alto(改)
いつも私はaltoだった
sopranoじゃなかった
主旋律は歌えなかった
でもaltoが好きだった
この心もとない音を辿って歌うパート練習が好きだった
華々しいsopranoにそっと惹かれて溶けていく
そして歌はよりいっそう深みを増すから
そう 例えば人生だって
あなたはいつも引き立て役だって言うけど
ただ相槌をうつのが得意だって言うけど
それって重要じゃない? あなたがいるから彼女はいっそう輝ける
あなたがいっしょに輝きのなかに溶けているから
さあ演奏会が始まる
tenoreとbaritonoの大地にはsopranoとaltoの可憐な花々が咲き乱れる
ソリストは揺るぎない色の大輪の花を咲かせる
指揮者はタクトから聖水を振り撒き魂の虹が出来る
オーケストラが小鳥の囁きをもしくは怪鳥が翼を広げ叫ぶ
そして作曲家の熱情は音を楽しむすべての生命を愛せと震える
それはホールから外へ飛び出し世界へ
地球を突き抜け宇宙へ溶けていく
それは苦悩を超克した同志の達成感であり
人間の心に宿るあらゆる欲望や感情を超越した愛そして平和
主役も脇役も関係なくすべての想いが宇宙に溶けて一つになること
それは全人類に捧げる私たちの祈り(メッセージ)ではなかったのか
私はVerdiやBeethovenを歌っているとき
稀にだが天から差し込む光に導かれ宇宙へいったことがある
あの一瞬 確かに私は神になれたような気がした