入学式1時間前
波乱の引っ越しの挨拶からちょうど1週間が経っていた。
ちょうど今日は大学の入学式の日だ。
青色のネクタイを締め、まだ着慣れないスーツに袖を通し、
鏡に映る自分を見た。
「似合ってない・・・」
元々、童顔である自分がスーツなんて似合うはずもないことは
十分承知していたが、これはひどい・・・。
「七五三かよ・・・」
時計を見ると時刻は8時をまわっていた。
入学式受付が8時30分からだから、
学校と家との距離を考えるとちょうどいい時間だ。
革靴を履き、玄関にある鏡で髪型の最終チェックを行って、
ドアに手を掛け外を出た。
と、同時に隣の部屋のドアも一緒に開いた。
「あっ・・・」
先日、自分が男だと思い込みさらには小学生だと決め込んだ、
隣の彼女はタイトなスカートのスーツに身を包み、
顔には化粧を施していた。
先日会った印象とは180度違った印象を受けてしまった。
「なんでしょうか?」
少しトゲトゲしい態度で彼女は言い放った。
「あ、いや、この前と全然印象が違うなって思って・・・」
「男の子みたいで悪かったですね!」
「いや、そういう意味じゃなくて!」
その言葉を言い終わる前に、
ドアの鍵を閉め、
カツカツと足音を鳴らしながら行ってしまった。
どうやら先日の俺の失敗は、
俺と彼女の間に深い溝を作ってしまったようだ・・・
こちらもドアに鍵を閉め、道へ出る。
そこには大学と逆方向へ歩く彼女の姿があった。
後ろからでもわかる不機嫌オーラ。
あれ、彼女も確か同じ大学だったような・・・
どっか寄り道でもするのか?
って人の心配より自分の心配だ。
俺は早足で大学へ向かった。




