第1話 ⑦[第一怪人発見]
「ナビゲーター的妖精ちゃんキターーーー!!」
前言撤回。ただ単にリアクションが間に合ってなかっただけの様だ、忘れてはいけない転生したのは40超えたおっさんなのだ、キレのいいツッコミなんて期待してはいけない。
「ねーねーこのあと何が起きるの? 僕達をどこに導くの? 本当はチートスキルくれるんでしょ? ホラホラ勿体ぶってないで何かちょうだいよ〜 おじさん一人じゃこの異世界で生きていけないよ〜 それとも攻略サイト系? それともそっちの世界の食べ物とか武器とかこっちの貨幣で買っちゃうとか? 僕的には分かりやすい強化系が良いなぁ、例えば全属性特化!! とかわけわかんねぇ奴、全部特化してんならそれもう特化じゃないじゃん? みたいな? それかケンちゃん使って異世界で現代知識チート? でもケンちゃん社会人だからあんまり束縛したくないんだよねぇ? ホラホラ僕の可愛い息子だからさぁ、重荷になりたくないしケンちゃんにとってはこっちの世界ってただのゲームだろー? だったらさ簡潔に分かりやすく僕だけに何かしらのチート能力があった方がいいと思うんだけど、そこら辺妖精ちゃんにはベストの選択肢を与えるのかなぁ? ハッキリ言ってこういうのってセンスが試されると思うんだよね〜? 悪いけど疲れたサラリーマンを癒すだけのやっすいチートとか貰って異世界でもてはやされてもなんだかその人たちって操り人形にしか見えないっていうか? 奴隷のヒロインとか出てきちゃったらもう末期だね、目も当てられない、ダ❤︎ ❤︎イフに萌えも食指も動かないよ? そういうのは腐る程古典ラノベで見てきてるんだこっちは、いいかい? チートは日本語でズルの事だけどそんな語源に縛られるべきではない! チート (概念)なのだよ!! 空気を読めって言葉と一緒だよ本当は『場の空気を読め』だろとかそういう無粋な事は言ってはいけない! その場のノリで楽しめる者が常に最強! 無敵!! 大勝利!!! 努力がチート! 劣等がチート! 落ちこぼれもチート! 不遇職もハズレ職も平均値もチート! 無職もチート! ざまぁはざまあ! 悪役令嬢は大正義!! あはは♡ 僕ってリアルでモテてたからそういうので快感を得る機会が無かったんだよ、だから古典ラノベにはハマったよ、素晴らしい! リアルで陰鬱なオーラを纏う凡人ってこういうなんでもないことに生きる輝きを見出していたのか!?? ってさ! やっと僕は凡人の心を理解できた! なんと素晴らしきチートスキル文明! 最盛期を400年以上過ぎた今でもその輝きは失われないっ! さぁ妖精ちゃん、そんなチートを全網羅している僕にどぉ〜んな見たこともない! 想像もつかないっ!! そして僕に認められるチートスキルを与えてくれるんだい??! 期待してるよん??」
長い! 長くて嫌味ったらしい!! チートのこだわりがくどいっ!!!! どんだけチートに執着してるんだ、ホラ妖精()ちゃんも何も言えなくて黙り込んじゃったじゃないか! 一応女神だぞソレ!
「ないわよ…………」
「え?」 『え?』
妖精ちゃんはわなわな震えている。
「この馬鹿! アンタにあげるチートスキルなんて一個もないわよ!! アホ! おっさん勇者! 死んじゃえ!」
謎の妖精()アンネさんはブチ切れたらしく警戒色であろう赤色の光を出して蚊トンボの様にぐるぐると周囲を飛び回り始めた。
『オヤジ謝れ! コレなんか絶対何かあげるつもりで癇癪起こしてくれないパターンだ! 女ってのはそういう生き物だ!』
「えー? 僕なんか悪いことしたぁ? ただちょっと自分の願望を口にしただけじゃ〜ん」
困ったような表情をするバツイチのオヤジ。
『ぶりっ子みたいにうねるな! 気持ち悪い! 女が……じゃなくて謎妖精アンさん! どうか気を鎮めて下さいこの人ちょっと異世界転生に興奮してて悪ふざけが過ぎただけなんです! だから御慈悲を何卒御慈悲を下さい!』
俺がへり下ったつもりの声で妖精()さんにお願いするのを聞いてオヤジはちょっと不機嫌ヅラだ、お前のためにやってんだぞ?
「ケンちゃん、この世界は君にとってはゲームなんだ、遊びと言い換えても良い、そんな遊びでそんなへり下ったこと言って欲しくないな、仮にも君はこのイケメンな僕とそんな僕とつりあった奏美の世界一可愛い息子なんだから!!!」
照れること平然と言うなこのバツイチ。
『へり下るね、だってアンタはオヤジだ、蘇ってゲームの世界だかなんだかよくわからない世界に転生した様なモノなんだ、もう俺は息子としてアンタの死は見たくないっ!』
「ケンちゃん………」
そうだ、たとえ目の前にいるこのオヤジがただのAIだったとしてもただのゲームみたいにコンティニューしてやり直し、だなんて軽く扱って良いはずがない、第一ゲームである可能性だって本当は疑ってる。
何故俺がそう思うのか? ソレはこの世界の“被写体深度”がさっきからやけにリアルよりだからだ、今の時代フルダイブをしたことの無い人の方が少ないのだが、こう言った世界を作るゲームはデータ容量を抑える傾向が有る、そこで被写体深度を利用した技術が500年前から使われている、ようは近くの物をどれだけリアルに作るか、という技術だ。
ゲームを作るのに見ているもの意外のデータなど存在している意味がない、だから普通はそのデータを作るタイムラグというか違和感が多少あったりするんだ、被写体を変えたり遠目のものを見たりすると明らかに現実とは違う一瞬の違和感が存在する、だがこのゲーム世界にはソレがない。
さっきから魔剣の視覚範囲を確かめるために遠視をしたりしたのだが全くタイムラグも違和感も酔いによる吐き気もない。
でもまぁ今までにそういう違和感のないゲームがなかったわけじゃない、でもそれでもこの平原みたいな超広い世界で実現した例はない。
最大で少し広い建物一個分、FPSという一人称視点のガンゲームで使われるくらいなんだ。
と言うより受信する側の肉体のナノマシンの限界なんだと思う。
うーん、いやまぁ、ジョージ • J • ジョンセンが作ったのならこういった前例のないゲームを作ってしまうかも知れない、だけど今の技術でそれを現実的かつ可能にできるサーバーはないと思う。ゲームにそんな資金を費やすかといえば投資家の立場から考えてもNOだし。
「ケンちゃん?」
いきなりオヤジが魔剣の切先に顔を近づけながら話しかけてきた、ドアップの親父の顔がいきなり俺の視界を塞ぐ。
『うお!!』
「あー大丈夫? 昔からケンちゃんは考え事をするとびっくりするぐらい押し黙るからログアウトしたのかと思っちゃったよ。」
ああ、そうだこう言う所がオヤジなんだ、AI云々言う前にコレは間違いなくオヤジだと勘だけど確信できる。
コレはゲームじゃない、遊びでもないんだ。
「んーまぁ賢治ちゃんの態度をみて私もチートを与えないまでもないと思ってはいるわよ? でもちょっと遅かったかしら? 敵さんが来ちゃったわ」
『え?』
敵? 何を言ってるんだ? 誰も居ないぞ?
そう思いながらも一応周辺の状況を目視 (魔剣の視点変換)しても何も居ない。
『誰も居ないけど?』
「いや、いるよケンちゃん、僕のソシャゲ時代に獲得したステータスがないと感知できないのかもしれないけど僕の“索敵スキル”が6メートル先に誰かが透明になって隠れてるのが見えるよ」
『索敵スキル? え? なにそれ?』
「えーと、ゲームアビリティのなのかな? 今そっちにデータを送るよ」
ゲームアビリティ
索敵スキル 「透視」
•ゲームステータスに大きな開きが無い限り敵を感知し知らせてくれる。
•生前に手に入れたゲームのスキル。
『おお! なんか出てきた! アッパーモードのウィンドウみたいだ!』
「うんそうだね、じゃあ宣言スキル発動」
ゲームアビリティ
宣言スキル「詠唱」
•現存する相手に自分の意思を送る、隠れている敵などに索敵スキルで『知られているよ』と煽るのに空メールを贈ることができる。
特にエフェクトはなかったがなんと言うか、場の空気が変わった。
「いやはや、まさか私の”アルバアビリティ“が看破されるとはな」
ヴヴヴ、ヴヴァン!
親父の言っていた通り正面の6メートル先辺りから知らない爺さんらしき声がして空間が歪み、そいつが現れた。
白いコートのようなダサい上着、中には黒い上着に黒い長ズボン、それらを多数の黒いベルトで格好つけた痛々しいファッションだった。
顔は十代前後の若々しいシワの無い肌にやけに目を見開いたクスリでも決めてるんじゃ無いか? と思えるような表情だった。
『老いた声と姿が一致しねぇな? おい』
「肉体の選択肢で若くしたんだろうね、転生する前に選択メニューみたいのがあったんだけど声は選択できなかったんだ、だから僕は元の姿を選んだんだけどさ」
『え? そんなのあったの? 女神とか出てこなかったの?』
「居なかったね、僕もあんまり意識的に選んだわけじゃなかったから記憶が曖昧だけど」
成る程、つまり目の前のコイツは実年齢が相当ジジィだって事か。
「独り言は終わりか? ならばこちらから行かせてもらうぞ? 見よ! コレが私の魔具!」
? マグ?
なんだかすごい高らかに手に持った長方形の銀板を上に掲げてるけど。
んー?なんだあれ?なんか教科書であー言うのみたことあるな。
「ソレはまさかスマートフォン!!2000年代に情報端末として大流行した古代のアーティファクト!!」
あーソレだ、正式名称‘スマートフォン”人口最多期を支えた最も生産されたという情報端末機器だ。
「ククク、どうやら知っている人間だったようだな、そうコレは過去の文明の利器、そしてソレを魔具化した我が名は『スマートふぉん太郎』! 持てるスキルは『拡大解釈』!! 恐ろしかろう? 貴様が最初に戦うのは原初にて最悪の災厄よ!!」
などとほざいてはいるが訓練されたかのような妙なポージングをしてすっごくノリの良いお爺さんなんだなぁ、と言うのが正直な感想だった。
なろう兄弟No.01 アバター
固有名詞『スマートふぉん太郎』
ステータス LV99(階位3・大賢者)
固有魔具『スマホ』
・検索、妨害、に限らず情報という概念にあたる全てのズルを実行できる。
アルバスキル『拡大解釈』
・固有魔具の力や効果の解釈範囲を無限に広げる、制御力は最低のスキルである。
多分コレあれだ、ゲームのチュートリアルみたいなやつだ。




