傭兵国で豆まきしました……甘すぎです。
にゃん椿3号様、オカザキレオ様共同企画
ハッピー豆まきプロジェクト参加作品です。
傭兵国に生まれました…平和惚け上等!のキャラクターが出てますが本編と関わりはあまりありません。
せ、節分フェア?節分……嬉しい。
節分フェアと大々的にディスプレイされた大型ショッピングモール「ソートン」の陳列棚には整然と恵方巻きが並んでいた。
私は思い切りよく恵方巻きをつかんだ。
はちみつ風味のすし飯ですって書いてあるけど気にしない……
「やっぱりソートンは違うね。」
うっとりと海鮮太巻きを抱きしめて変な目で見られたけど気にしない……あ……豆もある。
買い物カゴに時空保存パック入りの節分豆を入れてうっとりとした。
グーレラーシャ傭兵国に転生してから節分初めてだよ……ソートンに連れてこられて良かった。
今までなんか明正和次元って似非の日本っぽく思われてソートンとか行ったことなかったんだよね。
本当にあそこはあの日本じゃないんだって実感したくなくてあえてね……
「何抱えてるんだ。」
ダウリウス様がのぞき込んだ。
そうだ……傭兵業務の準備でよったんだったよ。
ダウリウス様がちょうどいいから寄るってつれてこられたんだよね。
一気にテンションが落ちる。
「豆まきしたい……」
私は筋肉モリモリのグーレラーシャ傭兵ギルド管理官長を見上げてため息をついた。
私はラズデアナ・カザフという外務担当官で現在デリュスケシという港町にある王宮分館に勤務をしている。
そして実は転生者だ……前世は明正和次元の日本と違う世界の日本人で玉の輿に乗ったはずが義母にひどい扱いで追い出され坊っちゃんな旦那はリアクションなしという微かな記憶をもっている、どうでもいいけどね。
文官な私がなぜ傭兵業務なんぞするはめになっているかというとグーレラーシャ傭兵国は国民みんな傭兵な国だから……大体兼業で私も兼業なのに……高等剣士の称号が私を傭兵業務に引っ張り出すのです。
正確にはそこで不思議そうに鬼のお面もってる筋肉モリモリのダウリウス・ヒフィゼ傭兵ギルド管理官長が強引に引っ張り出すんですけどね。
とりあえず豆まきのゆらいと年齢分豆を食べることを説明するとダウリウス様は興味津々に見出した。
「面白い生き物だな、山民の部族とちょっと似てるが。」
ダウリウス様がニヤリと笑った。
「それは鬼という日本の伝説の生き物です。」
そういいながら私も鬼のお面をもった。
デリュスケシにかえったら分館のみんなと豆まきしようっとリュケさんびっくりするだろうな……
リュケさんというのはデリュスケシ王宮分館管理官でリュケシウス・ドーリュムさんという私の同僚だ。
「鬼族は現実にいますよ、今日が一番忙しいそうですよ。」
店員さんがニコニコと恵方巻きを追加した。
い、居るんだ……明正和次元恐るべし。
「……でどれくらい買うんだ? ちび。」
ダウリウス様そういいながら豆の時空保存パックを鷲掴みした。
お徳用一万個入りと書いてあってびっくりしたけど考えてみれば寿命が230歳から250歳くらいある世界だったよ……それくらい入っててあたりまえなのかな?
「一パックで充分だと思いますが。」
そういいながら海苔も買っておこうと心に決めた。
塩にぎりがおにぎりに進化する大事なアイテムだ。
「さて、ちび行くか。」
ダウリウス様が抱き上げようとしたのを避けて陳列棚を見ていく。
「わ……ラズディの節分ワクワクロールケーキっていうのもあるんだ。」
スイーツコーナーにある紫色の細いロールケーキも買い物カゴに入れる。
あの丸っこいキャラクターがラズディらしい。
デリュスケシにもソートンがあればいいのに……
そう思いながらため息をついた。
「ちび、いい加減にしないと間に合わないぞ。」
ダウリウス様が甘く笑った。
「はい、はい。」
仕方なく買い物を切り上げる。
なんだって平和主義の極みの文官を傭兵業務に引き出すかなぁ。
今回の依頼はカピーロ湖国のカラカピロ海に出る湖賊退治で傭兵三人編成だ。
とりあえず商船に便乗させてもらって湖にでた。
私に依頼がきたのはデリュスケシで海上戦闘になれてるということでダウリウス様がねじこんだらしい。
一応言っておくますが私は外務担当官で本業は文官なんですからね。
「本当に大きい湖ですね。」
タラビット族とのハーフのエリスデナちゃんが白い長い耳をピクピクさせて湖面を船の上から眺めた。
今回はエリスデナちゃんも組んでいる。
高等弓士なので遠隔攻撃が得意だからだ。
エリスデナちゃんはウサギの獣人なんだっけと思いながらソートンでかった恵方巻きにかじりついた。
只今警戒しながら交代制でお昼タイムだ。
エリスデナちゃんも駄々甘いお茶飲みながらガッツリ肉とチーズの平パンサンドをもぐもぐしている。
甘い……甘すぎる。
すし飯が蜂蜜風味だ……少し泣きたくなった。
海鮮と全然合わない……
サラダ巻きと田舎巻きも甘いんかな……
無糖のお茶をがぶ飲みしながら悲しくなった。
「甘いのか? 」
ダウリウス様がヒョイっと食べかけの海鮮太巻きをつまんだ。
「ダウリウス様〜取らないでください! 」
さっき駄々甘いお茶飲みながら豚肉のピラフ食べてたじゃないですか、チキンのレーズン巻きつまみながら〜。
私が騒ぐと妙に色っぽい笑みを浮かべてダウリウス様が唇を舐めた。
「甘い……ちびの唇も甘いのか? 」
ダウリウス様が私の顎を持とうとしたので回避した。
ダウリウス様が少し体勢を崩したすきに少し離れた。
「わー甘々ですね〜」
エリスデナちゃんが両手を腕の前でくんでキラキラした目で見た。
「全然ちがうから。」
私は目線をそらして湖の彼方を見た。
ちび、照れるなとダウリウス様がたわごとを言ってるのが聞こえる。
最初は傭兵ということでビクビクしていた船員が何故か微笑ましいものでも見るような目で通り過ぎていった。
ダウリウス様が私の隣に立った。
「ちび、いい加減に……」
ダウリウス様が言いかけた。
「来たようです。」
私はダウリウス様に囁いた。
向こうに動くものが見える……船だ。
どんどん近づいてくる。
現在こちらは商船に便乗してるから湖の真ん中で近づいてくる船は居ないはずだ……多分。
船の横を並走しだした。
「そこの獲物ちゃん止まってくれない。」
妙にテンション高くおっさんが網を持って笑った。
頭に被った兜の両脇から牛のような角が出てる。
後ろにはやっぱり角のついた兜を被って銛とか持った何人かの男が……
「鬼っていうやつか? 」
ダウリウス様が武器の鎖鎌を取り出しながらつぶやいた。
「チガウトオモイマス。」
妙に片言に私は答えた。
バイキングとかいう方が合ってる気がする。
「ちょっとうるさいよ君たち。」
バイキング? がダウリウス様に指を突きつけた。
あれ……このバイキング、グーレラーシャの傭兵って気がついてないんかい。
普段通りの額当てに立て襟長袖の長衣にズボンってどう見てもグーレラーシャ人なんだけどな。
ダウリウス様なんてセオリー通り一本三つ編みに明らかに隠し武器入ってるみたいですこしも揺れないし。
あ、私は一つにまとめた髪に隠し武器のかんざし刺してないですよ。
武器は卒業時にもらう鋼鉄製の剣だけで十分です。
よぶんな武器は平和主義の私がいるとでも?
「我々を知らぬだと、ふん、良い度胸だ。」
明らかに悪役のセリフを家のギルド管理官長が言った。
あれ……おかしいなこっちが正義の味方? だよね。
「ちょ、ちょっと身長が高いからって偉そうだよ、君、後悔しても知らないんだからね。」
湖賊の親玉がビシッと網をかまえた。
そういや親玉さん身長低いわ。
だから角付きなのかな?
「ほお……グーレラーシャの傭兵を倒せるつもりだとは片腹痛い。」
マスマス悪役チックにわらってダウリウス様が鎖を手にまきつけて鎌を親玉に投げつけた。
親玉が間一髪逃げて危ないよとさわいだ。
鎖鎌はそのまま湖賊の甲板に刺さったそれを基礎にダウリウス様があちらの船に飛び移った。
空飛ぶ筋肉男……ある意味シュールだな。
甲板に降り立ったダウリウス様に親玉が網を投げつける。
エリスデナちゃんが続いて動こうとする湖賊に素速く牽制の弓を射掛ける。
ダウリウス様が楽しそうに網を切り伏せた。
「やりますね。」
銛を手下から受け取りながら親玉が悔しそうな顔をした。
その間も手下どもが船の間に橋をかけてきたのでそれを利用して湖に落としながら湖賊船に乗り移る。
この凶暴女って手下さんの一人が叫びながら落ちていったけど専業のグーレラーシャ傭兵の女性ならこのくらいで済まないですよ。
「おとなしく捕縛されてください、私早く帰りたいんです。」
私はため息をついた。
「うるせ~スカしてるんじゃね〜」
湖賊の手下が銛をもって突進してきたので剣で流してそのまま膝を打って転がした。
後ろに気配を感じたのでしゃがんで斧を回避してそのまま低い位置から回転キックを相手にかまして転がした。
「この野獣女!! 」
転がされた手下がわめいた。
「野獣じゃなくて戦闘文官さんです! 」
何故か手下のすぐ横に矢が的確にささってエリスデナちゃんが叫んだ。
「うるさいウサコ! テメーも倒してやる! 」
手下が立ち上がろうしたので脇腹に蹴りを入れた。
「よくも邪魔をしてくれましたね、野蛮人ども。」
銛を振り回して親玉がダウリウス様に特攻した。
まだ残っている手下が続こうとしたので剣のこうで腹部に叩きつけた。
手下は腹部を押さえてむせこみながらしゃがみこんだ。
「大体良いのかな? 」
ダウリウス様に明らかに遊ばれている親玉を見ながら思った。
「油断したなクソ女! 」
足元に倒れてた手下が私の足首をもった。
バランスが崩れて転びかける剣がとんでマストに刺さった。
とっさに受け身をとって備える。
「死ね〜」
手下が銛を拾ってつき出してきた
隠し武器……隠し……差し入れ小袋に手を入れてとっさにつかんだ物を投げつけた。
銛がそれにあたってあたりに豆がこぼれ落ちた。
そのすきによけてたちあがる。
一万個の豆に足を取られて手下がコロンだ。
私はコロンだ手下の腹にけりを入れて拘束輪を出してころがして後ろ手に拘束した。
「豆はこう使うものなのか。」
ダウリウス様が同じく転がった親玉の背中に足をかけて感心したようにいった。
その姿は妙に悪役チックだ。
「違いますよ……」
私はため息をついた。
湖賊は戦意を失ったようだ。
湖賊たちはこの地方の湖内の小島に住んでいる部族でグーレラーシャの傭兵を全く知らなかったらしい。
世の中色々な人々がいるよね……あの兜実は角は湖賊たちの頭から生えてたし……獣人らしいね。
昔、迫害された人々が湖の小島に逃げてきて住みだして、足りない分を盗賊することでおぎなってたんだってさ。
何はともあれ依頼は終わったことだし、帰りもソートンによって豆買って帰ろう。
しかしその時、私は気がつかなかった……節分が期間限定だということを……
グーレラーシャ傭兵国の首都ラーシャにあるソートンは今日も賑わっていた。
「ま、豆がない……」
私はバレンタインデーフェアの前で崩れ落ちた。
「ちび、立ち上がれないのか? 」
ダウリウス様が私を立ち上がらせて抱き上げようとしたところで正気に帰って避けた。
来年こそ絶対に豆まきをしようと心に誓った。
え……ダウリウス様、バレンタインデーってなにかですって? 好きな人に告白する日ですよ。
そんなのいつでもいいじゃないかって?
日本人は奥ゆかしいんです。
ああ、とりあえずデリュスケシに帰ろうか……
まったく平和主義なのに傭兵業務に駆り出さないで欲しいです。
何はともあれ平和が一番だよ。
来年は豆まきするぞ〜
駄文を読んでいただきありがとうございます♥