ。
登記謄本上男のはず、だが彼女も女、賢治の性別が女ではないかと疑っている。
理性と常識で自分を保ってはいるが賢治の魅力に一時期気が狂いそうになったことがある。
(ニ組はもっとのほほんとしてるのにっ!)
心の底では女児たちと同意見である。
しかしここは教員として男児 (と偽る)賢治の味方をしなければならない。
「みんな、たしかに賢治ちゃんは可愛いけどね? かの、彼は男の子なのよ? 女の子たちの彼に対する態度はあんまりだと思います! 私はみんなの先生として……………」
「先生! 騙されちゃダメ! 賢治ちゃんはそんな事言って男の子とエッチな事しようとしてるの!! 私は知っている! 賢治ちゃんは男好き!!」
「私たちは男供を守る為に賢治ちゃんを隔離してるの!! グヘヘへ! だから賢治ちゃんは私たちと一緒にいるべき! グヘヘへ」
どうやら当の本人にも悪いところがある様である。
先生はいきなり論破され言葉を失う、もし男だとここで断じてしまい、新しい別の問題を作ってしまったら?
それは教員としての責任問題である。
(そもそもこの子は本当に男の子なの? 男児用の服を着てるけど、くっ! この頃の子供は判断が難しい!! もしかしたら家庭の事情で男の格好をしてる可能性だって否定できない!! 問題なのはそこなのよ! でも生徒の性別の確認なんて素っ裸にするしかない!! でもそれは私の教員としての矜持がゆるさないっ!!)
「お! お◯んち◯あるもんっ!!!!!」
パリン!
メガネのレンズが吹っ飛んだ。
大声で、甲高く、綺麗な声でおち◯ち◯と泣き叫んだのだ、ショックでメガネのレンズが割れるのも仕方のない事だろう。
「け、賢治、くん? 何を??!」
割れた眼鏡のまま震えて声も出にくい、目の前の美幼女が何を言ってるのか全く理解できない。
「パパと一緒に風呂入ったもん!! ななちゃんにも見せたことあるもん!! おち◯◯んあるもんっ!!」
たらっ…………、
先生は賢治のパパのイケメン度は先生も知っている。そのイケメンと幼女のお風呂シーンを生々しく想像してしまう、そして鼻血を思わず流してしまったのだ。
ガタ、
動揺して教卓に背を預けてしまった。
精神的なダメージが強く、自分の力で立ち上がれそうにない。
(なんて事!! いくら父親だからって娘に手を出すなんてっ!!)
出していない。
誤解をしている先生などそっちのけで話は進む。
女子たちにとって問題なのは賢治におちん◯◯があるかどうかではない。
無論そんなものがあるとは信じていないが、あったとしても賢治ちゃんはみんなのお姫様で女王である事に変わりはない。
そんな事より聞き捨てならないのは…………。
「「「和葉ちゃんが賢治ちゃんと、一緒にお風呂………………だと…………???」」」
学級裁判案件である。
クラスのアイドル賢治ちゃんの全裸を独り占めしたメスガキ。
七緒和葉を断罪しなければ。
当事者以外の女子全員が一致団結した瞬間である。
「火炙り…………どうやって?」
「はりつけ、確か十字架ってそういうのが元の使い方で………」
「槍を持ってこなきゃ、先祖様の物がウチに数本ある」
「決行日を」「許すまじ」「見せしめに干物にしよう」
※全員小学一年生です。
クラスの中央、ど真ん中に位置する彼女。
七緒和葉は動揺しない。
何故ならこの事態は想定内だ。
女の子である賢治ちゃんが追い詰められればおちん◯んの事を泣き叫んで訴えそれを見た者、つまり自分の事をいうに決まっているからだ。
全員殺気を放ち眼光が暗殺者のソレで、事実として彼女らは既に男児などお話にならないくらいの筋力を持っている、それが二十を超える。
数秒後には殺される。
それほどの戦力だ、しかし。
「ええ!! 見たわ!! ケンちゃんのお◯んちん!! 見ただけじゃなくて触ったりしたけどねっ!!!!!」
ヴォッ!!! ザク!!
眼鏡のフレームが吹き飛んで黒板に刺さった。
先生は防御力が0になった。
七緒はえらい男前な顔で言った。
女子は全員顔を真っ赤にして中には妄想し鼻血を垂らす女子までいる。
やはりおちんち◯があるくらいでは男とは認めてくれない様だ。
「な、ななちゃん! それは内緒って!!」
先にバラしたのは賢治である、自業自得といえよう。
「そしておっぱいも触ったわ!! 揉んだ! つねった!! エビみたいに跳ねていい声出した!! 涙も流したので舐めたわ!!! 甘かった!!!!」
ゴッ!!!メキョメキョキョ!!
先生は黒板にめり込んだ! 意識を失っている!!
大人の表情の七緒。
それはそうだクラスの女子全員をごぼう抜きして自分だけ大人の階段を登ってしまったのだから。
「唇は許してくれなかったけど、今の私に怖いものなんかないわ」
その言葉の通り彼女は自信と魔力オーラに溢れている。
そう、周囲にいるだけで女性は無条件で強くなるのだ、それが一緒にお風呂に入り汗を間接的に摂取、そして淫部を見てしかもエッチなことをすれば他の女子などお話にもならない。
そして更に彼女は賢治がメスイキで作り出す〈聖女の涙〉と呼ばれるアイテムを摂取しているのだ、精神的成長も肉体的成長も魔力ももはや比較対象がいないくらいに十全としている。
「ななちゃんのバカァ!! ななちゃんは悪い娘です!! うえぇええ!!!」
地に伏して泣き出した!
「あれ?」「頭が……」
ドサ、
その涙の香気が教室を充満し、弱い男子全員は気絶するっ!
しかし強い女子はむしろ強化され狂化するっっ!!!!!!
「なんか力がみなぎってきた」
「この力で和葉を粛清する」
「覚悟しろ悪い子、いいえこの売女めが!!」
「貴様の罪は万死に値する、ケンちゃんを泣かせた、許すまじ!!」
「イジメは人類の原罪、ここでその諸悪の根源を根切る」
「「「断罪をっ!! 聖女を悲しませる悪女に断罪を!!!!!」」」
※全員小学一年生です。
大人でも小便ちびって逃げ出してしまいそうになる殺意と熱気と狂気の嵐。
その中に1人の女が全ての殺意を集めていた。
名を七緒和葉、彼女の目に恐怖などない。
彼女は聖女の涙の香気だけではなく原液を呑んだ最初の女児、否、女子!!!
彼女は殺意を吹き飛ばすほどのオーラを体内から噴出し、薄く笑った後全員を睨む。
「てめぇら全員、かかってこぉおいッッ!!!」
挑発。
その瞬間女子全員の暴力が七緒の全身に、しかしモノともせず効かない。
「引かない、媚びない! 省みない!! 貴様ら如きの拳のなんたる脆弱なモノよ! その程度でこの私が、倒されると思うてかァア!!」
※彼女も小学一年生です。
殴りにいった女子全員が吹き飛ばされそれを後方の女子が庇って受け止める、妙な連帯感である。まだ同じクラスになって1ヶ月にもなってないのに。
「くっ!これがケンちゃんの寵愛を受けし者の力、ナント凄まじき闘気の応酬よ!!」
※小学一年生です。
「しかし我らとて愛を理解し尊ぶことを決めし〈漢女〉正義を貫く為には決して和葉の様な悪辣女を許すわけにはいかぬっ!!!」
※小学(ry
「「「粛清をっ!!! 一心不乱の大粛清をっ!!!!!」」」
一瞬、七緒の狂化が解けると思えるほどのオーラが女子全員を包む。
それは聖騎士の法術。
無意識的に彼女らは魔法を行使したのだ。
そして何度でも言おう! 彼女らは小学一年生である! と!!
「「「「うおああぁああああああああっっっ!!!」」」」
どぎゃばきごおおんっ!!!!
◆
のちに語り継がれるその死闘は「大乱闘!! 1組シスターズ」と呼ばれ軽く教育委員会に先生が怒られたが彼女自身が謎の体調不良で失神し記憶を失っていたことから厳罰とされることはなかった。されていたら本当に不憫すぎる。
そして大乱闘の結果、クラスの女子10人を倒した七緒だったが残りの女子が仲間の死 (死んでない)を乗り越えて更に魔法強化、巨悪・七緒和葉を討伐に成功する。
何故か常備されていた荒縄で七緒を拘束。
屋上から七緒を吊るして見せしめにしようとしたところ賢治ちゃんの懇願により中止。
むしろ賢治ちゃんが七緒を誘っていた事が発覚、話が拗れに拗れる。
賢治ちゃん、逃亡。
しかし3秒後には犬以上の嗅覚を得た女子にとっ捕まりセクハラを受ける。
そこで賢治ちゃんは自己防衛本能により癒しの魔術を体得する。
女子全員が賢治ちゃんの手中により制御されたのであるっ!!!
しかし賢治ちゃんの魅力は成長とともにパワーアップ、癒しの力が負ける日はそう遠くなかった。
更に女子全員は賢治ちゃんの涙や汗に価値がある事を知りそれらを収集、秘匿し、互いに疑心暗鬼となり地獄の様な青春を全員が謳歌する事になるがそれはまた別のお話である。
この事件を発端として七緒和葉は彼女らのリーダーとなり委員長的存在となった。
そして何故か6年間女子だけは入れ替えなしだったのだがそれはきっと彼女らが何かしてきたのだろう。
世の中には知らなくてもいい事がある。
その為担当教師の入れ替えはとても激しく、彼女らをまとめられる教員は居なかった。
たった1人のえっちぃ黒ニーソせんせぇを除けば、であるが。
単なる平日なのでむしゃくしゃして作った、反省はしていない。




