激昂
室内は暖房が効いて暖かかった。チケットを買いコートをクロークに預けて展示コーナー と踏み出した。
開館直後の為、まだ秋波と勇二の他に客はいない。展示はすべてドイツ語の説明だが、下には英語、中国語、日本語、スペイン語の訳もついている。展示コーナーは暗く、歴史年表から始まり、戦時中のヒトラーの写真、収容所の写真や当時の衣類などの展示に続く。勇二は一つ一つ説明を読みながら丁寧に写真を見ているが、人であったもの、まで写っている写真をあまり見たくない秋波は戦時中の写真コーナーから外れ、遺留品にしかみえない…まあ、ある意味ではそうだが…のコーナーに向かった。
当時の化粧品や、細かい彫刻のはいった手鏡、アニメのキャラクターとおぼしき犬の絵が描かれたポストカード、それぞれ古びた味のある品が続く。暑くなってきたのでマフラーを外して鞄にいれつつ、次の展示コーナーへ向かう。アンティークとして価値のでそうな繊細なビーズ細工、テーブルクロス、赤い皮の手帳、赤い皮手帳…中に…
急激に頭が冷たくなり激しい耳鳴りに秋波は目を瞑り悲鳴をあげる。誰かがどたばたと近付いてきて肩にてをかけた感触はあるが、あまりの耳鳴りと吐き気と、身体中の血が抜け落ちてしまったかのような感覚に立っていられない、つらいつらいつらい…と途中で意識を手放した。