極寒
コートにマフラーに帽子に、秋波は長い髪もしっかりまとめてた完全防備で寒波が押し寄せる極寒のミュンヘンの街に繰り出した。風が強く、髪をまとめたのは正解だった。
勇二は既に後悔した顔に…眉間に皺が2本できる…になっているが、もう遅い。朝のひとのいない時間帯に街をぷらぷらして、ヨーロッパの街なみを堪能する予定だったが、それはもっと日がでてからにしようと話し、二人は午後にいく予定だった美術館に向うことにした。
「広島みたいだよな。」そうなのだ、路面電車が走る街並みはどこか勇二の故郷、広島によく似ている。出社時間なのだろう、サラリーマンたちに囲まれて路面電車に乗り込み三駅、最寄りのシルヘシキ駅に到着した。
ホテルてもらった略式地図を広げ場所を確認する。美術館の近くにはカフェもあるようで、お昼にいいかもね、なんて話す。美術館のほかに教会、市場、ライアック記念館、
「ライアック記念館先に行ってみない?ここから近いんだよね」勇二は好きだろうな、と秋波は思う。ライアックの花言葉は初恋が有名だか、この場合は違う。初恋の由来は初恋の女性を失った男が作ったレクイレム、題名を初恋の終焉、つまりライアックは鎮魂を表しており、ドイツでの鎮魂はユダヤを指している。ライアック記念館はユダヤ記念館を意味しているのだ。
勇二は何度もボランティア参加経験があり、地震や災害発生場所で手伝った経験がある。秋波は参加しないし、勇二も誘わない。秋波は体が弱いので参加しないのだと勇二は思っているが、それは違う。秋波はあまり辛い現実に向き合いたくない、怖くてたまらないのだ。それに他人事な気持ちもあるのだろう、だから、今回も秋波はあまり行きたくないなと思ったが、今回の旅も自分の我がままの様なもので乗り気ではなかった勇二の希望のため、否定するのも憚られた。二人は歩いて10分ほどの距離にある記念館に向かってあるきだした。