第22話 世界樹のダンジョンを攻略しましょう(後編)
嗚呼…。時間が足りないけどなんとかなった…orz
「ふぅ…。びっくりした…。」
物理が効かないなら内部から魔法で吹き飛ばせばいいと思ってフロストバーンを使ったのだが…。
サラマンダーは四散して消え、倒せるものと予想していた。
でもよく考えればサラマンダーの熱に大量の氷を当てれば水蒸気爆発起こすか…。ここ現実なんだしな。
自分の体を見てみたが、爆風で傷を負ったり服が破れている事はなかった。丈夫だな…。
「次からは気をつけるか。っておおぅっ!?」
考え込みながら独り言を呟くと、何者かが飛びついてきた。
「ばかばかばかっ!心配したじゃないのっ…。」
シュリが飛びついて俺の胸に顔を埋めしがみついてきた。肩が震えているみたいだが…、泣いているのか…?
「怪我はしてないから大丈夫よ。だから泣かないで…。ね?」
シュリを軽く抱きしめてあやすように頭を撫でる。
「ぐすっ…。泣いてなんかないわよ…。」
「はいない。いい子いい子…。」
シュリは甘えるように頭を胸に押し付けてくる。よっぽど心配させてしまったようだな。
「あらあらあら~♪」
レーヌは口に手を当ててニヤニヤしてるし。あんたは娘をどうしたいんだ…。
結局シュリがしがみ付いて離れなかったので30分ほど休憩を取る事にした。
俺自身には爆発の影響はなかったのだが、爆風で何人か怪我をしていた。まぁすぐ魔法で治したんだけどね。
「あれほどの爆発だったのにこの程度の怪我で済んだのはご主人様の魔法のおかげですね。」
戦闘前に皆にかけたアンチファイアが効力を発揮したようだ。他人への強化魔法はここに来て初めて使ったのだが、問題なく使えてよかった。
「レーヌが褒めてくれるのは嬉しいけど、攻撃魔法の方は力を見誤っちゃったね…。」
俺はそう答えながらサラマンダーを倒した地点に顔を向ける。
そこには大きなクレーターができており、一番近くにあった壁に大穴が開いていた。
「魔法の威力というよりサラマンダーとの相乗効果ね…。気をつけないと…。」
ゲームでは炎属性の敵に水、氷属性の攻撃を仕掛けるのが通例だが…。この世界だと考えて使わないと大惨事になるな…。
「もぉ…。本当に気をつけてよ!」
シュリが抱きついたままなんか文句を言ってくる。
「あら。落ち着いたかな?」
シュリの髪を指で梳かす様に撫でる。さわり心地がいいんだよなこの子の髪は・・・。
「うぐっ…。子ども扱いしないでよ!」
悪態をつきながらシュリは俺から飛びのくが…。反応も子供だし、それに…。
(もう少し成長していれば役得だったのになぁ。)
そっとシュリの胸を見ながらそんな事を思う。あれ…?シュリの顔が赤くなっていく。もしかして声に出ていたか…?
「この…!ばかあぁぁぁぁぁっ!!!」
俺は綺麗な放物線を描き吹っ飛んだ。
「はぁ…。ほっぺが痛い…。」
赤い手形の付いた頬をさすりながら呟く。まぁ完全に俺が悪いのだが…。
「心配したのにあんな事言う貴女が悪いのよ!」
「ごめんなさい。返す言葉もございません。」
一部の人にとってはご馳走だろうが…。俺にそっちの趣味はないので素直に謝る。
「もぉ。知らないっ!」
シュリはそう言うとぷいっと顔を背ける。様子を伺ってるとちらちらと目線だけこちらに向けてくる。本当に素直じゃないなぁ。
「ごめんね。これで許して…。ね?」
今度は俺のほうからシュリを抱きしめ、シュリの頭に頬ずりをする。
「もぉ…。ばかぁ…。」
顔を真っ赤にしてそんな事言っても可愛いだけだな。ご馳走様です。
「ふふ♪ご主人様は女殺しですね♪」
嬉しそうにレーヌが言うが、それ褒め言葉じゃないよね?
「まぁそれはおいといて。ちょっと試したいことがあるんだけどいいかな?」
「ええ、なんなりと。」
レーヌを始め他の皆も跪く。いやそんな重大なことじゃないんだぞ…?
「いやそんな仰々しいものじゃなくてね…。折角壁に穴が開いたのだからそこから飛べば楽かな~と思ってね。」
「しかしご主人様。ここから飛んでもまだかなりの距離があるのでは…?」
レーヌがもっともな事を言う。まぁ試したいのはこの先のことだ。
「ええ。今のままだと皆は飛んでいくのは難しいから、皆に強化魔法を掛ければいけないかなと思ってね。」
アンチファイアは本来であれば自身とパーティーの炎耐性を上げるというものであるのだが、サラマンダーとの戦闘で使った時はここに居る皆に効果があった。
おそらくエクスヒールのように魔法に込める魔力によって効果や効果範囲が変わるのであろう。
「強化魔法ですか…。ご主人様の魔法ならばいけるかもしれませんね。」
レーヌは考え込みながらそう答える。まぁ試して状況が悪化するわけでもないしやってみるか。
「それじゃ試してみるね。パワーアップ!スピードアップ!」
使ったのは筋力値と敏捷値を上昇させる強化魔法だ。翅を動かす筋肉の強化と速く動かせるように敏捷を上げればより高く飛べるだろう。
「凄いですご主人様…。今までと比べようにないくらい楽に飛べそうですよ…。」
レーヌを始め、皆が自身の体の変化に驚いていた。
「頂上まで効果はあると思うけど、もし異常を感じたら速やかに言って頂戴ね。」
効果時間は今の所不明だからなぁ。切れかけたら重ねがけすれば大丈夫か。
「判りました。それではご主人様…。」
レーヌが出発を促すが、その前にシュリへのフォローをしないとな。
「シュリ。貴女はここね。」
俺は杖に跨り、彼女に後ろに乗るように促す。
「っ…!そんなのじゃ騙されないんだからねっ!」
そんなことを言いつつも俺の後に載って抱きついてくるシュリ。ちょろ過ぎないか…?
「あらあらあら~♪」
そんな光景を見ながら嬉しそうに微笑むレーヌもご機嫌そうだな…。
「それじゃ、行きますか!」
皆に号令を掛け、壁の穴から外に飛び立った。
「ふむ。やはり生きておったか…。そうでなくては面白うないっ!」
あの爆発で無傷ということはサラマンダーと相当実力差があったということだろう。あの小娘ならここまで辿り着いてわらわの暇つぶしをしてくれるやも知れない。
そう考えただけで笑みがこぼれる。こんなに楽しいと思うのはいつ以来だろうか…。
「おや…?あやつら何をするつもり…。はあぁぁぁぁ!?」
小娘共が壁に開いた穴から飛び出していった。これは予想外だ。
「ちょっと待て!?折角配置したボスの意味が無くなってしまうぞ!?」
ダンジョンマスターの悲痛な叫びが世界樹の洞に響き渡った…。
「凄い…。速いっ!」
シュリが俺にきつく抱きつき歓声を上げている。これでもっと…。いやこれ以上考えると先ほどの二の舞になる…。
「皆も大丈夫そうだね。このまま一気に上までいくよっ!」
杖に魔力を込めてスピードを上げる。シュリを始め他の蜂人もスピードを上げて付いてくる。
「ねぇっ!あれっ!」
シュリが上に向かって指をさす。そこには巨大な洞が見えてきた。
「皆もう少しよ。頑張って!」
そうして俺たちは世界樹の上方にある洞へ到達した。
「はぁはぁ…。何とか着きましたね…。」
俺とシュリ以外は座り込み、荒い呼吸を繰り返している。一気に飛んだから流石に疲れたのだろう。
「皆ご苦労様。ゆっくりと休みたい所だけどそうはいかない様ね…。」
洞の奥から力強い魔力を感じる。ダンジョンマスターか…?
「ほぉ。わらわの隠密を見破るとはなかなかやるではないか小娘。」
洞の奥の景色がゆがみ、ダンジョンマスターの姿があらわになる。
「そんな…。あれは…!?」
シュリが驚愕の表情で固まっていた。
その視線の先にはベヒーモスと比肩するほどの巨躯を誇る青い龍がいた。
主人公とシュリの距離がだいぶ縮まってシュリを弄り始めましたね。
アリスに同じようなことをやると真に受けそうなのでたぶんやらないだろうなぁ。




