メガネと彼
なんとか、戦闘に持って行こうと頑張っていましたら遅れてしまいました。
すみませんm(_ _)m
それではお楽しみ下さい^_^
時間は少しさかのぼり、千秋が出ていった研究棟には桂木と天ちゃんが残っていた。
二人は千秋から取ったデータの映るディスプレイを眺めている。
「多分、あの右眼だね。」
「やはりな。響、このことは生徒には口外するなよ。」
「そんくらい分かってるって。」
ディスプレイに一番ヶ瀬千秋の証明写真と履歴書が映る。
「意外とあっさり尻尾を出してくれたな、少年。」
桂木が怪しく微笑む。
「少年?なんのことだい?」
首を傾け、桂木の方を見る。千秋を調べている時は普通に掛けていたメガネは額に戻されていた。
「こっちの話だ。それより、さっき言ってた問題とは何が起こるんだ?」
天ちゃんの顔色が変わる。
「そのことなんだが、・・・このままだとまずいね。」
鍵のかかった引き出しからを開け、更に鍵のかかった黒い小箱を取り出す。小箱の鍵も開け中にあったメモリースティックをパソコンへ差し込む。
「これは極秘事項なんだけど、一番ヶ瀬君みたいに少しだけドゥーム金属が体内に入っている人は居たんだよ。その記録がこれ。」
メモリースティック内のファイルを開くのにも鍵がかかっていた。
「随分と厳重だな。それに居たって言い方は。」
「これから見る画像で全部分かるよ。」
ファイルの鍵を開け、中にある画像ファイルを開く。
「これは・・・。」
桂木は言葉を失う。
「これが一番ヶ瀬君の未来だ。」
どこかの研究施設の庭で撮られた写真だ。カメラに笑顔を見せる黒髪ロングの少女が写されている。まだ、中学生くらいだろうか。その少女の左手が銀色になっている。
次の写真では、車椅子に座る姿だった。左手から銀色が広がって左半身を染めている。少女は力なく笑っていた。
その次の写真では、ベッドに寝かされ体全体が完全に銀色になり、背中には翼が生え、銀髪になった少女が写っている。その少女の顔には笑顔はなく無表情。
そして、最後の写真は、研究施設を空から攻撃している少女の姿だった。
「一番ヶ瀬もこうなると。」
「多分ね。」
「多分?」
天ちゃんはメモリースティックを再び厳重に保管する。
「まだどうなるか分からないんだよ。最近見つかった事だから。でも、珍しいね。桜ちゃんがこんなに生徒を気にするなんて。」
桂木は遠くを見るように窓の外を見つめる。
「そうだな。知りたい事があるからな。あいつは多分その事を知っているんだよ。」
「ふーん。一応一番ヶ瀬君のこと、上層部にだけは伝えておくよ。」
「頼んだ。」
桂木が研究室から出ていった。
一人になった天ちゃんの口元が歪む。
「面白い物が手に入ったぜ。」
研究室にキーボードに打ち込む音が響いていた。
「はくしゅん!」
千秋がくしゃみをした。
「風邪?」
「誰かに噂でもされているのかもしれませんね。」
「・・・うつすなよ。」
最後のは酷くないか。たかが、くしゃみで。
千秋達は食事を終え、桜並木を歩いていた。
午後は学科ごとの場で授業を受ける。そのため、それぞれの学科の施設に移動しているのだ。
「そういえば、千秋ちゃんの蒼眼は何になったの?」
隣を歩く皐月が千秋に聞く。
「俺は、サバイバルナイフと一体化したぞ。」
蒼眼は、装備していない時は普段身につける物と同化するか、新たにその身につける物になる。装備したい時は、その物から蒼眼が現れ、装備を外したい時は、またその物に戻る。サバイバルナイフが普段身につける物なのかは、疑問だ。今はベルトの左側に付けているけど、普段から付けていたら危ない奴だな。
「皐月は何になったんだ?」
すると、皐月は自慢げな顔になりニヤニヤする。
「えー、聞きたい〜?」
「?、まあ気になるしな。」
「しょうがないな〜。」
そう言うと、自分の制服の左袖を一気にめくる。
「じゃじゃーん。かっこかわいいでしょ〜。」
「・・・何が?」
左腕を見せつけられたが、分からない。それに、かっこかわいいってなんだ?
「え?もう、ひどいな。これだよ〜。」
さっきまで自慢げだった顔は頬を膨らませ千秋を睨んでいる。
皐月は右手で左腕の手首を指している。
「その腕時計か?」
「そうだよ。えへへ、かわかっこいいでしょ。」
銀色の小降りな腕時計が光る。アナログ式鉄ベルトのレディースものだ。そして、かわかっこいいってなんだ?さっきと違う事言ってんぞ。
「腕時計つけてると大人って感じがするよね。」
「そうか?私はいつもつけてるけど。」
「子供の発言ですね。」
皐月の隣を歩く真加奈と茜さんが笑いながら言う。
桜が風に吹かれ踊る。
「綺麗だね〜。」
「そうだな。」
朝も同じ会話をした気がする。
「まるでカップルだな。」
「どちらかと言うと初老の夫婦ですね。」
「違うよ。それになんだよ、その微妙な表現は。」
二人の言葉に反応し皐月が何か思いついたように笑顔になる。
「じいさんや、今日も桜が綺麗だね〜。」
「そうじゃの。」
・・・はっ、ノリに乗ってしまった。
「おお、乗った。ツッコむと思ってたに。」
「縁側でお茶を飲んでいそうな雰囲気ですね。」
「流石は千秋ちゃん。」
歩いている桜並木が分かれ道になっていた。
「それじゃあ、通信科はあっちだから。じゃあなー。」
真加奈が千秋達とは違う方向へ歩いていった。
「私はさっきの研究棟なので、あっちです。それでは。」
茜さんも違う方向へと歩いていく。
「ねぇ、千秋ちゃん。私たち戦闘科は第三アリーナって言ってたけど、どこにあるのかな?」
「え?知ってるから歩いてたんじゃ。」
「えー、千秋ちゃんが知ってるんだと。」
「それじゃあ、ここがどこかも。」
「そうだね〜、分かんない。」
「ですよねー。」
困ったな。皐月も分からないし、俺も分からない。無駄に広い学園だって聞いてたけど、まさか迷子になるとは。
「あの人に聞いてみるか。」
困ったときは正直に。これ、占いで言ってた。
近くを歩いていた男に話し掛ける。背が高いし、上級生だろう。
「すいません、第三アリーナってどっちに行けばいいですか?」
上級生だと思っていた男が振り向く。この顔どこかで。
「あっ、江嶋君だ。よかった。私たち道分かんなくて。これから第三アリーナ行くでしょ。私たちもついていっていい?」
ああ、江嶋なんとか。通称マジメガネ。こいつも戦闘科だったな。
「ああ、構わない。」
皐月のお願いをマジメガネは意外に快く引き受けてくれた。研究棟での態度から断られると思ってたんだが。
「江嶋君の蒼眼はすごかったね。銃が沢山付いてて強そうに見えたよ。」
「強そうではない。強いんだ。」
笑いながら皐月に言葉を返す。イヤミっぽさは無く、冗談を言っているようだ。研究棟での態度とは全く違う。なんでだ?まるで他人のようだ。
「江嶋君の蒼眼は今どこに?」
「これだ。」
そう言いながら、銀色の四角いフチのメガネを軽く押した。
「確か、赤坂と一番ヶ瀬だったな。お前達の蒼眼もすごい物を装備していたな。特に一番ヶ瀬は。そんなお前に一つ聞いていいか?」
「ああ、いいぞ。」
別人どころの話じゃないだろ。別次元の人になってるよ。
「お前、ヤクザの息子って本当か?」
・・・え?
「いや、違う。」
どんな事聞かれるかと思えば、なんなんだ?本当にあのマジメガネなのか?
「そうなのか。ヤクザの息子なら付き合い方が難しいなと思っていたから一応聞いておいただけだ。あ、見えたぞ。あれが第三アリーナだ。」
千秋は頭を悩ませながら、目の前の光景に驚く。馬鹿でかいドームが建っていた。
「大きさは東京ドームの2倍、この高校にある同型ドーム全六個中の一つだ。天井は開閉式で、空中戦もできる。中は、強力な電磁シールドで包まれているため、自由に撃ちまくれる。」
なるほどな。説明を聞きながらドーム内に入る。
ドーム内のグラウンドには、戦闘科の生徒がもう集まっていた。
まただ。視線が集まる。そりゃそうか。集まる要素が蒼眼のせいで増えたんだからな。
その視線は俺の隣を歩いているマジメガネにも集められている。こいつも蒼眼装備してた時、相当アレだったからな。
「俺も一つ聞いていいか?だいぶ、蒼眼装備してた時から人柄が変わった気がするんだが。」
時間が余っていたから、思い切って聞いてみる。
「知らないのか?蒼眼装備時は性格の変化が起こる場合があるんだぞ。まあ、変化する人は少ないんだけどな。」
「そうだったのか。」
「俺の場合は、少し口調がきつくなるくらいだったな。」
あれは、少しで済むのか?しかし、素のマジメガネはこっちだったか。安心だ。あんなのが後ろの席にいたら正直辛かったと思う。
「よし、全員集まったな。全員専用スーツに着替えて蒼眼を装備しろ。」
桂木先生の声の放送がドーム内に響く。観客席にある監視室でタバコを吸っているのが見えた。
専用スーツはそれぞれの体に合わせて作られているため、あの後そのまま渡されている。
更衣室に移動し、着替える。と言っても服の下に着ていたから脱ぐだけなんだけど。
更衣室では、男子からの視線が集まった。主に下半身に。
「 あそこも一番ヶ瀬。」
誰かが呟く。
そのネタはもうやめてくれ。年頃の男子には辛い。
グラウンドに再集合すると、桂木先生も降りて来ていた。千秋の片手には鞘に収まっているサバイバルナイフが握られている。
「全員、蒼眼を装備しろ。仕方はそれぞれだから頑張れ。」
適当だな。どうしたらいいかと全員がざわついていると、桂木先生がめんどくさそうに口を開く。
「ヒントを教えてやろう。基本的には装備したいと思えば出来る。」
したいと思えば出来る、ね。そう言われても。
目を閉じながら心の中で呟く。
(装備したい。あの天使を。)
・・・出来たか?
ゆっくり目を開ける。すると、装備していた。マジメガネが。
「はっ、装備することすら出来ないのかよ。」
口調が変わっている。今回はマジメガネに誰も寄ってこない。どうやら、この裏マジメガネを恐れているようだ。
「どうやったんだ。」
「装備したいと思ったら出来たぜ。」
「なるほど。」
もう一度やってみるがうんともすんとも言わない。
「お前の蒼眼、壊れてんじゃねえか?」
もう、ほとんどのクラスメイトは装備していた。装備出来てないのは、千秋合わせて二人。もう一人はに皐月だ。
「装備出来ない奴は自分の蒼眼を想像してみろ。そうすると、やり方が自然と分かるぞ。」
その桂木先生のヒントを元にやってみる。
目を閉じ、あの天使のような蒼眼を想像する。その時、千秋の中にあるイメージが流れ込んだ。
(まさか、こんなやり方だったとはね。間違ってたらシャレにならないな。)
息を深く吸い、ナイフを一気に引き抜く。
そして、そのナイフを自分の左胸に突き刺した。
「お、おい!お前、何やってるんだ!」
裏マジメガネが叫ぶ。
周りのクラスメイトはその行動に驚きで、静かになる。桂木先生は面白そうに見ていた。
次の瞬間、千秋は銀色の光に包まれた。
光の中、千秋の体には段々と光が集まり、蒼眼を形成し始めた。
そして、千秋は天使になった。
翼を勢いよく広げる。千秋を包んでいた光は吹き飛ぶように無った。
「おい、大丈夫か。」
裏マジメガネが駆け寄る。
ナイフとか刺した所に痛みは無く血も出てない。
「ああ、大丈夫だ。」
右半分に仮面の付いた顔で裏マジメガネを見る。
千秋の蒼眼は心なしか翼が大きくなった気がする。前は千秋を上半身を包む程度だったが、今は全身を覆い隠すほどだ。
装甲も角ばっていた所が丸みを帯びている。
刀も降りやすい重さと長さ、細さに変わり、太い日本刀のようだ。
左腕もスリムになっている。
よく見るとマジメガネの蒼眼も所々変わっている。いつの間にか装備していた皐月もだ。
「気づいたと思うが、蒼眼の細部が変わっているだろ。それは異常ではない。蒼眼が主人に合うように細かい調整をしているんだ。」
そうだったのか。
「それじゃあ、手始めに実戦訓練をしようか。死にゃしないから大丈夫だ。多少の怪我はするだろうけど。まず、そこの天使とメガネにやってもらおう。」
天使って俺の事だよな。メガネは、多分マジメガネ、本名江嶋なんとかの事だろう。いい加減覚えないと桂木先生に文句言えなくなるな。
「面白そうだな。やろうぜ、一番ヶ瀬。」
「先生、お腹痛いんで交代お願いします。」
やだね。なんでそんな危ない事しなきゃならないんだ。
「よし、二人以外の生徒は蒼眼を解除してシールド内の観客席に退避。」
あれ?聞こえて無いのかな?
「先生、お腹が、」
「黙って指示したがえよ。」
瞳孔開かせ睨んでくる。
「すいませんでした!」
深々と頭を下げる。
「千秋ちゃん、江嶋君、頑張ってね。」
観客席から皐月が手を振ってくれている。
とてつも無く広いグラウンドの真ん中に天使と鎧が五十メートルほど離れて立っている。
「訓練は十分。それ以内にどちらが戦闘不能、もしくは降伏した場合のみ終了だ。蒼眼の大体の使い方は大丈夫だな。頭の中に流れ込んでいると思うが。」
確かに、この蒼眼の使い方は分かる。まるで、昔から使っているスマホのように。しかし、スマホと同じで全ての機能を理解している訳でも無い。
「楽しくやろうぜ、天使さんよ。」
マジメガネは今全身青みがかった銀色の分厚い鎧に包まれている。ガトリングとビーム砲の連装砲が二つに背中にカノン砲が二つ。めんどくさそうな相手だな。
「訓練・・・開始!」
桂木先生の言葉と共にブザーがなり、スタジアム内の大画面に映し出された時間が減り始める。
「避けてみろよ、天使ー!」
叫びながらマジメガネのガトリングとビーム砲が火を吹く。
まるで嵐のように千秋を襲う。
辺りには土煙が立ち込め、千秋の姿が見えなくなった。
「もう、終わりかよ。その天使姿は見かけ倒しだったのか。」
三十秒程撃ち続けた連装砲の付いた両腕を下げる。砲身が長すぎて真っ直ぐには降ろせていない。
マジメガネは笑っていた。だが、その笑いをも吹き飛ばす程の風が千秋の方から吹く。
そこには、翼を大きく広げた無傷の千秋が立っていた。
「すまない。これからだ。」
刀を両手で正面に構える。
「そうこなくちゃな!」
マジメガネは再び連装砲を構え、ガトリングを回し始める。
戦いが始まった。
次回、ド派手に戦闘します。




