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私の首は血の香り

 真正は肌寒さを感じて目が覚めた。最初に感じたのは自分が固い床に寝転がっている感覚。そして、少しの頭痛。


 真正は、起きればすぐに意識が覚醒する方である。よって、現状の把握は早かった。


 まず、確認したのは自分が寝ていた場所。それは、床の上である。これで、腰の痛みに合点がいった。


 寝相は悪くないと自負していたが、現状を知ってしまい苦笑した。友達の寝相の悪さをからかうことがあったが、これでは格好がつかないからだ。


 若干熱くなった頬を手で扇ぎながら、真正は立ち上がり、自分の格好を見た。


 昨日、部屋に来てからのことはよく覚えていないが、服がそのままであったので、そのまま寝てしまったのだろう、ベッドの上にある毛布も二人のうちのどちらかが掛けてくれたのだろうと考えた。


 真正は自分の不甲斐なさに呆れつつ、照れ隠しの癖だろうか、首に手をやったとき……おかしな感触がした。


 何か固まったようなものがついている。そして、虫刺されのようなものも二つ感じられる。


 少しの痛みに我慢しながら、固まったものを首から剥がす。


 黒い塊だった。恐る恐る鼻に近づけ、においをかぐ。鉄、血のにおいがした。


(蚊とかいたっけ……?)


 虫刺されであるのなら、気づいた時点で痒みがあるだろうが、それが全くない。そして、真正の今までの虫刺されの経験が、違うという結論に達させた。


 一瞬、吸血鬼という考えが浮かんだ。そのような夢を見た気がするからだ。自分が血を吸われている、そんな夢。悲鳴まで聞こえるという、リアルな夢だった。そして、なにより


「かわいかったなぁ、あの女の子」


 流れるような黒髪と、紅い瞳。それだけは、覚えている。


 真正は基本、吸血鬼だろうがテレビから出てくる悪霊だろうが、かわいければ、ご褒美精神で考えている。実際にいるとは考えていないが、いるならばその方が幸せだろうという考えに基づく。

 

 夢が創りだした幻想なのか、はたまた実際にいたのか。はっきり言ってどうでも良いことだが、夢ならもう一度見たい。


 そんなことを考えていると、部屋の戸が叩かれた。


「真正さん、起きていますか?」


 外から聞こえたのは、幸音の声である。


 食事は、住人が協力して作ることになっている。昨日幸音は、ここでの暮らしに慣れてからで良いと言っていたが、真正が頼んで初日から参加させてもらうことにしたのである。


「起きてます!」


「はい、それじゃあ、待ってますね」


 待っているのならば、急がなければなるまい。真正は吸血鬼だとかご褒美などの考えを一旦捨て、幸音のもとへと向かった。

 


 






 

 

 


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