第2話 ダンジョンを探索しましょう
本日3話目。
ブックマークを付けていただいた方々本当にありがとうございます。
そして何度も修正が入ってしまって申し訳ありません。
「魔王様、いかがなされました?」
鏡の姿から元の人魂に戻ったケイに呼びかけられるまで俺は呆然としていた。
確かにレイ・ミカゲは俺好みの女の子を基に作り、いわゆるネカマとしてプレイしていたよ。
でも実際その姿になりたかったといえばNOなんだよな…。俺ノーマルだし…。
「魔王様?」
「ああ済まない。少し考え事をしていただけだ。」
いかんいかん。ここでショックを受けても仕方がない。
スキル【変身】がうまく使えるかどうかにかけるか。というよりも使えなかったら本気で凹むぞ…。
「そうですか、では地下へご案内いたします。」
そういうとケイは地下51階へ案内し、俺はその後に続いた。
51階に降りると巨大な扉があり、その扉に半透明な青い膜が覆っていた。
「これが障壁か・・・?」
そう呟きその幕に手を触れてみると体中から魔力が湧き上がる感触がして、扉を覆う膜が砕け散った。
「流石魔王様です。私の説明は必要ありませんでしたね。」
いや…君の出番を奪うつもりはなかったんだよ…?まさか触れるだけで自動的に魔力が流れて封印を解除できるとは思わなかったし…。
「これでよいのだな?中を案内してもらえるか。」
誤魔化す様に中を案内するように頼む。
「案内よりも見てもらうほうが早そうですね。」
そう言いケイが扉を開けると、扉の奥は緑色の大地と、青い空が広がっていた。
「ここは…農場か?」
辺り一面の牧草、吹き抜ける心地よい風、青い空。
地下ダンジョンにいるはずなのに何故空がある?と思ったのだが、ゲームでも空があったな。魔法的な何かだろう。
ここだけ見るとここはダンジョンではなく、リアルの牧場に思える。巨大な牛が居なければな…。
遠めに見えるのは牛型モンスターのギガント・バッファロー。
こいつ突進するばかりで動きは読みやすいのだがステータスが異様に高いんだよな。牛の癖に…。
ただドロップアイテムの肉はステータス上昇効果がある上に味もいいため、捕獲して繁殖させて飼っていた。
そう思い耽っていると地響きと共にギガント・バッファローが一体突進してきた。
「おぃおぃマジか…。」
これがゲームであるのならただ倒せばいいだけなのだが、体に感じる振動、ギガント・バッファローが放つ圧力。
それらがここがゲームではないということを知らしめてくる。
迎撃するか逃げるか迷っている間にも相手はもう目前まで迫っていた。
「こうなりゃヤケだっ!」
そういい右手で拳を放つとギガント・バッファローの額に命中。頭が爆散した。
殴って爆散ってどういうこと…?いやゲームでなら素手でも一撃で倒せたけどさ…。
唖然としながら亡骸を眺めていると背後から四体のゴーレムが近づいてきた。
「流石魔王様です。眠りにつかれる前と力はお変わりありませんね。」
ケイがそう言いながらゴーレムに指示を出し、ゴーレム達はギガント・バッファローの亡骸を持ち運ぶ。
「では加工、処理施設をご案内いたしますね。」
そういやそんな設備あったな…。自分で数多く加工するの面倒だからNPCゴーレムを作ってアイテム加工させてたっけ。
そしてやっぱここはゲームではなく現実なんだろうな。ゲームならばモンスターを倒すとドロップアイテムが残るだけで亡骸は消えるはずだし。
「魔王様、行きますよ?」
「ああ、判った。頼む。」
いけないいけない。考え込んでいたら置いていかれそうになってたよ。ってか俺主人だよね?置いていかれる主人ってどうなのさ…?
加工、処理施設は名前通りアイテムの加工と処理を行うようで、この農場で取れた農作物、畜産物の加工、保存、処理を行っていた。
ただ現実のような工場ではなく、魔法陣を使った錬金術での加工と処理なので現実感があんまりないな…。
ただ保存に関しては箱詰めして倉庫に保管してあるのだが、目録を見せてもらった所明らかに倉庫の広さよりも収納物のほうが多い。
やっぱ魔法的な何かが働いているのか…?考えても仕方がないか…。
河口、処理施設を出て他にも案内してもらったが、この施設と牧場以外には田畑、果樹園、養蜂場があった。
というよりも思っていたがFWOで51階に作った施設そのまま全てあるな…。
説明は半分聞き流し、米やパン、味噌汁など普段食べている物は用意できそうなので食に関しては安心した。
食事って生きる上で大事だしね。食いしん坊ってわけじゃないよ。本当だよ?
「ここが52階です。」
51階の確認が終わり、次は52階へと降りてきた。
先ほどと同じように巨大な扉に半透明な青い膜が覆っており、手で触れると同じように砕け散った。
「やはり、流石間王様といった所ですね。」
小首をかしげ、触っただけで特に何もしてないんだがな、と思っていると
「封印を解除するには魔王様本人でなければいけないことと、膨大な魔力を消費しなければいけないんですよ。」
と、聞き捨てならないことを言ってくる。
「ちょっと待て、膨大な魔力を消費するなんて聞いてないぞ?」
「魔王様なら問題ありません。せいぜい普通の人族一人が命を振り絞って生み出せるくらいの魔力程度です。」
「おいこら。それって問題ないっていえないだろ!?」
人一人の命を使った魔力って…。どのくらいか聞きたくないが少なくとも問題ない魔力ではないだろう。
「大体MP1000ぐらいですね。魔王様なら問題ありません。」
だから言わなくてもいいってばよ…。
こめかみを指で押さえながらため息をついていると、ケイは気にせず52階の扉を開ける。
「ここが52階。養殖場でございます。」
51階と同じように青い空が広がっており、眼下には幾つもの池や、遠くには川や湖が見える。
「足元にご注意ください。」
扉のそばにある大型リフトに乗り、扉のある高台から下へと降りていく。
「確か52階は…。」
「52階は水生生物の養殖場となっております。主に魚類や甲殻類や海藻類に貝類、それに水生モンスターなどですね。」
俺の呟きにかぶせる様にケイが説明してくる。別に出番を取るつもりではないぞ…?
魚や甲殻類がいるって事は51階の米などとあわせて和食を作る分には問題ないな。
水生モンスターは…。聞かなかったことにしよう。何も覚えてないぞ。
『ブオオォォォー!』
『ギャアァァー!』
何かの雄たけびが聞こえ、咄嗟に耳を塞ぐ。
「デスクラーケンとシードラゴンが争っているようですね。」
だから言わなくていいってば…。あー…聞こえないよ。聞こえない。
耳を押さえながらそっと明後日の方向を向き目を瞑った。
「次は53階です。」
52階の案内はすぐ終わった。だって51階と同じように養殖場の他に加工、処理施設があるだけだしな。
「53階は鉱物などの採石場になっています。主に無人重機で採掘してゴーレムが仕分けするといった感じですね。」
ケイが説明し続ける。下手に出番奪うと機嫌悪くなりそうだしな…。なんでサポートキャラに気を使ってるんだろう俺…。
「どうかしましたか?」
「いやなんでもない。それよりもこんなに掘っても大丈夫なのか?」
そういう直前に巨大なダンプカーが傍を通り過ぎる。あんなに掘ったらここ崩落しないか…?
「問題ありません。このダンジョンは魔力道の上にありますのでそこからもれ出る魔力で鉱脈が毎日再生されます。」
ゲームでは毎日鉱物を採掘できたが、そんな設定だったので。初めて知ったよ…。
ちなみにマナ・ルートは自然に存在する魔力が大地を川のように流れ巡っている事だそうな。竜脈みたいなものか?
採掘された鉱物は他の加工、処理施設のように加工され、保存するそうだ。
「54階は魔王様専用の生産設備、55階は魔王様の住居になっておりますね。」
残り2階もゲームと同様の構造になっているらしい。特に説明も必要なさそうなのでさっさと封印を解除する。
「地下50階以降はこのような感じですね。地上に関してはダンジョンは出来上がっていますが、設備等はまだ手付かずですね。」
そういや世界樹の幹にもダンジョンを作ろうとして、完成する前にこっちの世界に来てしまったからなぁ。
「ふむふむ…。ということは実際に赴かないと何を作れるかもまだ判らないか。」
「はい。赴くとなると一度地上に出てダンジョンを踏破しないといけませんね。」
自分のダンジョンをクリアしないといけないって…。まぁ仕方がないか。
「今から行くとなると地上に出るだけでも時間がかかるからまた今度だな。」
「いえ、地上に出るだけならエスケープの魔法でいけます…「よし、『エスケープ』」ってお待ちくださいっ!?」
脱出の魔法を唱えると周りの景色がゆがみ、樹に覆われた森の中に転移した。