第2話 旅立ちの朝
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柔らかい朝の光が俺の頬を優しく撫でる。
「んにゅ…。」
「すぅ…。すぅ…。」
今日は出立の日という事でいつもより早く起きたのだが、俺の両腕を両隣で眠っている少女達に拘束されているため体を起こせない。
いつもならこっそり抜け出して朝食を作ったりするのだが、流石に今日はやめておくか。
「お嬢様、おはようございます。」
いつの間にかベッドの脇にケイが佇んでいた。ほんとこいつのハイド能力は高すぎるよな…。
「おはようケイ。悪いんだけど誰かに朝食の用意させてくれないかしら。」
「よろしいのですか?もしご自身で御作りになられるならば2人を起こしても問題ないかと思いますが。」
2人を起こす事も最初は考えたのだけどね。でも今は幸せそうな寝顔で眠る2人を眺めていたい気分なんだよな。
「二人には寂しい思いをさせちゃうからね。だからせめて今はできるだけ…。」
「…。かしこまりました。」
ケイは俺の心情を汲んでくれたのか、姿を消して部屋から出た。
「はふっ…。すぅ…。すぅ…。」
「んっ…。すぅ…。すぅ…。」
二人とも寝息を立ててまだ眠りについているが、心なしか俺の腕を抱く力が強くなった気がした…。
「「「ごちそうさまでした。」」」
3人だけで朝食を済ませ、俺は旅路の準備を始めた。といってもインベントリを確認するだけなんだけどな。
「すまん嬢ちゃん。遅くなった。」
食後のお茶会をしていると、エドガー一家がやってきた。何故に一家総出…?
「おはよう皆さん。それにしても一家総出でどうしたの…?」
「命の恩人の旅立ちなんだ。一家総出で見送りに来るのは当たり前だろ。」
思っていたよりもエドガーは義理堅いようだ。でもそこまで思ってくれるのは嬉しいもんだな。
「そうなの…。ありがとうね。」
エドガーに礼を言い、俺が居ない間も資材等をケイに送らせる様手配済みということを伝え、蟻人族と蜂人族の皆の武具の向上、製作を頼んだ。
「むしろ俺のほうが礼をいわなきゃいけないくらいだぞ。」
「そうね。あんたはもっとレイ様敬いなさい!」
「それないぞかあちゃん…。」
トトリに突っ込まれて落ち込んでいるエドガーだった。珍しい情景だな…。
「それよりもレイ様、これを持っていってください。」
トトリがそう言うと、茶色の布の包みを差し出してきた。
「これは…。服…?」
包みを受け取り広げてみると、中には長袖の茶色い皮のコートに白色で絹で作られたブラウス、皮製の茶色のハーフパンツに皮製のブーツが入っていた。
「凄いわね…。いつの間にこんなに作ったの…?」
トトリの裁縫スキルはそんなにレベルは高くなかったはずだ。これだけのものを作るとなると相当時間が掛かるはずである。
「いつかこういう日が来ると思ってたからね。ここに来てからずっと作ってたんだよ。」
女の感というか母親の感かな。多分子供の独り立ちに感づく心境と似ているのだろう。
「ありがとうトトリ。大切に使わせてもらうよ。」
「ええ、これを着れば冒険者って十分通じるよ。」
そういや俺普通の服って持ってなかったな…。寝巻きを除けば戦闘用かネタ衣装くらいだもんな…。
「わしからはこれだ。受け取れ。」
そう言うと一振りの刀を放り投げてきた。
「エドガー、刀打てるようになったの?」
このダンジョンに来た当初にエドガーから聞いたのだが、こちらの世界では刀は昔作られていたが今は作れるものがいないらしい。
恐らく製造法が何処かで消滅してしまったためだということだ。そのせいで今の刀は伝説級のものしか残っておらず、物によっては国宝になっているらしい。
「おぅ。嬢ちゃんの所で学ばせてもらったからな。ただ伝説級と呼ぶにはまだ技術不足だが…。今わしに打てる最高の技術で作ったぞ。」
エドガーはそういうとニカっと笑った。やりきった男の顔だな。
黒塗りの鞘から刀を抜くと、美しいとは言えないが、波打った波紋が浮き出た刀身が姿を現した。
「へぇ…。ここに来て1ヶ月でここまでなら相当なもんだよ。」
刃を見ながらそう言葉を漏らす。切れ味もまぁまぁありそうかな?
「でもまだ力不足だからな。いつか嬢ちゃんが満足して使える刀を打つぞ。」
エドガーならそう遠くない未来にやり遂げそうだな。期待してみようか。
「ええ、期待しているよ。」
「おぅ。任せておけ!」
そう言うとお互い笑いあっていた。
エドガーの息子二人との挨拶を終え、エドガー達が帰宅した所でケイが部屋に戻ってきた。
「お嬢様、クイーンとレーヌ達の準備が終わりましたので庭のほうへお越しください。」
そういうとまた姿を消した。
「なんでしょう…?」
アリスが小首をかしげて頭に?マークを出している。シュリも似た感じだしあのマザー’sは娘にも内緒にしていたようだ。
「とりあえず行きましょうか。変な事にならなければいいけど…。」
一抹の不安を覚えながら俺たち三人は庭に向かった。
「「ご主人様。お待たせしました。」」
「「「「「「「「「「お待たせいたしました。」」」」」」」」」」
庭に出るとクイーンとレーヌを先頭に、蟻人族と蜂人族の兵隊が槍を持って整然と整列していた。ってか何これ…?
「ご主人様の出立の事を皆に伝えたら是非お見送りをしたいということでこういう形になりました。」
「本当はついて行きたいって者ばかりだったのですが、ご迷惑になるという事でお見送りのみとなりました。」
クイーンとレーヌが言うには、蟻人族と蜂人族総出で見送りたかったが、庭に全員は入れないため厳選した者のみでの見送りだそうな。
ってかこの世界は見送りは一家一族総出っていうのが当たり前なのか…?
「「ご主人様のお留守の間は私達がご主人様の戻られる場所をお守りいたしますので、どうかご安心して旅を楽しんできてください。」」
クイーンとレーヌが跪き、声を揃えて言うと他の者達も一斉に跪いた。
「みんなありがとう。留守を任せるからね。」
そういうと俺はクイーンとレーヌの頭を優しく撫でる。
「ちょっと待てっ!わらわもこのダンジョンを守るのじゃからな!」
いつの間にか俺の隣にラースが来ていた。
「だからわらわも撫でるとよいぞ!」
そういって頭を突き出してくる。これはあれだな…。
「調子に乗ると潰すぞ…?」
俺はラースの頭を掴み、黒い笑顔をかもし出しながらアイアンクローをかます。
「いだだだだだだっ!?主様痛い痛い痛い痛いっ!?」
「はぁ…。まったく…。」
「うう…。主様酷いのじゃ…。」
両手両膝を地面につきラースは項垂れる。まぁこの辺にしておくか…。
「半分は冗談よ。皆の者をよろしく頼む。」
ラースを慰め、優しく頭を撫でる。
「本当に…。本当に頼まれてるのかえ…?」
「本当よ。」
「本当に…。本当にかえ…?」
「信じられないならまたお仕置きしようか?」
ラースの目の前で手を握って、広げるを繰り返す。
「信じるのじゃ!だからもうお仕置きは嫌なのじゃっ!?」
ラースが涙目で訴えてくる。俺信用されてないな…。まぁラースが疑うのは俺のせいなんだけどな。
「まぁ。留守の間皆の者を頼むぞ。」
「頼まれたのじゃっ♪」
頭を撫でてやると目を細めて気持ちよさそうにしている。
「ご主人様…。」
声の主であるアリスを見ると、俯いて体を震わせていた。
「アリスには寂しい思いをさせちゃうけど…。少しだけ私に我侭させてくれないかしら…。」
俺はアリスをそっと抱きしめてアリスの頭に頬ずりをする。
「ぐすっ…。そんな風に言われると反対できないです…。ご主人様ずるいです…。」
アリスは目に涙を浮かべながらきつく抱きついてくる。
「アリスがもっと強くなった時には一緒に着ていいから…。それに通信もできるしたまに帰ってくるからね。」
俺はアリスの額にそっとキスする。このくらいは現実世界で妹にしてたしセーフだよな…?
「うぅ…。もっともっと訓練して強くなりますから…。」
アリスはそういうと名残惜しそうに俺の腕の中から離れた。
「シュリも寂しい思いをさせてごめんね。」
「別に寂しくなんてないんだから!でもちゃんと帰ってくるのよ…。」
いつもみたいにシュリはつんつんしているが、やっぱり寂しそうだな。
「ええ。ちゃんとシュリのいるここに帰ってくるよ。」
「うぅ…。ばかぁ…。」
シュリをそっと抱きしめて額にキスすると、シュリも抱きしめ返してきた。
やっぱり俺はここにいる皆が大切な存在になっているんだなと実感した。
「それじゃ皆。行ってきます。」
「「「「「「「「「「いってらっしゃいませ!」」」」」」」」」」
皆の挨拶を受け、俺は一人地上へと転移した。
主人公がついにダンジョンから外の世界に旅立ちます。
エドガーとトトリから一応普通に見える装備をもらいましたが…。
自重しないんだろうなきっと…(笑




