第7話 さっそく絡まれました。
冒険者登録→勧誘合戦→絡まれる
ってのは当然の流れですよね?
「おら!どいたどいた!!」
乱暴な声と共に俺を取り囲んでいた群集の一角から柄の悪そうな5人の男達が俺に近づいてきた。
「何だお前達は…。ぐはっ!?」
5人の前に立ちはだかった男が突然ぶっ飛ばされた。なんか厄介事が舞い込んだ予感がするぞ…?
「おいお前!兄貴がお前に用がある!心して聞け!」
「はぁ…。」
先頭の小柄な男が突然こんな事を言い出した。
「おい、あいつ等って…。」
「ああ…。素行は悪いが腕だけは立つグリード団のやつらじゃないか…?」
「うわ…。あいつらがそうなのか…。あの子運が悪いな…。」
周りの冒険者がざわめきだすが、どうやらこの5人組は悪い意味で有名な奴らみたいだな。
5人の中でも一番ガタイのいいスキンヘッドの男が前に出てきて叫びだした。
「この栄えあるグリード団に特別に入れてやる!どうだ嬉しいだろう!」
うん…。こいつらいきなり出てきて叫んで訳判らないな…。
「お断りします。冒険者になりにはきましたが、盗賊になるつもりはありませんので。」
この5人の見た目はどう考えても盗賊にしか見えないからな。
「てめぇ兄貴に向かって生意気な!」
最初に突っかかってきた小柄の男が俺に向かって殴りかかってきた。
腕だけは立つと周りが言ってたが、俺から見れば素人同然だな。
「ぐはっ!?」
男の攻撃を半身でかわし、脚払いをかけて転ばせた。
「お雑魚さんは退場お願いしますね。」
そう男に言うと俺は頭を蹴飛ばして気絶させた。
「すげぇ…。」
「何者だあの子…。」
その光景に周りの誰もが驚きで言葉を失っていた。
「けっ!女にやられるなんて情けない奴だな!」
スキンヘッドの男は倒された男を一瞥すると背負っていた大剣に手を掛けると、そのまま俺に斬りかかってきた。
「やめないか!」
なんか群衆の中から出てきた金髪の男が叫んでいるが取り合え後回しにして、目の前のハゲを何とかするか。
俺はハゲ男が大剣を振り下ろす前に懐に飛び込むと、手のひらを男の鳩尾に当てて技を発動させる。
「魔闘発剄!」
「ぐおっ!?」
腕を伸ばし、体ごと相手の鳩尾を押し込みながら無属性の魔力を男に叩きつける。まぁ殺さない程度にだけどな。
発剄を受けた男は吹き飛び、壁に叩きつけられて気を失った。
「あっ…。兄貴っ!?」
「てめぇよくも!!」
残りの3人が俺に襲いかかろうとしたが、俺をどうにかできると思っているのかな?
「…。まだやりますか?」
軽く殺気を込めて一睨みすると、男達は怯んで後ずさった。
「くそっ…。覚えてやがれ!」
3人の男達は気絶している2人を抱え、冒険者ギルドから立ち去っていった。
ほんとあいつ等は何だったんだろうな…。
「止めに入ろうとしたのだが…。どうやら必要なかったようだね。」
静まり返っている群衆の中から一人の男が声を掛けてきた。たしかハゲが斬りかかってきた時に止めに入ろうとした男だったかな?
「といっても…。要らぬお世話だったかな?」
「いえ、そのお気持ちだけでもありがたいですよ。」
おどけた様にこの男は言ってるが、あの状況で止めに入ろうとした所を考えるとそれなりの実力はあるのだろうか。
「自己紹介がまだでしたね。私はCランク冒険者のランスロットといいます。よろしければお名前を伺ってもよろしいですか?」
ランスロットは歯をきらりと光らせて微笑む。普通の女性なら見惚れているかもしれないが…。
俺からしてみれば身の毛がよだつ光景だよな…。
「ご丁寧にどうも…。先ほど冒険者になりましたレイと申します。」
少々げんなりしながら自己紹介を返す。ぶっちゃけて言うとあんまりこいつとは親しくなりたくないな…。無駄にイケメンだし…。
「レイさんですか。よろしければこの後即時でもいかがでしょうか?その強さの秘密についてお伺いしたいですし。」
ってこいつここでナンパかよ…。
「いえ、このあと用がありますのでまたの機会にという事で…。」
「そうですか…。ではまた今度よろしくお願いしますね。」
ランスロットは残念そうにいうが、次の機会なんて作る機はさらさらないけどな。
「それでは失礼いたしますね。」
軽く会釈をし、俺はランスロットの前から立ち去る。
「おい…。あのランスロット様からの誘いを断ったぞ…。」
「本当に何者よあの子…。」
また周りがざわめきだすが有名人だったのかあいつ?まぁ有名人だとしても仲良くするつもりはないけどな。
だって断って立ち去るとき皆には聞こえなかったかもしれないがあいつ…、舌打ちしてやがったぞ?
ため息をつきながら俺は受付嬢さんの元へと戻ってきた。
「はぁ…。やになっちゃう…。」
「ってレイさん!ランスロット様からの誘いを断るってどういうことです!?」
受付嬢さんに愚痴を言うと、なんか喰いかかってきたぞ…。
「あの方はこのフォレスタ領主様の長男で、次期領主様ですよ!」
有名どころか貴族で次期領主らしい。ってかなんで冒険者なんぞやってるんだよ…。あ、俺も人の事言えないわ…。
「ま…。まぁそれはいいとして…。」
「よくないですよ!まだまだ聞きたい事はあるんですから!」
ランスロットの正体をアニーから知った後、俺はアニーから尋問を受けていた。アニーというのは受付嬢さんの名前な。
アニーは百合OKという変態なだけでなくこういった話も好きそうだ。
「って何一人回想に耽っているんですか!」
っと…。現実逃避していたら無理やり呼び戻されたぞ。この子只者じゃない…。
登録受付を俺一人で独占しているような状況になっていて周りから苦情が来るかと思っていたが、周りの野次馬も俺の情報を仕入れたいらしく聞き耳を立てていた。
「さぁ!洗い浚い全てを話なさ…。」
「おい。仕事はどうした?」
アニーの後ろから顔に傷跡がある大柄で筋肉質な男が現れ、アニーの頭を鷲掴みした。
「まっ…!マスター!?」
「いつもいつも…。油売ってないで仕事をしろと言っているだろうがー!!」
見た目は盗賊の頭領にしか見えないが、どうやらこの男が冒険者ギルドのマスターらしい。
ギルドマスターがそう叫ぶと、アニーにアイアンクローをかましていた。やっぱりお仕置きといえばこれなんだろうな。なんか近親間沸くわ…。
アニーが悲鳴を上げると、俺の周りにいた野次馬が蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出す。
「すまんな新人。こいつには後でたっぷり灸をすえて置くから勘弁してやってくれ。」
「いえ…。それよりもここには図書館があると聞いたのですが…。」
白目を剥いて悲鳴を上げているアニーを横目に見ながら図書館があったっけなと思い出す。
「ああ、ここの2階の受付でギルド証を見せれば利用できるぞ。」
「ありがとうございます。それでは利用させていただきますね。それと…。お仕置きはほどほどに…。」
そういい残し、俺は2階へと上がる階段へと向った。
背後からギルドマスターの怒声とアニーの悲鳴が聞こえた気がしたが気にしないほうがいいだろう。
アニーはどんなに怒られても懲りないタイプだろうしな…。
登場した次期領主様も今章でのキーマンの一人です。どんな風になるのやら…。




