四
私がいたところは、この街のお城だということが分かりました。
私は一番豪華で大きな扉から外に出ました。私が出てきたその部屋は、「王」と呼ばれる人がいましたが、事情を説明すると快く私が外の世界に出ることを承諾してくれました。
門兵が私が来たのに気が付くと、急いで道を空けました。
いよいよ私は外に出られるのです。私はもうこの国の為に魔法を生み出さなくてもいいのです。優しい彼はこの世界を気遣っていましたが、私はそう言った気持ちになれませんでした。
大きく重たい扉に手を添えます。そして、ゆっくりと開け放つのです。
最初に感じたのはぶわっとした風。風が頬をかすめます。長く伸びすぎた、あの魔法使いの彼が素敵だと言ってくれた髪が風になびきます。初めての風に驚くと、次にやってきたのは光でした。地下では決して感じることのできない暖かな光。そして、空を見上げると、私の手にある水色の魔法と同じ色をした水色の空がありました。
美しい、と感じました。あの人間が私に見せたかった世界は、とても美しいものでした。
私はゆっくりと歩きます。読んだ本にはこの国の本と思われる物もいくつかありました。だから私はその記憶をたどって歩きます。
どうしても行きたい場所があったのです。
しばらく歩くと、やはりそこには森がありました。
「死者の森」と言うらしいです。死者の魂がそこに迷い込むことからつけられたのだと本には書いてありました。本当のところはどうかわかりませんが、私はこの薄暗い太陽の光さえ届かないような森をみて、その話は本当だ。と思いました。
ここに来れば、魔法使いの彼に会えるような気がしました。
私はゆっくりと森に向かいます。一歩、一歩私はあの地下に似た湿った森に入りました。
しばらく歩き、私は疲れて座りました。そして、手にある水色の剣を見ました。
「ああ、そうか」
私は笑います。幸福な気持ちで満たされています。
「私は、あなたと一緒にこの森で、道に迷いたいんだ」
そうすれば一生あなたと一緒に居られます。だから、だから。
私はその剣をそっと喉に突きたてます。
光る水が私の目から流れます。私は、この時初めて涙は悲しい時だけじゃなくて嬉しい時にも流れると知りました。
多くの雨が降り、森と大地は潤いました。
そして、しばらくしないうちに「魔法使い」を失った「人間」と「国」は亡びました。
迷いの森。
そこで私は彼をさがしています。




