第4話 盗賊狩り
いつの間にかブックマーク10件突破。
本当にありがとうございます!!
戦闘描写でややグロイ場面がありますのでお気をつけください。
「くそうっ!くそうっ!」
森の中を俺はあの化け物から逃げるために必死で走り続ける。
ドワーフの里を襲い、ドワーフの男は皆殺しにし、女子供は奴隷として売り払うだけ。
それだけでかなりの金が稼げるはずだったのにどうしてこうなった?
ドワーフの奴等は俺達の襲撃に気づくや否や一目散に逃げ出しやがった。
里に残された金目の物を無傷で手に入れることができて欲が出たのがいけなかったのか?
いや、逃げたドワーフを追い、捕まえるのは難しいことではなかったはずだ。
あの女が…。仲間を殺したあの化け物のせいで全てが狂ってしまったんだ!
あの化け物は4人を殺した後、木陰に潜む俺の存在にも気づいた。
早く皆に知らせなければ…。皆殺しにされてしまう!
木々で覆われた視界が開け、その先に仲間達が酒盛りをしていた。
「お前達!早く逃げっ…。」
言い切る前に俺の視界は2つに割れ、俺の意識はそこで途切れた。
「少し泳がせたほうがよさそうか。」
盗賊の生き残りを追いかけながらすぐに殺すかどうかを考えていた。
ドワーフの里を襲ったことを考えると盗賊の人数は殺した4人と、今追っている一人だけという訳ではないだろう。
「隠密発動。」
その掛け声でスキルを発動させ、俺の体は周囲に同化して見え辛くなる。このまま男についていき、一網打尽にするのがよさそうだ。
「目印は残さないといけないな。」
インベントリから魔石を取り出し、砕いて通り道に撒いていく。
砕いた魔石はしばらくの間光を放つからこうすればドワーフの爺さんもついて来れるだろう。
少し勿体無いが仕方がないか…。
隠密と探知を発動させながら追跡を続けると、追っている男の前方に20くらいの生き物の反応があった。
目を凝らして見てみると追跡している男と同じ格好をしている。盗賊の仲間で決定かな。
先導ご苦労さんってことで…。さようならだな。
ついでに無詠唱魔法も使えるか試してみるか。
風魔法の風刃を追跡している男へ放つイメージをすると、魔法が発動し、風の刃が男を縦に両断する。
何か叫んでいたが、まぁ問題ないだろう。
「何者だっ!?」
両断された男の傍にいた盗賊がこちらに振り向いて叫ぶ。
面倒だが念のため確認しておくか。
「貴方達がドワーフの里を襲った盗賊さんでよろしいのかしら?」
「はっ!女か。俺達が可愛がってやるよ!」
そう叫びながら手に持っている剣で盗賊が切りかかってくる。
これは反撃しても正当防衛だよな?
「はっ!」
紫電を鞘から抜き、居合い切りを放つ。
盗賊の剣ごと、頭を切り飛ばして辺りを血で染める。
「威勢のいい嬢ちゃんだな!おれの女にならんか?」
剣を抜き、構える盗賊たちの背後から一際大きな影が現れる。
ってか人族ではないよな。頭から短い角が2本生えているし、オーガかな?
「冗談は自分の顔を鏡で見てから言ったほうがいいですよ。」
体付きは筋肉隆々なのだが、顔がいかにも鬼だからなぁ。まぁイケメンでもその気はないけどな。
「ふざけやがって…。なら死ね小娘っ!」
棘付きの棍棒を握り、オーガが突進してくる。
面倒だ…。まとめて倒すか。
「紫電、一閃!」
紫電に魔力を送り、雷を刀身の10倍以上に伸ばし横なぎに斬りつける。
「ぎゃあぁぁぁぁ!!!」
先頭のオーガもろとも、背後の盗賊達を雷の刃で両断する。
威力強すぎたかな?オーガの下半身と後の盗賊達が灰になったぞ…。
「ごふっ…。貴様…何者だ…?」
「まだ生きてるんかい…。」
オーガの生命力って凄いな…。下半身灰になって、上半身も黒こげなのにまだ息があるぞ…。
「何者かは言えないが…介錯くらいはしてやるよ。」
そうオーガに言うと、俺はオーガの首を切り落とした。
「嬢ちゃん速過ぎるぞ!?」
しばらくするとドワーフの爺さんとその家族達がやってきた。目印は無事役に立ったみたいだな。
「急がないと追いつけなかったもので…。とりあえず盗賊一味の討伐は終わりましたよ。」
そういうと辺りを見渡す。まぁほとんど灰になっちゃったからオーガの死体くらいしかないんだけどね。
「そうか…。」
そういうとドワーフ達の緊張が解けたようだ。まぁずっと盗賊に追われていて生きた心地がしなかっただろうしな。
「貴方達は今後どうします?里に戻りますか?」
「いや。里は恐らく燃やされているだろうし…。残っていたとしても安全ではないだろうよ。」
一度襲撃を受けていて場所が判明している以上、もし里に戻ったとしても今後襲撃されるリスクは高いだろうな。
これなら誘っても問題ないか…?
「もしよろしければ私の拠点へ来ますか?安全は保障できますよ。」
「いいのか?嬢ちゃんに世話になりっぱなしだが…。それに会ったばかりの俺達を信用できるのか?」
「いいですよ。来てもらえるとこっちにもメリットがありますし。それに何か悪巧みされた所で力でねじ伏せれますしね。」
そう言うと爺さんにウィンクをする。
「お、おぅ・・・。」
「あんたぁ…?」
「「とうちゃん…。」」
「いだだだだだっ!?」
爺さん顔赤くして目をそらしちゃったな…。しかも奥さん怖い表情をして爺さんの耳引っ張ってる。
2人の息子も呆れ顔だよ…。
場を和ますつもりでやったんだが…。すまんな…。
「お爺さんは鍛冶師なんですよね?来てもらえると色々作ってもらえそうですしこっちにもメリットはあるんですよ。」
そうドワーフ達に説明する。説明しなかったら爺さんが奥さんに殺されそうだったからな…。まぁ俺のせいだが…。
「おう。嬢ちゃんは俺達の命の恩人だし作ることに異議はないぞ。しかし…。」
「他に何か問題ありましたか…?」
何か問題あるのかな。ちょっと不安になってきたぞ…。
「いや、嬢ちゃん普段そんな口調じゃないだろ?」
「あ、わかります?」
「これでも色々な奴を見てきたからな。年の功って奴だ。」
なるほど、人を見る目はあるようだな。
「嬢ちゃんは命の恩人だし、そんな丁寧な言葉遣いしなくてもいいぞ。というよりも自己紹介がまだだったな。俺はエドガー。こいつが妻のトトリで上の息子のアルクに下の息子のオッドだ。俺達のことも呼び捨てでかまわん。」
「私の名はレイ・ミカゲ。これからよろしくねエドガー。」
「おう、よろしくな嬢ちゃん!」
問題があるわけじゃなくて話し方を気楽にするだけだったか、よかった…。
エドガー一家との交渉が終わると視界の隅に赤いランプが点灯した。しまった…。
「野暮用は終わりましたか?」
感情のない声でケイが言葉を飛ばしてきた。これは静かに怒ってるな…。
「すまん。色々と立て込んでいてな…。」
消してケイのことを忘れていたわけじゃないぞ…?
「まぁいいでしょう。それでそのドワーフ達を受け入れるのですね。」
「む…。聞いていたのか?」
「はい、と言うよりも魔王様と視覚と聴覚を共有することが可能ですので全て見聞きしていましたよ。」
おぅマジか…。もしかして俺にプライベートは存在しない…?
「魔王様がその気になれば一時的にリンクを切ることもできますので大丈夫ですよ。」
やっぱりこいつにはかないそうにないわ…。
主人公とドワーフ達の自己紹介をしていなかったので修正。