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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ロリ魔女異世界

ロリ魔女っ子のせいで転移した先の異世界にはクリスマスがないのでつくることにしました

作者: ごごまる

 本作は『ロリ魔女っ子のせいで転移した先の異世界では、魔王が劣勢なのでそちらに協力することにしました』のクリスマス番外編です。

 本編を知らない方にもお楽しみいただけるように書きましたが、本編を先に読みたい方は作者名かロリ魔女異世界をクリック。

 廣本(ひろもと)(あらた)は異世界転移した。

 ファンタジーの世界に()()()()()のは、勘違いで命を狙われてしまった魔王を救うためだ。


 飛ばされた――。

 彼は自ら異世界へ行きたいと望んだのではない。

 彼を異世界へ転移させた人間が、言い換えるなら異世界へ飛ばした人間がいる。


 同じく地球の住人であったマユ。


 地球にいた時、偶然にも魔法について書かれた文献を見つけ心を奪われた。

 そして魔法研究の最中で彼女は異世界へ行く。

 途中、魔法の発動に失敗して小中学生ほどの体型になったが実年齢は二十歳(はたち)を超えている。


 彼女が異世界に来てから一年ほど後、魔王救済のため人手が欲しいと新を召喚。

 こうして二人の魔王を助ける日々が幕を開けた。


 しかし、とある問題が新を悩ませる。

 それは娯楽の少なさ。


 マユの住むレンガでできた家――。

 必然的に彼もここで暮らすことになるのだが、そこにはテレビもゲームもマンガもない。

 あるのは魔法について書かれた本ばかり。


 マユは重度の魔法オタクだから日々に退屈を感じなかったが、新はそうではない。

 魔法について記された書物は謎の言語で書かれていて、そもそも一般人には読めなかったのだ。


 そしてさらに退屈を加速させたのは――。


「マユ、この世界ってイベントが少ないよな」


「うん? 突然どうしたのだ」


 イベントの少なさ。

 やれ、今日はめでたい日だとか何か特定のものを食べるべきとかそんなことは異世界に来てから一言も聞いていない。

 この世界の住人は平坦な毎日をひっそり過ごせていれば幸せなのだろうか。


「日本ってだいたい毎月に季節絡みのイベントがあったじゃん。この世界って静かすぎない?」


「……イベント、あると思うぞ。私たちの家が俗世間から遠いだけで」


 そう。

 レンガの家はサリア王国の端、それも森の中にあるのだ。

 実祭には人々がお祝いごとを楽しんでいる時期があるのかもしれない。


「じゃあ俺たちもやろう! 生存権にもあるだろ、『健康で文化的な最低限度の生活』って!」


「……それが?」


「ぜんッぜん文化的じゃねぇだろ!」


 とにかく暇だった。

 この世界に来てからは魔王のためにやるべきことをやってきたが休息も必要だ。

 しかしそんな休息が退屈で終わるなんて虚しくなってしまう。


 労働は娯楽のために。

 娯楽は人生を彩るために。


「とにかく、何かいつもと違うことがしたい!」


「むぅ……。そう言われても、私だってこの世界の行事は把握していないし……。そもそも魔法以外に興味がなかったからな」


「じゃあこの世界の人に聞くしかないか……」


―――――――――


「――そんなくだらない理由でここに来たの?」


「くだらなくないだろ! そっちは娯楽たっぷりだってのによ」


 新が訪れたのは魔王城最奥部。

 そこには魔王が侵入者を待ち受ける広場があった。

 その広場に設置された魔王の玉座。

 そして、玉座の裏には隠し扉が存在する。


 隠し扉を開けるとつながっている部屋――それこそが魔王の住む場所であり、()()()()()()()()()()()()場所なのだ。


 居候皇女――名をイデュアという。

 彼女はなんでも、皇女たる立場がやるべき公務に疲れて家出したらしい。

 おかげで世間は魔王が皇女を誘拐したと誤解。

 魔王はその命を狙われる身となってしまった。


 もしも魔王が皇女を追い出せば解決する話なのだが、そうしない理由はなんなのだろう……。


 それはさておき、とにかく新はこの世界の行事について学ぶためだけに魔王城を訪れ、皇女から話を聞いていたのだ。


「行事……。例えば『聖戦祭』とかかしら」


「おっ、そういうのいいねぇ! 詳しく聞かせてよ」


「ずっと昔、異界の英雄とこの世界の英雄が協力して魔王と戦った日のこと。有名な伝説だから、本当に異世界から人が来た時はビックリしたわ」


「魔王と戦ったって……」


 新は魔王を見た。


 魔王――シュベール。

 見た目は銀髪幼女だが、その小さい体に秘められし魔力は絶大。


 伝説がもしもノンフィクションだった場合、シュベールはその英雄たちと戦ったことになる。

 新の視線に気がついたシュベールは首を横に振った。


「我にもよくわからぬ。生きる時間が長すぎるせいか記憶が曖昧でな」


「そんなことあるんだ……。どんだけ長生きなんだ」


「さぁな。我は年齢なぞには囚われぬ」


 やはり伝説はただの伝説にすぎず、あやふやなものなのだろう。


「アラタよ。先ほどから行事について話しているがな、我は貴様の世界の話が聞きたい」


「地球の行事かぁ……。多すぎてしぼれないんだけど……」


「では『聖戦祭』やらと同じような日を言え」


 聖戦祭は戦いについての話だ。

 だから新も戦いに関係のある『終戦記念日』が思い浮かんだ。

 しかし終戦記念日を思い返しても、めでたいという明るいイメージはない。

 戦死者を追悼し、悲劇を繰り返さないための厳格な日だ。


「戦いについてめでたい日なんてあるかなぁ……」


「そちらの世界は平和主義なのだな。いいことだ」


 完全に平和かは断言できなかったが、戦いと平和についてとある行事が思いついた。


「――クリスマスって日があるんだけどさ、それは戦いが一時休戦になるくらいにめでたいらしいぜ」


「らしい? アラタはクリス……うんたらに参加しなかったのか」


「いや、俺の国も賑わってた。だけどこの行事って宗教絡みでさ。その宗教を信じてた人にとってはさらに特別な日だったと思うんだ」


「『降臨祭』みたいなものかしら」


 イデュアが割り込んで言った。


 降臨祭とは人々の安息を願う日。

 天界より神を呼び出し、その加護を受けようという宗教色の強いものだ。


「サリア王国の『サリア』って女神様のお名前でね。それを崇拝するサレイア教こそが我が国の国教なの」


「そこ、なんでサリア教じゃなくてサレイア教なの?」


「えっと……。『サリア』はこの世界での姿の名称で、天界にいる時は『サレイア』という名で呼ぶのが掟なの。でも、女神様がずっとこの世界にいた方が縁起が良いでしょ? だから呼び方を『サリア』に統一したそうよ」


 イデュアはスラスラと知識を披露していく。

 自由奔放さから忘れそうになるが、彼女はサリア王国国王の娘だ。

 学の深さは侮れない。


「そっちの神様は? どんなお方なのかしら」


「イデュアって宗教好きなの……?」


「は? 悪い?」


 新にとってはふと落ちた言葉だったが、イデュアには大きな地雷だった。


「あんたも『神様を信じるメルヘン女子』とか『白馬の王子様に憧れてそうな夢見お嬢様』ってバカにするわけ? 国教っつてんのよ、国教! 信じるだけで心が楽になるならそれでいいじゃないの……」


「ごめん……。そういう意味じゃ――」


「うん、わかってるわ。ごめん。こっちも嫌なこと思い出しちゃって……」


「……クリスマスはキリストって人の誕生を祝う日だよ。キリスト教はあまり詳しくないけれど、慈悲深かったり、復活したりとすごい人」


 復活の言葉に魔王が反応する。


「その者も魔法を……? それとも『セーブポイント』か? だがマユによればそちらの世界に魔法はないと――」


「あぁいや、これも逸話だと思う。俺、無宗教だし迂闊な発言はできないけど……」


「真実はわからないのか」


「それこそ宗教なんだから信じる人にとっては事実だし、そうじゃない人にとっては伝説なんじゃないかな」


「つまり、真実はわからないのだな」


 魔王は考えることを放棄した。

 聞けば聞くほど理解が追いつかない。


 行事の話からクリスマスの話に脱線してしまったが、話を戻そう。

 問題なのは暇であり、それを解消するイベントが欲しいのである。


「近いうちに行事やる日ってない? 俺、それに参加するわ」


「残念だけれど、この時期に祝い事はまったくないわよ。これも昔の話が由来で――」


「もう歴史はお腹いっぱいだ……。またいつかな。……だけどつまんねー、暇ー!」


 大声を出しても部屋に響くだけ、何も変わることはない。


 そもそも記念日とはなぜあるのだろう。

 逸話や伝説がなければ成り立たないのだろうか。

 今日が記念日ならいいのに。

 今日が祝う日ならいいのに。


「――魔族には祝い事ないの?」


 新はシュベールに尋ねた。

 イデュアから言われたのはあくまでもサリア王国の祝い事。


 魔族ならば別の行事が――。


「ないぞ。もはや魔族の社会は衰退しているからな。集団がないならば祝いも必要ない」


「よし! なら作ろうよ!」


 記念日なんてつくればいい。

 クリスマスだって、日本人の多くがキリスト教徒ではないはずなのに一大イベントと化しているのだ。

 大切なのは気持ち。

 行事に乗っかって楽しむ心意気だ。


「シュベール、誕生日は?」


「覚えてなぞおらぬ」


「よし、今日だ! 題して『魔王様勤労感謝祭』。 魔王様の誕生を祝い、日頃の行いを労う記念日にしよう」


 新の提案に喜んだのはイデュアだった。


「シュベール様、おめでとう! これからも(わたくし)の膝枕で癒やしてさしあげます」


「寄るな! 膝枕は極上だが、最近の貴様は本当に危ない」


 イデュアはシュベールが好きだった。

 その気持ちが最近は走りすぎて本人に警戒されている始末。

 実はマユもイデュアのことを警戒しているが、イデュアがマユに何をしたのかは伏せておこう。


「ふへへへ。捕まえましたよ、シュベール様ぁ。今日は膝枕じゃなくて胸枕にしますか?」


「ふぐっ! 窒息するわ! ベルっ! 助けてくれベル!」


 シュベールの従者にベルという魔族の男がいる。

 非常に優秀な召使いだが、日中は定期的に外出していた。

 そして今日は外出の日。


 誰かが助けてくれることはない。


「あっは! このままお楽しみタイムに入りましょうよ!」


「やめろ! ロリコン皇女め、放せ!」


「うひひひ。ベル不在よーし、侵入者不在よーし、あとは――」


 イデュアは新と目線を合わせた。

 その途端に冷たい声が新を貫く。


「愚民、さっさと消えなさい」


「行事を提案したのは俺なんだけど――!」


 こうして、異世界ではクリスマスに代わって魔王様勤労感謝祭が新しい記念日となった。

 表の歴史には記録されない、魔王様のちょっとした記念日だ。


 なんだかんだで新の暇は紛れたが、結局魔王城からも締め出される結果に。


「あれ? そういえば俺、最初は何しに魔王城に来たんだ?」


 行事をつくるためではなかった気がするが、クリスマスも同じこと。


 本当はチキンやケーキを食べることも、プレゼントを渡すことも当初の目的ではなかったはずだ。

 それでも誰かが笑っているなら、幸せと感じるなら――。


 それこそが『記念日の在り方』なのだろう。

 お読みいただきありがとうございます!

 本編もぜひ、お楽しみくださいませ!

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