第5話 アニマ商会とその長
遅くなりました。申し訳ありませんorz
「そこのお姉さん。今日はジャガイモが安いよ!」
「王都のデザイナーが作ったアクセサリーだよ。買った買った!」
フォレスタのメインストリートを馬車で進んでいると、あちこちから威勢のいい声が聞こえる。
「思った以上に活気のある所なんですね。」
メインストリートの脇には露店が並んでおり、食料に雑貨、武器などが売られていた。それらの品を求め様々な人種の人が群がっており、辺りは活気に満ち溢れていた。
「ええ、王国の端とはいえここは王国の中でも重要な街で特産品も多くありますからね。」
森に近い事もあり木材を始め魔物の素材や山から取れる鉱石などを王国各地に売り、代わりに食料を他から買い集めているようだ。
「ほらどいたどいた!」
俺たちが乗る馬車の隣を食料品を積んだ馬車が走り抜けていく。入れ替わるように鉱石を積んだ馬車が俺たちの脇を通り過ぎていく。
「これだけ交易が盛んで国境の防衛を担う街となるとかなり重要な拠点ですよね。」
「ええ、森を抜けた山の向こう側は帝国領なのでここを堕とされるとかなり痛手を被りますね。ただそれは王国もわかっているので騎士の質も数も他の街より多く、冒険者の数もここは多いほうですよ。」
騎士が多いのは当然だが、冒険者が多いのはこの森で狩れる魔物の素材が高価値であるというのもあるんだろうな。
「それにしても広いですね…。」
道幅が広いのはもちろん、街の中央にある城までの距離も相当ある。その道に沿うように中世西洋風の石造りの家々が立ち並んでおり、中には5階建ての建物もあった。どれだけこの街は広いんだろうか…。
「フォレスタは円形の街で直径15kmありますよ。大きさも国内で3番目に大きいですね。」
広いな…。でもこの位の広さがないと国境を守る事はできないのだろうな。
「もうじき私の所属する商会の本部が見えると思います。あれです。」
クルムが指差す方向を見ると、この街でも一際大きな7階建てのビルがあった。ってかでか過ぎない?
「私の所属するアニマ商会はここフォレスタを本部として王都を始め国中に支店を持つ大店ですので。」
マジか…。案外凄い人助けちゃったか…?
「私はまだ修行中の身ですので。凄いのは私の主人ですよ。」
クルムってば実は凄いの?って感じで見ていたらそんな風に言われた。所属しているだけでも凄いと思うんだけどなぁ。
そうこうしている間に商会本部の前にたどり着いた。
「「クルムさまっ。よくご無事で!!」」
建物の中から数人の男女が飛び出してきた。ってかクルム様?
「ええ。私の事はいいですから馬車の片付けとこの御方を中に案内して差し上げてください。」
「「わかりました!」」
「レイ様。私は主人への報告がありますので暫し中でお待ちください。」
クルムはそう言うと先に建物の中に入っていった。
「ではお客様、こちらへどうぞ。」
俺もメイド服を着た従者らしき人に案内され、建物の中に入った。
「ご主人様。ただいま戻りました。」
私は商会長の執務室に入ると、部屋の奥にある机の向こう側に座る中年の男性に声を掛けた。
「よく無事で戻った。怪我はなかったか…?」
その男性が私に声を掛ける。このお方は私の主で名をセバスという。
セバス様は私が運んでいた積荷よりも私の身を案じてくれた。この方は商人として辣腕家であるが、仲間や従業員をとても大事にする方で周りからの信頼は厚い。
「ええ、大丈夫です。運よくあるお方に助けていただいたので…。」
「お前が連れてきたあの少女の事か…?」
私が報告する前に従者からあのお方のことは耳に入っていたらしい。
「それにしても真面目なお前があんな美少女を連れて来るとは思わなかったな。これか?」
そういうとセバス様はにやにや笑いながら右手の小指を立てる。いやそれはないでしょう…。
「滅相もない…。もしそれが事実なら妻に殺されますよ…。」
妻は元冒険者で美人なのに腕っ節は私よりも強い。妾なんてつくろうものなら間違いなく殺される。
「ははっ!冗談だ。それは言いとしてあれは何者だ…?」
あれは何者と問われ、私は考え込む。しかし答えは出ないのでありのままを話す。
「ふむ…。一人狼の魔物の群れに囲まれて絶体絶命の時に空から落ちてきた少女が魔物を撤退させたと…。その少女は従魔術を扱え、しかも見た事のない保存食料を持っていて尚且つその作り方を売って貰ったとな…。
」
保存食については必ず売れると思ったのでレイ様より買い取らせて頂いたが、本来であればセバス様に伺うのが先であっただろう。
「保存食については必ず役に立つと思い私の独断で決めさせていただきました。事後報告になり申し訳ありません。」
「いやそれはいい。私でも買い取るだろう。それにそのレイという少女は承認としての才もあるやも知れないな。」
あの保存食のレシピを一括で買うとなると幾らになるか判った物ではない。売り上げの一部を支払うという考えは今までにないもので画期的だった。
「それは私も思いました。あとレイ様はまだどの組織にも所属していないようでとりあえず冒険者ギルドと商人ギルドに入る予定だそうです。」
「ふむ…。今後の事を考えると繋がりを持ち続けたほうが商会にとって有益であろうな。その保存食以外にも持っていそうだ…。」
セバス様は顎に手を当て、今後の事を思案しているようだ。
「クルム。彼女がこの街にいる間は出来るだけ便宜を図れ。お前の仕事よりもこの事を優先とせよ。」
「承りました。」
レイ様は正直底の見えないお方だ。なのに商会を上げて便宜を図るという決断はセバス様くらいしかできないだろう。
「よし。彼女は今応接間にいるのだな?わしも挨拶はしておいたほうがいいだろう。」
そう言うと席を立ち、私と共に応接間へと向かった。
「むぐむぐっ…。思ったよりいけるな…。」
応接間に通され、席に座ると俺の前にティーカップと果物、お菓子が用意された。
「クルム様が戻られるまで暫しお待ちください。」
そういうとカップに紅茶を注ぎ、従者は部屋を後にした。
「紅茶はいいとして…。果物にお菓子か…。どれどれ…。」
見た所果物はりんごにメロン、マンゴーを四角く切った物で、お菓子はクッキーかな?現実世界ほど綺麗ではないが美味しそうだ。
お茶を飲みながら果物をフォークで刺し食べてみる。味は現実世界のと変わらないが十分美味しい。
クッキーもバターと砂糖がふんだんに使われておりかなり美味しかった。
ってかこの世界だと果物もお菓子も高級品じゃないか…?
クッキーに舌鼓を打っているとドアが開き、2人の男が部屋に入ってきた。
「むぐむぐっ…。」
「ああレイ様御気になさらず。こちらが私の主でセバス様といいます。セバス様。こちらがレイ様です。」
「セバスという。この度はクルムが世話になった。ありがとう。」
そういうとセバスは深く頭を下げた。
「むぐっ…。レイです。お気になさらず、なりゆきでしたし。」
クッキーを紅茶で流し込み、セバスに返答する。
「それでもクルムの命を救っていただいた上にレーションなる保存食についても売って頂いたのだ。だから礼はさせてくれ。」
そういうとより深く頭を下げてくるし…。きりがないな…。
「わかりました。お気持ちは受け取りますよ。」
「ありがたい。クルムは我が商会にとってなくてはならない人物なのでな。」
やっぱり結構お偉いさんなのか?
「その様子だとクルムからは聞かされてはいないな?こいつはそのうち何処かの支店を任せようと思っているくらいの商会の幹部だぞ。」
やぽぱりお偉いさんじゃないかよ!
「あらそうでしたか。やっぱりクルム様とお呼びしたほうがよかったです?」
「いえいえ!今までどおりクルムと及びください!」
ちょっとからかったら必死で否定してきたよ。案外真面目だな。
「ははっ!それとレイ殿。この街にいる間必要な事があればクルムに言ってくだされば大抵のことは手伝わせるのでご存分に使ってやってくれ。」
いやいやいや、商会の幹部をパシリに使っちゃ駄目でしょ!
「いやちょっとそれは…。」
そう言いながらクルムのほうに助けを求めるように視線を合わせる。
「はい、何なりをお申し付けください!」
クルム…。お前もか…。
「そういえばレイ殿は商人ギルドと冒険者ギルドに所属する意思があると伺いましたが。」
セバスとクルムとお茶を飲みながら今後の事について話し合っていたのだが、ギルドについての話になった。
「商人ギルドについては私がギルドマスターなのですぐに登録は可能だ。だが冒険者ギルドは実力なども試されるから登録までに数日掛かるやもしれん。」
実力か…。俺本気出したら逆に討伐対象にされちまうからな…。
「しばらくは街にとどまるつもりなので構いませんよ。でも早めに申請をしたほうがよさそうですね。」
「そうだな。あとは宿が決まってなければ我が商会が贔屓にしている所があるのでそこに話を通しておこうか?」
宿のあてなんてなかったからな。手配してくれるならありがたいし、その申し出を快く受け入れた。
「ではクルム。レイ殿を冒険者ギルドに案内して差し上げよ。わしは商人ギルドの登録を済ませておく。」
「かしこまりました。」
そういうとセバスは俺に断りを入れ退室した。
「ギルドマスターって言うくらい身分が高いのに豪快で気分のいい人ですね。」
「ええ。主も元冒険者で身分なんて気にしないお方ですからね。」
元冒険者か…。納得した。
セバスは白髪交じりの中年の男だが、体付きは商人らしからぬがっちりした者で傭兵と言われたほうがしっくりくる様な人物であった。
今は商人になっているという事は何かあったんだろうな。まぁ俺には関係ないか。
「それではレイ様。冒険者ギルドのほうに向かいましょう。」
クルムに促され、俺はアニマ商会を後にして冒険者ギルドへと向かった。
レイは食いしん坊キャラって訳じゃないのになんだか食いしん坊っぽく見えるのは何でだろう…?




