世界
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ある時僕は、海を見る。
ある時僕は、水の中にいる。
ある時僕は、土の上にいる。
ある時僕は、夢を見る。
ある時僕は、空に包まれる。
ある時僕は、火の中にいる。
そしてある時僕は、また夢を見る。
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HELLO ME
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いつか、どんなきっかけだったか、こんなことを考えたことがあった。
僕は一体何者なのか。どうしてここに存在しているのか。
そして、この世界は果たしてどういった存在なのか。
とある哲学者はこう言った。「我思う、故に我あり」と。
自分の周りの物について考えれば考えるほど、僕はわけがわからなくなっていく。でも、それが普通なんだ、と。そうやって考えに考え抜いて、疑いに疑って、それでもなお疑ええないものが、この私自身なのである、と。彼はそう言った。
僕がその考えを聞いた時に、思ったことはそう多くはなかった。ただ、「ふぅん」とだけ。もしかしたら、本当は自分の存在についてなど、たいして興味はなかったのかもしれない。ただ考えたかっただけ。そうして考えている自分が、僕はちょっと好きだったのかもしれない。
でも、後者については、少なくとも前者以上の興味を持っているように、僕は感じていた。この世界は一体何者なのだろう? 科学的な説明は、いくらでも可能だ。ビッグバンが起きて、地球が誕生して、水が……でも、そういったことはどうでもいい。僕は、僕が生きるこの世界に、新たな「意義」をもたらしたかった。僕が生きて、僕じゃない他の人が生きて、動物が生きて、植物が生きるこの世界に、科学的なものだけではない、僕なりの意味を、与えてみたかった。
それはある意味では極限の喜びであったし、でもある意味では最大の恐怖でもあった。「新たな意味」を提唱するということは、少なからずこれまでにあった定義を否定することになる。こうして張り切っていながらも、同時に、自分が生きる世界を分自身が否定することに、多少なりと抵抗を感じずにはいられなかった。
それでも僕は、なぜかこの思考を止めることはなかった。その理由は判然としない。ただただ自分なりの解を出したかったのか、それとも年齢ゆえの関心によるものなのか。
とにかく僕は、自分が生きる世界を、普段見る目線ではなく、別の観点から見てみようと思った。それが僕の、この世界での目的であると、なぜかその時は、信じて疑わなかった。
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