第11話 地下ダンジョンを攻略しましょう(前編)
ようやくダンジョンの攻略に入ります。
「気を取り直して、行きますよ。」
再び覇気を纏う。今度は味方に影響せず、尚且つ魔物や野獣が近づかない程度に力を調節した。
何人か蟻人族の女性が身を強張らせたが、意識を失うことはなかった。
全員の無事を確認し、世界樹の根元にある地下ダンジョンへと入っていった。
ダンジョンの通路は思ったより広く、幅5m高さ5mほどあり、壁の両側一定間隔に明かりが灯っている。
壁は土で出来ていてありの巣に似ているな。
道は所々曲がっていたり、分かれ道も幾つもあって侵入者を迷わせる作りになっていた。
まぁ俺はマップを表示させているので迷わないがな…。
所々に広い部屋があり、ゲームであるならばモンスターハウスになっているのだが、獣一匹いなかった。
ちゃんと覇気の効果が現れているようだ。
人数が多いので隊列が長く伸びてしまっているが、後ろの方が襲われた形跡もないしこのまま進んでも大丈夫そうだな。
「嬢ちゃんの覇気の効果は先ほど聞いたがこれほど効果があるとはな…。」
エドガーが感心したように話す。俺だってここまで効果覿面だと思ってなかったぞ。
「話を聞くまではご主人様と私達で魔物を倒しながら進むと思っていましたしね。」
クイーンのほうは一族の兵士が命がけで戦えば何とかいけるだろうと思っていたようだ。
「やっぱここってそんなに魔物が強いところなのかしら…?」
「当然じゃ!当たり前です!」
エドガーとクイーンが同時に答える。やっぱここはそういう認識の場所なんだな。
「はぅぅ…。やっぱりご主人様は凄いです…♪」
アリスは目を輝かせながらこっち見つめてくるし…この子はもう修正不可能かな…。
「ここが一階の最奥で、2階へ下りる階段の部屋かな。そしてあれがこの階のボスだね。ボスを倒すと階段の封印が取れるのよ。」
一際大きな部屋に出た所で皆に説明した。
普通なら部屋の中央にボスが待ち構えているのだが、俺が部屋に入るなりこの階層のボスは壁際に逃げ出した。
1階のボスを【鑑定】で確認した所、ゴブリンキングと名前が出ていた。
まぁ1階だからゴブリンっていうのはいい。だけど部屋に入るなり逃げ出すボスってなんなんだ…?
ゴブリンキングの顔は恐怖で歪んでおり、背中を壁に張り付かせて固まっていた。
覇気ってボスにも効果があるんだな…。便利なのかチートなのか判らん…。まぁ俺の存在自体がチートみたいなもんか。
俺はインベントリーから紫電を取り、鞘から刃を抜き放つとゴブリンキングの首を切り飛ばした。
頭を失ったゴブリンキングは光の粒子となり消えていった。あれ…。死骸は残らないのか?
(ダンジョン内の魔物はダンジョンの魔力で作られているので、倒されても魔力に戻るだけですよ。一定時間経つと魔力を使い復活します。)
そうケイが教えてくれた。そこはゲームみたいなんだな…。ただ外から侵入した魔物や野獣は死骸は残らないが復活はしないそうだ。
「ゴブリンキングはそれなりに強い魔物だったと思うんだが…。」
「ええ…私達でも出来れば戦いたくない相手ですね…。」
エドガー達が言うにはゴブリンキングには通常のゴブリンやゴブリンナイトなどの取り巻きが多く居て倒すのが大変だそうな。
ゴブリンキングだけ居たって事は…キング残して他の奴ら逃げ出したのか…?
「まぁ倒せたからいいよね。それじゃ次に行きましょう。」
うん、倒せればどんな奴だって問題ないはずだし、さっさと行こう。ボスを倒した事で階段の封印も解かれたしな。
「本当に嬢ちゃんは常識外だな…。仲間でよかったな…。」
「ええ…。本当によかったわね…。」
「ご主人様凄いです…♪」
エドガーとクイーンが意外と酷い…。アリスだけが俺の癒しだよ…。
2階へ下り、再びダンジョンの奥へ進んでいく。外見は1階と同じようでそのまま進んでも問題ないだろう。
2階のボスを倒し、3階、4階へと進んでいく。
5階になるとダンジョンの様子が少し変わり、土で出来ていた道が石造りになっていた。
そういや徐々に豪華になるように作ったんだったな…。
そろそろ覇気の効果も薄れるかなと思ったが、魔物とは遭遇せず、ボスも1階のゴブリンキングと同じように壁際に逃げ出してしまう。
「嬢ちゃんが居なければ当の昔に全滅しかねないな…。」
「ええ…。あれほど強力な魔物は森にもなかなか居ませんよ…。」
そうエドガーとクイーンが言うが、ここまでのボスは大蜘蛛、大蛇、大蜥蜴なんだがな。
地上の森だと結構強い部類に入るらしい。全部首を切り落として倒しているがな。
「このペースだと今日中に20階くらいまでいけそうかな…?」
「確かこのダンジョンの最深記録は12階だったはずだぞ…。」
呆れた顔でエドガーが言ってくる。一日で最深記録更新だな。自分のダンジョンなんだが…。
10階に到達するとダンジョンは様子を一変させた。
今までのように洞窟内や遺跡の中という風貌ではなく、広大な草原が広がっていた。
牧場とか見て思ったが…。やっぱここも再現しているのか。魔法って凄いな…。
「ここは一気に駆け抜けれそうね。」
どうでもいい事に感動しながら呟く。でもボスは倒さないといけないから、これだけ広いと逃げられると大変だ。
階段を目指して草原を走り抜け、階段を目視できる位置まで近づくと階段の前に1匹の大きな獅子が居た。
そして予想通り俺達を見ると逃げ出した。やっぱりかっ!?
「くっ…。紫電!」
紫電に魔力を込めて刃を獅子に向け、雷の矢を放つ。
魔力の込め方によって紫電の刃に雷を纏わり付かせるだけではなく、矢のように飛ばすことも可能だ。
雷の矢は獅子に命中し、絶命させた。
「危ない…。ここで逃げられたら厄介だよ…。」
「普通なら襲われて命が危ないって事なんだがな…。嬢ちゃんが危ないって言う意味が普通とは違うぞ…。」
「これはもうご主人様はこういうものと思ったほうがよさそうですね。」
「はぅぅ…♪」
エドガーはさらっと突っ込みいれてくるし、クイーンは慣れてきている。アリスなんて目を輝かせて見つめてくる。
もう3人の行動パターンが決まってきちゃったな…。
そのまま11階から20階まで走破した。火山や湿原、森など、多彩な自然マップだったが俺の力と大蟻の脚力で一気に突破した。
20階まで来て言うのもなんだが、これ常人ならここまで来れないな…。
「今日はもう遅い時間だし、今日のところはここで休みましょう。」
21階へ降りてすぐに野宿する事を伝える。
「地下だから実感がないが、そんな時間なのか?」
エドガーは不思議そうな顔で尋ねてくる。地下ってずっと居ると時間の感覚が狂ってくるらしいから仕方がないな。
「もし外ならばすでに暗くなっているでしょうね。」
クイーンは地下暮らしが長いというよりも地下をメインに住んでいるから大丈夫らしい。
「今日はここで休んで、明日は40階までいけるかな。」
「嬢ちゃんが言うならそうなんだろうな。もう驚きっぱなしで常識が何だったかわからなくなってきたわい…。」
エドガーはそろそろ諦めたほうがいいと思うぞ。禿げるぞ?
「では夕飯の支度をさせますね。」
丁度傍に小川が流れているので水には困らないし、火も魔法で用意できるので問題はないだろう。
従者達が大蟻達に背負わせている荷物の中から食料を取り出し、調理していく。
「この辺りは安全なのでしょうか?兵達を交代で見張らせることも出来ますが…。」
クイーンが遠慮がちに言う。蟻人族の兵だとこの階じゃ無力に近いか。下手したら一瞬で魔物に殺されてしまう。
「結界を張るから大丈夫。だからゆっくり休んでもらっていいよ。」
実は階段を下りた直後に結界を張っておいた。結構派手なエフェクトが出そうだったし驚かせたくないからな。
「そうですか、ありがとうございます。」
「そのくらい問題ないよ。夕飯用意してもらっているんだしね。」
そう言ってクイーンにウィンクで返事をする。
「あの子にご主人様を任せたのは間違いだったかしら…。今からでも私が…♪」
クイーンは顎に指を当てながら考え込むように呟いている。
聞こえないようにしているつもりなのだろうが聞こえているぞ…。俺に何をするつもりなんだ…?
そう思っていたら、従者が見計らったように夕飯ができて運んでくる。やっぱりこいつら侮れない…。
食事を終え、食後のティータイムで今後の予定を話す。
「先ほど言ったように明日は40階を目指しますけど、基本的には今日と同じように進んでいくので危険はないかな。」
「嬢ちゃんがいうなら間違いないのだろうが、余り無理はしちゃいかんぞ?」
「ええ、本来ならば手下である私達が血路を開かないといけないのですから…。」
2人とも心配そうに言ってくる。ほんといい人たちだな…。
「大丈夫ですよ。それに誰も死なすつもりはないからね。」
血路を開くといわれてもこっちが困るな。労働力が減るというのもあるが、一日こうやって付き合えば愛着も沸く。
「はい、そんなご主人様だからこそ信用できるんですよ。」
クイーンが微笑みながら返事する。やっぱ美人だな…。アリスも大きくなったらこうなるんだろうな。
そう思いながらクイーンに見とれていると…。
「ご主人様とっちゃだめですからねっ!」
アリスがそう言って俺の腕にしがみ付いてくる。別に君のものでもないからな…?
「大丈夫よ。取ったりしないわ。」
クイーンも狙っている気がしたが、そうではないらしく安心した。
「これだけのお方だもの。何人妾が居てもきっと全員を幸せにしてくれるわ♪」
ぜんぜん安心できなかった!
その後地面に布を敷き眠ろうとしたのだが、またアリスが一緒に寝ると言い出したので許可した。
「その子がいいのであれば私もよろしいですよね?」
そう言うとクイーンが隣に寝て腕を絡めてくる。
今更拒否はしないですよね?と言いたげに見つめてくるが、左右を親子に挟まれて逃げようがなかった。
「それじゃ嬢ちゃんまた明日な。それとほどほどにな。」
助けを求めるようにエドガーに視線を送ったが、エドガーは諦めたように言いながら家族の元へ行く。
ってか助けてくれないのか…。
今日は寝れるかな…。
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