第6話 まおー様冒険者になる
異世界といえば冒険者ですよね。
この世界での冒険者ギルドというのは言わば便利屋みたいなものだ。
商人や貴族、または国が冒険者ギルドに依頼を出し、ギルドはその依頼のランクを決めてクエストという形で冒険者にその依頼を交付する。
冒険者にもG級からS級までランクが設定されており、基本的には自身のランクまでのクエストまでしか受注する事ができない。
冒険者のランク自体が自身の強さと名声を示すような物なので冒険者はこぞって自身のランクを上げようとする。もちろん人には限界があるので最上位であるS級に到達するものはごく一部であるが、C級になれば商会のお抱え冒険者になったり、B級やA級にでもなれば国に召抱えられることもある。
そのため冒険者ギルドには毎日富や名声を求める者達が多く集まっていた。
「ここが冒険者ギルドですか。」
クルムの馬車に連れられて俺は冒険者ギルドに到着した。
4階建てでアニマ商会よりも階数は少ないが、その分1階あたりの面積は倍以上ありそうだ。
「ええ。この中には新規冒険者の登録受付やクエストの受付、素材の売買に情報を得るための図書館もありますね。」
アイテムの売買はないのかなと思ったが、商人ギルドとの住み分けで行っていないそうだ。
「ここまで来たら大丈夫ですので。クルムさは自由にしていいですよ。」
「いやしかし…。」
セバスから何か言われているのか、クルムは苦い表情をする。
「登録だけだから何もないでしょうし、それに早く家族に無事な姿見せたほうがいいでしょ?」
そう言いクルムにウィンクを投げかける。半分は本音で言っているが、もう半分は一人で自由に歩き回りたいからな…。
「判りました。ご配慮ありがとうございます。それでは…。」
クルムは深々と頭を下げ、馬車に乗り冒険者ギルドを後にする。
「それじゃ…。いってみますか。」
そう言うと俺は冒険者ギルドの門をくぐり中へ入った。
冒険者ギルドの1階の広間には多数の冒険者がおり、混沌とした模様を呈していた。
ある者はパーティーを募集していたり、またある者は掲示板に張られているクエストを眺めていたり、奪い合ったりしていた。
「すみません。冒険者ギルドへの登録受付はどちらでしょうか?」
俺は広間の入り口付近に居た少年のグループに声を掛ける。
「はっ…。はいっ!あちらになりますっ!」
少年は緊張した面持ちで受付のほうへ指を刺す。
「ありがとうございます。」
にこやかに微笑み少年に礼を言うと、少年は顔を赤らめて上の空のような表情をしていた。
どうやら俺のアバターはこの世界でも十分通用するらしいな…。
そう思いながら俺は受付に向かって広間の中央を横切ると、いつのまにか周りの喧騒が静かになっていた。
「(おいおい…。誰だあの子…?)」
「(いや知らないぞ。何処かの貴族のお嬢様か?)」
「(凄く可愛い子だな。クエストの依頼にでもきたのかな。)」
「(凄く綺麗…。髪の毛もさらさらだし羨ましいわ…。)」
「(おで…。あの子に踏んで欲しい…。)」
「(お前は一度死んだほうがいいよ…。)」
周りの冒険者が俺に聞こえぬようひそひそ話をしていたが全部聞こえているぞ。
あと最後から2人目のお前はそれでいいのか…。
呆れながら俺は登録の受付カウンターへと向かった。
「ようこそ冒険者ギルドへ。どういったご用件でしょうか?」
登録受付のカウンターの前に立つと、受付のお姉さんが声を掛けてきた。
ギルドの征服に身を包み髪型はポニーテールで目はパッチリ、頬に少しそばかすのある素朴で可愛い人族の女性だ。
「ええ、冒険者ギルドに登録したいのだけれどもよろしいかしら。」
「ええっ!?依頼ではなく登録ですか!?」
そういうとあたりが騒然となった。
「(おいおい、あんなお嬢様が冒険者になるってどういうことだ!?)」
「(それよりも登録し終えたらすぐに声を掛けたほうがいいんじゃないか?他の野郎どもにとられるぞ。)」
「(あんな綺麗な子を音子達の餌食にさせちゃいけないわ。すぐ私たちのパーティーに誘うわよ!)」
「(踏んでくれって依頼を出したら受けてくれるかな…?)」
「(お前はもう黙って寝てろ…。)」
登録受付に着たんだから当たり前な気がするんだがな…。そして俺が手を下す前に1名変態は退治されたようだ。気絶させられて奥の部屋に引き摺られていってるし…。
「あの…。本当に登録ですか?冒険者は危険な事も多いですよ?」
「ええ、自分の身を守るくらいは問題ないですよ。」
「うぅ…。こんなに髪はさらさらしていてで肌も綺麗なのに…。いっその事私が…。」
受付嬢さんは不穏な事を言い、じゅるっと唾を飲み込む。ってかアンタも変態か…。
「てぃっ。とりあえず登録お願いします。」
「ふにゃっ!?わかりました…。」
とりあえず脳天に手刀をかましておいた。受付嬢もこっちの世界に戻ってきたようで登録の準備を始める。
「こちらの書類をお読みの上で必要事項に記入と、最後にサインをお願いします。」
書類といっても冒険者ギルドのルールを記載したもので、クエストで新でも責任は負いませんだとか、冒険者同士のいざこざにはギルドは関与しませんなどのことばかりだな。
記載するのも種族と出身地と職業と名前くらいか。出身地は書けないな…。他はささっと書いてしまうか。
「これでよろしいかしら?」
「確認いたしますね。種族は人族でお名前はレイ様で職業は魔法使い。出身地の記載はありませんが?」
「ええ、色々な所を回っていたもので出身地と呼べるものがないの。だめかしら?」
「あー…。そういう方もいらっしゃいますし問題ないですよ。」
適当に言ったのだが受付嬢さんは勝手に勘違いしてくれたようだ。まぁいいか。
「書類の記載はこれで問題ないので、次にこちらに魔力を流していただけますか?」
そういうと受付嬢さんはバスケットボール大の透明な玉をカウンターに置いた。
「これは…?」
「これは登録用の魔道具で、人が持つ魔力は個人で放つ波長が異なります。それを利用して個人の識別と登録を行うんですよ。」
ふむ…。生態認証みたいなもんだろうな。一緒にその情報をデータベースで保管するらしいし変にハイテクだな…。
俺は玉に手を置き魔力を流すと、玉は白い光を放ち、やがてその光が収束する。
「これで登録が終わりました。こちらがギルドカードになります。」
ギルドカードを受け取り、まじまじと見てみるがこれもオーバーテクノロジーに見えるよな…。
「これは登録者本人の魔力を流すと名前や職業、ランクが表示されます。またクレジット機能や引き受けたクエストの数や内容も記録されますよ。」
カード言うよりはもうタブレットに近いな。多機能すぎるわ。
「年に一度は冒険者ギルドでギルドカードの更新を行ってくださいね。もし更新しないと失効になる恐れもありますので。」
更新させる事によりその冒険者の生存確認も行っているそうだ。ほんと便利だな…。
あと、無くすと再発行に銀貨10枚必要らしい。後でクルムに金銭について聞かないとだな…。
「あとはクエストやランクや、ここの施設についての説明がありますが大丈夫ですか?」
「ええ、ご教授お願いいたしますね。」
「わかりました。それでは…。」
説明が長かったし、エドガーから聞いた話とかぶるので要約するとこんな感じだ。
・冒険者登録後はG級から始まり、D級まではクエストを一定回数成功させると自動的に昇級されていく。
・ただし試験管に実力を示したり、元騎士などの肩書きがある場合は能力に応じて飛び級をする事が可能。
・D級以上はギルドから指定されたクエストをこなすなどの特別な条件が必要。
・一定期間クエストを受けなかった場合は能力検査があり、場合によっては降格される。
他にもあったが、重要な事はこれくらいか。
「肩書きがないと飛び級ってできませんか…?」
G級は採取などのクエストばかりで大したのがなさそうだからな。できれば飛び級をしておきたい所だ。
「試験管に実力を示せば可能ですが…。私としてはじっくり昇級させていくほうがいいと思いますよ。」
ごもっともな話で…。
「それではレイ様。今後ともよろしくお願いしますね。」
登録を終え俺は受付カウンターから離れる。
「ちょっと君。話を聞いてもらってもいいかな?」
青い鎧を着た青年に声を掛けられた。さっき俺を誘おうと内緒話をしていたグループの一人だったかな。
「抜け駆けはずるいぞ!お嬢さん俺らのパーティーに来ないか?」
「男共は黙ってなさい!女の子には女の子同士がいいの!」
「何だと!やるのか!」
いつの間にか俺の奪い合いになってるな…。どうしてこうなった…?
変態さんが約2名ほど出てきましたが、もしかしたら今後も出てくるかもしれません。




